きみの色
普段アニメ映画は見ない人なんですが、話題作の場合は別。
しかも今回は敬愛してやまないMr.childrenが主題歌を担当するということで、見ないわけにはいかないと。
ドラえもんの劇場版もちゃんと見に行ったほどですから。
とはいうものの、本作は私の大好物である「音楽と青春」がテーマの物語ですから、どちらかというと積極的に見たいという意識はあり、どんな感動をもたらしてくれるのか楽しみではあります。
ただアニメ映画を見る上での批評眼みたいなものは素人以下ですし、結局実写を見てるような見方でしか感想を書けないとは思うので、そこをどう距離を縮めて見れるかなという不安はありますかね。
とにかくまっさらな気持ちで見れたらいいなと。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
『映画 聲の形』「けいおん!」「平家物語」などを手掛ける山田尚子が監督を務め、『猫の恩返し』「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「若おかみは小学生!」の吉田玲子が脚本を務めた、思春期の少女たちの青春を切り取った物語。
人の色が見える主人公と2人の男女が、それぞれに悩みや葛藤を抱えつつも、バンド活動を通じて、そこでしか生まれない「色」を放っていく姿を、多様な色のような切実な感情と鮮やかな映像表現、エモーショナルなサウンドで描く。
音楽は、『映画 聲の形』『リズと青い鳥』や、「チェンソーマン」のサウンドトラックを担当する作曲家・牛尾憲輔。企画・プロデュースは、『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』など新海誠作品を手掛けたSTORY inc.、制作・プロデュースは、『夜は短し歩けよ乙女』や「平家物語」のサイエンス SARUが担う。
そして主題歌は、数々の映画主題歌を書き下ろして提供するMr.childrenが担当。
17歳という少し不安定な時代を、Vo.の桜井和寿が見事な表現で書き綴った。
ボイスキャストには、およそ1600人に及ぶオーディションから選ばれた鈴川紗由、高石あかり、木戸大聖が抜擢。
他にも声優の悠木碧、寿美菜子、お笑い芸人のやす子、戸田恵子、そして新垣結衣らが参加した。
自分は他人からどう見られているんだろう、どう映るんだろう、そんな不安に悩む思春期の人たちへ向けた、感情溢れる青春映画です。
あらすじ
わたしが惹かれるのは、あなたの「色」。
高校生のトツ子(CV:鈴川紗由)は、人が「色」で見える。
嬉しい色、楽しい色、穏やかな色。そして、自分の好きな色。
そんなトツ子は、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみ(CV:高石あかり)と、街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年・ルイ(木戸大聖)とバンドを組むことに。
それぞれが誰にも言えない悩みを抱えていた。
バンドの練習場所は離島の古教会。
音楽で心を通わせていく三人のあいだに、友情とほのかな恋のような感情が生まれ始める。
周りに合わせ過ぎたり、ひとりで傷ついたり、自分を偽ったりー。
やがて訪れる学園祭、そして初めてのライブ。
会場に集まった観客の前で見せた三人の「色」とは。(Fassion Pressより抜粋)
キャラクター紹介
- 日暮トツ子(鈴川紗由)・・・全寮制ミッションスクールに通う高校生。子供の頃から嬉しい色、楽しい色、穏やかな色など人が「色」で見える。唯一、自分自身の「色」だけは見えない。きみ、ルイと組んだバンドでピアノを担当。
- 作永きみ(髙石あかり)・・・トツ子と同じ学校に通っていたが突然中退してしまった、美しい色を放つ少女。学校に行かなくなってしまったことを同居する祖母に打ち明けられていない。毎日学校へ行くふりをしながら古本屋でアルバイトをしている。トツ子とバンドを組むことになり、ボーカル、ギターを担当する。
- 影平ルイ(木戸大聖)・・・街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年。トツ子とバンドを組む。母に医者になることを期待されているが、隠れて音楽活動をしている。
- シスター日吉子(新垣結衣)・・・トツ子が通う学校のシスター。同校の卒業生でもあり、生徒たちにとっては良き相談相手。トツ子、きみ、ルイの3人を導く。
- 百道さく(やす子)・・・トツ子が住む寮のルームメイト。温かみのある優しい自然色を放つことから“森の三姉妹”とトツ子が勝手に名付けたうちのひとり。大らかで芯が強い。食いしん坊。
- 七窪しほ(悠木碧)・・・“森の三姉妹”のうちのひとり。明るくておっとりした性格。ちょっぴり変わったものが好き。
- 八鹿スミカ(寿美菜子)・・・“森の三姉妹”のうちのひとり。一見近寄りがたそうだが、友達思いのギャル。モノマネが上手い。
- 作永紫乃(戸田恵子)・・・きみと2人で暮らす祖母。きみが退学したことをまだ知らない。
心はいつも不安定でカーテンのように揺れるけど、吹き抜ける風の心地よさを感じて、ただ今を楽しんでいたい。
桜井さんがつづったサビの歌詞がもう最高。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#きみの色 観賞。思春期の少年少女よ、心はずっと不安定でカーテンのように揺れるけど、吹き抜ける風の心地よさを感じてほしい。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) August 30, 2024
変えられないことを受け入れ、変えられる勇気を持て。
水金地火木土天アーメンなのだ!
