すずめの戸締まり
「君の名は。」、「天気の子」と東宝とガッツリ組んだことで国内で大ヒットをもたらした新海誠監督。
アニメーション映画はディズニーはじめ、大作級しか見ない傾向にあるモンキーですが、ジブリの新作が未だ公開されない中、細田守監督と同様に追いかけていきたい所存です。
といっても「秒速5センチメートル」からはちゃんとリアタイで見てる監督。
当時はすごい監督がいるぞなんて言われてたけど、こんな大監督になるなんて誰が予想したろうかって話ですし、当時の俺に「今後大化けするぞw」と教えてやりたいですw
どうやら「君の名は。」から本作で3部作的な扱いになるそうで、本作はその集大成とも言える作品なのかと。
新海的ボーイミーツガール、またはガールミーツボーイ映画は、これで見納めなのでしょうか。
いや、また作るだろうw
早速観賞してまいりました!
作品情報
国境や世代の垣根を越え、世界中を魅了し続けるアニメーション監督・新海誠が次に選んだ題材は「戸締まり」。
日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女の解放と成長を、本作でしかなしえない最強の布陣で、壮大且つ繊細な冒険物語を描く。
主人公すずめの役には、1700人に及ぶオーディションによって発掘された原菜乃華を起用。
溢れる感情を声にのせるみずみずしい原石に物語のヒロインを託した。
そしてヒロインのパートナーであり、扉を閉める旅を続ける「閉じ師」の青年・草太役には、アイドルグループ「Sixtones」で活躍する松村北斗を起用。
内面の豊かさを表現する彼の演技が決め手だったとのこと。
他にも、深津絵里、松本白鸚、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介という監督作品初の大物俳優や、過去作にも出演した精鋭キャストが集結。
物語を盛り立てていく。
また音楽には3作連続でRADWIMPSとタッグ。
映画との相乗効果で歌も大ヒットした彼らに、監督が再び共同制作を依頼し実現。
君の名は。や天気の子に匹敵するキラーチューンに期待したい。
すずめが前に現る見たこともない風景、人々との出会いと別れ、驚きと困難の数々。
我々と同じく不安や不自由さと隣り合わせの日常を歩んでいくすずめが、一筋の光をもたらす。
過去と現在と未来をつなぐ、“戸締まり”の物語。
我々にどんな幸福をもたらすのだろうか。
あらすじ
九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)(CV:原菜乃華)は、
「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太(CV:松村北斗)に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。
扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。
すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。
「すずめ すき」「おまえは じゃま」
ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!
それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。
逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、すずめは慌てて追いかける。
やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。
旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所ですずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、新海誠。
コロナ禍に製作された本作は、再びみんなが外に出て足を運んで映画館で映画を堪能してほしいという思いから、大きな画面で体験するのにふさわしい物語に構成し、さらに音にもかなり力を入れたとのこと。
過去2作でタッグを組んだRADWIMPSの野田洋次郎との掛け合いは慣れた調子でありながらも緊張を保った状態で進行されたようで、今回も自信作を提供できたとのこと。
