ラプラスの魔女
今回の映画は主役がジャニーズなんで、作品の中身よりもキャスティングで話題になるんでしょうな。
とはいえジャニーズで一番インテリな桜井くんが東野圭吾原作で主役やるのだから、普通にハマるのかなと淡い期待。
結構前から思ってたんですよ。
早速鑑賞してまいりました。
作品情報
人気作家、東野圭吾が自身を一度全てぶっ壊してみたかった、と意気込んだ同名小説を、国民的アイドルグループの一員にしてニュースキャスター、グループで一番知性と品格を持つ桜井翔を主役に映画化。
19世紀に存在したフランスの数学者ピエール・シモン・ラプラスが残した言葉、未来に起きる出来事を全て予知できる者=神に等しい存在とされる「ラプラスの悪魔」をモチーフに、自然現象で死んだとしか考えられない立証不可能な事件を、地球化学教授と未来を予見する少女が追う。
そこに浮かぶ人物は一体何者なのか。
驚きと衝撃の連続に、物語は予測不可能な結末へと向かっていく。
東野圭吾ミステリー史上最も衝撃を与える作品が今幕を開ける。
あらすじ
初老の男性が妻と訪れた温泉地で、硫化水素中毒により死亡した。
事件の担当刑事中岡(玉木宏)は、妻による遺産目当ての計画殺人ではないかと疑いを抱く。
警察からの依頼で事故現場の調査を行った地球化学の専門家・青江修介教授(桜井翔)は、「気象条件の安定しない屋外で、致死量の硫化水素ガスを吸引させる計画殺人は実行不可能」と断定、事件性を否定した。
それから数日後、別の地方都市でも硫化水素中毒による死亡事故が発生。その被害者が前回の事故で死亡した男と顔見知りであることが判明した。
青江は新たな事故現場の調査に当たるが、やはり前回同様、事件性は見受けられない。
遠く離れた場所で同じ自然現象による事故が連続して起こ、被害者が知人同士だった・・・この事実は単なる奇妙な偶然なのか?
だが、もしこれらが事故でなく。連続殺人事件と仮定するのであれば、犯人は【その場所で起きる全ての自然現象をあらかじめ予測していた】ことになる。
そんなことは絶対に不可能だ。
未来を予見する知性=「ラプラスの悪魔」など存在するはずがない・・・。
息づまる青江の前に、1人の女が現れた。
彼女の名は、羽原円華(広瀬すず)。
事件の秘密を知る人物・甘粕謙人(福士蒼汰)の行方を追っているという。
怪しむ青江の目の前で、円華は、これから起こる自然現象を言い当てて見せた。
円華の「予知」に隠された秘密とは?甘粕謙人とは何者なのか?
そして動き出す、第三の事件・・・。
青江の想像をはるかに超える、恐るべき全貌とは!?
驚愕と衝撃の結末に向けて、彼らの運命が大きく動き始めた(HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのは、ご存知三池崇史監督。
「テラフォーマーズ」、「無限の住人」、と立て続けに問題作を製作する監督。
さすが「オファーがきたら予算内で何とか形にして出す」男。
テラフォはまぁ残念ながらボロカス酷評しましたが、無限の住人は結構楽しめたので、今回もいつもどおり低い期待値で見届けようと思ってます。
あ、ジョジョもあったね。しまった。もっと低くしよう。
監督に関してはこちらをどうぞ。
これはオススメ。
登場人物紹介
左上より。
- 青江修介(桜井翔)・・・地球化学の専門家。大学教授。雪山で起きた硫化水素中毒死の事件調査を警察から依頼される。発生現場を調べ、事件性なしと判断するが・・・。
- 羽原円華(広瀬すず)・・・事件の発生現場に現れて、そこで起こる自然現象を言い当てる、謎の女。甘粕謙人を探しており、青江に協力を頼むのだが・・・。
- 甘粕謙人(福士蒼汰)・・・行方不明の男。一家硫化水素中毒死事件の生存者。母と妹は中毒死していたが、こん睡状態で発見される。奇跡的に回復を遂げた後、失踪。
- 奥西哲子(志田未来)・・・無愛想でつっけんどんだが、陰ではお人よしで天然の青江をいつも心配している。
- 水城千佐都(佐藤江梨子)・・・第一の事故で死亡した映像プロデューサー・水城義郎の妻。元銀座のホステスで、財産目当てと噂されていた。
- 桐宮玲(TAO)・・・円華を追跡する女。円華の能力の秘密を知る数少ない人間のひとり。武尾の依頼主。
- 中岡佑二(玉木宏)・・・事件の担当刑事。硫化水素中毒死は事故ではなく、遺産目当ての殺人でないかと疑っている。
- 武尾徹(高嶋政伸)・・・元警察官で、いまは要人の身辺警護=ボディーガードを請け負っている。桐宮の依頼で円華を追跡している。
