モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

【ネタバレ】映画「ヒメアノ〜ル」感想と解説 森田剛恐るべし。

ヒメアノ-ル 

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この作品をチョイスしたのは古谷実原作のコミックの実写化、だから観たいのではなく、森田剛という男の演技に対する本気度をみてみたいと思ったからだ。

 

 ほとんど舞台でしかお目にかかれないしテレビでは脇役ばかりというわけで。

そして、古谷実原作コミックを1度も読んだことの無い私としては、純粋に役者たちの演技と吉田恵輔監督の新作という観点での感想になると思います。

 

と言ってはみましたが、ただ単に面白ければいいくらいの感覚で見に行って参りました。

 

 

 

 

 

 

あらすじ

「なにも起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田(濱田岳)。同僚の安藤(ムロツヨシ)に、想いを寄せるユカ(佐津川愛美)との恋のキューピット役を頼まれ、ユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一(森田剛)と出会う。

ユカから、森田にストーキングされていると知らされた岡田は、高校時代、過酷ないじめを受けていた森田に対して、不穏な気持ちを抱くが・・・。岡田とユカ、そして友人の安藤らの恋や性に悩む平凡な日常。ユカをつけ狙い、次々と殺人を重ねるサイコキラー森田正一の絶望。今、2つの物語が危険に交錯する。(HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

監督

監督は自ら脚本も手がけるという吉田恵輔。

 

最近の若手映画監督って演出や作風に独特のユルさが必ずある気がして。監督もその一人だなぁと。すべて見たわけではないですがそんな感じがします。基本、人間の情けない部分とかダメな所を人間同士が支えあうような作品が多い気がします。そして、程よくエロスがあるw

で、今作ではそんな監督お得意のユルさに加えて今まで見られなかった鋭さが加わってくるので監督の新たな試みに期待です。

 

デビュー作がゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得後、自ら執筆した小説を映画にした「純喫茶磯辺」が評価され、その後も、

同棲カップルの前に現れた彼女の妹の存在が2人の歯車を狂わせて行く、イタイ大人と奔放なコドモの三角関係をコミカルに描いた「さんかく」や、

幼い頃に自分を捨てた母の訃報が舞い込み、納骨に訪れた母の故郷でその足跡を追う、親子愛を描いた「麦子さんと」、

夢も目標もないまま農業高校入学した少年が、酪農に関わることで命と向き合い葛藤し成長していく姿を描いた人気コミックの実写化「銀の匙」があります。

 

 

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 劇場ではスルーしましたが評判を聞き、見たら普通に良い青春映画でした!

 

受験に失敗し親への反発も相まって、寮があるという理由だけで逃げるように農業高校に入学した主人公が、周りの生徒のモチベーションの高さに劣等感を感じたり、家畜の世話の過酷さにくじけそうなるも、生まれたばかりの子豚に、“豚丼”と名付けて可愛ろうとするのだが・・・。

 

主人公同様見る我々も、酪農の厳しさや置かれている状況、家畜への思いなどを時にユーモアに描き、考えさせられ、それを乗り越え答えを導き出す主人公に深く感情移入できる作品だと思います。個性的なキャラも面白いし、中でも広瀬すずの姉、広瀬アリスの健康的なエロさがたまらん!!エロがなければ青春映画でないっ!!ww

 

 

www.monkey1119.com

 

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 キャスト

主人公、でいいのかな?森田正一役に森田剛。

 

もうデビューして20年も経ちますか、V6さんよ。かつてはセンターポジションとしてグループの顔としてCMやらドラマの主演やら務めてきた彼も、気がつけばグループの末っ子・岡田准一の覚醒によりメディアはおろかCDシングルのソロパートまで彼に奪われてしまう始末。

それでも、活動の場を舞台に焦点を絞り、先日亡くなった蜷川幸雄宮本亜門からも賞賛されるなどのキャリアを重ね、念願の映画単独初主演となります。

 

イメージとしては、やはりいくつになってもやんちゃで、やる気ない感じで、「うひょひょひょひょwww」と人をいじるという印象がありますが、

いろんな記事を読んでいくと、そんなことはなく内面はすごく真面目でストイックな人なんだな、と。ジャニーズというブランドを纏っている以上生半可ではやれない仕事だよなぁ、そもそも。

できることならあまりにも評判がいいので生の芝居を一度拝見したいですがチケットが超争奪戦らしいので、あきらめて映画で彼の演技を堪能したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一人の主人公・岡田を演じるのが濱田岳。

 

すごく真面目な演技をしたり、等身大の青年を演じるのが多いですかね。ちょっと前まではテンション高めの役とか毛色の違う役やってた気がするんですけど。

 