またテーマに関して、過去作でのプロモーションで全国を回った際、人が少なった場所を見かけることが多かったことから、かつて人が多かった街から人が少なくなった時、人はどうするのか、どうやって終わっていくのかという疑問から物語を構築していったとのこと。
また本作では東日本大震災について言及するシーンがあるそうで、今描かないと遅くなってしまうという思いがあったとのこと。
皆が体験したあの頃の気持ちは、時間と共にどんどん薄れていってますが、本作を通じてもう一度共有するべき案件だと語っています。
「君の名は。」でも震災を彷彿とさせる描写がありましたし、「天気の子」でもラストシーンは自然との共有を模索する人々の姿が描かれていました。
自然の厳しさを忘れない監督の最新作。
一体どんな内容になってるのでしょうか。
キャラクター紹介
- 岩戸鈴芽(CV:原菜乃華)・・・九州の静かな町で、叔母と二人で暮らす 17歳の女子高校生。広大な廃墟の中、幼い自分が草原を さまよい歩く不思議な夢をよく見る。
- 宗像草太(CV:松村北斗)・・・”災い”をもたらす扉を閉める「閉じ師」の青年。扉を探す旅の途中ですずめと出会うが、 ある出来事をきっかけに、すずめの椅子に姿を変えられてしまう。
- ダイジン・・・すずめの前に突如現れた、人の言葉を話す謎の白い猫。扉が開く場所に出没し、すずめたちを翻弄する。
- すずめの椅子・・・すずめが幼い頃に使っていた子供用の椅子。脚が1本欠けている。草太が姿を変えられてしまい、3本脚で動き出すようになる。
- 岩戸環(CV:深津絵里)・・・漁協で働くすずめの叔母。すずめが幼い頃から二人で暮らしその成長を見守るが、過保護なあまりつい口うるさくなってしまう一面も。
- 岡部稔(CV:染谷翔太)・・・すずめの地元の漁協に勤めている環の同僚。環に片想いしている。
- 二ノ宮ルミ(CV:伊藤沙莉)・・・女手一つで幼い双子を育てる、神戸のスナックのママ。ヒッチハイクをしていたすずめを拾う。
- 海部千果(CV:花瀬琴音)・・・愛媛を訪れたすずめが出会う、同い年の快活な少女。実家は家族経営の民宿。
- 岩戸椿芽(CV:花澤香菜)・・・すずめの母。手先が器用で、料理や工作が得意。環の姉でもある。
- 芹澤朋也(CV:神木隆之介)・・・草太の友人。口ぶりや振る舞いは乱暴だが友達思いな青年。愛車は赤いスポーツカー。
- 宗像羊朗(CV:松本白鷗)・・・草太の祖父。閉じ師の師匠でもあるが、現在は東京の病院に入院している。
(以上HPより)
少女と青年による戸締まりの旅。
過去と現在と未来を繋ぐ、とはどういうことなのでしょうか。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#すずめの戸締まり 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年11月7日
ちゃんと面白くて、
ちゃんと泣けました。
ちょっとツラいシーンあったけど、ちゃんと明日を見せてくれた映画でした。
俺も何かしら締め忘れしてるのかなぁ。 pic.twitter.com/qzps41pH9P
10年経ったからこそ忘れてはいけないこと。
そして明日を生きるために必要なこと。
様々な人を通じて戸締まりの支度していくすずめと草太のロード―ムービーは、きっと「忘れない」はず。
以下、ネタバレします。
相変わらずのガールミーツボーイ。
廃墟や人々から忘れられてしまった場所に現れる「後ろ戸」を占めるために、ひょんなことから「閉じ師」の草太と共に、様々な人との出会いや別れを通じて全国を回る度を続ける女子高生・鈴芽の物語は、東日本大震災をはじめとした未曽有の悲劇によって大きな喪失を抱えたまま、しっかり心の「戸締まり」をできていない人に、明日を生きるための背中を押してくれたと共に、日本きってのヒット・アニメクリエイターとしての自信と誇りを見せつけるかのような笑いと迫力と涙のエンタメ映画でございました。
冒頭12分が公開前に先行で視聴できるという超特大サービスで大宣伝を繰り広げる本作。
草太と出会い、後ろ戸を共に締め、ミミズによって起こる地震をくいとめたのち、草太を椅子に変えてしまったダイジンの後を追いかけ旅を続ける2人を描いたわけですが、個人的には非常にエンタメ映画としてすぐれていた作品だったと思います。
やはり大作で扱わなくてはいけないのは、男女という主人公であるために、絆を深めていく描写から恋愛を匂わせ発展していく過程。
