ヘルボーイ ザ・クルキッドマン
はじめに
ギレルモ・デル・トロ監督の「ヘルボーイ」2作は、彼の作風や異形愛という思いが詰まった素晴らしいアメコミアクション映画でした。
そしてデヴィッド・ハーバー主演でリブートされた「ヘルボーイ」は、前作のキャラクターをさらに人間臭くした主人公ベルボーイが魅力的で、映画的な楽しみは前作に劣るも、それなりに楽しい娯楽アクション映画だったと記憶しています。
そして本作。
何やら前作に引き続き原作者のマイク・ミニョーラが製作と脚本い携わり、短編の中でも原作ファンから評価の高い「ヘルボーイ:捻じくれた男」を映画化したそうで、原作が持つオカルティックな内容にダークでシリアスな描写が目立つ作品でした。
ザックリあらすじ
超常現象調査防衛局〈B.P.R.D.〉の捜査官ヘルボーイと新人エージェントのジョーが訪れたのは、アパラチアの山奥にひっそりと佇む寒村。閉ざされた土地で、怯えながら暮らす村人たち。そして相次ぐ奇怪な事件——そのすべては、「歪んだ男」と呼ばれる悪魔の仕業だという。
そんな中、一人の男が村へ戻ってくる。名はトム・フェレル。二十年前、悪魔と契約し、魂を奪われたと語る彼の帰還が、呪われた因縁を呼び覚ます。
欲望に取り憑かれた魔女たち、魂を喰らう悪魔、そして決して逃れられぬ“契約”の呪い。ヘルボーイは滅びの右腕を武器に、この地に巣食う闇を打ち砕く。(公式より抜粋)
という内容。
世界で危険な蜘蛛を護送中の一行が貨物列車の中で突如肥大化した蜘蛛を相手に格闘するも、森の中に転がり落ちてしまうわけですが、なぜ蜘蛛が肥大化したのかさっぱりわからず。
ヘルボーイ曰く「この土地は呪われている」と嗅覚を働かせたことから、この土地に潜む謎を追うという流れ。
土地の人間はいかにもヒルビリーな人たちばかりで、貧困も相まってとにかく不気味だし旅人を警戒するし、何から何まで陰湿な空気がビンビン。
ホラー描写はなかなか
すると、20年前に悪魔と契約を交わしたという男・トムと共に死んだ父親を埋葬するために教会へ向かうが、盲目の神父の叫びと共に外には魔女がウジャウジャ、クルキッドマンと呼ばれる悪魔が死者を蘇らせたりと、ヘルボーイの相棒であり、初めて外で調査をするジョーにとってはあまりに刺激的過ぎる超常現象に、見る人も「うわ…」と思うほど気味の悪い描写が連発。
例えば、暗がりの坑道で無数のカラスが神父を襲って顔中突っつくとか、干からびたコーラの体内にアライグマが口の中から入り込むと、どんどん膨らんでコーラが意識を取り戻すシーンとか、トムの元恋人コーラの体内から大蛇が現れ、ヘルボーイと死闘を繰り返すとか、訪れた廃墟の屋敷内では、大量の蛆虫が湧いた腐った飯を接写で見せたりと、1分に1度は「キモ…」と思える映像を見せてくる気合の入れ様。
もちろんクルキッドマンはじめ、魔女や死者たちのビジュアルも気持ちが悪く、区rキッドマンに至ってはガタガタの歯に青白い肌、散らかった髪の毛にボロボロの衣服でありながらちょっと紳士ぶった振る舞いが最高に気持ち悪い。
見慣れてるせいか大したことないけど、そもそもヘルボーイだってデカい体に真っ赤な肌、額には折れた角が二つあるわけで、決してカッコイイビジュアルとは言えず、しっかり悪魔の様相なわけですよ。
最初こそダークヒーローとして見栄えは良くないなぁと思っていたけど、これはこれで愛着もあって好きなんですが、初見からしたらとっつきにくいし気味悪く思う人もいるよなぁと。
とにかく、過去作と比べると物語のトーンから描写に至るまで全く違う作品になっているのは一目瞭然だったわけです。
話は退屈
結局面白かったのかどうかって話なんですが、これがまぁ~退屈。
確かに原作者が製作に携わった以上、本来形にしたかった映像と内容だったのかもしれません。
そこは原作未読の俺からしたらジャッジするのは到底無理なわけですが、それ以前に映画の作り方というか、面白く見せようという気概は全く感じられませんでした。
もう全体的にセリフばかりが続くのが見てられません。