CMでも「金ちゃん」として大活躍の彼ですが、子役からキャリアスタートしてるという実力派。

3年B組金八先生」での狩野伸太郎役で彼を知りましたが、生徒の中ではすでにスバ抜けた演技力でしたね。

 

映画では、先日の「殿、利息でござる」の感想で書きましたが、「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」「ポテチ」と中村義洋監督と伊坂幸太郎原作タッグの作品に全て出演しているほど切っても切れない関係であり、

他にも、「鴨川ホルモー」「偉大なる、しゅららぼん」の万城目学原作の映画にも欠かせない存在だったりします。

 

 

 

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 12歳から30歳までを一人で演じるという、ある意味で彼を堪能できる作品。

 

全員団地暮らしだった小学校の卒業生。その中で主人公は突然、“一生、団地の中だけで生きていく”と宣言。中学に通わず、団地に閉じこもった生活を始める。勉強や運動、団地の見回など規則正しい生活を続け、無事ケーキ屋に就職し、恋人もできる悟だったが…。

 

 

全然暗い話ではなくいたってコミカル。

映画的メタファーをきちんと組み込んだ団地というコミュニティー、そして住民の減少していった問題も描きながら、主人公の規則的な生活、過去のトラウマなども丁寧に話が運ばれ、終盤のハプニングでは伏線が功を奏し映画に勢いをつけます。

十何年もの成長過程を濱田岳本人がずっとノーメイクで演じるというのがすでにギャグで笑えるんですけどね。

 

 

 

 

 

 

他にも、岡田の同僚でユカに思いを寄せる安藤役をムロツヨシ、岡田に思いを寄せるユカ役を佐津川愛美駒木根隆介山田真歩大竹まことが出演します。

 

 

 

予告が「ピンクとグレー」みたいな二部構成みたいな映画ですよ!ってなってるけどそんな映画じゃないことを期待して。

果たして、原作の独特な雰囲気を削がずにポップさと過激さを描くのか、はたまた監督独特の解釈で展開していくのか、

それでは、鑑賞後の感想です!!

 感想

笑いと恐怖が交差する!青春でラブコメでサスペンスなエンタメ映画の誕生!

以下、核心に触れずネタバレします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

笑顔が生まれては消え、生まれては消え…

ぐはぁ〜…記事の冒頭、何をふざけてたんだ私は!
率直に言えば楽しさと怖さの振り幅があり過ぎて見終わった後の満腹感がハンパない。
99分という上映時間が150分くらいに感じた作品でした。
 
「ハハハハハッwww…はっ!!…
ケタケタケタケタwww…えっ!?…」
ニタニタニタニタ…
硬直…
 
といったように、口角を上げさせては下げ、上げさせてはそのまま顔を動かせないほどハッピーサイドとスケアリーサイドをうまく見せつけてくれました。
 
時速110キロくらいの巧みな笑いの変化球できたかと思いきや、バスッ!!っと150キロの恐怖のストレートですよ、これは。
ええ、見逃し三振です。はい。ヤラレました。
 
でですね、笑いと怖さが切り替わるだけじゃないんですよ。
シンクロさせるんですよ!この真逆の感覚を!!
 
これはね、ちょっとおかしくなります。あれ、ひょっとして私はサイコパスか?みたいな。
なぜ、こんな不謹慎にニタついてしまうんだ?
 
 
という、コメディとホラーが同居し同調し交差していく不思議な作品でありました。
 
 
 
 
 
 

監督の作品力がパワーアップ!

今まで監督が作ってきたのって、人間味溢れた日常的なものがほとんどで。
で見た後の、人間て面白いな、まだまだ捨てたもんじゃないなっていうのを改めて教えてくれるような感覚になるんです。
 
で、今回はその日常に潜んでいる恐怖を非常にうまく取り入れていて、今までサスペンスやホラーなんか撮ったことのない人がここまでやれるのか!
監督の凄みというかポテンシャルに感動しました。
 
物語の構成も斬新で、冒頭から途中までは監督お得意の、
ほのぼのとした日常の中で社会的に底辺にいるポンコツ2人が、退屈な毎日の中で人生に活路を見出せず、うだうだしたやり取りを送りながら、ふと恋が生まれ、芽生え、実った者もいれば摘まれてしまう者もいて。
 
そこから摘まれてしまった者はちょっとした憎しみで友情にひびが入って。
実った方も小っちゃい嫉妬とか、エロに探究心があったりとか。
といった、いい歳こいて青臭い青春ラブコメをユルさマックスで笑わせて演出してるわけですよ。
 
もちろん、その中で伏線としての恐怖がちょこちょこ顔を出すんですけど、まだまだ幼虫程度で。
 
で、あー面白いなぁ〜って思ってた瞬間!
 
