モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「SEOBOK/ソボク」感想ネタバレあり解説 パク・ボゴムがかわいい顔のくせに破壊力が凄い。

SEOBOK/ソボク

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 2000年以降「クローン」を題材とした映画がいくつも製作されました。

何故増えたのか、どの作品がきっかけになったかはよくわかりませんが、「スターウォーズ/クローンの攻撃」は世界的にも印象的な作品だったのではないでしょうか。

 

それからというもの、「バイオハザード」シリーズ、「イーオン・フラックス」、「アイランド」、「オブリビオン」、「ローガン/LOGAN」などストレートなSF作品もあれば、「わたしを離さないで」なんてヒューマンドラマでも扱われました。

 

遺伝的に同じ性質を持つ生物=クローンは、植物や動物を研究材料に成果を発揮していますが、ヒトで作成することに関しては法的にも倫理的にも禁止されているそうです。

 

フィクションである映画は、クローンを題材にすることでSF的な演出やサプライズを用いたりすることがありますが、クローンを通じて命の価値や尊さを与えたり、クローンとして生まれた者たちにも尊厳があるという解釈をする作品もあり、非現実的でありながら現実にも通じるテーマを含んでいるのだと思います。

 

今回鑑賞する映画は、余命宣告を受けたエージェントと死ぬことのないクローンが、心を通わせながら、宿命に抗っていくSF大作。

 

韓国映画ということで、とてつもなくエンタメ映画になっていると思います。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

作品情報

2012年に公開された作品が一大ムーブメントを巻き起こした監督が、クローンを題材にしたSF作品を製作するという新たなジャンルに挑戦。

 

余命宣告を受けたエージェントが、人類に永遠の命をもたらすというクローンの護衛をしていく中で、激しい襲撃やクローンと衝突をしながらも、心を通わせ危機を脱していくロードムービー型SFアクション。

 

ハードなアクションも表情豊かな演技もこなす韓国人気スターと、青春ドラマで活躍する将来有望な若手俳優の共演によって、両極端な立場に置かれた2人が死への恐怖を克服しながら絆を深めていく物語に説得力を与えていく。

 

また、クローンを描くにあたって膨大なリサーチとデザインを追求。

ハリウッドと張り合えるリアリティな映像を作り出した。

 

韓国映画史上初のクローン人間を題材にした映画。

その実力やいかに。

 

 

 

あらすじ

 

余命宣告を受けた元情報局エージェント・ギホン(コン・ユ)。

 

死を目前にし明日の生を渇望する彼に、 国家の極秘プロジェクトで誕生した人類初のクローン・ソボク(パク・ボゴム)を護衛する任務が舞い込む。

だが、任務早々に襲撃を受け、なんとか逃げ抜くもギホンとソボクは2人だけになってしまう。

 

危機的な状況の中、2人は衝突を繰り返すも、徐々に心を通わせていく―

しかし、人類の救いにも、災いにもなり得るソボクを手に入れようと、闇の組織の追跡は更に激しくなっていく―(HPより抜粋)

 

youtu.be

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、イ・ヨンジュ

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映画ファンならご存じ「建築学概論」で初恋シンドロームを巻き起こした監督。

 

 一組の男女の甘酢っぱくほろ苦い初恋の記憶と15年後の再会を、建築を仲立ちに切なくも繊細に綴ったラブストーリー。

 

家を建ててほしいと頼んできた相手が、当時の初恋の相手でございまして。

男としてはほろ苦い思い出でございますから、仕事とはいえ色々複雑な部分もあるわけで。

そんな気持ちが見えるやりとりと、当時の2人の出会いから思いが芽生えるまで、そしてなぜ初恋実ることなく15年の月日が流れたのかを、韓国特有の繊細な空気感によって涙を誘うわけでございます。

 

当時まだ大作映画ばかり見ていた僕でしたが、なぜかこの映画が面白いぞ!なんて評判を耳にして劇場に駆け込んだ思い出がありまして。

当時好きだった相手を思い出しがらボロボロ泣いたもんですw

 

そんな恋愛映画を作って一躍有名になった監督が、急にどストレートなSF映画を作るというんですから意外です。

 

なんでも誰もが脅える「死」と、誰もが望む「永遠の命」を背負っている二人を通じて生きる意味とは何かを問う作品にしたかったとのこと。

ジャンルは違えど、2人の背負ってるモノを照らし合わせながら答えを導いていくドラマになっているんでしょうか。

今回も泣いてしまいそうだなこりゃ…。

 

