モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ビースト/BEAST」感想ネタバレあり解説 「オヤジVSライオン」それだけで面白い。

ビースト/BEAST

普通の人間が、人間よりも狂暴なライオンと戦う映画を作りたい。

ハリウッドではこういう企画がいくつも採用されたりされなかったりするんでしょう。

 

この手の映画で主演にうってつけなのがドウェイン・ジョンソンだと思うんです。

かつて巨獣と戦ったザ・ロック様は、それでは飽き足りないのか超高層ビルとタイマンを張るという無謀な映画に主演。

どちらも見事に勝利を収めたことで、彼はこの手の映画は殿堂入りしました(そんなものはないw)。

 

だからでしょうか、今回観賞する映画にザ・ロック様は出ません。

殿堂入りしたことでギャラが高騰したのです(それが理由ではありませんw)。

 

では一体誰が適任なんだろうか。

まだこの手の映画を開拓していない、しかもロック様よりもギャラが安く、さらに彼よりも演技の幅のある男・・・。

いるではないか!イドリス・エルバが!!

 

・・・という妄想は置いといて、今回鑑賞する映画は「ライオンと戦う」というよりかは、「獰猛なライオンから逃げる」映画。

百獣の王から逃げ切ろうとする姿を描くので、アクションというよりかはスリラーの要素のある映画になるんでしょうか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ストンプ・ザ・ヤード」や「ストレイト・アウタ・コンプトン」など多くの作品をヒットに導き、第94回アカデミー賞のプロデューサーも務めたウィル・パッカー氏が製作した最新作は「ライオンと死闘を繰り広げる」映画。

 

南アフリカの広大なサバンナを舞台に、ただ人間を狩ることだけを目的とするライオンを、二人の娘を守りながら死闘を繰り広げる医師の姿を、緊張感たっぷりに描く。

 

監督には「エベレスト 3D」や「2ガンズ」などアクション系を軸に、人間の極限状態を臨場感たっぷりに描くバルタザール・コルマウクルを起用。

主演には「ザ・スーサイド・スクワッド」や「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」といったアクション系から「モリーズゲーム」のような会話劇に至るまで、演技の幅を広げて活動するイドリス・エルバを迎えた。

 

弱肉強食の大自然の中、どこから襲ってくるかわからない猛獣を相手に、知恵と体力と運を駆使して挑む姿を、息つく間もないスリルの連続によって体感するかのようなアクションホラーとなっている。

 

果たして主人公は、どう猛な百獣の王相手に生きながらえることができるのか。

 

あらすじ

 

医師ネイト・サミュエルズ(イドリス・エルバ)は、ふたりの娘たちを連れ、最近亡くなった妻と初めて出会った南アフリカへの長期旅行を計画。

 

現地では狩猟禁止保護区を管理する旧友の生物学者マーティン(シャールト・コプリー)と再会を果たす。

 

しかし、密猟者から生き残り、今やすべての人間への憎悪に満ちたモンスターライオンの出現によって、互いに生死と愛する者の命を賭けた死闘が始まるのだった…。(HPより抜粋)

youtu.be

 

監督

本作を手掛けるのは、バルタザール・コルマウクル。

 

アイスランド出身の監督さん。

 

1984年にアイスランドで起きた漁船沈没事故と、そこからたった一人生還した両氏の実話を描いた「ザ・ディープ」で、アカデミー賞外国語映画賞のアイスランド代表に選ばれた経験を持っています。

それ以降ハリウッド映画にも挑戦。

 

麻薬捜査の最前線を舞台に、窮地に追い込まれ互いに手を組むハメになった2人の潜入捜査官の運命を描いた「2ガンズ」や、1996年にエベレストで起きた大遭難事故を基に、登山家たちに起きた悲壮な運命を3Dで臨場感たっぷりに描いた「エベレスト 3D」などを手掛けています。

 

ジョーズのライオン版と紹介されている本作について監督は、本作に登場するライオンはあくまで人間によって作られた獣と主張。

また自然を守るのは人間の宿命であり、それを怠ればどんな災害に直面するかという点も本作に取り入れてるとのこと。

「エベレスト」で感じた経験が本作にも刻まれているのでしょう。

監督の作った臨場感を堪能したいですね。

news.infoseek.co.jp

 

