キングスマン3:ファースト・エージェント
「ロンドンのサヴィル・ロウにある高級テーラー店は、実はどこの国にも属さないスパイ組織だった」という設定のもと、下流家庭で不良少年として育ったエグジーが、英国紳士のハリーの「マナーが紳士を作る」という教育指導によって、一流のエージェントになっていくと同時に紳士へと成長を遂げ、終いには王女とお近づきなってしまうシンデレラストーリー、それが「キングスマン」!!
ハイテンションなアクションと狂ったヴィラン、高級スーツに隠されたガジェットなど、007をむさぼりながら見てきた人たちにとっては、どれも胸アツ要素満載の作品シリーズだと思います。
今回鑑賞する映画は、そんなキングスマンがどのようにして誕生したのかを描く「エピソード0」。
100年以上前の物語なので、いわゆる最新鋭のガジェットは登場しなさそうですが、当時の技術を駆使した武器だったり情報手段だったりは楽しみですね。
また、シリーズの主役であるエグジーは登場しないものの、彼のお父さんだったりハリーの師匠みたいな人が登場して、現代のキングスマンとつながる部分も出てくるのではないでしょうか。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「キック・アス」や「ウォンテッド」などで知られる原作者マーク・ミラーと、本シリーズの映画監督のマシュー・ボーンが「楽しいスパイ映画を作りたい」という願いによって作られた「キングスマン」。
本作は第一次世界大戦を舞台に、ロシアを裏で操る黒幕の正体を探るべく、平和主義のイギリス貴族の父子が組織を束ねミッションに挑む、「キングスマン」誕生の物語。
スタイリッシュな装いでありながら過激な戦闘で敵を一網打尽にする、まるでお祭りのようなアクションは本作でも健在。
最初から最後まで「超アガる」展開で私たちを熱くさせていく。
さらには見た目は「紳士」的なフォーマルを装っておきながら、中身はハードな要素も忘れてはならない。
過去の「キングスマン」シリーズで描かれた「ポップだけどグロ」な描写は、マシュー・ボーンだからこそできる「悪ノリ」演出であり、キングスマンならでは。
果たして第一次世界線を裏で操る黒幕の陰謀を阻止することはできるのか。
そしてキングスマン誕生はどのようにして作られたのか。
あらすじ
1914年。
世界大戦を密かに操る謎の狂団に、英国貴族のオックスフォード公(レイフ・ファインズ)と息子コンラッド(ハリス・ディキンソン)が立ち向かう。
人類破滅へのタイムリミットが迫る中、彼らは仲間たちと共に戦争を止めることができるのか?(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、マシュー・ボーン。
実はこれまで作ってきた映画のほとんど(キック・アスもX-MENも)が「スパイ映画」ってくらいスパイになりたい人・マシュー。
ずっと「007」の監督を狙ってたのに、いつまで経ってもオファーが来ないから、自分でスパイ映画作りましたっていう。(ぶっちゃけやってほしくないけどねw)
片親で育った監督は、父親が「ナポレオン・ソロ」で有名なロバート・ボーンという俳優だったと思い込んでたそうなんですが、DNA鑑定したら本当の親父さんが「ガチの貴族」だったって逸話も、キングスマンに反映された設定だったりするんですよね。
下流階級だと思ってたら、上流階級でしたっていう。
こういう偶然と、監督の熱意によって作られたのがキングスマンだったりするわけです。
ただ、3作も製作されるとは思いもしませんでした。
1は大好きなんですよ。
でも前作のゴールデン・サークルは「秒でアガる」オープニングシーンに大興奮したけど、1ほどの興奮はなかったなぁと。
エルトン・ジョンが本人で出演したのは大爆笑だったけどw
その後の物語も製作されるそうですが、まずはこの誕生譚を楽しみたいと思います。
こっちの続編も楽しみや!!(やるのかな・・・)
キャラクター紹介
- オックスフォード公(レイフ・ファインズ)
≪平和を願いスパイ組織を結成した最強の英国紳士≫
戦争で平和は実現しないと考える、平和主義のイギリス名門貴族。
愛する息子コンラッドが戦地へ赴こうとをするのを強く諫めるが、自身は自らの諜報網や戦闘力を駆使して人知れず謎の教団と戦う。
スパイ組織”キングスマン”の礎を築き、やがて、その世界へ誘うことになる。
