アンダー・ザ・シルバーレイク
「イット・フォローズ」の監督の新作映画ということで、またコワそうな映画かぁ、一体どんな映画だろうと調べてみたら、あれ?ホラーじゃないのかこれ?と。
なにやらオタクの青年が隣人の女性に恋をして?
で、翌日たずねたら家がもぬけの殻で?
なにやら記号だか暗号めいたものを発見して?
で、自分が住む街の裏側に潜む陰謀へと繋がる?
おいおいめっちゃ楽しそうじゃねえか!!
かなりのイースターエッグが潜んでいるそうで、考察は苦手だけど隠れているポップカルチャー探しは得意だぞ!
物語ももちろんだけど、そっちのほうに尽力しちゃいそうな今作。
怖くなければこっちのもんだ!wと意気込んで早速観賞してまいりました!!!
作品情報
低予算ながら斬新な設定と確かな演出力で、全世界に未体験の恐怖を見せ付けた「イット・フォローズ」のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督が放つ最新作は、セレブや若者が集うロサンゼルスの街シルバーレイクを舞台にした青春ノワールサスペンス。
消えた美女を探すうちに街の裏側のに潜む陰謀を解明していくことになるオタク青年の暴走と迷走を描く。
妖しいロサンゼルスの奇行譚として知られるデヴィッドリンチの名作「マルホランド・ドライブ」を彷彿とさせながら、魅力的で幻想的な映像と今回も斬新なアイディアで観衆を魅惑の世界へといざなってくれる。
“私達は誰かに操られているのではないか”という、現代人の好奇心と恐れに迫るネオノワールサスペンスが誕生した。
あらすじ
“大物”になる夢を抱いて、L.A.の<シルバーレイク>へ出てきたはずが、気がつけば職もなく、家賃まで滞納しているサム(アンドリュー・ガーフィールド)。
ある日、向かいに越してきた美女サラ(ライリー・キーオ)にひと目惚れし、何とかデートの約束を取り付けるが、彼女は忽然と消えてしまう。
もぬけの殻になった部屋を訪ねたサムは、壁に書かれた奇妙な記号を見つけ、陰謀の匂いをかぎ取る。
折しも、大富豪や映画プロデューサーらの失踪や謎の死が続き、真夜中になると犬殺しが出没し、街を操る謎の裏組織の存在が噂されていた。
暗号にサブリミナルメッセージ、都市伝説や陰謀論をこよなく愛するサムは、無敵のオタク知識を総動員して、シルバーレイクの下にうごめく闇へと迫るのだが――。 (HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのはデヴィッド・ロバート・ミッチェル。
デヴィッドで、ロバートで、ミッチェル。どこで呼べばいいんだろう。
ハイ、冒頭でも書きましたが、「イット・フォロ-ズ」で世界を魅了したお方ですね。
これがあまりにも有名だから僕はホラー専門の監督かと思ったらそうじゃないようで。
デビュー作はこれ。
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デトロイト郊外、夏休み最後の週末。少年は一目惚れした女性を探し、
大学生は双子の姉妹の間で揺れ、少女は“楽しいなにか”を追い求める。
毎年恒例の「スリープオーバー」(お泊まり会)を舞台に若者たちの夏を輝かしく描いた青春群像劇。(HPより抜粋)
この映画が長編デビュー作だそうで、これがあらゆる映画祭で話題を呼んだんだそう。
twitterのTLでもよくこのツイートを見かけるんだけど、結構ファンが多いんだなぁと。そもそもこれが監督の作品だとは当時思ってなくて全く興味が無かったんですが、本作観賞前に観れたらいいなぁ。
そして2作目がこれ。
ある男と性行為を行ったことで、他の人には見えない何かに付きまとわれていく。