大学生と女子高生という年齢差にも拘らず、同じ道を歩んでいくと共に互いが大切な存在へと心の変化を見せていく描写は、新海監督ならではのピュアさからちょっと度を越えそうな部分に至るまでどれもいつも通りの展開であった反面、安定の見せ方をしていたと思います。
年上という憧れの対象に加え見た目はイケメン、しかも年下にさん付けで呼ぶ紳士的な態度、常に優しく接するというだけで第一印象は「アリ」だったのでしょう。
しかしそんな恋に恋した「初心」な思いは、草太が背負う宿命を共に背負いたいという思いに変わり、やがて「天気の子」のように世界がどうなろうとも彼のいない世界なんて嫌だという10代ならではの発想で突き進む力強さで物語は進んでいき、「天気の子」とは違う着地点へと向かっていく様は、監督なりに前へ進んだようにも感じます。
草太もまた、年下の相手にも拘らず彼女の純粋でひたむきな思いに引き寄せられ、何時しか彼女を頼るような存在へと心境を変化させてきたわけです。
その証拠に要石(かなめいし)にならなくてはいけないことを徐々に自覚していく一方で、彼女に起こされるたびに「生きられた」ことから、彼女を必要だと思い、やが鈴芽と共に生きたいと願うようになったわけです。
ロードムービーとしても面白い。
もちろんガールミーツボーイ的な物語だけではありません。
本作は旅の物語。
女子高生の割には新幹線にすぐ乗れちゃう程度の小遣いがよくあるなぁと感心してしまうくらい、本作は中々の距離を旅します。
もちろん全てにおいて交通費がかかるような自力の旅ではありません。
宮崎から愛媛、神戸、東京、そして東北と徐々に北上しながら「後ろ戸」を閉めていくのですが、その先々で出会った地元の人たちの優しさに触れることで、鈴芽は少しずつ成長を遂げていくのです。
愛媛では原付でミカンを運んでいた同い年の女子高生・千果と。
神戸ではスナックのママをしながら子供二人を育てるルミと。
そして東京では草太の友人・芹澤と。
出会ったばかりの人にお世話になる代わりにお仕事を手伝うことになるも、その人の優しさに触れ、小さな町という狭い環境でしか見えてなかった景色が一変し、心の成長を遂げていくのです。
また本作のキャッチコピー「行ってきます」というありふれた言葉は、本作に非常に相応しい言葉だったと思います。
何よりこのロードムービーは、行って帰ってくる物語。
それは単純に宮崎から東北まで行き、帰ってくるのと同時に、当時住んでいた町へ「行って帰る」物語でもあり、あの頃の自分に「行って帰る」物語でもあるからです。
途中叔母である環が合流して進む旅路は、事をすべて終えたのち、鈴芽が立ち寄った場所へ戻り、再び彼らと再会を果たすと共に環にとっては母親代わりとして役目を果たすための「お礼行脚」の復路へと変わっていきます。
これはエンドロールで流れるので、物語の締めにほっこりさせてくれる清涼剤のような描写でもあったんですが、これがあるのとないのではエンタメ要素としてはだいぶ違うよなぁというほど必要性の高いシーンだったように思えます。
また鈴芽は幼少期に環に引き取られるわけですが、彼女は震災の被災者であり、それが原因で母親を失っていることが少しずつ明るみになります。
出会ったばかりの人や友達にも話せないほど自分の中にしまい込んでいた当時の思い出。
戸締まりをし続けていく過程で、中々入ることのできない常世に入るため、それが結果として当時住んでいた場所に帰ることや、かつての自分と向きあうことへと繋がっていき「行って帰る」物語という構図になっていたのであります。
かなり直接的な東日本大震災描写。
そして本作を語る上で画一番避けて通れないのが「震災」描写。
「君の名は。」では隕石が落下して街が消えてしまうという震災、「天気の子」では大量の雨によって街が水没してしまう震災。
これらを「僕と君」という二人だけの世界にすることで前に進んでいく締め方をしていたのが、いかにも新海誠的な作風だったように感じましたが、本作は東北で起きた震災と向き合い、自然に淘汰されてきた我々が「それでも生きたい」と願い、今を生きる人たちをを救うと共に、これまで半ば投げやりだった自分の人生をもっとまっとうに生きる決心をつける物語でした。
これは監督が一歩前に進んだことが窺える展開だったと思いますが、その分「東日本大震災」を彷彿とさせる描写がかなり直接的だったように感じます。
序盤から何度も鳴るJアラートの警告音から、防災警報が流れ続けるシーンに至るまで、何度も耳を塞ぎたくなる部分が多々ありました。
家が流され、病院に務めていた母親は恐らく津波に流され行方不明のまま死んだことになっていたのだと思います。
