フォードVSフェラーリ
第92回アカデミー賞 録音賞、視覚効果賞受賞!!!
僕、自宅で映画を鑑賞するときに必ずお菓子を食べながら見るんですよ。
子供の頃さ、よくおばあちゃんちとか、友達の家に遊びに行くとよく出してくれるお菓子で、それに妙な執着心があって、大人になった今でも欲してしまうんですよね~。
「ルマンド」ってお菓子なんですけど。
最近じゃアイスにもなってて時代に生き残ろうとしてる感に思えてしまうんだけど、なんだかんだでそのままの状態の方がうまい!って。
・・・映画の感想なのに、なぜこの人はお菓子の話をしてるんだろう、そう思う方も多いと思います。
そうなんです、今回の映画、ルマンドではなく「ル・マン」の話です。
・・・駄洒落です。
ごめんちゃいw
それが言いたいだけです。
じゃあル・マンて何?ルマンドの方しか知らない!ってなると思うんで説明すると、24時間耐久カーレースっていう世界三大レースの一つになっている歴史あるレースなんですけど、各自動車メーカーやレーシングチームにとってはここで優勝することは非常に名誉なことなんだそう。
そのル・マンで当時絶対的王者だったフェラーリを倒すべく立ち向かった2人の男の話、それが今回の「フォードVSフェラーリ」なんですね~。
実は僕ですね、2019年の東京国際映画祭で今作を鑑賞しまして。
冒頭から感想言っちゃいますと、バチクソ面白かったんです!!
仲良くさせてもらってるMachinakaさんと、ボクテクンも会場で合流して見たんですけど、見終わって再度合流した時に3人でハイタッチしましたからw
で、Machinakaさんと二人で居酒屋言って感想語り合ったんですけど、あ~、フォードVSフェラーリすげえ~・・・しか言ってないっていうw
それくらい語彙力吹っ飛ぶほどの感覚で、ずっと脈を打つような、高い心拍数を保つような、アドレナリンドクドクな映画でした。
詳しい感想はこの後ってことで。
早速どうぞ!!
作品情報
1960年代半ば、アメリカの自動車メーカーフォード・モーター社から、モータースポーツ界の頂点に君臨するイタリアのフェラーリをル・マン24時間耐久レースで勝利しろ、という途方もない仕事を請け負った二人の男の実話を映画化。
当時達成不可能とも言われた無謀なミッションに、命の危険さえ顧みずに夢を追い求め、不屈のプライドというエンジンでひたすら加速していった男たちの奇跡のような物語を、これまで数多くの「男のドラマ」を手掛け心を揺さぶらせてきた監督の、こだわりにこだわりぬいた映像や音楽によって、この上なくパワフルでエモーショナルな物語を実現させた。
この物語に、このキャリアにして初の共演となった2大ハリウッドスターの巧みな芝居と掛け合いが加わることで、安心感はもちろんのこと、徐々に深まっていく友情がクライマックスで大量の涙を誘うことだろう。
そんな2人のブロマンスな物語は、今何かに立ち向かおうとするもの、または再起をかけようとしている者たちに、圧倒的な情熱と勇気と生き様を与えてくれるに違いない。
2020年最初の新作映画に相応しい、熱い、熱い、男たちのドラマを目に焼き付けよ!