主演

本作の主人公ネイト・サミュエルズを演じるのは、イドリス・エルバ。

 

2018年に最もセクシーな俳優に選ばれたエルバですが、個人的には動ける演技派のイメージが強いです。

 

マイティ・ソー」シリーズや「ザ・スーサイド・スクワッド」などで活躍してますが、「ビースト・オブ・ノー・ネイション」での独裁者ぶりはなかなかの怖さでしたし、「モリーズゲーム」でのジェシカ・チャスティンとの白熱した議論シーンは、まるで舞台を見てるかのような演技でした。

 

本作は魔獣と呼ばれるライオンから生き延びるために、あらゆる策を練って挑む物語ですが、ただアクションをするのではなく、いつどこからやってくるかわからない相手に満身創痍な姿を見せなくてはなりません。

動きも表情も秀逸な彼なら、きっと素晴らしい演技で張り詰めた緊張感を我々に与えてくれることでしょう。

 

 

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

サミュエルズの娘メレディス役に、イヤナ・ハーレイ

同じくサミュエルズの娘ノラ役に、リア・ジェフリーズ

サミュエルズの旧友で生物学者のマーティン役に、「第9地区」、「ハードコア」のシャールト・コプリーなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

今回のライオン、獲物を食うことには興味のない様子。

なぜライオンは人間を襲うのかを読み解きながら、ドキドキしたいと思います。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

オヤジVSライオン!!これだけで存分に楽しめる佳作!

自然をなめんな映画だし、オヤジなめるな映画でもあるw

多用な長回しが見事に機能したスリラーアクション映画でした。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホントにライオンで近すぎてどうしよう。

娘たちからの信頼を取り戻すため、亡き妻の故郷に旅行に来た医者のパパが、不運なことにライオンに襲われてしまう羽目になってしまう大ピンチな状況を描いた本作は、雄大な自然が舞台であるのと多用な長回しによって、いつどこから猛獣が襲ってくるかわからない緊張を巧く演出し、あっという間の体感時間を生み出したと同時に、自然を壊すのは常に人間であることや、全てを失った動物の怒りと守るべき者を持つ人間を対比することでドラマティックに魅せた佳作でございました。

 

僕が初めてライオンを見たのは、富士サファリパークでしょうか。

園内を車で走りながら間近で動物たちの姿を見れる興奮は、今でも忘れることはありません。

その中でも一番衝撃的だったのはライオンの穏やかな姿。

 

とりあえずただ寝転んでるだけで飯にありつけるわけですから、自分たちがいくら人間に見物されても微動だにしませんw

しかも寝ころんだメスにオスが上から乗りかかって、何度も何度も交尾するではありませんかw

おいおいあれのどこが一体百獣の王なんだと拍子抜けした感覚と、それでもそこにいるだけで圧倒する迫力。

さすがライオンでありました。

 

でも本作に登場するライオンは、人間に飼い慣らされて牙を抜かれた百獣の王ではありません。

密猟者によって縄張りを荒らされ、家族をも失った孤独な王。

ただ穏やかに過ごしたいだけなのに、ビジネスと称し金のためだけに動物を命をいとも簡単に奪ってしまう人間たちを許すわけにはいかないのであります。

 

いつだって自然を壊すのは人間。

密猟者はその報いを受けるのであります。

 

本作に登場する「ディアボロ」と呼ばれるライオン以外にもライオンは登場します。

それは動物を保護するために仕事をするマーティンが、かつて救助したライオン。

彼らは縄張りを作り、ただ穏やかに過ごしてるのですが、それを人間が遠くから見つめ守っていたのです。

 

ネイトを連れて縄張りにやってきたマーティンは、かつて救助したライオン2頭に近づき、思いっきりハグをし、じゃれ合います。

そういえばライオンてネコ科だったな、そんなことを思い出させる瞬間なのですが、要は何が言いたいって、動物にも心があって優しくしてくれた相手には心を許すんですよね。

 

これを序盤に見せることで、この後登場するディアブロの恐ろしさを強調させていたように思えます。

 

