モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ナイブズアウト/名探偵と刃の館の秘密」感想ネタバレあり解説 王道ミステリーにひと捻り加えた風刺が心地よい!

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

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名探偵と豪華キャストで送るミステリー劇。

この文言だけでちょっと興味沸くのはなんでなんですかね~。

日本で言えば金田一耕助シリーズなんかそれにあたるのでしょうか。

犬神家とか。八つ墓村とか。

 過去の日本の名画に触れてきたのも事実だし、こと探偵だけで言えば今や国民的アニメとなった「見た目は子供頭脳は大人」なアレのおかげで、さらに推理していく姿を見る楽しさってのを理解できてるからなのかなと。

 

そんなミステリー劇が米国ですこぶる評判てことはもちろんのこと、あの人やあの人の共演、後ろに控える役者も超豪華ってんで、俄然興味深々でございます。

 

 

数年前アガサクリスティーの名作「オリエント急行殺人事件」をケネス・ブラナーが監督・主演でやってましたけど、あれブラナー自体がまじめな性格ゆえに作品自体も堅いというか、自分カッコイイ!みたいなつくりになってるのが嫌で。

 

その点今回の「ナイブズアウト」は、アガサリスペクト感は同じであるものの、ぱっと見ポップ感が出ていて、楽しそう!って思えるのが、ブラナーとの差ですかね。

 

比べちゃいけないんですが、オリエントが楽しくなかった分、似たようなコンセプトの今作に期待してしまうわけでございまして、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

全米で大ヒットし、アカデミー賞脚本賞にもノミネートされた作品。

ある資産家の死の謎を解くため屋敷を訪れた探偵が、容疑者とされる家族たちの秘密を解き明かし真相に迫っていく姿を描く。

 

一見どこにでもあるようなプロットだが、超一流のキャスト陣、先の読めない展開、スリルと笑いがせめぎあうと聞けば、心疼くに違いないはず。

 

あの「スターウォーズ/最後のジェダイ」で賛否を巻き起こした監督が愛してやまないミステリー作家アガサ・クリスティにリスペクトをささげ、オリジナル脚本で挑んだこともすごければ、007のあいつに、アベンジャーズのあいつ、世界で一番美しいと称されたあの子に、強烈な大御所、期待の新人など、今後絶対集合できないようなメンツが勢ぞろいとくれば、さらに心がうずくはず。

 

果たして大富豪の死の真相は、犯人の動機は、そしていったい誰が犯人なのか。

ネタバレ厳禁なのに絶対誰かに話したくなる、超ハイテンションノンストップミステリーです!

 

 

 

 

あらすじ

 

NY郊外の館で、巨大な出版社の創設者ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が85歳の誕生日パーティーの翌朝、遺体で発見される。

 

名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、匿名の人物からこの事件の調査依頼を受けることになる。


パーティーに参加していた資産家の家族や看護師、家政婦ら屋敷にいた全員が第一容疑者。


調査が進むうちに名探偵が家族のもつれた謎を解き明かし、事件の真相に迫っていく―。 (HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

監督

今作を手掛けるのは。ライアン・ジョンソン

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どうしても彼の場合「スターウォーズ/最後のジェダイ」の監督ってのがまとわりついちゃうんですよね。

実際僕も最後のジェダイは好きなシリーズだから肯定したい気持ちだし、TVでやってたら普通に見る。

 

だけど、好きになれない作品なんですよね…そんなことブログでは語ってないんだけどもw

まぁそれはいいや、要は何が言いたいって、俺は最後のジェダイよりも「LOOPER/ルーパー」の方が断然面白かったし、そっちメインで推してくれよ!って。

 

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 近未来のアメリカのカンザス州が舞台なんですけど、過去にタイムトラベルしてくる標的を始末する殺し屋の前に、30年後の自分がやってきて、しかも逃がしてあらまぁ大変いうやつ。

 

相対性理論なのか量子力学だかわかりませんけど、未来の自分と追いかけっこや、かくれんぼしながら、謎の男の子の行方も探すっていうSFサスペンスなんですよ。

 

きっと主人公は思ったでしょうね、あ~…あいつ仕留めるのも大事だけど、やっぱ30年後の俺はハゲてるのか…って。

とにかくこれがまぁ面白くて、僕先日2010年代ベストってのやったんですけど、これももちろん入りました。(もち宣伝)

 

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 なのでSWはしょうがないとして、ルーパーも面白かったんだから、この人の映画はオリジナルなら絶対面白いぞ!という太鼓判を押したいんです、はい。

 

監督曰く、この結末は最後の最後まで分からないと豪語してるので、マジで先読みできないんでしょうね。

LOOPERも結末読めなかったので、わくわくしかありません!

