この子は邪悪
新作映画は必ず事前に情報を集めて下書きをし、鑑賞後に感想を書くスタイルで臨んでるんですが、今回は下書きを用意しておりません。
見る予定に入れてたけど、別にブログに書かなくてもいいか、その程度の期待値だったのです。
先に言っておきますが、ものすごく酷い映画でした。
ダメダメです。
でも、逆にその酷さが面白すぎてこれは備忘録として残しておきたい欲求がでてしまい、急きょ書くことにしました。
というわけでどうぞ。
感想
#この子は邪悪 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年9月2日
意識不明だった母が退院。でも別人に見える…というホラー。
いやーすごい、すごすぎる。
後半から一気にバカ映画になる。
ツッコミ満載。
カメラワーク酷いし、誰がが動かないと誰かが動かない。
笑いが止まらなかった。
この玉木宏は役柄としてもやり口も発明だと思う。 pic.twitter.com/Z3m7Y6xrKN
「ありえない」というキャッチコピー。
それはこっちのセリフだ!!
あり得なさ過ぎてツッコミたくなる要素満載のスリラー映画!
家族を守ることはそういうことではございません!
…でもお父さんからしたら、それも正義なんだよな…。
これカルト映画になるよ。
早速ザックリあらすじから言ってみましょう。
仲睦まじい家族4人は、5年前にトラックに突っ込まれて大怪我をしてしまう事故に見舞われてしまいます。
心理療法室を営む父は右足が麻痺、妹は顔に大やけどをしてしまい現在は仮面をつけて家に引きこもり、お母さんは意識が戻らないまま植物状態、そして主人公である長女・花は、小さいケガで済んだものの、遊園地に行きたいといった張本人故事故の責任を一身に背負ってしまいメンタルに傷を負ってしまう始末。
それでも家族が力を合わせ、母の回復をずっと待ちわびながら暮らしていたのであります。
そんな矢先、奇跡的に母が回復したという父からの話を受け、5年ぶりに母が帰宅。
妹は泣きじゃくってお母さんに駆け寄りますが、花は「あれ、ほんとにお母さん??」と疑惑の目を向けてしまうのであります。
顔も違うし、雰囲気も違う。
父曰く「ずっと眠っていたし、整形手術もしたからそう思うだけだよ」
お父さんの言う通り、ピアノも弾けるし料理の味も昔と一緒、しかも事故を起こす直前まで内緒で作っていたお父さんのプレゼントの事も知っていた。
だから本当のお母さんだ、と。
しかし、とある理由で花と仲良くなった歳の近い男子高校生・純の登場と、母のふとした表情に恐怖を覚えた花は、純と共に真相を探るのであります。
一方、甲府市で精神を患う案件が多発していることを純は独自に調べていました。
その理由は、母も同じような病にかかっていたからです。
純は「もしかしたら皆同じ病院なり診療所に通っていたりするのでは?」と共通項を単独で調査していたのです。
そんな時にたまたま目にしたのが、花の父が経営する「窪心理療法室」なのであります。
白い色でペイントされた古びた木造一軒家の2階から不敵な笑みを浮かべ窓を閉める父・司朗の姿や、奥の軒先で洗濯物を干す鼻の姿を見た純は、かつて自分がここへ来た記憶があることに気付き、花と仲良くなっていく中で、父・司朗のことや、花が抱く母への違和感をきっかけに、調査に乗り出すのであります。
果たして、母親は別人なのか、父は何かしでかしたのか、そして街に蔓延る謎の病は一体何なのか…という話です。
まぁ序盤はちょっとしたホームドラマの如く、仲睦まじい姿を表層的に見せながらも、仮面をつけた妹が急にタロットカードやり出したり、不敵に笑う玉木宏演じる父親の姿を見せたり、それこそ冒頭奇行を繰り返す市井の人たちを見せるわけでありまして、妙な雰囲気の答えを早くください!!という気持ちになるわけです。
少しずつおかしくなってくるのは、やはりお母さんが帰宅してからでしょうか。
まず5年も眠っていたくせに、何のリハビリもせずケロッと普段の格好でお化粧までして帰ってくるんですから驚きすぎて仕方ありません。
そこそこ常識も持ってるはず年齢であろう花は、そこをスルーして「あれほんとにお母さん?」という疑念を抱くのです。
いやいやいや、お母さんかどうかよりも「ありえない」だろうがw
という「ありえない」が今後ドンドン続くのが本作の酷い、失礼面白い所です。
とりあえず序盤は、「なにかがおかしい」というピースを散りばめていく作業のため、特にこれといって突っ込みたくなる部分は多くありません。
やけに近づいてくる純の所在については冒頭から描かれてますし、彼がお母さんの奇病の原因を探る過程で、花の家族を調べるのは筋が通ってます。
不穏な空気が一気に加速するのは、お母さんがソファで寝ている姿を見た時。
花はふと気になって、お母さんの左目の下にあるほくろをティッシュで取れるかどうかを試します。
そしたらなんと取れるぅ~~!こわ~~い!!と感情が動いた瞬間にバカでかい効果音が「シャラ~~ン!!」となるではありませんか。
いわゆるジャンプスケアってやつですが、あまりにも音がデカ過ぎて、少々ウトウトしかけていた僕の目を覚ましてくれました、ありがとう。
するとお母さんの目ん玉がグルグル動き回るではありませんか!