- コンラッド(ハリス・ディキンソン)
≪正義に燃えるオックスフォード公の息子≫
幼き頃に母を亡くし、父と執事たちに愛情をこめて育てられた。
国を憂い、戦地へ行くことが自分の使命と信じる正義感にあふれた青年だが、父オックスフォード公は彼を愛するがゆえに反対。
そんな父に反発しながらも、共に”キングスマン”への道を歩む。
- ショーラ(ジャイモン・フンスー)
≪かつてアフリカの戦士だったオックスフォード公の右腕≫
オックスフォード家に仕える執事。
オックスフォード公とは主従の関係にありながらも友情関係にある。
戦闘に長けた歴戦の雄。
- ポリー(ジェマ・アータートン)
≪スパイ組織を支える無敵の家庭教師≫
オックスフォード家に仕える使用人でコンラッドの世話役だが、実質的には家の主人的な発言力と存在感を放つ。
射撃の腕はピカイチ。
- ラスプーチン(リス・エヴァンス)
≪大国の皇帝さえも操る不死身の怪僧≫
謎の狂団からロシアに送り込まれた刺客で、人智を超えた戦闘能力を誇る。
ロシア皇帝の家族にまで取り入り、ロシアの実権を握るほどの影響力を持つ。
(以上HPより)
英国紳士たちのスパイ組織はどのようにして誕生したのか。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#キングスマンファーストエージェント 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年12月24日
パッとしねえ。 pic.twitter.com/q1Z1ls5yFh
父と子の絆のドラマであり、戦争映画。
俺はスパイ活動がもっと見たかったの!!
以下、ネタバレします。
あのバカっぽさはどこへ…
1914年の第一次世界大戦下を舞台に、戦争の意図を裏で轢いている黒幕探しのために、貴族階級である伯爵とその息子らが秘密裏に行動していく姿を、「平和」とは何かについてを親と子のドラマとして綴ることで、これまでとは一風変わったシリアス描写で終始攻めてはいるものの、キングスマン誕生譚にしてはいささかポップさに欠けた残念な作品でした。
マシュー・ヴォ―ンは歴史的な戦いを物語に組み込む巧さは「X-MENファーストジェネレーション」を見た方ならわかると思う。
あれもまたミュータントという架空のキャラを使って戦争を未然に防ぐための諜報活動を描いた、列記とした「スパイ映画」だ。
本作もイギリス、ドイツ、ロシアを絡めた「第一次世界大戦」を軸に、表向きには「平和主義」のオックスフォード公がどうして「キングスマン」を設立したのかをドラマチックに描いてる。
レーニンやラスプーチン、マタ・ハリにハヌッセン(まさかのダニエル・ブリュール!)、プリンツィプなど、実在した活動家やスパイなどが登場したり、当時をイギリスを統治していたジョージ5世やドイツのヴィルヘルム2世、ロシアのニコライ2世(全員トム・ホランダーが演じるのはウケた)といった者たちまで登場。
実際にジョージ5世とヴィルヘルムは従兄だし、ニコライの息子を祈祷で救ったラスプーチンがニコライ家に居座っていく過程も史実に基づいたもの。
プリンツィプがフェルディナンド大公を殺害したサラエボ事件から、ドイツ、イギリス、ロシア三国の均衡が崩れ始め、戦争は徐々に拡大し始めていくわけですが、その裏でこうした者たちを使い、ロシアもドイツも丸め込み、さらにはアメリカまでをも操るという算段。
紳士なんてのは所詮、汚い事をして財を成した「荒くれ者」に過ぎない、本当の紳士は「平和」を求めることだと、植民地を確保するために暴力で突き進んできた先人たちへの批判を語るオックスフォード公が、それでも戦争を止めるにはあるきっかけによって勇敢さが必要と目覚め、諜報活動に人生を費やしていく過程は、まさに「ファースト」に相応しい作品だったように思える。
世界を平和にするためには国に属することなく中立的な立場として行動をしなければいけないと、アメリカ合衆国大使(スタンリー・トゥッチだったよびっくり)や息子コンラッドと運命の出会いを果たしたアーチ―(アーロン=テイラー・ジョンソンだったよびっくり)、ジョージ5世らの署名によって「キングスマン」設立で幕を閉じるわけだが。
真面目か。
真面目すぎて話が固い。
しゃれたジョークもないし、公爵を中心に上の階級共が真面目に戦争や平和を語る。