動きはゆっくりだが確実に捕まれば死を迎えてしまう。
いつどこで誰に変化して襲ってくるかわからないが故に、常に恐怖に見舞われる若者の姿と、男女の瑞々しい恋愛模様も織り交ぜた青春ホラー。
普通のホラー映画とは違うコワさを秘めたお話でした。
なんせコロコロ変化して登場するから実態がわからない。
追いかけてくるけど徒歩ペース。
“それ”はエッチすると相手に感染し標的から逃れることができる、というなんとも面白いアイディア。
結局“それ”ってなんなのさ!ってのもいいところで、劇中で全く説明がないから、そのあとみんなでなんだろうね?って語りたくなる部分も好きですね。
未だに僕は“それ”が何なのかわかってませんがw
「リング」っぽい感染モノではあるものの、気の弱い少年の葛藤からの成長なんてのも見どころのひとつになっていて、ラストシーンのその後の二人がものすごく気になる1本でした。
と、2つの過去作から読み解くと、監督は斬新なアイディアで青春映画を撮られている方なんだなってのがわかるかなぁと思います。
キャスト
主人公のオタク青年サムを演じるのはアンドリュー・ガーフィールド。
近年は「ハクソー・リッジ」と「沈黙~サイレンス~」で演技力の高さを見せてくれたアンドリュー。
近年はトニー賞で主演男優賞を受賞したそうで。あ、舞台頑張ってたのか!だから映画が目立ってなかったんだなぁ。
アメスパ3が観たかった・・・。
彼に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
サムが恋する女性サラ役に、「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」、「ローガン・ラッキー」のライリー・キーオ。
サムの友達役に、「スパイダーマン3」、「インターステラー」のトファー・グレイス。
コミック・マン役に「マルホランド・ドライブ」、「ブラック・ダリア」のパトリック・フィクスラーなどが出演します。
リンチっぽいってことから、多分僕には向いてない映画な気もするんですが、イットフォローズのような後悔はしたくないのでしっかり観たいと思います。
恐らく感想はしょっぱいことになりそうですw
ご容赦ください、と先に言っておきますw
ここから観賞後の感想です!!!
感想
いったいこれは何なんだ・・・。
惚れた女を追いかけて街をさまよう男のバッドトリップにちんぷんかんぷん。
だけど妙に憑りつかれていくんだなこれが!!
以下、核心に触れずネタバレします。
暇を持て余した無職男の珍紀行。
夢見る者が集う街シルバーレイクを舞台に、家賃を滞納している青年が恋した女性の失踪の原因や行方を追う姿を、謎自体が謎という超迷宮へと観衆を誘い、ヒッチコックよろしくなSEやカメラワーク、高彩度な配色でオブラートに包み、エロス、グロテスク、バイオレンスと、あれこれごちゃ混ぜにした表現方法は、観る者たちをさらに深みへと誘導し、パーティーやポップカルチャーに溺れ、夢の切符を手にできなかった者たちへの魂の救済と現状維持で満足している者たちへの毒や皮肉を込めた、不可解さを楽しむミステリーノワールサスペンスでございました。
いや~~、もう俺何見ていたのかわからないし、一体何を描いてるのかわからない。
フクロウのキス?
イエスの3人の妻?
アンダーザシルバーレイク?
犬殺し?
これが一体何を示しているかわからん!
無残な犬の死骸、
地元の有力者不明、
スカンクが放つ異臭、
ドラッグ、
たばこ、
夢中になるほど突くセックス、
ぐちゃぐちゃにつぶされた顔、
謎の美女、
不可解な図形や数字や文字、
暗号などなどもさっぱり何を意味しているか分かりません!