まるで∞のマークの如く激しく動き回る黒目に脅える花。
あ~ごめんなさいごめんなさい興味本位で黒子が本物かどうか確かめようとしてごめんさないごめんなさいです。
絶対夢に出てくるくらいの怖さです。
これで晴れて「この人お母さんじゃない」がほぼ正解に近づいた花と純は、妹の誕生日パーティーで情報を集めることに。
純はデジカメでお母さんの顔写真をゲットし、これを基に一体この人が誰なのかを探ろうとしていたわけです。
しかし帰宅しようとすると父・司朗に捕まり、なぜ純がここに来たことがある記憶があるのかを教えてもらうことに。
父曰く、純の母はかつてここの患者だったそうで、父の力では直すことができなかったことを打ち明けます。
最後に残した「純、愛してる」という言葉を純に告げた父・司朗は、療法で使うベルを純の耳元で鳴らし、抱擁するのであります。
それ以降、純の態度は一変。
あれほど協力的だったのに、「花の勘違いだよ」とそっぽを向いてしまうまでに。
そう、純は司朗の催眠療法によって、父の都合のいいような態度にされてしまったのであります。
鞄には鈴のついたキーホルダーがついており、これも父の催眠療法を持続させるための仕掛けだったのであります。
ですがこの後、住民票に書いてあった「妹の死」という事実を知り、今いる妹は本物ではないことを確信した花と純だったんですが、急に催眠療法の効果が切れた純が、司朗からもらったキーホルダーをごみ箱に捨てるではありませんか!!
なぜに効果切れた!
でもって純はなぜに我に返った!
「ありえない」!!
もうこうなったら全部かいてやろう。変なスイッチ入ってきたw
色々端折って後半へ。
全ての原因は父・司朗によるものだと睨んだ純は、勝手に自分の母親を診察しに来た司朗をマウントポジションを取って首根っこを掴み、あんたのやってることは偽物の家族ごっこだ!と罵声。
数時間後に純の様子を見にやってきた花は、目を真っ赤にしながら水槽をただ眺める純の姿に唖然とするのであります。
すると急に回想シーンに突入し、純が見たという患者が司朗の催眠によって実は母親になりすましてる事、その人は子供を虐待していたこと、さらには「退行催眠」を彼女に施し、植物状態の本当の母親と魂を入れ替えたことが明かされます。
…は?
魂を入れ替えた??
司朗が行う退行催眠は、少しずつ脳にある記憶を少しずつ過去へと遡らせる療法。
しかも0歳児はもちろん、胎内にいたころの記憶までさかのぼらせることが可能であり、そうなると魂を入れ替えることも可能だと主張。
肉体はもはや器となり、退行催眠をした者同士を入れ替えられるというのです。
は?
んなもんできるわけねえだろw
胎内の記憶までさかのぼることはどうやら可能だそうですが、だからと言って魂を取り除いて、新しい肉体に入れ替えるってあまりにも非現実過ぎて、スリラーを越えてファンタジーになってますからw
しかも、司朗は子供を救う会の会長をしており、家族を守ることに命を賭けている男ですから、虐待する親は断固として許せないのであります。
だからこの退行催眠をつかって、自宅の庭で飼育しているウサギと魂を入れ替えて懲らしめるという、とんでもないマッドサイエンティストだったのであります。
もう開いた口がふさがりません。
しかも家族を壊そうとしていたと理由で純までもがウサギになってしまったのであります。
「花、ほ~ら純くんだよ」
にこやかに花の前に純=ウサギを差し出す司朗。
恐らく玉木宏史上ベストアクトですw
この全てが明かされる一連のシーンは、映画としても酷すぎる惨事で、何もかもがお遊戯レベルであり、誰かが動かないとことが始まらない、尚且つ誰が叶に貸している時は誰も動かず、自分の番が来るまで待機している状態を見せられるという、映画史上類を見ないクソシーンとして語り継がれることでしょう。
まずはじめに妹の仮面を剥がす花、次にあまりの急な出来事に発狂する妹、奥の部屋で司朗が何かしていると、突然奥の扉から純のお婆ちゃんが登場!石で司朗の後頭部を思いっきり打撃!
いやいやいやお婆ちゃん、この診療所どうやって調べたの!?純の部屋入って調べたの!?よくそっち側のドア知ってたね!
あまりに突然の登場に俺大爆笑!
