神は見返りを求める
ブログはオワコンだ、今はYouTubeだ。
…なんて周囲からいわれることがありまして。
モンキーもYouTubeやったら?とも言われます。
でも僕はやりません。
なぜならば、一度撮影したものを編集しなくてはならないクソめんどくさい作業だからです。
僕の場合、見た直後に書くスタイルなので、ホッカホカの感想を提供できるんですよ。
逆に数日たってしまうと筆が進まないんです…。
これがYouTubeをやらない一番の理由かな。
あとさ、映画系YouTuber界隈ってそこまで盛り上がってないよね…。
今回鑑賞する映画は、底辺YouTuberに神のような優しさでお手伝いをする男の話。
タイトルから察するに、見返りを求めてしまう姿を面白おかしく、そして恐ろしく描くのでしょう。
僕が大好きな吉田恵輔監督なので、ヒメアノ~ルの再来と予想してますが果たして。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「ヒメアノ~ル」や「空白」など、人間の表と裏をユーモアを込めて描く作品を作り続ける吉田恵輔監督が、「さんかく」のプロデューサーと再びタッグを組んで制作したオリジナル作品。
底辺YouTuberの女性に「神のような」優しさで協力する男が、次第に売れていく彼女を姿を見て豹変していく姿を鮮烈なポップで描く、「心温まりづらい」ラブストーリー。
見返りを求める男と、恩を仇で返す女。
本音と建前、嫉妬と憧れなど、人間の奥底に秘めた感情が爆発していく愛憎劇となっている。
できるだけ頓珍漢な映画にしたいという意向から、遅咲きの個性派俳優ムロツヨシを主演に迎えた本作は、監督の過去作「銀の匙」に端役で出演していた岸井ゆきのや、小規模映画に引っ張りだこの若葉竜也など、これからの日本映画を担う逸材が集結した。
また本作は、昨今ネットニュースにも多く登場するほど世間に浸透した「YouTube」や、それを収入源とする「YouTuber」に焦点を当てた作品。
映像作家として偏見を持っていた監督が、時代の潮流とともに価値観もアップデートしたいという思いから、監督らしい皮肉とエール、そしてリスペクトを注いだ。
2人の関係を、あなたは笑いますか?怖いですか?切ないですか?
それとも・・・?
あらすじ
主人公・イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)は、合コンでYouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきの)に出会う。
田母神は、再生回数に悩む彼女を不憫に思い、まるで「神」の様に見返りを求めず、ゆりちゃんのYouTubeチャンネルを手伝うようになる。
登録者数がなかなか上がらないながらも、前向きに頑張り、お互い良きパートナーになっていく。
そんなある日、ゆりちゃんは、田母神の同僚・梅川(若葉竜也)の紹介で、人気YouTuberチョレイ・カビゴン(吉村界人・淡梨)と知り合い、彼らとの“体当たり系”コラボ動画により、突然バズってしまう。
イケメンデザイナ一・村上アレン(栁俊太郎)とも知り合い、瞬く間に人気YouTuberの仲間入りをしたゆりちゃん。
一方、田母神は一生懸命手伝ってくれるが、動画の作りがダサい。
良い人だけど、センスがない…。
恋が始まる予感が一転、物語は“豹変”する――!(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、吉田恵輔。
2021年は濱口竜介イヤーとなった邦画界でしたが、その裏で「BLUE/ブルー」と「空白」という傑作を世に放っておりました。
実はこの2作、数多くある監督作の中では異質な作品だと思うんです。
「BLUE」は監督のボクシング愛、ボクサー愛ゆえに描いたストレートな作品。
「空白」は、多少のユーモアはありつつも、一番シリアスな題材だったように思えます。