 

監督に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

登場人物紹介

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捜査陣
  • ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)・・・匿名の依頼を受け、駆けつけた名探偵。
  • エリオット警部補(キース・スタンフィールド)・・・事件の捜査を担当する警部補。
  • ワグナー巡査(ノア・セガン)・・・事件の捜査を担当する巡査。
関係者
  • マルタ・カブレラ(アナ・デ・アルマス)・・・ハーランに献身的に尽くす看護師。
  • フラン(エディ・パター)・・・スロンビー家の家政婦。ハーランの遺体第一発見者。
スロンビー家
  • グレート・ナナ・ワネッタ(K・カラン)・・・誰も彼女の年齢を把握していないハーランの母親。
  • ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)・・・世界的ミステリー作家にして大富豪。85歳の誕生日の翌朝、遺体で発見される。
  • アラン・スティーヴンス(フランク・オズ)・・・スロンビー家の弁護士。
  • リチャード・ドライズデール(ドン・ジョンソン)・・・ハーランの長女リンダの夫。
  • リンダ・ドライズデール(ジェイミー・リー・カーティス)・・・ハーランの長女。不動産経営者。
  • ジョニ・スロンビー(トニ・コレット)・・・ハーランの亡き長男ニールの妻。ライフスタイル提案型化粧品会社の経営者。
  • ウォルト・スロンビー(マイケル・シャノン)・・・ハーランの次男。ハーランの跡を継ぎ出版社を経営。
  • ドナ・スロンビー(リキ・リンドホーム)・・・次男ウォルトの妻。
  • ランサム・ドライズデール(クリス・エヴァンス)・・・長女リンダとリチャードの息子。一族の問題児。
  • メグ・スロンビー(キャサリン・ラングフォード)・・・長男ニールとジョニの娘。
  • ジェイコブ・スロンビー(ジェイデン・マーテル)・・・次男ウォルトとドナの息子。(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランセルの問題児ってのが一体何をしでかしたのか気になりますが、そこも本編に大きく関わってくるんでしょう。

全員腹の中真っ黒で、皆ナイフを向けている、そんな富豪家族の探り合いに騙しあい。名探偵は一体どう推理するのでしょうか!

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

これは面白え!

王道のミステリーだけでなく、今のアメリカを風刺した、監督作品の中でも良作な映画でした!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全容をあっさり見せちゃう序盤。

ミステリー作家で大富豪のハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティー翌日に起きた自殺事件。

その真相を探るべく現れた私立探偵ブノワ・ブランが、飄々と事件の真相を探る姿と、容疑者とされる家族や使用人、看護師の表と裏の顔を、同時進行で見せながら綴っていく今作は、古き良きミステリーの表層をなぞることで味わえる安心感と、徐々に現代のアメリカが抱える裏の顔をのぞかせ、終いには仮面をベリベリっと剥がす結末と、二重三重に構造されたトリックの種明かしに、思わず手を叩かずに入られない巧さが際立った、2020年の中でも良作に値する作品でございました!!

 

 

これはやられました。

全編通して心を穏やかにして見られる安心感あるミステリーとして既に完成されているのに、キャスト全員が誇張して演技しているおかげで、さらに面白さが増すアンサンブルな芝居、さらに!ここに今のアメリカを批判しているかのような脚本の構造に、最後は思わず拍手してしまう面白さでございました。

 

 

あのね、最初からすでに面白いんですよ。

はい、事件が起きました!

刑事やってきます!

取り調べします!

何髪切れてる人が後ろに…

なんと、しれっと後ろで足組んでるツイードスーツの男がぼんやり画面に映し出されます!