- 羽原美奈(檀れい)・・・円華の母。北海道で発生した巨大ハリケーンに巻き込まれて死亡。
- 羽原全太朗(リリー・フランキー)・・・脳外科医。脳神経細胞再生の第一人者。こん睡状態で搬送された甘粕謙人の担当医として、治療を行っていた。円華の父。
- 甘粕才生(豊川悦司)・・・かつて天才と謳われた映画監督。留守中に硫化水素事故で妻と娘が死亡。そのショックから立ち直れず、表舞台から姿を消した。謙人の父。
化学は苦手なので、是非謎解きはわかりやす~くしてほしいものですが、役者の演技もまた楽しみなところ。
監督とは笑いのセンスが合わないので、ムリににコミカルにしないで欲しいなぁ。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
未来を予測することができたとしたら、果たして幸せになれるのか。
進歩するには早すぎた人間たちの愛憎ミステリーでしたが、やっぱり面白くない・・・。
以下、核心に触れずネタバレします。
まぁ期待はしていなかった。
地球化学を大学で教える教授が携わった、屋外での硫化水素吸引による事故。
理論上あり得ないとはいえ、あまりにも不可解な事故から、自殺か他殺か悩む彼の前に現れる一人の少女。
そして浮かび上がる一人の青年。
数学者ラプラスが遺した言葉にあやかり名乗る2人の、驚異的能力に驚きを隠せないながらも、事件の真相を追う教授。
事件の真相にたどり着くとき、第3の事件が起きようとしていた。
人間が未来を予測することは、あらゆる経験や状況把握能力、条件や行動によって自然と理解できることが可能だということを示し、その力をもっと向上させる実験を行っていた一人の悪魔によって生まれてしまった2人の男女。
一人は復讐を果たすため、一人はその復讐を止めるために自らの能力を使い使命を果たそうと奔走し、目の前で起きたことにあり得ないと言いながらも、一化学者として答えを探すために事件に巻き込まれていく3人を中心に物語は進む。
そんなことあり得ない。
次々と起こる信じられない現象のカラクリを、セリフで丁寧に語る事に重点を置いた今回の作品。
表向きは犯人探しというミステリーなのだけど、ちょっとしたSFなのかファンタジーなのか、非現実的視点を含みながら、東野作品ならではのヒューマンチックな流れにもっていくのは「そんなことあり得る」展開で、一体何をぶっ壊したのかは原作未読の僕からしたらよくわからない。
加えてアクションにはモンキー的に高い評価をしている三池監督が、ミステリーをやるという時点で無理だろうと思って臨んだわけで、やはり「そんなことあり得る」つまらなさ。
画が固い、画が動かない、場面が変わらない、いきなり回想、どれもこれも1つのシーンに動きが無く、クラシック音楽にのせて演者がしゃべるだけののっぺらとした展開が続くのだから、ウトウトもしたくなる、やがてセリフも入らなくなる、目を閉じてしまう…。
褒めるとするならば、監督がどうしても入れたがるギャグや笑いの要素を最低限に排除したことくらいだろうか。
だけどそれを排除したことによって余計に退屈に感じたのも事実。
ミステリーならもう少しドキドキさせる演出くらい入れてもいいんじゃない?というほど退屈な映画でした。
主人公に魅力がない。
今回の主人公である地球化学の専門家で大学教授の青江。
東野作品で教授といったら「ガリレオ」の湯川学がすぐ浮かびますが、あの一見変態でサディスティックな性格を見せつつも、最低限の感情をもって相手と接し、自分の力を発揮して事件を追求することで魅力ある人物像として映画で楽しませてくれましたが、今回の青江修介という男は湯川と比較すると驚くほど魅力もなければキャラとしても中途半端だったように思う。
屋外での硫化水素による死亡事故を調査するために現場に赴き、事件性はほぼ0と断定。
地域の住民に安全を促すことに尽力する役目を担っているわけですが、彼の見せ場というか、地球化学の専門家という意味では、彼が力を発揮するのはここくらい。
あとは円華の運転手くらいがいいところで、ちゃんと青江が自分でツッコんでるのは観てるこっちも同じ。
あなたが必要って、運転手ってことかよ!俺の地球化学の知識じゃねえのかよ!と。
それもそのはず、彼の知識や見解などは全く今回の事件には通用しないわけであり、未来予知能力を持つ人が出て来たらそりゃあなおさら。
結果的に彼なしでもぶっちゃけ話は繋がる。
彼以上に事件を知り、尚且つ自然現象を予測できる人物が出て来た以上、彼は用なしになってしまうわけ。
だから青江が事件後見たり知ったりする事実は、我々と同等の視点で描かれなければおかしい。