本作同様、人間が持つ本音と建前から醸し出される愛憎を面白おかしく描くのが監督の作家性だと思っていた僕としては、監督にとっての2021年は「勝負」の年だったのかなと勝手ながら思ってます。
そんな2作を製作したあとの「原点回帰」ともいえる本作。
絶対面白いに決まってるので、1ファンとして超楽しみですw
過去作はこちらをどうぞ。
キャスト
田母神尚樹を演じるのは、ムロツヨシ。
吉田監督作では「ヒメアノ~ル」に続き2度目の出演です。
彼を知ったのは「サマー・タイムマシン・ブルース」からでしょうか。
妙にウザイ男がいるなぁなんて思ってたら、今度は同じ本広克行監督の作品「交渉人真下正義」にメガネをかけて登場。
こっちはあまりインパクトはなかったですが、今後活躍する人なんだろう、そんな感じで覚えていた記憶があります。
結局そこからちょい役ばかりしか見かけなかった彼ですが、福田雄一監督の映画やドラマに引っ張りだこになっていきましたね。
「勇者ヨシヒコ」シリーズや、「今日から俺は!」、「銀魂」に「50回目のファースト・キス」などとにかく必ずといっていいほど出演。
そんな彼ですが、映画初主演は2021年公開の「マイ・ダディ」と、最近のことなんですよね。
ただでさえ遅咲きなのに、ようやく主演の座を得たってだけでうれしいですよね。
今回で2作目の主演作になると思うので、思う存分「主演ムロツヨシ」のお芝居を堪能したいと思います。
他のキャストはこんな感じ。
底辺YouTuberの河合優里役に、「愛がなんだ」、「大河への道」の岸井ゆきの。
田母神の同僚、梅川葉役に、「あの頃。」、「葛城事件」の若葉竜也。
人気YouTuberカビゴン役に、「スペシャルアクターズ」、「エッシャー通りの赤いポスト」の淡梨。
同じく人気YouTuberチョレイ役に、「ほとりの朔子」、「モリのいる場所」の吉村界人。
イケメンデザイナー・、村上アレン役に、「猿楽町で会いましょう」、「生きててよかった」の柳俊太郎などが出演します。
相変わらず本音を見せ合うことで複雑な人間関係を作るのが巧い監督ですが、今回も全然キュンキュンしない胸糞映画を見せてくれるのでしょうか?w
ここから観賞後の感想です!!
感想
#神は見返りを求める 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年6月24日
吉田恵輔作品で1番きついかも。
ずーっとはらわた煮えくり返ってた。YouTuberに賛辞を送ってるとこもあるけど、皮肉の方が強いよねw pic.twitter.com/hfLHqFahkh
いやぁ~底意地悪すぎる!!(褒めてる)
神と呼ばれたって善意と感謝は欲しいよな!
久々に胸クソ悪くてずっとはらわた煮えくり返ってましたw
以下、ネタバレします。
風刺がキツすぎやしませんかw
なんでも善意で協力してくれる中年サラリーマンと、底辺YouTubrから一転手のひら返しで調子コキまくる女性による、嫉妬と欲望渦巻くDisり合戦の模様を、数字や登録者数を求めるあまり度を超えた動画を撮りまくるYouTuberへの風刺をたっぷり覗かせるかと思いきや、苦みたっぷりのコーヒーに一滴のクリームを注ぐような「優しさ」を注ぐことで、「嫌い」という言葉の意味が変わってくる、全くキュンキュンしないラブストーリーでしたw
私映画ブロガーという肩書で、新作映画をダシに好き勝手色々感想を書かせてもらっておりますが、やってる以上は対価は欲しいわけで、やっぱりPV数とか検索順位とか気になるわけですよ。
何とか数字を上げたいと色々試行錯誤を重ねた結果、皆さまに認知されるような(されてないかw)キャラにさせていただけたことは本当に感謝してもしきれません。
だから今回媒体は違えど、本作に登場する人気YouTuberの度を越えた動画とか、それがすでに当たり前な心理状態にまで行ってしまってるのとか、正直自分と重なる点は0ではないなと思ってしまったわけです。