で、こいつ多分犯人じゃねえな…って思ったら、目の前のグランドピアノの鍵盤をポーン!と叩いて、はい次の人ぉ~!って流れね。

わお、オシャレ~w

とこんな具合に話が始まっていくわけです。

 

 

ここからブランが取り調べをしていく最中に、彼らの供述が全然違うことを明かしちゃうことで生まれる笑いから始まり、開始10分前後でなぜハーランが自殺したのかを明かしちゃう潔さ。

 

おいおい、これじゃ何、俺らブランが答えを探し当てるまでをただじ~っと見ているだけ?

それじゃあ古畑任三郎みたいじゃん…と思ったそこのあなた!

違うんですよ!ここからが面白いんですよ!

 

 

もちろんハーランを殺してしまったとされる容疑者は、ブランが何かしら手がかりを見つけるたびに、目ん玉丸くして、ああやばい、どうしよう、こうしよう!と思い立ったが吉日状態で何とかピンチを切り抜けていくわけですよ。

 

 

ここだけで既に面白いんですけど(何度目や)、ブラン以外の家族も一癖二癖ある奴らばかりなのがまたいい!

 

まぁあれです、大富豪の家族によくある「すねかじり」一家ってのがどんどん姿を露わにしていく流れなんですけど、どいつもこいつハーランの自殺の件よりも、喪に服すような悲しみよりも、は~やくこいこい~遺言状~!みたいな想いが明らかに醸し出されている表情をしているわけですよ。

 

葬儀の後も酒を煽って、ナチがどうだ、移民がどうだ、と、ん?これ本編とどう関わってくるの?(後で目ちゃんこ関わるんですけど)みたいな会話をひたすらあざ笑いながら語るシーンがあったり、

翌日の遺言状開封の儀式で明かされた遺言に、家族全員オーマイガ―!なんでどうしてそうなるの!?

と、欽ちゃんも5mくらい飛び跳ねちゃうような驚きとリアクションに大爆笑してしまう、家族たちの醜態がまぁ最高で。

 

 

と、こんな具合にキャスト陣の迫真の演技と掛け合いによって、笑いが随所にあることで、ポップな仕上がりになってるのがまず素晴らしいんですよね。

 

 

キャスト陣が素晴らしい。

え?それだけじゃどこか笑えるのかわからないって?

 

え~とですね、まずブラン。

まぁ事件の真相を解ってるのかわかってないのか、いや分かってないんだろうなぁ、この能無し探偵め!て感じのつかみどころのない感じ、いや立ち姿がまず愛おしくさせてるんです。

 

そこから探偵らしい考察やら推理やら手がかり発見やらしていくんですけど、どこか落ち着いてる。

 

窓の外からばあちゃんが覗いても、驚きもせず挨拶しちゃったり、助手となるある人物が内心怯えてる手前でも、どこか事件を楽しんでる感じ。

 

で、彼の本領が特に発揮されるのが事件のトリックを明かす終盤なんですけど、まぁ活き活きとしてるのなんの!

 

これを演じたダニエル・クレイグは、きっとこの映画の続編を早くやりたくて仕方がない、007の事なんか早く忘れて、こういうのんびりとした探偵ものをやりたいに違いない、そんなことを感じさせてくれる活き活きとした演技に、僕は思わず涙を流してしまいましたよ・・・

大袈裟ですって?はい、誇張してますw

 

 

他の家族たちも曲者ぞろい。

とにかく全員が表では嘘八百並べていい子を演じてるんですけど、本当は罵倒当たり前、私こそ一番、遺産相続も確実にいただきますよぉ~!みたいな顔ぶれ。

リチャードは浮気してるし、

リンダはそれを疑ってるし、

ジョニは踊ったり気取ったりしてるけど内心それどころじゃないし、

その娘のメグは看護師のマルタを擁護しながらも自分も金欲しい!みたいな姑息な女だし、

そのマルタは嘘をつくと嘔吐してしまうという厄介な短所を抱え、

ウォルトに至っては怖そうな顔して本当に怖そうなこと考えてるし、

その息子のジェイコブはスマホばかりいじってネトウヨになってるし、

極めつけはランサム!!

 

こいつがまぁクソ野郎で問題児でしかも頭のキレる奴で、相手を見下すような目つきにニヤリと口角上げるいけすかねえ野郎で、でもこれをクリエヴァが演じてるってのが尚良し。

 

どうしてもキャプテンアメリカが脳裏をよぎってしまうんじゃないか、彼にあの正義感丸出しの役以外ハマり役はないのではないか、と思っていいた自分がバカでした。

最高にハマってるんですよ、このドラ息子、いや、ドラ孫が!