あそこでボーンスリッピーはズルいぞ! pic.twitter.com/Gg5tz2lULM
思春期って色々悩みがちだけど、今を感じて楽しめたら最高なんですよ。
ただ、楽曲やキャラクターにはにかんでしまうけど、どうも主軸がぶれているように思えて仕方ない。
色が見える特性のオチは、誰かに見えてもらってこそなんじゃないのかい?
以下、ネタバレします。
物語としては浅く感じる。
他人の色が見えるけれど、自分の色が何色かわからない。
親の稼業を継ぐのはわかってるけど、今やりたいことを親に言えない。
学校を中退したことを祖母に言えない。
そんな悩みを抱えた3人の男女が、それぞれの『反省文」を詩に込めて奏でる聖歌を発表するまでの物語。
全体的にはオーソドックスな仲間との青春模様が詰め込まれた話だけど、どうしても緩急のない構成で、時折挟まれる細かい風景や瞬間などに目を置くけれど、それが特別アクセントになってるかと言われるとそうでもない。
個人的にはトツ子のキャラクターありきで物語が進んでいくし、彼女あってのバンドであることは明確なのに、きみもルイもあまり彼女に感謝してないように感じてしまう。
いや、感謝はしてるはずなんだけど、面と向かって「トツ子ちゃんのおかげで私たちは『変われた』んだよ」ってことを告げるシーンがあっても良かったように思うんですよね。
また舞台が「ミッション系の学校」ということで、トツ子が毎回「変えられることができないことを受け入れ心の平穏をお与えください」なんて聖堂でつぶやくシーンが挿入されるんですね。
そこに途中でシスターが、「変えるべきものを変える勇気を、そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えてください。」って続きがあるんですよと返すんです。
3人の変えられないモノと変えるべきものってのが、「黙ってたこと」だったり「出来ないこと」だったりしてくんだけど、3人が出会えたから、絆が深まったから「変えられる勇気」を持っていくという物語だったわけです。
トツ子自身2人とは立場が違うから何を変えるかってのは正直明確なモノじゃないんで分かりにくいんですけど、他の2人は明白なわけで、だからこそそのきっかけを与えたトツ子には感謝の意を伝える場があって良かったと思うんですよね。
そしてトツ子はというと、ずっとふわふわしていて何を悩んでんのかよくわからない。
自分の色が見えないなんてのは、特性を持ってようが持っていまいが、そんなの自分で決められないことだし知ったところで何が変われるんだろうと。
本当はバレエを続けたかったのか?きみちゃんともっと深い関係になりたいのか?
いやぁ~そういう悩みではないよなぁ。
で、一応学園祭での演奏後、一度でいいから踊ってみたかったジゼルの曲に合わせて、寮の庭で踊った瞬間自分の色が見えるんですけど、個人的にはやっぱり自分の色って自分では見れないモノだろうと思っていて。
そこはやっぱり誰かに「トツ子ちゃんはこういう色」ってのを言ってもらうことが、何よりの喜びだったりするんじゃないかなぁと。
一つ言えるのであれば、トツ子以外の人たちには「自分」というものがあって、トツ子自身には「自分」というものを見いだせる自信みたいなものがなかったから「見えない」状態だったのかもしれない。
それが明確にやりたい事が見つかって、バンドメンバーと秘密と自分を共有したことによって、殻を破ることができた、「変われる勇気」を手に入れたってことを描きたかったのか。
その辺は物語を見た自分としてはよく見通すことはできなかったですね。
そもそも3人が出会ってバンドを組むまでの過程が長いですし、バンド練習での挫折とかメンバー同士の諍いとか不協和音といったバンド特有のお約束もない。
きみちゃんとルイ君の間に流れる恋の始まりもなく、劇中ずっとトツ子ときみちゃんの二人だけで関係が深まっていく。
なんならなんできみちゃんは学校をやめたのかの理由も明かされない。
シスター曰く「自分で決めた卒業」と割り切ってもいいのだけど、やはり理由というのは、こちらが汲み取るモノではなく、しっかり説明があって良かったのではないかと。
きみちゃんのバックボーンにも疑問で、兄が使っていたリッケンバッカーを使うに至る部分がごっそり抜けていて、音楽をやる理由もすっ飛ばして進行してるわけで。
恐らく頼りにしていた兄の不在を埋めるための作業なのかもしれないけど、それがその後にどんな影響をもたらすのかは描かれてなく。
全て推測ですけど、やはり寂しかったんじゃないかとしか片付けられないですね、俺としては。
とにかく、せっかく3人が出会うべくして出会ったのだから、その化学反応とやらをもっとエモーショナルに描いてほしかったなぁというのが、本作の残念なところですかね。
バンドの曲はエモーショナル
やはり「音楽」を題材にした映画は、その過程も大事だと俺は思っていて、そこはお約束通りの事をして欲しいなと思うんですよね。
ギターやピアノを奏でる時の多幸感、3人で音を合わせた時の何とも言えない喜びなど、初めて挑む作業なわけだから、そこにもっと「色」をつけてほしいわけです。