あらすじ
気鋭のカー・デザイナーとして活躍するキャロル・シェルビー(マット・デイモン)のもとに、アメリカ最大の自動車メーカーフォード・モーター社から思いがけないオファーが届く。
それはル・マン24時間耐久レースで、モータースポーツ界の頂点に君臨するイタリアのフェラーリ社に勝てる車をを作ってほしいという途方もない依頼だった。
その背景には、フォードの会長である、ヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)の憎悪にも似たフェラーリへの対抗心があった。
フォードでマーケット戦略を担当するリー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)は、若い世代のユーザーを魅了する早くてセクシーな車を売り出すべきだと フォード2世に進言し、フェラーリ社の買収計画を進めてきた。
ところが、契約成立直前、レース部門を手放したくない創業者のエンツォ・フェラーリ(レモ・ジローネ)が態度を翻して交渉は決裂。
エンツォの傲慢な振る舞いに激怒したフォード2世は、打倒フェラーリに燃えて新たなレースカーを作るよう命じ、それを受けてアイアコッカはシェルビーに白羽の矢を立てたのだ。
1960年から直近の65年までル・マンを6連覇中のフェラーリは、モータースポーツ界の絶対王者である。
しかも悪天候に見舞われようと昼も夜も24時間ぶっ通しで過酷なコースを走る車には、並外れたスピードと頑丈さが要求される。
それでも❝フォード❞の本気を感じ取ったシェルビーは、不可能とさえ思えるオファーを受諾した。
かつて1959年のル・マンにアストン・マーチンで参戦し、アメリカ人レーサーとして初めて優勝した経験を持ちながらも、心臓の病によって無念のリタイヤを余儀なくされたシェルビーの胸の奥底には、今も尚レースの世界への熱い思いが燻っていた。
次のル・マンまでわずか90日しか準備期間しかないシェルビーが真っ先に足を向けたのは、凄腕のイギリス人ドライバー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)のもとだった。
自らが営む自動車修理工場を国税局に差し押さえられ、生活が行き詰っていたマイルズは、妻モリ―(カトリーナ・バルフ)とひとり息子ピーター(ノア・ジュブ)にも背中を押され、シェルビーの無謀な挑戦に加わることを決意する。
こうしてシェルビーとマイルズは史上最高のレーシングカーを生み出すため、フォードGT40の抜本的改良とテストを重ねていく。
しかし妥協を知らないマイルズの歯に衣着せぬ言動は、フォードのレーシング部門の責任者に就任した副社長レオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)の反感を買ってしまう。
マイルズを除外しようとするビーブの思惑を察したシェルビーは。巧みな機転を利かせてフォード2世に直談判し、ミッション達成に必要不可欠なマイルズを守ることに成功。
レースへの純粋な情熱を共有するシェルビーとマイルズは、いつしか固い友情で結ばれていた。
やがて前哨戦のレースで結果を出したシェルビーらは、いよいよ決戦の地、フランスのル・マンに乗り込んでいく。
しかし、マイルズが乗り込んだフォード1号車がフェラーリとの壮絶なデッドヒートを繰り広げる中、理不尽な大企業の論理を振りかざすビーブがまたしても横やりを入れてくるのだった・・・。(HPより抜粋)
監督
今作を手掛けるのはジェームズ・マンゴールド。
「ナイト&デイ」や、「ウォーク・ザ・ライン」、「ウルヴァリン」などのヒットメーカーであると同時に強い作家性とこだわりを持つ監督だと思います。
その職人気質な映像へのこだわりは今作でも十分に感じられることでしょう。
また彼の作品では、人間の本質をしっかり浮きだたセルドラマ性も見事ながら、ユーモアのバランスも忘れていない作りで、誰もが楽しめる作品を世に送り出しているように感じます。
そんな彼が今作で込めたメッセージは、「友情の価値」についてだそう。
60年代、技術がまだ現在よりも進歩していなかったころ、人間と人間の持ちつ持たれつな関係が重宝されていたそうで、そこで築き上げた信頼関係が幾多の壁を乗り越えられることを強く描きたかったと語っています。
前作「LOGAN/ローガン」でも男の生き様を圧倒的画力で描いただけの手腕があることから、今作も男の泥臭くも掴む勝利と諦めない強さを惜しみなく描いており、その渋さが「男のドラマ」を際立たせているので、その辺も注目してほしい所。
またデジタルが主流の現在の大作映画とは違い、本作の魅力を十二分に発揮するために、アナログでリアリティのある作品づくりに尽力したことも語っており、死と隣り合わせの現場でどんな奇跡を二人が起こすのかを伝えることに重きをおいたそう。
こういうこだわりが観衆の心に響くんですよね。