死んだ顔した森田剛!!
で!
なんとここでタイトルバック!!
 
うお〜〜!!今まで見てきたほのぼの青春ラブコメは物語が始まってもいなかったのか〜〜っ!!
というあまり類を見ない斬新な演出!
 
普通冒頭だったり、始まって5分、長くて10分くらいですかねータイトル出てくるの。
これ、30分は経ってます!!
これがねー、思わず目を見開いてしまいました。ここから少しずつスケアリーな展開になってくるんですよ。
 
 
そして、森田剛演じる森田くんがですね色んな人を殺していくんですが、これがまたリアル!
 
サックサク刺していく殺し方もあれば、ジワジワと息の根を止める殺し方もあって。
サックサク殺すやり方は、背中でひと刺しした後、突っつく程度に刺していくんですが、血がプシューッと出るのでなくシャツに血が滲み出るという演出で。
 
ジワジワと息の根を止める殺し方は、仰向けになって力で抑えられながらもゆっくりと包丁で心臓部を刺していくんですが、この包丁がちょっとずつ体内に入っていくのを見せるんですね〜。
 
両者とも目を瞑りたくなる殺し方で。後者に至ってはプライベートライアンでこんなシーンあったなぁ〜…と思いながら顔をしかめて見ていました。
 
 
他にも色んな死に様を見せつけられるんですが、一番おかしくなったのは、岡田くんとユカがエッチするシーンと森田くんがバットで殴っているシーンです。
 
エッチが段々盛り上がって体位が後背位になって喘ぎ声が大きくなっていくシーンと、被害者の女性が四つんばいの状態になり、森田くんがバットで背中を殴り続けるシーン。
このシーンを何度も何度も切り替えて映すんです。
今見てるものに対してのドキドキはエッチしてるシーンに対してなのか、それとも人が殺されてるシーンに対してなのか、
あれ?今何に高揚してるんだ?区別がつかねーっ!!
といったわけのわからない感覚に陥ってしまいました。
この演出はホント見事です。この作品を象徴するシーンかもしれません。
 
 
 
 
 
 
 
 

役者たちもハンパなかった!

この作品を語るなら避けて通れない森田剛の演技力。
相変わらずひょろっとしてて気怠そうなんですよ、既に。
でも決して素ではなくて森田くんになってて。悍ましいオーラがそこにはあって。
真顔の時点で、何考えてるかわからない装いから、殺意が芽生えた瞬間、狂気がぶわっ!と放たれて。
後半からのギラつきが恐怖でしかなく、殺してる所もレイプしてる所も、あなた過去に実際やってませんか?wwと思うほど様になってて。
何でしょうこの瞬発力。あの細い体からみなぎる力。
はぁー、これが舞台で培った演技力ですか!と。
今年度の賞レース、事務所の力もあるかと思いますが、なかったとしてもノミネートされれば納得できる演技だったと思います。
 
ただ、この狂気に満ちた演技は対極にいた2人がいるから際立ったのも事実で
濱田岳とムロツヨシの超自然なのに小技をたくさん放り込んでくるユーモアセンス!
これがあるから森田剛が映えるんですね。
 
 
濱田岳の純朴で将来性のないチェリーっぷり。これに拍車をかけるムロツヨシのキモさマックスなイタイ先輩の掛け合いが非常にコミカル。
ふざけてんのかマジメにやってるのかマジでわからない。演技じゃないように見せる演技とは正にこのことだなと。
で、佐津川愛美の初々しい素振りから実は大胆な女性が絡んできて面白おかしいトライアングルでの会話劇が見ていて飽きない!!
 
前から思ってましたが、佐津川愛美の端っこにいるのに妙に存在感がある演技力、いつも感心してました。
今回は監督お決まりのエロス担当をかなり体を張ってやっていたわけですが、まぁエロい。エロいですわ。この女ドスケベだな。プライベートもw
と思いたくなる素晴らしい演技でした。
 

 最後に

ただでさえ内容が薄いのに、もう途中から何書いてるかわかりませんww
とにかく緩急あり過ぎて疲れますこの作品は。
それだけ集中して見られるし、作品に没頭できると思います。しかも上映時間99分!私はすごく体感時間が長く感じましたが、あっという間だったという人もいるかもしれません。
 
去年の日本映画は、世界から益々遠ざかってるなんて言われて、やりたいことは自主映画じゃないと無理!みたいな風潮がありましたが、アイアムアヒーロー然り海よりもまだ深く然りこの作品然り、商業映画でも作品性が強く尚且つ面白い、外に出しても通用する作品が今年は多い気がします。
今回も良作でした!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10