 

登場人物紹介

  • ギホン(コン・ユ)・・・ある事件でトラウマを負い、不治の病に苦しむ元情報局要員。ソボクの細胞を得ることで病を克服できると言われ、ソボクを研究所から安全に移動させる任務に就くことに。次々と迫る危険を共に乗り越えていく中で、ソボクに対して情が芽生え始める。

 

  • ソボク(パク・ボゴム)・・・幹細胞複製と遺伝子操作で作られ、10年前に誕生した人類初のクローン人間。普通の人間の2倍の速さで成長するが、細胞分裂を抑制する薬があれば永遠に生きられる。生まれてからずっと実験室の中だけで生きてきた。その細胞は人類に「不死」を与えるため、国家のみならず世界中から狙われることに。逃避行の中、ギホンと一緒に生まれて初めて本当の世界に向き合う。

 

  • アン部長(チョ・ウジン)・・・隠遁生活をするギホンに、ソボク輸送の依頼をする韓国情報局要員でギホンの元上司。国家安保を口実にソボクの存在を抹消しようとする。

 

  • イム・セウン(チャン・ヨンナム)・・・ソイン研究所の責任研究員としてソボクを誕生させた張本人であり、ソボクの成長過程を最も近くで見守る人物。

 

  • シン・ハクソン(パク・ビョンウン)・・・極秘プロジェクトのすべてを掌握しているソイングループの代表理事であり研究員。彼にとってソボクは単に研究を通じて作り出した1つの実験体であり、守るべき大事な「資産」にすぎない。(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

対極な2人のドラマと、組織や情報局らによる執拗な攻撃といったアクション。

日本とは規模の違うリアルな映像表現が非常に楽しみです。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

人間を作って人類を永遠に生き永らえさせるって考えが好かんね~。

とはいえ韓国映画はどんどんスケールデカい映画作るもんだ。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

恐怖を恐れるから生きるのだ

脳腫瘍により余命わずかのエージェントが、人類初のクローンの護衛任務をしてく中で、過去への償いを背負いながらも生きたいと望む気持ちや、永遠に生きることの苦しみと永遠に眠ることへの憧れを抱く気持ちをさらけ出しながら絆を強めていく2人のロードムービー具合と、大国からの意向と倫理的な思考から排除を目論む国の情報局側と、神の権力欲しさにソボクの存続を望む欲まみれの企業トップによる三つ巴のソボク争奪戦が、VFX技術によってド迫力で描かれるSFアクションドラマでございました。

 

人はなぜ生きるのか、人はなぜ死ぬのか。

様々な映画で語られているお題目でございますが、本作は人間側の考えと対比して、望まずして作られてしまった実験体側が、何故永遠に生きなくてはいけないのか、なぜ死ぬことを許されないのかという視点を取り入れることで、死生観を説いたお話でございました。

 

つい最近公開された「Arc/アーク」では、永遠の命を手に入れたうえで「生きるとはどういうことか」を説いた作品でしたが、それとはまた違った作品でもありました。

 

www.monkey1119.com

 

死を恐れるから人間は健康を維持し、生きることに懸命なっていく。

では、健康を維持しなくてもクローンが生み出した細胞によって永遠に生きることが出来たら、人間はどうなっていくのか。

ここに関して本作はしっかり危険性を明確に提示しているので、僕としてはアークでボヤ化していた部分をはっきり言ってくれた点に関しては良かったと思っています。

 

だって劇中で言っている通り、人類が永遠に生きたら欲だらけになって地獄ですよ。

生きるには金が必要ですから、皆金稼ぎに躍起になるだろうし、人口が減るばかりか増える一方だろうから、食糧だって資源だって奪い合いになる。

正に地獄絵図です。

 

だからソボクを作ること自体やっちゃいけないことだよと。

にもかかわらず韓国のどこぞの企業が権力欲しさに作ってしまった。

クローンとはいえ見た目は人間。

でも研究者たちは「実験体」という。

トマトの茎からジャガイモが生まれたなんてありえますか?

 

待て待て、でも中身が機械じゃあるめえし、どう見たって人間だ。

そんなの一緒に至ら情が沸くし、ソボク自身感情を持っている。

こいつの話聞いたら悲しくて仕方ないよ!