監督に関してはこちらをどうぞ。
登場人物紹介
- キャロル・シェルビー(マット・デイモン)
1950年代後半に敏腕レーサーとして名を馳せるが、心臓の異常が判明して引退。その後、カーデザイナーに転身して成功をおさめ、スポーツカー製造会社シェルビー・アメリカンを設立する。ルマンなどでの過去の実績を買われ、フォードから新たなレースカーの開発を任されるが、幾多の苦難に直面していく。
- ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)
イギリス出身の型破りなレーサー。今はアメリカで小さな自動車修理工場を営んでいる。フォードからのオファーを受けたシェルビーと手を組むが、極端に怒りっぽい性格が災いしてフォードの重役レオ・ビーブと対立。それでもレーサーとしての腕前は抜群で、同じ目標を共有するシェルビーと友情を育む。
- リー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)
フォードでマーケティング戦略を手掛ける切れ者。フォードの経営を立て直すには、若者にアピールする車を売りだすことが重要だとフォード2世に訴え、フェラーリの買収話を進める。しかし交渉は成立寸前で失敗し、自前のレースカーの開発をシェルビーに託すことに。
- ヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)
創業者の祖父ヘンリー・フォードが大企業に育てあげたフォード・モーター社を受け継ぎ、1945年に社長となり、1960年に会長に就いた。買収話を蹴ったエンツォ・フェラーリ並々ならぬ敵対心を抱き、莫大な資金力にモノを言わせて、ル・マンでフェラーリを破るよう号令を下す。
- レオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)
フォードのモータースポーツ部門を統括する重役。 ケン・マイルズの傍若無人な振る舞いに不快感を抱き、フォードのレーサーとしてふさわしくないとみなした彼をチームから外そうと画策するが失敗。ル・マンでもシェルビーとマイルズに無理難題を押し付ける。
- モリー・マイルズ(カトリーナ・バルフ)
ケン・マイルズの妻。家族の将来に不安を感じながらも、無鉄砲な夫を心から愛し、見かけは可愛らしい反面、夫を激しい口調で叱咤する勝気な一面も持っている。
- ピーター・マイルズ(ノア・ジュブ)
ケン・マイルズの一人息子。レーサーである父親の影響で、幼いころからモータースポーツの世界に親しんできた。常に慕っている父親のル・マン挑戦を、母親モリ―と共に応援する。
もうすでに冒頭で感想に触れてますけど、どこがどのように面白いのかあれこれ語っていきますね。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
既に2020年ベスト級!!
2時間半の長尺があっという間の体感時間!!
最高に熱い、熱い、熱い男のドラマでした!!!
以下、ネタバレします。
やったぜ!マンゴールド!!
はい、冒頭で書いた通り、最高の映画でした!!
マジで熱い映画でした!!
交渉と協調に長ける社交力がありながらも、熱い気持ちも常に持ち続けるシェルビーと、とにかく無心で車の機能の向上と絶対に勝つという野心で挑む暴れ馬マイルズという水と油のような性格のふたりが、幾度も衝突しながらも心の根っこで信頼を深めていくことで目標を達成していくバディ・ムービーであると同時に、7000回転(エンジンの回転数)という当時未知の領域だった速度の世界を体感させてくれるカメラの位置や、そこでドライバーが見た景色、ガチンコのクラッシュの連続、さらに乗っかってくるエンジン音、その上に緊張感を煽ってくる劇伴(これが最高)によって、劇中のマイルズやシェルビーと同じような心拍数を体感でき、こっちの鼓動も7000回転、いや1万回転は行くんじゃないかというほど、俺たちのハートビートをフルスロットルにさせてくれる映画でございました!!(ぶっちゃけ8割言い終わったw)
あの~少年ジャンプあるじゃないですか。
あれっていつも時代も「努力・友情・勝利」を理念に掲げたマンガを僕らに与えてくれてて、それで育った部分が強いせいか、やっぱりこの3つの要素を含めた男のドラマは、いつ見ても刺さるというか、感化されるというか、歳をとって失いかけてた情熱を呼び覚ましてくれる作品に出合うと、大体こういう感情が爆発するガキンチョ脳になってしまうわけで、その点において今作はもう僕とベストマッチングですよ。
これが女性だったら最高のベストカップルになるんですけどね~ってそういう話じゃないかw
またこれ2時間半あるんですよ、上映時間。
まぁ時と場合によりますけど、それだけ長いとどこかでだらけちゃう、中弛みしちゃう部分てあるじゃないですか。
これね、一切ないです!