鈴芽自身幼いながらもその現実を理解していたとはいえ、受け止めたくない一心だった。
叔母である環が母親代わりとなってこれまで献身的に支えてきたが、鈴芽自身叔母を大切に思っている一方で、思春期も手伝ってどこか目障りであったことは事実。
早く結婚すればいいのにと思いながらも自分が重荷になってる事も理解しつつ、旅先で合流するや否や、つい言わなくていいことを互いが言ってしまうのがなんとも見ていて辛かったです。
そして鈴芽は津波によって跡形もなくなった実家を訪れ、後ろ戸を見つけ常世の中で入り、当時の街の人たちの「行ってきます」「いってらっしゃい」という日常的な会話を聞くと共に、巨大なミミズと業火に包まれた風景を目の当たりにするのです。
辺りは津波の被害によって家屋の上に置かれた漁船や、流されて倒壊した家々が立ち並んでおり、そんな中で幼い自分と対面するのです。
幼い鈴芽は母親を探す一心で、当時この常世に迷い込んでおり、涙を流しながら母親を探していたのであります。
3月11日以降黒く塗りつぶされた絵日記や、きっと助からないとわかっていながらもお母さんはきっと生きていると願う彼女の必死な姿に涙なしでは見られません。
現実を受け止められないまま当てもなく彷徨う姿に、現在の鈴芽が「あなたの明日!」と笑みをこぼして幼い鈴芽を抱きしめるシーンは、正に「未だ心のドアを閉め忘れたままの人」に送る温かいメッセージだったのではないでしょうか。
僕自身直接的な被災に遭ったわけではありませんが、当時働いていた職場はめちゃくちゃになり、帰り路のある場所では道にひびが入っていたり、毎週通っていた映画館も当面閉鎖され、日常が奪われていったことは事実。
計画停電によって辺り一面真っ暗な道を目の当たりにしたり、ろうそくの火で家族と夕食をとらなければいけないなど、精神的なダメージはある程度受けていたと思います。
また当日の報道映像で津波から必死に逃げる自動車が飲まれていく瞬間を見てしまったり、警報音が鳴る度に身構えたり、小さな地震でも過敏に反応してしまうなど、今でも少なからず当時の影響を受けている自分がいます。
正直僕以上に過剰に反応してしまう人にとって本作は辛い感情が強く出てしまう恐れもあるかと思いますが、耐性があるのであれば鈴芽の成長した姿を見て、何かを感じ取ってほしいと思います。
最後に
今回の感想は本作が大作としての宿命であるエンタメ要素がどれだけの濃度なのかを自分の言葉で感想として記してみましたが、正直言うと「君の名は。」、「天気の子」に慣れてしまったことで、またこのパターンかという部分が大きく出てしまった作品でもありました。
あくまでエンタメ作品として面白いのは確かで、これまでとは違う震災を扱い前作とは違う形で着地していく、監督としてのけじめのような作品だったと受け止めはしたものの、そこに結び付けていくまでの過程が弱いと感じたり、RADWIMPSのテーマ曲の力が前作よりも弱かったり、尺の割にガールミーツボーイ、ロードムービー、ファンタジー、疑似親子愛、震災と要素を詰め込み過ぎたせいか、きれいにうまくまとめてしまったせいで監督ならではの歪さやとがった部分がなくなってしまっていたなぁと。
これはホント好みの問題なのですが、僕は「君の名は。」や「天気の子」の方が好きですし、何ならこんな大作級のを作らずに「言の葉の庭」くらいミニマムな物語をやってほしい方なんですね。
だからこれで一旦大作とは距離を置いて、監督らしい世界の片隅で出会った男女の物語を作ってほしいなと。
偉大なクリエイターになってしまった以上、周りがほっとかないと思いますけどw
細かい点としてダイジンは可愛いながらも不気味でしたねw
寝っ転がるネコの動きが非常にリアルでしたw
あとはエヴァンゲリヲン、千と千尋、もののけ姫、魔女の宅急便をオマージュした様な演出もあったのは驚き。
監督が影響を受けた作品群なんでしょうか、それとも偉大な先輩に対するリスペクトなのか。
いずれにしてもそういう意味で集大成的作品だったのかもしれません。
昭和の懐メロばかりが流れるのも、家族そろって楽しめることを考えた結果だと思います。
それだけしかないってのがちょっとダサかったですけどw
とにかく、忘れられてしまった場所を悼み、それらとしっかり向き合い、心の扉を閉めることで明日を生きよう、そんなメッセージがこもった映画だったのではないでしょうか。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10