 

幾らクローンだからって、人を永遠に生かす道具だからと言って、こいつの意見は無視か?こいつに尊厳はないのか?

 

ホント韓国映画って体制側に腹が立つように描いてるのが巧いですよね~。

企業の会長のジジイが憎たらしいったらありゃしないし、ギホンの元上司ですか?こいつも国の情報局ってことで汚い手使って二人とも処分しようと裏で手まわしたり、アメリカに渡す前にソボクを処分して、クローン自体なかったことにしようとするのとか、ホント憎たらしい顔をしてるわけですよ。

 

さらにギホンの過去が明かされるシーンによって、上司への憎しみが倍増する構造になってるわけで、そりゃあクライマックスでのおそうじ具合は爽快です。

 

 

・・・話がそれましたが、ギホン自身脳腫瘍という余命わずかな病気でありながら、ソボクの前では「お前が生きてりゃ俺も助かる」とか言ってるんですけど、実際治療せずに向精神薬で眠りにつくだけって処置しかしてないので、恐らく彼は死にたい願望がどこかにあった気がするんですよね。

実際過去に上司の命令でやりたくもない仕事をやらされる羽目になって、その傷が癒えぬままなわけで、こんな汚い俺が生きている価値ねえ!みたいな気持ちだったんじゃないかと。

 

でもソボクと一緒に旅をしていく中で、死なないクローンとはいえこいつにも生きることの意味や死なないことに対しての葛藤を知ったことで、自分みたいなやつが何言ってんだ・・・って同情していったんだろうなって。

 

また銃を向けられたことで、自分が縦になるんだけど逆に助けて貰ったり、ソボクが生きたい場所で打ち明けられた悲しい過去もプラスに働いたわけで。

だから彼の暴走を止めるのは自分しかいないし、ソボクもそれを願ったのかなぁなんてのを見ている時に感じたのであります。

 

 

ソボクもソボクで、最初無表情だし街に出たら出たで興味津々で一人勝手にほっつき歩いて、ギホンと同じように「うろちょろするな!」と苦笑しながら思ってましたけど、そもそも初めての外出だろうから興味津々になるのも無理はないわけで。

 

もうソボク大変ですよ。

永遠に生きなきゃいけない使命を与えられ、人類が永遠に生きるために毎日骨髄にぶっとい注射を打って細胞分裂を防がなきゃいけない。

飯もなんだかよくわからない薬ばかり飲まされるし、自分が作られたきっかけも母親のエゴからなわけで。

 

そりゃ人間の中にも望まれずに生まれたなんて思ってる人もいると思いますけど、それよりも遥か上の悩みですよ。

生まれたのでなく作られたんですから。

 

ましてや眠れないんですって。正確には眠らないか。

だから死ぬ=永遠の眠りなのに、人はなぜ眠るのか理解できないんですよ。

死ぬのが怖いくせに、眠るのはなぜだと。

ギホンは朝が来ることを信じてるからって巧い返しをするのが、本作の一番のやり取りだったりするんですけど、こんなやり取りをしつつ、時にはぶつかり合って、互いが「生きる」意味を模索していくお話なんですね。

 

結局のところソボクは自分が生きる意味は、自分の骨髄から細胞を抽出して、人類の役に立つことだと。

他に居場所ないしとか悲しい事言うなよ~とも思いましたけど、ギホンと旅する中で決心したってことなんでしょうか。

それともお母さんの気持ちを汲んだからなのでしょうか。

とにかく彼が決心したにもかかわらず、欲にまみれた奴らのせいで実験材料としか見られない彼の怒りがスパークするクライマックスはものすごいことになっております。

 

クローンでなくミュータント級

本作の罪な所は、ソボクが持つ能力を本作の宣伝で隠してるところですね。

おそらくこれを明かすと、せっかくパク・ボゴム目当てなのかコン・ユ目当てかで行こうとしている韓国好きマダムたちの足を遠のかせてしまう気がしたのか、予告編でも伏せてましたね。

 

まぁ予告編をよく見ればなんとなくわかっちゃうんですけど、ソボクには実験体を成長させていく過程で副作用が判明。

空間圧縮能力とでもいうんでしょうか、周囲の物体や空気の流れを変えて、思うが儘に動かせるんですね。

 

ギホンが研究所に招かれた際に、ソボクのいる部屋で能力を発揮したシーンでは、周りの砂や意志が動きだしたり、木の葉が揺れ緩い竜巻になったりという程度でしたが、逃亡中に隠れたアジトでは、拳銃を向けられたギホンを助けるために銃弾の方向を変えたり、相手をふっとばして部屋中めちゃくちゃにしたりするんですよ。

 

とんでもない力を持ってるなぁと意表を突かれたわけですが、この力が物語が進むにつれて大事になっていくんですね。

ガソリンスタンドで車内にいてもらうようお願いしたギホンでしたが、戻ってくると車内にいない!