これさ、冷静に考えたら司朗しか元に戻す方法知らないと思うんですよ、だから無暗に司朗を殺そうとしちゃいけない気がするんですよね~。
早速お婆ちゃんはウサギと化した純と純の母親を見つけ出し抱きかかえます。
やはり母の愛はすごいですね、一発で自分の娘と孫を見つけられるんですから(ここがある意味一番ホラーだよ)。
すると今度は司朗の反撃。
さすがにおばあちゃんの力ではどんなに硬いモノで殴っても死ぬまでには至らないわけで、司郎の反撃によってお婆ちゃんは失神、この後司朗は何度も何度もお婆ちゃんを撲殺します。
普通ね、自分のお父さんが人をぶん殴ってる姿を見たら、逃げ出すかただただ脅えるか、せめて声出すか、それか制止するのが一般的だと思うんです。
でも本作の子どもたちや奥さんは、ただ座って観ているだけです。
そう、次の自分のセリフの出番を待っているのです!
お遊戯会じゃねえんだよ!なんかしろよ!
芝居しろよ!
作り手側もこのシーン脚本になんて書いてんだよ!
(花、妹、母、司朗が殴り終わるまでひたすら待つ)とでも書いたのか?バカか!w
監督もここで芝居の一つや二つ付けろや!
リアリティなさすぎるでしょうが!
と、少々荒れたツッコミをしましたが、僕は見てる間ほくそ笑んでました。
うわ~ひどいwと。
もうね、主演の南沙良ちゃんですか。
非常に可愛らしいルックスなんですけど、ずっと表情がニュートラルなんですよね。
なんかこうもっと大袈裟でもいいから怖い表情してくれよと。
パターンねえのかよと。
「女子高生に殺されたい」の時は役柄的に常に心が死んでそうな表情はハマってたんですけども、こういうスリラーやホラー映画の際は、やはり受け手のリアクションが大事なわけですよ。
親父が飛んでもねえことしてる時に一瞬彼女にカメラが切り替わるんですけど、ただぼーっと見てるだけでしたからね。
やる気あるんかおまえ。
で、親父が一通りことを済ませると、次は妹が動き出します。
自分で自分をナイフで刺そうとするわけです。
からくりを知った途端、ナイフに映る自分の顔を見て、自分の知る顔でないから困惑したんでしょうね。
実際この家には鏡がありませんでしたから。
それを止める花、でもって司郎を刺す妹。
妹を抱きしめる花、司朗を抱きしめる母。
全部「誰かが動いたら誰かが動く」という構図。
何故待ってる状態なんだ、全員受け手なんだ、もっと動けよアドリブしろよ!
最後は死ぬ間際に何やら手を動かす司郎
そして死。
ラストシーンは数か月後の窪家。
今度こそ幸せになろうと誓う姉妹と、産まれた赤ちゃんを映して終わるんですが、赤ちゃんが指で八の字を描く様に指を回して終わるという幕切れ。
要は死ぬ寸前に司朗が自ら退行催眠をかけて、赤ちゃんと魂を入れ替えたというオチで、それこそが「この子は邪悪」というお話だったということです。
もう発想がヤバいですよ。
どうやって自分に退行催眠をかけられるんですか。
どうやって胎内にいる赤ちゃんを催眠できるんですか。
その前に植物状態の奥さんをどうやって催眠かけるんですか。
この穴だらけの脚本にNGを突き付ける偉い人はいなかったんですか。
最後に
まぁクソミソ言ってきましたが、僕は楽しかったんですよ。
こんなにもツッコミどころ満載の映画なのに、平然とホラーをやってしまうこの度胸。
それこそがホラーですよ。
しかし玉木宏は最高でしたね。
良いパパに見えるけど、実は家族を守るためなら何でもする狂った親父という。
魂入れ替えても家族じゃないですからねホント。
虐待してる親に制裁を与える正義感はありえないですし、尚且つ魂を入れ替えれば家族を守ることに繋がるのもありえない。
そもそも全部犯罪ですから。
免許はく奪どころじゃ済みませんよ。
しかもあなた、片足麻痺してるのになんで車運転できるんですかw
役柄的なツッコミはこの辺にして、とにかく玉木宏がこんなマッドな演技できるなんて知りませんでしたよ~。
足を引きずって歩く演技もリアルでしたしね。
キングダム2に出てた時は一言もしゃべらなかったからギャラ泥棒じゃねえかと思ったけど、こっちでしっかり仕事してたんですね、前言撤回しますw
恐らくですよ、嗅覚の良い人は劇場でご覧になるかと思うんですけど、基本的にこういう映画は「配信」でいいや!なんて思ってる人も結構いるんじゃないかと。
興行的には振るわなそうですが、これ配信が始まったらすげえ人気な作品になると思うんですよ。
一見怖いですからね一応。
効果音のおかげで。
でも、よくよく考えるとおかしなところだらけですから。
そういう意味ではこれ「カルト映画になるんじゃない?」って、いつか大化けしそうな予感がする映画だったと思うんですよ。
きっと真面目に考察とかしだして、司朗のやってることは実は可能だ!とか言う輩も出てくるのかもしれませんw
やめてくださいw
まぁ僕としてはバカ映画に属する映画でしたので、満足度は甘々です。
あと、桜井ユキの二の腕に乾杯。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10