あっという間です!!
それだけこの映画には、僕らに迫力ある体感を与えてくれる演出が山ほど施されていて、それによってすごく没入できる仕組みになってるんですよ。
劇中では数年の時間が流れてるはずなんですけど、それを忘れさせるような編集で、どんどん次のエピソードへ行くんだけど、人物描写や関係性の変化、それに伴う心理描写を損ねるようなことは一切してないし、そこで時間配分を調整した結果、クライマックスでのル・マンレースに多くの時間を注いで、レースのドキドキを味あわせてくれるんですよ。
しかも、ル・マンて同じコースを何周も走るレースなんですけど、同じ景色にもかかわらず、ちゃんとそれも分かったうえでドラマチックにさせてるんですね。
何が良いって、敵はフェラーリだけじゃなく、ビーブっていうクソ副社長もいるわけで、そんな中でシェルビーとマイルズがどう判断していくか、加えて、レース展開もどう運んでいくかっていう、ギリギリの瀬戸際の駆け引きもまたたまらないっていう!
そういう意味では、もうマンゴールド様様でして、感謝ひとしおでございます。
池井戸潤的サラリーマンドラマ
ちょっと踏み込んだ話をすると、これって単純な「お仕事映画」でもあるんですよ。
簡単にいっちゃえば、昨今のTVドラマでの一つのトレンドとも言える「池井戸潤原作」ドラマのような。
大企業の中で奮闘するサラリーマンが、プロジェクト成功に向かって、苦悩と葛藤を繰り返しながら、仲間の信頼を経て実現させていく、みたいな。
実際、映画館での今作の予告、池井戸潤原作ドラマのナレーションでお馴染み松平定知さんがナレーションを務めていて、喋っている内容もまさに池井戸原作ドラマのアレを思わせる感じになってるんですね。
これはきっと宣伝担当の人が、キチンと映画の概要を理解したうえでのナイスな宣伝方法だなぁと、予告を見ていて感心した記憶があるんですけど、これで興味持ってくれる人がたくさんいたらなぁと。
ヒットしてくれないかなぁと。
じゃあどのあたりが「お仕事映画」なのかっていうと。
マイルズは自分の自信と可能性を信じているから何かと気に入らないことがあれば上と衝突しちゃうやつで。
まぁこれが平社員みたいなやつだとしますよね。
そんなマイルズをうまくコントロールするのが、シェルビーなんですよね。
お前の言いたいことはわかる、俺もお前のことを信じてる、だからとりあえずここは俺に任せろ、責任は俺が取る、みたいな感じで自分が連れてきた最高のドライバーをうまくなだめる。
そんなシェルビーは、完全に企業の上の人とマイルズに挟まれて苦悩する、中間的な立場。部長と課長みたいな。
部下がやるプロジェクトを温かく見守りながら、ちゃんと上にもうまく伝え、潤滑に事が運ぶように調整する、みたいな役目ですかね。
上にお伺いを立てたら、今度は下にも配慮する、結構大変な役職。
で、フォード会長がまぁ社長ですわな。
企業の業績を上げるために何をするべきかを、しっかりマーケティング部長にリサーチさせるけど、劇中では買収失敗よりもバカにされたことに腹を立て、これまで前例のないやったこともないプロジェクトを会社全体でやる方向に。
やべえうちのボスがまた無茶なこと言い出した・・・って弱音吐く奴は意外と少なく、それだけフォード会長はおっかないってことなのか、それとも頑張りゃそれなりの給与がもらえたのか。
にしても無理難題で、あとのことは部下に任せっぱなしで、失敗したら当事者呼び出して、なぜおまえがこのプロジェクトを任されてるんだ?とか言われる始末。
僕ならビビり倒して、すいません辞めます…っていっちゃうくらい圧がパない。