執事のショーラや教育係のポリーもクセのあるキャラだが、いかんせん笑いを生むようなやり取りは皆無。
息子のコンラッドに至っては「国のために戦争に行きたい」と駄々をこねてばかりで、キャラとしては薄すぎる。
唯一の救いだったのは怪僧ラスプーチン。
長い髪をなびかせながら黒幕にタテを突く姿から始まり、主賓を務めたパーティーではオックスフォード公にFワードを連発。
如何にもビッチな美女と熱い口づけを交わしながら飯を食い、オックスフォード公がケガした部分をなめ回し、直前に頬張ったタルトを野蛮に食い散らかした結果嘔吐する一連の流れは笑わずにはいられない。
バトルシーンも楽しい。
チャイコフスキー序曲「1812年」をアレンジした楽曲に乗せて、コサックダンス仕込みの華麗なステップでショーラの剣術を交わし、オックスフォード公の剣裁きを胸でまともに喰らってもゾンビの如く何度も立ち上がる姿は、これぞ怪僧と言える説得力があった。
しかし彼が登場し戦い命尽きるまでの姿は、何と物語の序盤。
予告で描かれていたラスボス感たっぷりの彼の姿に、彼が黒幕なのだろうと誰もが思った予想は、まさかの展開で幕を閉じることに。
では一体誰が黒幕なのか。
坊主頭の後ろ姿で任務を失敗し続ける手下を何度も罵倒し、頭突きと交尾しか頭にないヤギたちを銃剣で幾度となく殺す姿から、007のブロフェルドのような大物感を出していたが、正直ラスプーチンよりかは何倍も小物だったことにがっかり。
イギリスとスコットランド間で長い間揉めている歴史をここで放り投げてきたモノの、第一次世界大戦を下地にした本作の中では非常に影が薄く、動機が弱すぎてしまっているのと同時に、ラストで急にこの問題をぶつけてくるまでの過程がごっそり抜けており、オックスフォード公が掲げる「平和」との対立が成立出来てないように思う。
そもそもある人物の側近として動いていた者が、どうやって007のスペクターのような大きな組織を束ねるまでになったかが描かれておらず、勿体ぶって出てきたくせにラスボスとしての強さも権力も全く見えてこない。
キングスマン2作は下級階級だったエグジーが「マナー」を学べば階級なんて必要ないというジェントルメン精神を叩き込まれたことによって成長していく物語から、命を落としたはずの親代わりともう一度世界を平和に導きたいという思いが込められたドラマ。
その誕生譚は、下級階級の子供が親の教えに沿ってキングスマンとして活躍するパターンではなく、息子の突然の出来事によって親が気付かされていくというモノに変わっていた。
これまでのパターンを変えて挑んだ作品だったが、正直レイフ・ファインズを主演に最後まで引っ張っていくのは大作としては少々物足りない。
やっぱり父の意志を継いでキングスマンを設立する流れの方が、見てるこっちとしてはグッとくるものがある。
一番ダメなのは結局これが「戦争映画」になってるところだろうか。
第一次世界大戦下が舞台である以上避けて通れない部分ではあるし、コンラッドが親父とミッションを遂行しても尚「国のために命を捧げたい」気持ちから、結局兵士へ志願、ドイツ兵の格好をした味方のスパイが持っていた伝令を拾うために真夜中の隠密行動に出るシーンは、戦争映画特有のド派手な演出になっていてアガるのは間違いない。
ここで描きたかったのは、オックスフォード公が葬儀で読みあげた「国のために命を捧げることが平和への一歩という美しい嘘」という言葉を強く言いたかったからだろうか。
平和主義であるが故に戦争で戦うことよりも人々を救うことに専念する「ハクソー・リッジ」なオックスフォードは、「1917」のように爆撃を交わしながら味方のいる場所へ爆走するも、些細な誤解によって命を落としてしまう不運に見舞われた息子を見て、改めてそう思ったに違いない。
メッセージ性としては理解はできる。
ただそれはキングスマンで伝えることだったんだろうか。
劇中で諜報活動しているシーンはあるにはある。
表立って情報収集するには鍵穴から覗くしかないが、その秘密の部屋にすんなり入れる使用人を使えば正しい情報はもちろん、なかなか手に入らない情報まで網羅できることから、様々な要人の下で働く使用人たちのネットワークを作り情報を集めるというアイディアは非常に良い。
