武曲/MUKOKU
ぶきょく?むきょく?たけまがり?最初は全く以って読めませんでしたw。
武曲とかいて「むこく」と読みます。
意味は原作者によれば、北斗七星の中の星の名前からとったとのこと。
それがこの物語にどう繋がってくるのか。
ちんぷんかんぷん丸でございます。
鍛え抜かれた肉体美から殺気を醸し出す中堅俳優の要と、有名人である両親のDNAを受け継ぎ、溢れんばかりの才能をスクリーンに見せ付ける期待の男。
この2人によるクライマックスがすごいとのことで、早速鑑賞してまいりました。
作品情報
芥川賞作家・藤沢周の同名小説を、前作「私の男」でモスクワ国際映画祭再優秀作品賞を受賞し、世界で注目される監督の一人となった監督が映画化。
彼の名の下に、日本映画を振り絶たせるキャスト、スタッフが集結した今作は、数奇な宿命を背負った男達が、激しく熱く剣を交える物語。
特にクライマックスの6分間での決闘シーンは、日本映画史に刻まれるほど迫力の映像と豪語。
かつてない渾身の一作がついに公開する。
あらすじ
「殺す気で突いてみろ!」矢田部研吾(綾野剛)は、まだ小学生だった自分に、日本刀を突き付けて剣を教えるような警察官の父・将造(小林薫)に育てられた。
おかげで剣の道で一目置かれる存在となったが、父とのある一件から、進むべき道を見失い、剣も棄ててしまった。
そんな中、研吾のもう一人の師匠である光邑 師範(柄本明)が、研吾を立ち直らせようと、一人の少年を研吾のもとへと送り込む。彼の名は
羽田融 (村上虹郎)、ラップのリリック作りに夢中で、どこから見ても今どきの高校生だが、台風の洪水で死にかけたというトラウマを抱えていた。そんな彼こそ、本人も知らない恐るべき剣の才能の持ち主だった。
研吾と融、共通点はなかった。互いに死を覗きながら闘うこと以外は──そして、その唯一の断ち斬り難い絆が、二人を台風の夜の決闘へと導いていく──。(HPより抜粋)
監督
監督は熊切和嘉。
名前と作品は存じ上げておりますが、これまた1作も見ていないので今作が初の熊切作品鑑賞となります。
最近の邦画の監督ホント見てないなぁ。
簡単に監督の作品をご紹介。
大学での卒業制作作品「鬼畜大戦争」がぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞。監督として注目を浴びます。
その後も、幼少時のトラウマから心を閉ざした青年が、SMの女王と出会うことで心を開放していく「アンテナ」、函館市をモデルした街で、そこに生きる市井の人々の人生模様を描いた「海炭市叙景」、二人の男の間で揺れ動く女の彷徨を描いた「夏の終わり」などのヒューマンドラマを主にした作品を世に送り出しています。
そして、当時10歳の孤児となった少女と、彼女を引き取った遠縁の男が、北の大地で寄り添うように濃密になっていくと同時に、二人に待ち受ける悲愴な運命を描いた「私の男」が、モスクワ国際映画祭最優秀作品賞を受賞。それを皮切りに国内の賞レースでもノミネートを重ねていきました。
キャスト
剣道の才がありながらも、父の一件で道を踏み外した矢田部研吾を演じるのは綾野剛。
「新宿スワン2」でのチャラいけど一本筋の通った男を熱演していましたが、今作はそれとは打って変わって、闇を抱えながら生きる狂気に満ちた男を演じています。
彼に関してはこちらをどうぞ。
ラップに心酔しながらも、驚くべき剣の才能を秘めている羽田融を演じるのは、村上虹郎。
お父さんはムラジュンこと、村上淳。
お母さんは情熱のリズムで悲しみジョニーに甘い運命だったUA(ウーア)。
どちらもそっくりですね。
彼の出演作は去年公開したディストラクションベイビーズで、主人公の兄に置いてけぼりにされ、その後血は争えないなと思うような行動をしていく弟の役を演じていましたが、今作の予告を見る限り、ちょっとの間で随分演技力が増したなぁと。
ただ、ちょっと調子乗ってそうに見えてしまうのは若いからなのか、ただの気のせいか。天狗にならないように芝居に没頭して欲しいですね。
彼の過去作の感想はこちら。
他のキャストはこんな感じ。
カズノ役に、「モラトリアムたま子」以来、会心作が見受けられないのが残念だけど、相変わらず自分が好きな監督作品にちゃんと顔出してますね、前田敦子。
研吾の父、矢田部将造役に、監督作「海炭市叙景」に出演、「深夜食堂」で人気の小林薫。
研吾のもう一人の師匠、光邑雪峯役に、「モヒカン故郷に帰る」のファンキーな親父ぶりが印象的だった柄本明らが出演しています。
クライマックスも楽しみですが、そこまでの過程もどんなドラマがあるのか楽しみです。狂気と脅威のぶつかりあい、そこからどんな景色が見えるのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
綾野剛の肉体が、精神が半端ない!!!虹郎のポテンシャルが半端ない!!!