ディアブロはとにかく容赦なく人間を襲います。

エサとして襲うのではなく、ただ怒りに任せて人間を引き裂くのです。

他の草食動物には一切目を向けず人間を襲うディアブロは、村の人間たちを一掃し、たまたま訪れたマーティンやネイト一行にも牙を向けるのであります。

 

地元であるマーティンは、何故ライオンが人間を襲うのか戸惑いましたが、彼が反密猟者であったことから推測するのは容易でした。

それほどライオンは縄張りへの意識が高いということなんですね。

 

ネイトたちにも容赦なく襲い掛かるその表情は、正にケモノ、というかモンスターです。

車の下に隠れて防戦一方のネイトにも、どうやってくちぎろうか模索しながら力任せに車体を持ち上げて顔を入れてこようとするし、車内に隠れて外に出ようとしないネイトたちが、いつ出てきてもいいように崖の上からずっと待っている粘りもあるという恐ろしさ。

 

昼間はまだ動く影があるから集中力を研ぎ澄ませばどこにいるかわかりますが、これが夜となるとホントに怖い。

ネイトたちが車内で仮眠すると辺りはすでに夜更けで、密猟者たちが再びやってきたことで周囲の物音にディアブロが反応し、再び崖の上から姿を現した時はさすがに驚き。

 

カメラワークも手伝ってなかなか目で追えないすばしっこさを演出し、いとも簡単に銃を持つ密猟者たちを一掃するのであります。

 

ネイトも徐々にこの危機的状況になれたのか、大胆な行動に出たりするのですが、それでもディアブロがすぐ近くにいる時の緊張感は計り知れません。

わずかな物音にも反応しやってくるディアブロと、何とか気配を消してその場から逃げる術を考えるネイトとのサシでの戦いは中盤の見せ場でしたね。

 

後半では、何とか車で遠くまで逃げ切ったにも拘らず、山を越えて追いかけてくるディアブロ。

お前相当人間を恨んでるんだなという怒りが、スクリーンを通して伝わってきます。

 

クライマックスでは、いよいよ大胆の極致へと達したネイトが、これが俺の父親像だ!!と言わんばかりに戦いの姿勢を見せる姿は圧巻でしたね。

ぶっちゃけムチャにもほどがあるんですが、一応ただがむしゃらに立ち向かうわけではなく、ネイトなりに策も用意してあるのもクライマックスならでは。

もうどう考えても勝ち目ないのに挑むってことはしないですからね。

 

 

とにかく親父がライオンと戦うだけっていうシンプルな構成なんですが、「家族を奪われたライオンVS家族から信頼を取り戻したい父親」という対比にすることによって、動物であれ人間であれ、失ったモノを取り戻したい思いと失ったことによる怒りってのはあるんだなってこととか、どちらもそこは譲れないっていうドラマをしっかり生み出してたように感じます。

 

また、密猟者や動物保護をする者たちを登場させることにより、問題提起もされていたように思えます。

娘がジュラシックパークのTシャツを着ていたことから、人間が立ち入ってはいけない領域でサバイバルをすることやビジネスを持ち込むことへの警告にも感じるし、自然との共存をすることの大切さなども含んでいたとも言える作品だったのではないでしょうか。

 

長回しの良い所と悪い所

本作は、コロナ禍の真っただ中に撮影を敢行したそうで、常に少数精鋭で団体行動をすることで感染を防ぎながら行ったそうな。

要は現地でロケできる人間が限りなく少なかったことが窺えます。

もしかしたら監督がカメラを回して撮影したシーンもあったかもしれません。

 

そういう意味もあったのか、本作ではかなりの尺で長回しが使用されています。

 

上でも書きましたが、この長回しによって「いつどこからライオンが襲ってくるかわからない怖さ」を助長した演出になっており、90分という上映時間があっという間でしたし、何よりスクリーンに釘付けになるんですよね。

 

村の男が血まみれになって現れ、車にあった救急箱を取りに行くネイトが、彼を看取り、単独で周囲の見回りに行ったマーティンを探す姿から、ライオンがネイトを標的にして向かってくることに危機を感じ、車までダッシュ、そしてそのまま車にライオンが突撃し、必死の攻防戦を見せるまでのシーンを、全てワンカットで撮影してるんですよね。

 