しかも、これまでシェルビーの肩を持ってくれたアイアコッカが担当から外れ、会社ファースト、いや会長ファーストの腰巾着ビーブが、気に食わねえ奴がいるからと、余計な邪魔ばかりしだしてくるわけで、このあたりがもう会社あるあるでもあるというか、池井戸潤あるあるでもあるというか。
もちろん会社として何としてでも成功したいってのはわかる。
だけどその過程でつまんない横やりとか、しょうもない意地とかでプロジェクトがうまくいかないのは、やはりあってはならないというか。
組織の中にはまぁ派閥とかもあるだろうし、下請けのこともあるだろうし、何かと帳尻だったり顔色伺いとか大変ですよねぇ。
ほんとねONE TEAMで成功させてほしいってもんですよ。
でですね、お仕事映画、まぁ会社内映画とでもしましょう。
これをですよ、監督がいる映画ビジネスに置き換えても当てはまるなぁって思うんです。
恐らく監督はマイルズでしょう。
俺はこういう映画を撮りたい!それには資金が要る!あの俳優がいる!あのシーンがいる!って、理想を掲げるわけです。
よし分かった!君がやりたいように何とか資金を集め、上にかけあってみる!あの役者にも声をかけてみよう!ってのが、製作プロデューサー。シェルビーですね。
で、そんな映画に客が入るのか?失敗したらどうなるかわかってるのか?あのシリーズのリメイクの方が売れるんじゃないか?ってなってしまうのが配給会社。まぁフォード会長ってことにしましょう。
こう置き換えるとまた今作を違った見方で出来るのではないでしょうか。
如何にクリエイターが今描きたい手掛けたい映画が作れていないのか、できたとしても社内試写でボロクソ言われれば作り直したり、最悪お蔵入りもあり得る。
そんな映画業界で、何とか自分たちがやりたい映画を、上にお伺い立てたり市場のニーズに沿って作らなければいけない、とても苦しい立場なのかなと。
でもですよ、それでも仲間を信じ、可能性を信じて挑戦すれば、今作のような作品が完成し、今やシリーズものリメイクものアニメ実写化で客の「好き」を搾取ばかりするDの帝国の水面下での洗脳戦法に負けず、世界中で大ヒットする結果となり、リスクが高いとされるオリジナル作品、しかも大作でもちゃんと観衆に届くことを証明してくれた作品になったわけですよ。
だから映画内でも現実でも監督は成功した、と言える結果になったんじゃないかと。
敢えて残念なのは、これを製作することを許した20世紀FOXがDの帝国に飲み込まれてしまうという…。
まぁFOXもリメイクやシリーズものばかりだったからなぁ…。
企業のトップとマイルズに板挟みになりながらも、自分の信じた仲間たちと勝利をつかもうと危険な賭けに出るシェルビーの姿は、ドキドキもので爆笑モノですw
結局は指揮するトップにどれだけ自分たちの情熱をぶつけ理解してもらえるか、なのかなぁ。
なかなかその機会を与えてもらえないから大変なんだろうけど。
現代に訴えたい「挑戦」
今や企業も個人も守ることを優先し、攻めることをしていない時代。
そうしなければ破滅の一途をたどってしまう時代。
世界的に経済がうまく回っていない状況は、企業にリスクを負った戦略や研究、モノづくりにまで影響を与え、潤沢な資金を用意できずクリエイターファーストよりも市場ファーストな面が強く反映されています。
それは個人の心情にも多く関わっていき、リスクを負って挑戦することよりも、現状維持こそが将来を安定させる近道のように変わっていってしまいました。
また何によっても数字やデータが成功するうえで大事な部分であり、さらにはデジタルな技術の正確さに重きを置く時代に移り変わりました。
しかし人間が暮らす社会において、機械や数字よりも信じなければいけないのは人間であり、そこから生まれる信頼関係は、決して数字やデータ、デジタル技術では測れないものだと思います、