でも話はイマイチ盛り上がりに欠ける・・・。
以下、核心に触れずネタバレします。
役者たちの本気度に圧倒
剣道にむちゃくちゃ厳しい父の教えに必死で応えてきたが、いつしか殺したいという思いが芽生え、ついに父を超えたと同時に重傷を負わせてしまった過去を持つ男。
片一方で、言葉が持つ美しさに魅せられラップを磨くが、過去のトラウマによりどこか情緒不安定な少年。
何の因果か二人は運命的に出会い、剣を交えることになる。
男は過去を振り払うために、少年はその男が持つ狂気に魅かれ挑んでいく。
彼らはどこへ向かうのか。剣を交えた先に何があるのか。
はい。
2時間ちょっとにわたって非常に重苦しい内容でありました。
正に鬼コーチ、いや鬼畜なオヤジに幼少時代から、俺を殺せ!!殺すつもりで向かって来い!!と朝から晩までしごきにしごく研吾の父。
冒頭では修行の最中にとうとう本気になった研吾が父を木刀でぶっ叩いてしまうところから始まります。
それから何年かして、研吾は酒に溺れ、自堕落な日々を送り、彼女であるカズノにほぼヒモ状態。
はっきり言ってみてられません。
友達にもしたくありません。
だってこいつと酒飲んだら、酒癖悪すぎてそりゃあもうめんどくさい。
そんな自責の念に駆られ、自暴自棄なまま毎日を過ごしている研吾を演じた綾野剛。
「日本で一番悪い奴ら」でも、そのストイックな演技に感銘を受けましたが、それに匹敵するほど役に入っていたように思えます。
目は虚ろ、よだれはダラダラ垂らし、声は酒灼けしたようなだみ声で、単純に一言、怖い。近寄りたくない。呪われています。
こんな役をやっている綾野剛を2時間ずっと見るのか。
これはそれなりの覚悟がいるぞ。
そう思い、息を飲んでみていた次第であります。
もちろん剣の腕もお見事。
フラフラしながら同情に現れ、融といざ勝負!あれ1本取られちゃった?ワレ何しとんじゃあああああっ!!!とゲージMAXで無双モード突入。もはやただの剣道から、竹刀を持っただけの修羅へと化し、投げる、蹴る、と暴れまくり。
無双モードじゃなくても怖くて見てられないのに、このときの綾野剛はもはや人ではない。それでいて、しっかり役を演じているのですから、あなた普段何考えて生きてるんですか?と。
その研ぎ澄まされた演技は、肉体でも見せつけます。
もう劇中ずっと気になってましたが、腕筋がですね~半端ないです。シャツの袖からチラチラ見えるその筋肉からして、あれお客さん、学生のころ何かやってた?ああ、昔剣道やってたんで、っていう過去にやってたからまだ筋肉落ちないんですよのレベルではありません。
え?マジでどうやったらそんな肉体になれんのさ?っていうのが、クライマックスでついにお目見えです。時間にしておよそ20秒もあったでしょうか。
はい、綾野剛ファンの皆さま、いや、ガリマッチョ好きな肉食女性の皆さまおまたせしました。
当店ナンバー1の剛君の肉体美でございます!!!
WAAAAAAO!!!!!
これはすごい!!どうやったらこんな体になれるんですか!?剣道ってこんな素敵な筋肉になれるんですか!?
クリロナがガンガン宣伝してるシックスパッドとか使ってるんすか?
自分も家で定期的に筋トレやってますけど、どうやったってこんな体になりません。
画像がこれしかなかったので、腕と胸だけですけど、腹筋も背筋もとんでもなく美しいです。
自分男ですけど、これは惚れる肉体です。
そして何より素晴らしいのはラストシーンでの精悍な顔つき。
あれだけ、うげぇええなアル中一歩手前の顔つきだったのがこうまで変わるかってくらいすっきりと晴れ晴れとした表情。
もちろんここに至るまでに、彼の中で色々なことを乗り越え、もがき苦しんだ後のことがあっての顔つきなのですが、それでもここまですっきりとするもんなんですね。
と、このように綾野剛という男の真骨頂を堪能できる映画でありました。
じゃあ綾野剛だけがすごいのか。
ノンノン、虹郎君の事もちゃんと見てあげてください。
リリック作りに夢中な高校生羽田融は、ライブでもその才能をいかんなく発揮しステージの上で暴れまわります。
早いビートに合わせ、彼のリズムで韻を踏みまくり、1小節にどれだけ詰め込むのかというほど言葉をまくし立て、拡声器とマイク2本も使って、プチョヘンザーとオーディエンスを盛り立てる。
しかしながら、彼には洪水の被害に遭い、溺れかけて死にそうになった過去があり、その後遺症が今でも残っていました。
そのせいもあってか、普段の生活では思春期ということもあり、喧嘩っ早いところもあり、たまたま道でバイクをよけたと同時に道においてあった剣道部の竹刀を蹴飛ばしてしまい、ケンカに発展します。
いやこれはね、そんなとこに竹刀を置いてる剣道部たちが悪いですよ。
そんな俺の意見はどうでもいいとして、そのケンカは拳ではなく、道場で剣道という形で集団リンチしようという流れになり、無理矢理面をかぶらされる羽目に。
しかし、道場の先生である光邑が現れた途端油断した相手の隙をついて、ツキを一発お見舞い。
融、YOU WIN!