この後もライオンが襲って来るたびにこれでもかというほどワンカットで見せるんですよ。

車体の下に隠れた際にも、ネイトの満身創痍な姿を見せた後、カメラは一度ライオンを追いかけるために車体の外を見せるんですが、そのまま車内にいる娘ノラの姿を見せ、再びネイトに襲い掛かってくるライオンのお尻に麻酔を一刺しするノラの姿をそのまま見せたり、密猟者の車で逃げるために必要なキーを探しに単身湖まで向かったネイトが、気配を消すために湖の中に入ってライオンがいなくなるまで息を潜めて待つだけのシーンもワンカット。

 

後半では逃げ込んだ廃墟の学校の中でもライオンとの死闘は続き、ここでも娘を狙うライオンに銃で反撃をするネイトをワンカットで見せ、ラストでのバトルシーンも、血だらけになりながらもナイフ一本でライオンと死闘を繰り広げるネイトの姿を、フレキ巽なカメラワークで臨場感を出しながら、かなり近い距離で収めるというワンカット。

 

そもそもライオン自体CG合成だってのは考えればわかるかと思いますが、ワンカット演出によって緊張感は高まり、CGであることを忘れてしまうほどのサバイバルな戦いになってるんですよね。

 

 

ただ残念なことに、本作のほとんどのシーンが長回しになってることで、メリハリ感が出ていないことが非常に勿体ないと感じました。

基本的にワンカットってのは綿密なリハーサルや、しっかり計算しないと完成しない方法だと思うんですね。

演者の動きはもちろん、今回CGであるライオンを挿入しなくてはいけないわけで、少ないスタッフだったであろう現場とはいえ、相当な時間を使った努力の賜物であったことは事実。

 

ただ序盤で現地に着いてからマーティン宅で一夜を過ごすシーンまでワンカットにする必要性が全く見当たらないのであります。

 

ここでは、ネイト一家の過去を説明するために、娘二人が父親にどんな態度で接しているのか、何故そんな態度になってしまったのか、妻の故郷にやってきた理由などを観衆に理解させるためのシーンなんですね。

これをなぜかワンカットで室内をグルグル回りながら見せているわけです。

 

この後とんでもない展開になるし、その描写をより迫力や緊張感を持たせるためにワンカットを用いてるわけだから、序盤の会話シーンは無理してワンカットにしなくてもよかったのにと。

ここを普通にたくさんカットを割り、登場人物たちの表情を収めるような見せ方にすれば、ネイトが如何に家族思いなくせに家族に無関心な態度を見せてるかや、そんな父親に特に何も期待していない態度など、よりわかり合えない家族の姿を焼き付けることができたし、何より本筋とのメリハリができたよねと。

 

 

最後に

一応楽しめはしましたが、何でこういう時に勝手な行動するかなぁ!というシーンもあって、一瞬バカか!と心で叫んだ瞬間もありましたが、一応マクガフィン的な行動だったってことかという納得感もあれば、ここぞというタイミングを見計らって勇気ある行動だったと思えば、さすが!とも思えたシーンもあり。

 

危機感ないよ!と感じられたということは物語に没入できなかったということだし、危ないから動かないで!と思えれば物語に没入できた証拠だよなぁと。

要は冷静に本作を鑑賞できたか思いっきりドキドキして見ることができたかによって評価は分かれそうな作品だとは思います。

 

やっぱね、イドリス・エルバが最初はこの状況にビビリな一面もあったんだけど、医者って設定だから誰かがケガをすれば頼もしく見えてくるんですよね。

で、マーティンという親友を失って以降は、このままでは助からない、娘が危ないという思いに火が付き、どんどん大胆な行動に出る姿が頼もしくもあり、いやいややりすぎだろ、何考えてんだっておかしくも見えてくるんですよw

そこが僕の中ではツボで、そのままラストで派手に戦ってくれるからアドレナリン全開でしたよw

 

ドウェインジョンソンだったら味わえませんからw

彼なら序盤でフルボッコにしてエンディングですからw

 

ワンシチュエーション的な内容である分、途中で出てきた要素もちゃんと残さず使って終わらせていたのも上手でしたね。

是非親父VSライオンの凄まじいバトルを見てほしいです。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10