どうも全体的に淡々と進んでいく節があって、せっかくできた友達との最初の演奏くtらいは、何かこちらもときめくような、思春期だからこそ表現できる姿があっても良いと思うんですよね。
曲ができた時だって、初めて自分で作曲したわけで、それをみんなが喜んだり感動するわけですから、やはりトキメキが少なかったよなぁと。
とはいえですよ、高校生でやるバンドに、ギターとキーボードとテルミンて編成がもうありえないというかw
そこはギターベースドラムでよかったんじゃねえの?とw
それじゃありきたりなのかw
その辺は俺の好みってことで置いといて、よくまぁあれだけの練習であそこまで完成度の高い楽曲が作れましたよね。
それもこれもバンマスであろうルイ君のおかげだと思います。
だいたいきみちゃんが作った曲がめっちゃ暗い曲、というかもう出だしからマイナー調の楽曲だったけど、よくあそこまでアレンジしましたよって曲で。
それに引き換えトツ子が作った「水金地火木土天アーメン」てすげえ曲だなと。
相対性理論みたいなギターリフだけで押し進んでいく曲なのに、そこにC-C-Bみたいなニューロマンティックというかテクノチックなアレンジで、ノリノリのバンドサウンドに持っていってしまう力量。
出来立てのバンドにそんな力あるんですか?wwってくらい、カッコイイ曲でしたね。
それこそ最初の曲もニューオーダーのブルーマンデーを彷彿とさせるキックの音で始まって、ディストーションだかオーバードライブ効かせたノイジーなギターストロークが絶妙にマッチしていてこれまたカッコイイ。
そんな曲のタイトルが「反省文」ていうんだからまたオツというもので。
しかし個人的に一番感動したのは、トツ子のいる寮にきみちゃんが泊まりに来たシーン。
禁止されていることを二人でコソコソやるという思春期にありがちな非行ということにあてはまるわけですが、しかしまぁカワイイ非行というか。
持ち寄ったお菓子を広げて食べたり、読みたかった漫画を二人で黙々と読んだりと、普通の事なんだけど、部外者を入れてはいけない場所でやってるっていうことで、きっと二人はちょっとしたドキドキを感じながらやってるんだろうと。
そこで流れるのがまさかのアンダーワールドの「ボーンスリッピー」。
原曲のまんま使ってるわけではなく、カバーという形で挿入してるんでしょうけど、これが意外過ぎて感動してしまいましたね。
インタビュー漁ったら、牛尾さんが「ここがトレインスポッティングでしょ!」と監督にボーンスリッピーをそのまま当てて送ったみたいで、それが採用されてしまうというw
そして語らなければならないのが、主題歌を務めたMr.children。
正直凄くマッチしてるのかというと、微妙です。
というのも、主題歌はどちらかというと初期の「KIND OF LOVE」を彷彿とさせるポップでキャッチーなバンドサウンドになってるんですけど、劇中で流れる楽曲がニューロマンティックなわけですよ。
そのギャップがデカいというか。
それでもミスチルの役割は歌詞なわけですよ。
「去年の上着のポケットに迷いは置いてきたんだ、今日からまた新しい私が始まる」っていうサビ、それこそ「変われる勇気」に値するものなのではないかと。
絡まってほどけない靴ひもは、忘れて遊んでたら知らぬ間にほどけてた、ってのも、目の前の問題に悩んだり不安になったりしてたけど、それを忘れるくらい夢中なモノを見つけたら、問題自体大したことないっていう、ポジティブなフレーズというか。
悩める時代はどの世代でもあるけれど、その隙間を縫って訪れる喜びは必ずあって、そこに目を向ければ案外乗り越えられる、それくらい思春期の悩みってのはどうにでもなるぞっていうか。
俺もバンド時代は悩みがたくさんあったけど、やっぱり演奏する時はそんなことどうでもよくなってギターをかき鳴らしたもんです。
あの瞬間だけは喜びも苦しみも悩みも全部音に変えて、吐きだしてたんだよなぁ。
いま思春期のみんなもそうして過ごしてほしいな、なんて思ったり。
最後に
物語自体には不満はあれど、トツ子ちゃんのほんわかしたキャラクター性に惹かれる分は多く、楽曲も新鮮に聞かせてもらったわけで、中々甲乙つけがたい面がありますが、やはりもっとストレートな青春を描くのなら、やり様があったよなぁとモヤモヤは残ります。
もしかしたらトツ子ちゃんは天使なのかもね。そうすれば悩みを持つ二人を近づけさせた役割としてはつじつまが合うというかしっくりくる。
そんな天使にも二人を近づけ3人で音を奏でたことによって、翼を手に入れることができた、みたいな解釈なら。
監督作品を一つも見ていないのですが、色彩感覚というか色のグラデーションは美しかったですね。水彩画にも見える、手で掴めないような具体性のない色の表現というか。
ルイ君の緑ときみちゃんの青を混ぜると水色になるんですけど、トツ子の色がそれだったら感動したなぁ。
誰か俺の色を教えてくれ!!
思春期をとうに越えてもわかんないんだ!!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10