その素早い動きと三殺法を見事に披露したことが、光邑の目に留まり、剣道の道へ進んでいき、研吾と運命的な出会いに繋がっていきます。
「ディストラクションベイビーズ」でも、ポテンシャルを秘めたいい役者だなぁと思っていましたが、ちょっと見ないうちに随分と成長していたなぁ、と。
まず素晴らしいのは、ラップが様になってることですね。はっきり言って聞き取りづらいんですが、きちんとリズムを感じながらあんなに早口なラップを噛まずによくいえるなぁと。若い子はラップになじんでるってのもあるとは思いますが、なかなかのものです。
そしてあの反抗的な態度!っかぁ~クソ生意気です。態度もそうですが、表情も生意気です。あんた普段もそんなんなん?
でもでも、話が進むにつれて、剣道に魅せられ真に向き合っていく融の表情はみるみる変わります。
でもって、その紳士なまでに向き合った結果、無心状態でやってきたのに、目標が研吾を倒すことに没頭してあらぬ方向に。
ここもまた未完成で未熟な少年の若気の至り感を見事に表現していたと思います。
そんな二人が中盤で激しい豪雨の中、ついに合いまみえるんですが、劇中で一番の盛り上がりとなる本気のシーンでした。
これほんとに殺すつもりでやってるんじゃ・・・そんな気迫がスクリーンいっぱいに映し出され、圧倒されました。
ただ、話はどうよ?
このシーンが散々宣伝していたクライマックスのやつか!!そう思い、つばを飲み込みながらくついて観ていたわけですが、ここで終わらなかったんですね~。
そりゃあそうだ、ここで決闘して勝負がどうなろうと、二人とも何も解決してないじゃないか。
そう納得したにもかかわらず、その決闘シーンに集中力全てを注ぎ込んでいたからか、その後の話がだんだんどうでもよくなってきてしまいました。
いかんいかん!まだこの緊張した場面は続くんだ!しっかり見届けなくては・・・むむむむむ・・・。
ああ、長いな・・・話が・・・
とうとう私の集中力は持たず、全然話が入ってこなくなる始末。
そもそもこの作品、2時間も要する話なのかと疑問に思いながら見ていました。
ただでさえ重苦しい内容なのだから、緩急をつけるとか、物事をシンプルに伝えるような配慮はないのか。
融が研吾の家にたどり着くまでのシーン要りますか?同窓会のシーン要りますか?
つーか、同窓会やるときに研吾がああなってるの誰も知らずに呼んでるのおかしくないですか?カズノという存在要りますか?あのどうでもいい立ち位置の女のために前田敦子を使う理由ありましたか?
とアレコレ突っ込みたくなっていたのも事実。原作を知らないので、もしかしたら忠実だったのかもしれないし、余計な脚色をしたのかもしれない。
だからこういう考えは間違いかもしれない。
でもですよ、研吾の父がああなってしまい、自暴自棄になってしまった研吾を今でも心配しているのなら、あの父の手紙をなぜ今見せるのか。
もちろん死んだから見せられるってのもあるでしょうが、それならそれで光邑先生はもっと研吾に対して、色々できることがあったんじゃないだろうか。案外ほったらかしにしてたんじゃないの?
融のような逸材が現れるのをずっと待ってたってこと?剣で脅かす奴じゃないと研吾は乗り越えられないってわかってたってこと?
はっきりいってこの疑問はどうでもいいことだし、お前全然理解してねえじゃん、といわれても仕方のないことなんですが、いかんせん集中力が切れてしまったのが完全に仇となり、どうでもいいことが頭の中でいっぱいになってしまってました。
ラストシーンの戦いもですね、雨の中の決闘シーンと比べると大したことなく見えちゃうんですよね。そこまでの二人の顔つきはめちゃめちゃいいんですけど。きっとこの対比が素晴らしいんでしょうけど。自分には響かなかったなぁ。
これが日本映画史に残るクライマックス?いやいや言い過ぎでしょと。
最後に
初めての熊切作品は、役者の演技はすごいけど、話は特にこれといって面白いわけでもつまらないわけでない、むしろ好きな部類ではない、そう私の中のデータベースに記録されてしまったように思えます。
とにかくですね、二人の演技には大変満足しました。これはいい収穫でした。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10