ホント時に言っちゃいけないこととか、作り手へのリスペクトに欠けるような感想だったりとか、いったいお前どのツラ下げて言いたい放題言ってんだおいとw
今回の作品を反省材料というようにとらえて精進したいなと思っております、はい。
というわけで気を取り直して本作の感想に移りたいと思いますが、正直どのキャラクターも好きになれない、というか人間誰しも良い奴ばかりでないし、悪い面や醜い面も持ってるわけで、ダークサイドの部分を吉田監督は本当に炙り出すのが巧いと。
特にムロツヨシ演じる田母神の「悪い」スイッチが入った瞬間のゾクゾクする感じとか、底辺から脱却して調子こいていく岸井ゆきの演じるユリちゃんがメイクと共に表情筋を変えてまで性悪クソ女になっていく姿とか、今回色々完璧すぎるほどみんながキャラの醜い部分を見せてましたよね。
序盤はただただ善意でユリちゃんに協力していく田母神の姿と、自分が「面白い」と思うことに全力を注ぐユリちゃんの真っすぐで純粋な想いが溢れていて、別に自分たちが楽しければ登録者数とか再生数とか気にするなよ、周囲の人たちから鼻で笑われても別にいいじゃねえかよ、だからとりあえず何を言われてもいいからやりたいことをやりたいようにやれよと。
でもさ、人間長いモノには巻かれたい気持ちがあるのか、人気者と知り合いになって協力してもらって数字が上がれば、そりゃセンスない田母神は切られますよ…。
ただユリちゃんに足らなかったのは感謝の気持ちですよね。
そりゃ神と呼ばれる田母神さんでもキレますよ…。
YouTuberってやっぱり好きじゃない
序盤の底辺ながらほのぼのとしたパートから、徐々に暗雲が立ち込めていく中盤は、まだ二人の間に決定的な亀裂がなく、妙な距離感が出てましたよね。
たぶんですけど、ユリちゃんから一言田母神にあれば、センスのない奴はみんなクソ!みたいに簡単に見下す村上とか、センスないしテロップダサいとてめえ目線でしか語れない人気YouTuberの2人に対して、「仮にそうだとしても彼は神のような人です」と自分を曲げずに意見を言える勇気がユリちゃんにあれば2人の世界は穏やかだったのかもしれません。
しかししかし2人の醜い争いは、殴られたら殴り返せとばかりにYouTube動画でDisり合戦へと勃発。
ガーシー砲とばかり暴露系YouTuberと化した「GOD T(田母神)」がガンガンユリちゃんの悪事を公に晒すのは、よく見る光景でしたよホント。
対するユリちゃんも負けじと、ホントも嘘も誇張も混ぜて印象操作のような演出で「GOD T」が悪いという概念を植え付けていくわけです。
こうして二人は完全に絶縁状態となり、どんどん醜い争いへと発展していくのであります。
しかしなんですかね、監督は時代の移り変わりに取り残された人間だから、YouTubeやYouTuberに偏見を持っていたと仰ってましたが、劇中にもあったように「残る者ってそんなに偉いの?」という言葉に集約されるように、今も尚語り継がれる映像作品はもちろん凄いことなんだけど、それと比較しても何の意味もないし、そこまで残された作品が決して「偉い」わけではないと。
今の子たちがただただ純粋に「面白い」と思えるモノを、周囲からくだらないと言われようが寝る間を惜しんで作り続ける人たちは、本当にすごいことだと思います。
ネット上にアップロードした動画だから、50年後も残ることはあるかもしれないけど、多分語り継がれるような作品とは言い難いですけど、今の人たちを喜ばせることができるってのはある種の才能ですから、それは誇っていいのかなと。
ただですよ、幾ら喜ばせたいからって度を超えた行動だったり言動はどうかと思うわけですよ。
それこそ、ユリちゃんにドッキリを仕掛けた際に大やけどを負わせてしまったのにもかかわらず、さも自分たちは「目撃者」とばかりに謝罪もせず病院から動画撮影をする神経は、本当に考えられません。
そもそもカビゴンとチョレイとのコラボ動画の時も、ユリちゃんをボディペイントさせてドッキリを仕掛けるってさぁ、もうあれじゃん、売れたい願望の女の子を使って自分たちの利益にするっていうクソ案件じゃん。