また、円華よりも年上できちんと常識を知っていて、彼女の父親がやってることにちゃんとおかしいといえる人物でないといけない。
そういう点ではキチンと登場人物として重要ではあるんだけど、じゃあ彼はこの事件を通じて何を得て、それが自分の仕事にどう影響するのかを考えると、特にこれといった苦悩や葛藤、成長部分は描かれない。
だったら彼の立ち位置いる?主役じゃなくてよくない?と思ってしまったのであります。
これなら円華を主役にして、たまたま事件に出くわしてしまったことで協力することになってしまった、足を引っ張るけど、円華のメンターになったり、大人としての見解を述べるお兄さん的助手のような立場で話を進めていった方がいいんじゃないかと。
それか、刑事と教授を一つの役柄に収め、論理的に追求する教授の視点と殺人事件として真犯人を追う刑事の視点をまとめることで、いちいちその人物の視点で話を追うことなくすればスムーズになったかもしれないです。
刑事もきっと今回の事件で手柄をあげたいという野心的な部分が垣間見えたのですが、彼のサイドストーリーもどこか中途半端で、だったら彼もぶっちゃけいらないなぁと。
場面が動かないなぁ。
僕の中では監督の過去作「無限の住人」にそれなりの評価してるんです。
理由は木村拓哉の圧倒的オーラとアクションに関してからくるもの。
ただ、苦しい部分もあって。
どこかというと、人物が1対1で会話をするシーンがとてもつまらないということ。
この会話のシーン、いつもまったりとしている画になっていて、結構大事なこと言ってるような会話なんだけど、カメラもそこまで動かないし、役者も動かないから会話が入ってこない。
これは僕がそう思うだけで、もしかしたら他の人はこういう方が話が入りやすいってこともあるかもしれないし、または監督がそう思って意図してやってることなのかもしれないんだけど、いや絶対動きとセリフがあった方が意識して頭に入ってくると思うんだよなぁ。
無限の住人ではこれをやった後アクションに入るの繰り返しだったんでまぁギリOKかなぁというのがあったんですが、今回はそういうアクションなど全くないわけで。
円華と青江が車で逃げるシーン以外は、会話会話回想、会話、説明、会話。
これが延々と続き、演者が何か身振り手振りするのならまだいいのですが、動きもしない。もちろんカメラも顔ドアップですから役者の表情で画を持たそうとする。
いやいや持たないから。
これを音楽で持たそうとするから余計に苛立つ。
それっぽくミステリーな音楽で、ここ重要!みたいにしますが、それもそのシーンも尺が長いからあまり意味をなさない。
こんなのが続けば観てるこっちもダレて疲れます。
それとは一転してクライマックスでは、ある人物とある人物が対峙して思い思いを語るシーンになるんですが、ここではなぜかカメラ固定じゃないんですよね。
多分ある程度長回しだったと思います。
だからなのか急に役者に寄ったり引いたりするんですよカメラが。
しかもピントもぶれたり、フォーカスが定まってなかったり。
なんだこれは。
何の意味があるんだ。
本物のストーリーをこれで完成させるという黒幕の言葉通り、まるで舞台をやっているかのような身振り手振り。
確かにこれまでの展開とは一線を画した撮影方法ですが、あまりにも急で浮いちゃうんだよなぁ。
最後に
円華の行方を追う民間業者のSP役を高嶋政伸が演じていたんですが、ここ最近彼の役柄といえば悪~い役ばかりで、今回もきっと円華を執拗につけ回し追いかけることで彼女の行動を邪魔するような存在なのかなぁと思ったら、最後にフッツ―にカッコよく追手と戦い、円華と青江を助ける結末になっていて、それが今回一番意外だったなとw
スゲーどうでもいいところを褒めてしまうあたりが、この映画が如何に褒めるところが見つからないかを物語ってしまう点ではあるんですが。
僕が今回面白く感じなかった要点は、主人公の人物設定に魅力が全くなかったのと、やっぱり三池監督は俺と相性合わねえなぁということくらいでしょうか。
あとはただでさえ複雑で小難しい話なのだから、それ以外は整理してスムーズに見せたほうが映画として見やすいしわかりやすいよなぁとも。
未来を予測することが人間にとって、どれだけ未来を悪くすることなのかという方向は非常に良いメッセージだとは思いますが、この物語ではそれすらも活かせていない幕切れでした。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆★★★★★★★★2/10