 

 

いきなりやってきたと思ったら、遺産が自分に入ってない事をすでに知っていて、しかもそれ以上のことまで知っているからなのか、家族ら全員一人一人指さして、ユービッチ、ユービッチ、ユービッチ、と、ニヤニヤな具合で小バカにするんですよね。

 

で、これに対してマジになる家族たちって滑稽な姿ねw

ブランも刑事たちも呆れてしまう状況に、なんて大富豪家族ってここまで感情をさらすんでしょう、なんて思ってたりして。

 

 

王道ミステリーの心地よさ

こんな具合に、キャストの演技によって生まれる笑いが心地いいんですけど、それだけじゃなく、ちゃんとミステリーとしてもしっかり機能した物語だったんですよね。

 

上でも書きましたけど、序盤でなぜハーランが自殺を図ってしまったのかを明かしちゃうわけです。

容疑者の回想で。

 

これはもう書いちゃいますけど、序盤でハーランの看護をしていたマルタが犯人であることがもう明かされちゃうんですね。

正確には犯人ではないんですけど。

 

パーティーの夜に碁をやろうとハーランに誘われ、ついでに鎮静剤とモルヒネを少々投与しようとしたんだけど、間違って致死量のモルヒネを投与してしまった。

でも、ハーランは彼女を安心させようと、自ら自殺に見せかけるよう手を施すんですね。

 

ハーランがナイフで自分の首を切ったあと、

マルタは真夜中に家を出る➡

カメラの死角に車を止めて屋敷に戻る➡

壁登って3階の隠し窓から部屋に戻る➡

ハーランの寝間着を着て一度1階に行き、ウォルトに後ろ姿を見せる➡

戻って帰宅。

というようなアリバイをハーラン指示の元作るんです。

でも、帰る際にお祖母ちゃんに見られちゃうんですね~。

なぜかランサムと間違えるんですけど。

 

 

これを我々はすでに知った状態で物語は進むんです。

 

だからブランが手がかりを見つけるたびに彼女はドキドキしてしまう表情をするので、その緊張感がまず心地いい。

 

 

 

しかし!これだけでは終わらないわけです。

遺産相続はマルタに全て譲るというもので、これまでマルタを家族同然に扱ってきた家族全員が、一斉に財産全てを手に入れた彼女を罵倒し、放棄しろ!だの、金よこせ!だの被害者ヅラするわけです。

そこに協力者登場!

それがクリエヴァ演じるランサムなのです。

 

 

彼が彼女に協力することで、ブランの目もかわすような視点に切り替わり、事件は一体どう解決に向かっていくのかわからなかくなる、そして次なる事件が発生したり、マルタの遺産目当てで次々と刺客やら脅迫やらが舞い込んでくるんです。

 

一体どうなるのか…

そしてブランよ、何がドーナツの穴だ!真剣に事件を推理しやがれ!

ってなるんですけど、ご安心あれ。

最後にはブランが見事なまでの推理と種明かしを見せ、圧倒的高揚感と圧倒的爽快感と圧倒的なオチ、圧倒的な風刺で幕を閉じるのです。

 

結末はどうなるのかって?

それは是非作品をご覧いただいて感じていただきたいですw

ここまで書いといてなんやねん!ってすいません…

 

ここまで知ったとしても僕は面白いと言える自信があるので、是非ご覧いただければと。

 

 

そもそもアメリカって誰の国よ?

そして本題。

この作品が一見王道ミステリーなのに、なぜアカデミー賞で脚本賞にノミネートしてしまうほどの力を持っているのか。

それは今のアメリカを映し出しているから、なんですね~。

 

今や世界のリーダーとして君臨するアメリカですが、実は建国して比較的新しい国だってのは義務教育で習ってる事かと思います。

先住民を追い出し、アメリカンドリームに憧れイギリスやらアイルランドから次々と移民としてやってきたのがいわゆる白人。

そんな奴らが勝手に自分たちの国だと威張り続けてきたのがアメリカなわけです。

 

やがて彼らは黒人を奴隷にし、徹底して差別を繰り返してきました。

いくつもの暴動や運動が起きたことで、アメリカは昔のような白人至上主義とは違う一面を見せるようになります。(まだ根付いてるけど)

そう、気が付けばアメリカの歴史は俺たちホワイトカラーが築いてきたんだ!と、彼らは主張するわけです。

 

 

それから時が経ち現在。

彼らは一転して被害者ヅラし始めます。

それはなぜか。

不法移民や有色人種といった多様な人種たちが、自分たちが築き上げたと思っている国で、さも自分の国のように仕事に就いたり生活し、人口が増加したせいで俺らが食いっぱぐれてしまった!と言ってるわけです。

 

俺たちこそ正義だ!