あるポイントに立ち止まって行われる会話のほとんどが、ヘルボーイがただ静観するような展開で、何か恐ろしいことが起きないと彼は動きません。
他のキャラに先陣を切らせて、ヤバくなったら銃を向ける。
そんな展開が続くからパターン化されて飽きが来ます。
また急に内面世界に話が飛んで、本筋がややこしくなる脚本も飽きさせる要素になっていた気がします。
今回2度目のリブートとはいえ、一切ヘルボーイの説明はありません。
よって初見殺しとも取れる描写ではあるんですが、別に知らなくても話はなんとなくわかる。
自分を生んだ母への情念が内面世界を作ったのは容易で、そうした過去との決別を物語の中で見せたうえで、目の前の敵と対峙するって意味は理解できるんですが、果たしてそこまで必要な要素だったのかは微妙。
変に出生の秘密をチラつかせるんだったら、ちゃんと説明すればいいのに中途半端に小出しするから余計ややこしい。
だったら潔くそんな描写を淹れずに本筋だけで話を進行すればいいのにと思いました。
その分、今回キーマンであるトムを深掘りした方が理に適ってるよなぁとも思いましたし、別行動になったジョーの尺にも当てればよかったのになぁと。
とにかくセリフばかりの応酬⇒ちょっとしたバトルのワンパターンで飽きます。
またカメラの向きも非常に気になるところ。
基本的に下からキャラを寄って映すショットばかりだったんです。
というか、全体的に被写体に近いんですよ。
引きの画が全くと言っていいほどない。
これがアクションでもそうなっているもんだから迫力が全然ない。
予算がかなりなかったというのは、クリーチャーはじめVFXの画質を見れば感じるんですが、それにしたってもっと上から撮影してみるとか、少し離れてアクション全体を捉えるとかそうした工夫があっても良かったのではと思えて仕方ありません。
終盤でのクルキッドマンとの対決も、屋内の、しかも階段の踊り場辺りで一発で終わってしまうというあっけなさで、ゴシックホラー要素はありながらも、せっかくのアクションが全然楽しめないのはガッカリでした。
ホラー要素は確かに強く、時に直視できない映像もチラチラあって楽しめはしたものの、セリフばかりの内容とワンパターンのカメラワーク、そしてアクションの無さにとにかく退屈でした。
最後に
今回特に事前準備もなく書いたので、いつもの構成にはなってませんが、気合を入れて書きたくなるような面白さもなく、とりあえず過去作全部見てきたから見るかくらいの期待値だったので、こんなもんです。
やっぱり僕が思うヘルボーイは、もっとヤンチャというか外見の怖さと強さ、そこに実は心の優しい持ち主だっていうキャラクター像が根付いてしまっている以上、こんなに黙ってスカしてたいして暴れないヘルボーイは魅力的に思えません。
原作ファンの人にとっては、これが本当のヘルボーイだ!と思えるのかもしれませんが、映画的な面白さは絶対過去作の方が良いだろってのはわかってほしい。
大体、序盤で素っ裸のまま寝かされた少年は助かったのかい?
そういうとこを御座なりにして本筋だけ突っ走ってる時点でもうだめですよ。
あとは、コーラとエフィーがややこしいですよね。
トムにとっては重要なキャラなんだけど、もっと差別化したビジュアルだったり二人を交互に出さないような搭乗の仕方とか色々やり方はあったように思います。
また音楽もワンパターンでしたかね。終始怖がらせるだけの不協和音が鳴り響いてるせいで、それが鳴っても大して怖くなくなってるんですよ。
唯一の収穫と言えば、ジョーを演じたアデリン・アドルフの美しさですかね。
暗がりの坑道での一人芝居はかなり良かったと思いますし、何よりスタイルが素晴らしい。
モータルコンバットの続編に出演してるそうなので、気になる方は要チェックですね。
実は彼女視点で物語を描けば、もっと怖かったかもしれないし、物語が分かりやすかったかもしれない。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10