多分サムも答えにたどり着いてないよね。
だから俺も答えにたどり着いておりません。
とにかく意味が解らない映画をひたすら見せられてるんだけど、それが全然不快に感じない。
自分もあのシーンはこうなんじゃないか、みたいに普通にサム目線で楽しめるし、そんなサムの夢中な謎解きの行動が中々面白いし、要するに感想がまとまらないまま(いつものことですw)今に至っております。
この謎解きを一生懸命することに躍起になりそうな映画好きがワンサカ出てきそうだし、
理解を諦めてつまんねー!って酷評する輩もいるだろうし、
実はあのシーンはこういう意味だったんじゃないだろうか!って考察人も出てくるだろうし、
あの部屋のあそこにあの映画のポスターが!って解説野郎も出てくるだろうし、
もうこの映画にあれこれ言うこと自体が監督の罠にハマってるんじゃないか、
お前この映画をクソまじめに捉えてんじゃねえよ!って思われてそうで、要はこの映画の謎を解こうとすること自体がミイラ取りがミイラ状態なんじゃないか、と。
まぁあれですよね、サムって暇人だったわけじゃないですか。
彼の背景を察するに夢に破れて宙ぶらりんなんですよね。
ミュージシャンかな?カート・コバーンのポスター貼ってあるくらいだし、ベース飾ってあったし。ギターもあったか。
それでも夢見る者が集う街シルバーレイクに家賃を滞納しながらも居座り、親にウソまでついてるわけで、人生の次のステップに進もうとせずに、ただただダラダラ過ごしている奴だと思うんですよ。
そんな暇を持て余した奴が選んだ次の夢中なことが隣人の女性で、それがいなくなった=また夢を失ったってことで、それを追いかけるって構図のお話だと思うんですね、
で、どんなにどんなに追いかけても行方などわからず、変なバンドのライブにいったり、イミフなチェスのパーティーにいったり、たまたま見つけた同人誌の陰謀説に夢中になって謎解きばかりしていく。
まぁあれですよね、一種の現実逃避といいますか。
だってあと数日で強制退去が迫ってるのに、彼にとってはそんなのどうでもいいんですから。
で、サムが夢中になっているポップカルチャ―も、所詮は消費されるだけのものみたいなメッセージも含まれていて。
いつまでそんな薄っぺらいものに酔いしれてるんだ、いい加減目を覚ませ、みたいな感じに僕は捉えたんですが、サムがムシャクシャしてギターでピアニストをぶん殴る気持ちも痛い程わかるというか。
こういうシーンがあるから、サムが一人の女性に夢中になって探している旅路が、彼にとっても観ている僕にとっても決して苦痛になっていないというか。
もちろん現実は彼は家の強制退去が待っていて、そんなことしてる場合じゃないんだけど、結局小金を作り、またダラダラした日々を過ごすわけで、なおさら「ポップカルチャーなど所詮消費されるものだ」と現実を突きつけられるのは、通らなければいけない道だったのかなぁとも感じます。
この姿を見てる僕自身も彼の気持ちが痛いほどわかるというか、きっと僕も同じことをしてる気がするというか。
てことは、俺もただただダラダラ過ごす日々を送っていて刺激に飢えているのか、それとも好きな女のためならアパートの強制退去があと数日って期限が迫っていたとしても行方を追うのか。
夢に叶えるために夢がかなう街に集いし者たちは、夢に溺れ、夢に敗れ、月に照らされた湖の奥深くへと墜ちていく。
残骸たちが散りばめられた映画は、僕にとっては決して悪夢とは感じなかったが、ポップカルチャーをそんな風に言うなんて!って部分もあり。
お~~まとまらん!