NGないですってさ、売れたいがためのモノじゃん。
だからって裸になってもらうよ、大丈夫アートだからっていうノリがもう、どこぞの企業の偉いおっさんが「枕営業」やってるのと同じだと思うんですよ。
田母神もあそこから「それってそこまでしてやること?」って疑問を投げつけるけど、ほんとそうよ。
モザイクかけてるけどさ、この2人は元々の素材を所持してるってことよ。
幾ら素人だからって度を超えてると思うんですよね。
これ以外にもGOD Tに催涙スプレーをかけてやれだとか、メガネかけたYouTuberを池に突き落としたりとか、ほんとしょうもないことばかやって「クリエイター」気どりされてもなぁって思うんですよね。
あとはもう村上ですね。
おそらく本作の中で一番嫌いなキャラ。
本職はデザイナーだそうですが、気づけばユリちゃんの動画製作に参加し、どこぞで学んだなんちゃらグラフィックスを駆使した洗練性の高い編集とデザインによって、これまでセンスのカケラのないユリちゃんチャンネルの空気を一新した実力は認めますが、そもそもの性格がクソ。
自分の力こそ最高で、それ以外は認めないみたいな態度で、田母神のデザインをあざ笑い、田母神を雑用と見做して顎で使う。
海での撮影で人が邪魔だからどかしてと田母神に指示するも、なかなかどかないおじさんに四苦八苦している田母神に怒鳴りつけるだけ。
そんなに早く終わらせたきゃおまえがやれ。
気が付けば動画の構成や新作の案を率先して作り出すまでになり、終いには今ユリちゃんが支持されてるのは俺のおかげで、お前は何の才能もないとまでぬかす。
他にも正義と称してYouTuberの顔や住所を晒して突撃撮影を敢行してバズを狙おうとするガキや、これまで陽キャじゃなかったことへの反動なのか、バブル期の芸能人気取りで派手に遊び散らかす彼らを見てると、これだけ芸能人たちがスキャンダルを恐れて派手な遊びを控えてるのに、これだけ社会がハラスメントに厳しく向かい合ってるのに、パワハラセクハラの温床になってる辺りが、本作で描かれてる内容を見る限りどうしようもなく情けないなぁと。
正直僕もYouTubeを閲覧しますけど、いわゆるYouTuberの動画には全く興味がありません。
だって面白いと思ったことがないんですもの。
一応知識になることや自分にプラスになるような動画、それこそエクササイズとかはよく見させてもらってるんですけど、それ以外は見ないです。
もちろんそれらを楽しんでる方を卑下などしてませんし、動画を見せる者と見る者との世界や関係性に関しても特に言及することはありません。
要はあれですわ、TVのバラエティの方がまだ面白いなぁ。
プロだし。
最後に
人気者になるために血のにじむような努力をしてきた二人が迎える末路は、「こんなことのためにやってきたんじゃない」と思えるような結末。
YouTube文化への批評と皮肉と風刺をたっぷり込めた内容だったように思えます。
ただ途中でも書いたように、いがみ合った二人が言いあう「嫌い」という言葉の中に、仄かな愛情というか信頼というか、恋愛関係を望んだわけでもない二人の間に微かなリスペクトが立ち込めた作品でした。
神さまだって見返りは求めたりするんじゃないですかね。
てかそもそも神さまなんて自分を甘やかすための存在であって、彼が何でもやってくれるわけなくて、仮にいたとしても願いが叶ったかわりに代償が降ってかかるってもんなんですよ。
とりあえずさ、ただでやってくれたことに対して、それが「当たり前」だなんて思わずに、態度で示しましょう。
あとは想像力ですかね。
ここまでやってくれたことは、もしかしたら自分の見てないところで相当な労力をかけてやってくれたかもしれないという。
とりあえずフライングガーデンで爆弾ハンバーグが食べたい。
というか、爆弾ハンバーグ出してよw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10