どこ行った!と思ったらすぐ近くのコンビニで変な兄ちゃんに絡まれて、コンビニの棚ごと相手を吹っ飛ばしたり、拳を振りかざしてくる男の手を握って捻ってしまったり、挙句の果てには窓の外へ相手を吹っ飛ばして店をめちゃめちゃにしてしまうくらい暴走しだすんですね。

 

もちろん相手が先に手を出したからやったわけですが、加減を知れ加減を!w

お母さんはどういう教育をしてるんですかw

 

クライマックスはとんでもない能力で敵を一網打尽します。

結局帰る場所がないからってのと、ギホンを助けるために彼は研究所へ戻る決意をします。

すると彼の骨髄からips細胞を抽出する実験を開始。

気絶から回復したギホンがその光景を見るや否やドン引き。

たった数時間で彼の気持ちを悟ったギホンは、何年も一緒にいるのに実験体としてしか見ていない研究員や神に成りたい一心の会長に怒りをあらわにし、拳銃を向けます。

 

しかし数の多さからフルボッコ。

しかもお母さんは、息子の意に背いて作っってしまったことへの償いから会長に銃を向けますが、傭兵に銃殺されており、それ見知ってしまったソボクは怒り心頭。

研究員のリーダーを能力で抑えつけ、一度ではなく二度も三度も地面に叩きつけるのであります。

 

こうなったらみんなぶち壊してやる!と研究所は彼の能力によってどんどん破壊されていきます。

一番爽快なのは、車いすで傍観している諸悪の根源である会長を抹殺する場面。

ただ苦しめるだけではありません、車いすのぺちゃんこにする要領で会長ともども丸めてしまうのであります。

このぺちゃんこにする過程をしっかり会長の表情をアップで捉えることで、彼の苦しそうな顔を拝めるので爽快なのです。

 

船内にある研究所は見事に木っ端みじん。

外で街噛まれる情報局のやつらも、地割れからの爆風だったり、地面を重力で押し付けるなどしてメタメタにします。

 

こんなに能力使って大丈夫なのか?大丈夫なわけありません。

そもそも彼は24時間ごとにお注射しなくてはいけない身。

3日間もお外で逃亡していたせいで、注射を打ってないことから吐血を繰り返していましたし、クライマックスに至っては耳からも血が出てましたから、代償は大きいです。

 

果たして目覚めたギホンは、暴走を止めないソボクをどう対処するか。

是非結末をご自身の目でお確かめください。

 

 

最後に

正直本作のテーマ性とかメッセージ性ってのが、アクションやVFX描写が凄いっていう視覚効果面の強さに負けてしまっていて、しっかり掴むことができなかったんで、肝心の中身がうやむやのまま感想を書いてしまってるんですが、ビジュアルとギホン&ソボクの逃避行パートは見ごたえ十分だったと思います。

 

最たる要因はソボク演じるパク・ボゴムのキャラクター性だと思います。

ギホンに質問攻めなとことか街の中を勝手に徘徊したり、ギホンにうるさいって言われてせいで、おとなしく体育座りして靴のマジックテープをつけたり剥がしたりしていじけて見たり、初めてのカップラーメンが衝撃的過ぎたのか何個もおかわりしてみたりと、可愛い顔だからこそ「しょうがないね~」と思えてしまう表情が最高です。

 

そんなかわいい顔しといてなかなかの人生送ってっるわけですから可哀想って感情移入しちゃうし、その反面怒ったらとんでもねえ破壊力見せてくれるんですから、面白いに決まってるじゃないですかw

こんなソボクに苛立ちながらもお兄ちゃん的アメとムチを繰り返すコン・ユの演技もバランスを取っていて良かったのではないでしょうか。

 

とはいえ、監督の作品としては過去作を越えるような感動を得ることができなかったのは残念。

次回作に期待って感じで。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10