とにかく(何度目だw)、今俺はものすごい映画を見ている、それに病みつきになっている、それに溺れかけている、それに憑りつかれそうになっている、そんな気分を味わえた映画でございました。
イースターエッグの数々。
さてさて、結局僕はあのシーンにある○○はこれだ!という解説野郎に過ぎず、自分自身で気づいたところ(今回ほとんどないですけどw)、調べたものなどをここでまとめておこうと思います。
ざっくり出しバラバラな紹介ですのでご容赦ください。
- ヒッチコック
映画界の巨匠アルフレッド・ヒッチコック。今作では全てのBGMが彼の映画のような音楽でしたし、彼の名が刻まれた墓が出てくるくらい、彼の作品へのオマージュが目白押しでした。
サムの家には、「裏窓」、「サイコ」のポスターが貼られているし、ブラインド越しからサラを覗く姿も裏窓へのオマージュ。
またどの映画かはわかりませんが、背後から追いかけられたりするシーン、サラが登場する際顔だけライトがあたり、それ以外は影で覆われている感じ、墓場の野外上映でのハイヤーからサムの顔に映るシーンなどは、あくまで僕の視点ですがヒッチコック的だったように思えます。
- 百万長者と結婚する方法
サラの部屋を訪れるサムは彼女と共にマリリン・モンローが出演しているこの映画を鑑賞しています。
3人の女性の人形が部屋に飾られていたり、テレビの隣にはポスターも貼られていました。
サラはきっと金持ちと結婚することを夢見たのかもしれません。
現に地元の有力者と一緒にいたのですから。
- ロング・グッドバイ
ロバート・アルトマン監督の名作。
サムの住むアパートには常に裸体の女性がいるんですが、これもロング・グッドバイからのオマージュに感じます。
探偵であるフィリップ・マーロウの住むアパートにも、裸でヨガをしている女性たちが隣に住んでいるし、サム主体で謎を解いたり行動する設定も、この映画からの引用に思えます。
- 大アマゾンの半魚人
アカデミー賞作品「シェイプ・オブ・ウォーター」もこの映画から着想を得たそうですが、今作でもこのポスターがサムの部屋に貼られています。
他にも「狼男」、「サイコ」のポスターも。
- スパイダーマン
サム演じるアンドリュー・ガーフィールドは、「アメイジング・スパイダーマン」に主演していました。
それを思い出させるかのように、彼は書店でスパイダーマンのコミックを購入しています。
ちなみに、彼の友人を演じているトファー・グレイスも「スパイダーマン3」でヴェノムを演じています。
- アメリカン・スリープオーバー
今作を手掛けたデヴィット・ロバート・ミッチェル監督の過去作。
墓場で行われた野外上映会場で上映しているのがこの映画。
なんですが、出演している女優が過去作の女優ではなく、シューティングスターという出張サービスで働く女性二人でした。
普通に似ていて一瞬気付かないんですよねw
- ボディ・スナッチャー/恐怖の街
後半、サムが部屋で黄昏ていると、おもむろにTVの画面が映り、この映画のシーンが流れます。
何度もリメイクされたこの映画は、主人公以外の街の人たちが侵略者と入れ替わっている、というモノ。
本当のことを訴えるも、周りから相手にされていない場面が映っており、サムの現在おかれた立場を示唆した様なシーンになっています。
- ニルヴァーナ
90年代を代表するグランジ系ロックバンド。
サムがバンドのボーカルであるカートコバーンのポスターを貼っていたり、ソングライターの家では、実は俺が作ったといきなり、ニルヴァーナの名曲「Smells Like Teen Spirit」を弾いたりしています。
ちなみにこのシーンでは、バック・ストリート・ボーイズの「I Want It That Way」なんかも弾いてます。
その他にもスーパーマリオやゼルダの伝説といった任天堂のゲーム、「サンセット大通り」や「孤独な場所で」を彷彿とさせる全容や設定、「理由なき反抗」からのグリフィス天文台などなど、探したらたくさんありそうです。
僕はこの程度しか探せませんでしたが、何度も観て探したくなる映画だったと思います。
最後に
2時間30分という長尺ながら、謎が謎を呼ぶミステリーチックな内容と、難解さに何度も観たくなるスルメ映画であることは間違いないと思います。
またアンドリューガーフィールドの行動が、微妙に情けなくもあり可愛くもあり、ほおっておけないタイプの人物をうまく演じていたことで、お芝居としても楽しめる映画だったのではないでしょうか。
なぜ女性は吠える夢を見るのか、
なぜサムはスカンクの匂いが取れないのか、
同人誌を書いた男は本当に自殺なのか、
フクロウのキスは何者なのか、
一体どこからが夢でどこからがマコトなのか。
これを観てみんなが監督の術中にはまる事態になればいいな、と。
誰か考察書いてくれてねえかな。
あとで読み漁ろうっと。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10