今作は今とは違い、絶対に勝ち目のない戦いに挑み続けることの素晴らしさを描き、勝利をおさめるためには互いに命を預け信じることがどれだけ価値のあるものなのかを映し出した作品だと思います。
また劇中でシェルビーに対し「これは戦争だ」と語るフォード会長の姿がありました。
それはきっと第二次世界大戦時に大衆車から高級車まで製造し、各家庭に親しまれる国民的自動車メーカーとなった過去から、フォード=アメリカであることを思わせ、レースにおいても王者に輝くフォードこそ、アメリカこそが世界で最も強く逞しい国なんだと、会長が言っているようにも考えられます。
あの当時のアメリカに戻ろうというメッセージにも感じるし、当時の時代を懐かしむような作品にも感じられ、さらには無謀な挑戦だとしても怯まないタフさがアメリカにはあるはずだ、そんなことを言いたい映画でもあったのではないでしょうか。
最後に
冒頭でマイルズがレース直前で調査員と揉めるシーン。
ここでマイルズのめんどくささと気性の粗ささとレースへの情熱を掲げているかがわかり、そこに仲裁に入るシェルビーの的確な交渉力、さらにはそれがきっかけで一触即発になる二人、というその後の展開を瞬時に見せる演出がうまいんですよね。
またマイルズの奥さんのキャラクターもよくて、マイルズとシェルビーが取っ組み合いのけんかをしているのを、折りたたみいすに座って眺めたりするユーモアを見せたり、夫婦でドライブ中に、レースドライバーを打診されたことを黙っていたことに激高したり、マイルズが正規ドライバーに選ばれなかったときに寄り添って勇気づける姿など、決して影にならずにマイルズと共に人生を歩むような対等な関係になっているのが素敵でした。
他にもマイルズ親子がレース場で語る姿に美しい夕日がかぶさるのもいいシーンだし、レースで7000回転を超えるタイミングをどこで使うかの駆け引き、そこでフェラーリを向き去る時のスローモーション&マイルズのドアップ!たまりません!
あ、あと大事なこと書き忘れた!
今作、音楽が最高です!
劇中で使われている楽曲が、60年代のゴリゴリのロックンロールってのもいいんだけど、僕が感激したのはインストの劇伴。
マルコ・ベルトラミ(今回初めて名前聞きました・・・)の手掛けた音楽がとにかく最高なんです。
鑑賞しながら抱く緊迫感や緊張感、高鳴る心拍数は、この音楽の効果が大半を占めているといってもいいほど。
当時のカントリーやロック、ブルースなどではあるものの、古臭さを感じない音楽になってるし、もともとホラー映画の音楽を手掛けてきた実力から、不協和音をうまく使ってるんですよ。
さらに!「ル・マン66」というレースのクライマックスで流れる曲は、ドラムのタム回しとサックス隊が、拮抗していくレース展開を煽るかように、激しい音のぶつかり合いを奏でるダイナミックな構成で、そこに薄くギターのストロークでかき鳴らすことによって疾走感を与え、ラスサビではそこに半音ずつコードを上げていく進行に、回転を上げていくエンジン音を思わせる音色を加えることで、レース終盤のデッドヒートを想像させるアレンジになっていて、さらに緊張感を高めていくんです。
サビを終えた後のブルージーなーギターの音色とマイルズの顔が重なる瞬間は、速度のン回を突破した者しか味わえない世界へいった感覚になれる、最高に極上な音楽でした。
あ、最後と言いながら長くなってしまったw
とにかくシェルビーとマイルズの絆と挑戦に思いっきり熱くなれた作品でした!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆☆★9/10