紅茶を運ぶメイドが、暗号解読に励む兵士の目を盗んで、あらかじめポットに仕掛けられた複写機で情報を盗んだり、ロシアの要人が暗号に重要な隠語を電話で確認している肉声を、これまたお茶を運ぶ使用人が録音し、伝書鳩を使ってポリーの元へ運ぶ手段は、テクノロジーが発展した現代と比べると地味ではあるが、100年前ならあり得る手法。
こういったアナログなガジェットを使って、様々な情報収集やバトルといった諜報活動が見たかったのに、本作はそういった我々が望んだ楽しみを排除してまで戦争シーンを入れているのだ。
そうなるとビジュアル面で記憶に残るのはやはり戦争シーンのほうで、スパイ映画の誕生譚としてはだいぶそれたジャンルになっていたのは非常に残念だ。
役者陣について
国内版の公式ホームページが全然充実してないので、どんなキャストが出るか隅々まで知らずに臨んだんですが、まさかマシュー・グードが「ウォッチメン」以来のクソ野郎を演じるなんて聞いてないし、中盤からどっかで観たことあるツラだと思ったらアーロン=テイラー・ジョンソンだし、最後にしれっと居座ってるのがスタンリー・トゥッチだったし、何だよ良い役者だらけじゃねえか!と。
ガイ・リッチーの「ジェントルメン」でもいいキャラだったジェマ・アータートンの教育係も最高でしたね。
主人が帰宅して皆が頭下げて「おかえりなさい」ってしてるのに、一人だけ不機嫌な顔して頭下げずにい睨んでるメイドがこの世の中のどこにいるんだw
しかもタメ口だし、口が立つ分オックスフォードも逆らえないってどんな主従関係だw
ジャイモン・フンスー演じるショーラは、これまでマーリンを演じてきたマーク・ストロングよりも前に出ないタイプの執事でしたね。
主人には従順だしポリーにも上から目線とかしない超優秀な執事。
バトルシーンでも今回一番体を張ったアクションをしていたのではないでしょうか。
ラスプーチンとのバトルはすごくテンポが良かったし、拳でなく剣術での戦いだったので、避ける動きがさぞ大変だったろうなと。
肝心のレイフ・ファインズですが、劇中ではまぁ親バカな存在。
息子の目の前で妻を殺されたことから、過保護な父親になってしまい、息子の死をきっかけに生活があれてしまう姿は、涙を誘ってくれます。
しかし終始彼を前面にした物語故に、彼にアクションをさせるのはちょっと無理があったかなと。
編集でだいぶごまかしてたけど、ラスプーチンとのバトルはショーラとキレの差があり過ぎて、さすがに厳しかったかなぁ。
まぁスタントダブルがほとんどなんだろうけど。
コンラッドを演じたハリス・ディキンソンは初めて見る方だったのですが、いかにもイギリス人な顔立ちでハンサムでしたね。
ただタロン・エガートンよりスター性があまり感じられないように見えてしまったんですよね~。
彼の思いや行動の行く末にそんな末路が!って驚きはしたんですけど、それがハリス・ディキンソンが演じたからぐっと来たってわけではなく、単純に悲劇だったからなわけで。
というか、半人前だったコンラッドが戦争に行って逞しくなっていく姿ってのが無いので、そこは彼にもっと役作りをしてほしかったなぁと。
つっても初の戦場でだから無理もないんですけど。
最後に
キングスマンに何を求めるかで感想が変わっていくと思うんですけど、やっぱり僕はキングスマンて、007オマージュをふんだんに使ったスパイ映画でありながら、オシャレでスタイリッシュ且つ泥臭いアクション、そしておバカでグロもありなコミック感を期待してしまったもんだから、どうしてもこの真面目路線を受け入れられず。
あとは単純に、100年後に描かれるエグジーとハリーの物語に直接的に結びついていかないのがなんとも納得いかない。
それこそ「マナーが紳士を作る」って名セリフは、敵が言った言葉なんだって意外性はあったけど、それが1000年経った物語の中で使われてるってのはなんかなぁと。
それこそ見る前に期待していた「あるキャラが実は…」みたいなサプライズもなし。
どうしても100年前と現代の接点が少ないんですよね~。
サヴィル・ロウのテーラー店くらいよw
あ、靴にナイフを刺してクライミングするってシーンありましたけど、何気にあれは後のガジェットのヒントになってるってことですよね。
他にそういうのあったかなぁ。
傘を使って武器作ってほしかったなぁw
ダラダラ文句を書いてしまいましたが、誕生譚にしては物足りない作品でしたってことは強く言いたい!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10