お前らは敵だ!

と、不寛容という名のナイフを握りしめて、ヘイトばかりしてるわけです。

 

不法に入国した移民は出ていけ、

お前たちはこの国に相応しくない、

と、罵詈雑言を投げるわけです。

 

そもそもお前らが作った国でないし、多様な民族たちが折り重なって生まれた自由の国なのに。

 

 

はい、こんな現実と今作を重ねてみると、色々と何が言いたいのか浮かび上がってくると思います。

 

 

スロンビー一家は、外から来たものには外ヅラ良く振る舞ってハーランの死を悼み、ウルグアイ系の移民である看護師マルタの身を案じて、家族同然に振る舞う姿を見せます。

 

しかし!

遺産がマルタの手に渡ると、一気に手のひらを返し、自分たちこそ遺産を相続できる正当な人間であると強く非難するんですね。

 

さらには酒を煽りながら平気で他人種を小バカにするようなヘイトをナチュラルに語り合う。

 

この屋敷は私たちのもの、

金を持っている私たちの方が上、

という認識が、彼らをまるで上級市民のように勘違いさせ、マルタをコケに扱うわけです。

 

終いにはウォルトは家にまで出向き、ウソで誘って金をぶんどろうと画策するし、

メグは涙を流しながら電話を掛けるも、遺産相続に相応しいのは私たち、だって今あなたよりお金が必要なの・・・と吐露してしまう醜さ、

それを横で聞いている家族たち。

 

 

そんな標的にされてしまうマルタは、どうして遺産を相続できる立場にあったのか。

ハーランに色仕掛けでもしていたから?

違います。

 

彼女は自分を犠牲にしてでも、他者に優しくできる心をもっていたからです。

 

移民でありながらか母や姉(妹だっけか?)を支えなくてはいけない苦労を抱えながらも、主であるハーランにずっと付き添い、優しさを注いでいました。

 

だからハーランは、これまで自分の金ありきで成功してきた家族たちの心を改めさせようと、遺産を突然変更したのです。

 

 

今本当に自分の意志を相続してくれるのは、こういう人物だ、アメリカという屋敷でコツコツ積み上げてきた資産(この場合遺産=レガシーとでもいうべきか)は私利私欲にまみれ、

他人のふんどしで相撲をしてきたような子供たちにはあげることはできない(さも自分たちの国と主張するような輩には相続できない)、

そう決断しアメリカの良心になってほしいという願いを込めて託したのであります。

 

 

 

ラストの構図は、非常にユニークな構図です。

冒頭に出てきたハーランのマグカップには「My house My rule My coffee」と書かれています。

このコップでコーヒーを飲みながら屋敷の2階の外から、家族たちを見下ろすマルタ。

 

きっと優しい彼女は遺産を分配して、これまで自分を罵倒してきた彼らを助けるでしょう。

だからこの映画は、マルタのような人を国のリーダーにして、お金も幸せも豊かな暮らしも分け与えよう、そんなメッセージとして受け止めることができるかと思います。

 

 

最後に

冒頭犬が二匹走ってるんですよ。

これって容疑者が二人いる、ってことを示唆してると思うんですね。

まあ正確には真犯人は一人なんですけど。

 

そういうメタファーもあったし、小さなアイテムも紐解いてみると、なるほど!と思える工夫があったり、僕が詳しくないけど、随所にアガサクリスティの作品が散りばめられているかと思います。

 

簡単に言えば、犯人は誰だ!っていう定番のミステリーとはちょっと違うけど、それでも面白い!と思える脚本になってるわけで、エンタメミステリーとして、これからもシリーズ化を熱望したいモンキーなのでした!!

マジでやってよ、続編!!

というわけで以上!あざっしたっ!!

 

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  • 発売日: 2020/07/22
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満足度☆☆☆☆☆☆☆☆☆★9/10