モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

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映画「Arc/アーク」感想ネタバレあり解説 永遠の命を手に入れたからこそ気づく死生観

Arc アーク

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 若い時って金はないけど時間と体力だけは有り余ってて、色々ムチャ出来たもんです。

しかし歳を重ねていくと疲労回復もままならぬまま毎日を過ごさなくてはいけなくなり、気が付けば「若さっていいなぁ」なんて途方に暮れるもんです。

 

冒頭から既にジジイ的発言をしてしまってますが、若いままの状態をいつまでもキープすることが出来たら、また生き続けることだ出来たら、人生は、社会はどうなっていくんでしょう。

 

運動や食事や美容、生活習慣に気を付けることで「老化」を防ぐアンチエイジングが盛んな昨今。

確かに若さを保てれば病院に世話になることも少ないし、恐らくこのままいけば年金がいつもらえるかわかりませんから、老人でも働くことも考えなくてはならない。

 

こう考えると「若いままの状態で生き続ける」ことって個人としても全体としてもプラスしかないんじゃないのかと思うんですが。

 

今回鑑賞する映画はそんな「永遠の若さ」を手に入れた女性の物語。

そう遠くない未来を舞台に、朝ドラ出身女優が生と死、そして愛についてを、若さを保った状態のまま長い道のりをかけて探っていく物語。

 

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

作品情報

紙の動物園」でネビュラ賞、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞の3冠を制した作家ケン・リュウが手掛けた短編小説を、世界が注目する映画監督の手によって映画化。

 

そう遠くない未来を舞台に、ボディワークスで才能を開花させた女性が、世界初の「不老不死」を施術し生きていきながら、生死について愛について模索していく姿を描く。

人類にとって禁断の技術ともいえる「永遠の若さ」は、私たちに何をもたらすのかを、彼女を通じて知ることになる。

 

連続テレビドラマ小説で主演を飾って以降、数々の作品で存在感を放つ若手女優が、10代から100代までを一人でこなす本作は、彼女を俳優としてのネクストレベルへ到達させた。

他にも豪華出演陣が出演。彼女と共に熱演を見せる。

 

物議を醸しそうな問題でありながら、命を超越した存在の女性を通じて「生と死」をエモーショナルに綴っていく。

本作を見終えた後、深い余韻に包まれることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ

 

 舞台はそう遠くない未来。

 

17歳で人生に自由を求め、生まれたばかりの息子と別れて放浪生活を送っていたリナ(芳根京子)は、19歳で師となるエマ(寺島しのぶ)と出会い、彼女の下で<ボディワークス>を作るという仕事に就く。

 

それは最愛の存在を亡くした人々のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する仕事であった。

 

 

エマの弟・天音(岡田将生)はこの技術を発展させ、遂にストップエイジングによる「不老不死」を完成させる。

 

リナはその施術を受けた世界初の女性となり、30歳の身体のまま永遠の人生を生きていくことになるが・・・。(HPより抜粋)

 

youtu.be

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、石川慶

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愚行録」、「蜜蜂と遠雷」に続く作品となります。

 

監督の特徴はやはり映像にあります。

愚行録では、人間の弱さや非情さや狡猾さを淡々と映し出すことで、ミステリーでありながら人間の深部を表面化し、愚行といえども愚行だと割り切れないような人間像を惜しみなく描いていたと思います。

 

また蜜蜂と遠雷では、音楽をテーマにした青春群像劇として、音を奏でる喜びと勝者になるための苦悩を、時にファンタジックに時にエモーショナルに描いたように思えます。

 

これらを経て製作した本作。

タブーに切り込むことからどこか後ろ向きな内容になってる気がするんですが、実はそうではないように作り上げたそうです。

 

一体どういうことなのか。

私モンキーが公私共にお世話になっている映画ライターのJoshuaさんと監督とのトークイベントの模様が記事になってますので、そちらを貼りつけておきます。

www.anemo.co.jp

 

 

監督に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

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キャスト

本作の主人公、リナを演じるのは芳根京子。

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彼女の出演作をたくさん見ているわけではないんですが、毎度スクリーンで彼女を見るたびに、全く別の顔を見せる稀有な女優さんだなぁと。

 

特に「累ーかさねー」では、土屋太鳳と共に2つの役を演じ分ける難役をこなしており、映画の内容以上に、2人の女優にやられた作品でした。

 

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2021年で言えば「ファースト・ラヴ」での精神不安定な女性の役は、非常にインパクトのあるお芝居で、高笑いしたと思ったら急に泣きだしたり、理性がぶっ飛んだりと様々な感情をすぐに引き出す能力を見せつけられた気がします。

 

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そんな芸達者でもある彼女が、今回10代から100歳以上の年齢まで一人で演じるそうです。

過去作での彼女の活躍を知っていれば期待しないわけにはいきません。

監督の映像表現力も加わって、さぞかし素晴らしい演技をしてくれることでしょう。

楽しみです。

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

リナの師エマ役に、「キャタピラー」、「ヤクザと家族」の寺島しのぶ

エマの弟天音役に、「何者」、「さんかく窓の外側は夜」の岡田将生

他、「桐島、部活やめるってよ」の清水くるみ、「サイレントトーキョー」の井之脇海、「浅田家!」の中川翼、「Fukushima50」の中村ゆり、「男はつらいよ」の倍賞千恵子、「浅田家!」の風吹ジュン、「深夜食堂」の小林薫などが出演します。

 

 

 

 

 

 

本作は不死への警鐘なのか、それとも人間賛歌なのか。

永遠の命を得ることで見える「死生観」を、監督はどのように表現したのでしょうか。

早速鑑賞後の感想です!!

 

感想

不老不死を得た女性を通じて見せる「あなたの人生の物語」。

もし永遠に生きるなら人生は豊かになるのだろうか。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

非常に議論し甲斐のあるテーマ。

不老不死を手に入れた女性の生涯を通じて、永遠の命を得ることが果たして豊かな人生を送れるのかどうかについてを、持つ者持たざる者、持てなかった者持たなかった者たちとの関わりを経てたどり着く答えを映し出す本作は、色彩豊かな近未来感溢れる描写で芸術性を高めていく前半と、先の未来にも拘らず田舎の島を舞台にモノクロームで映し出す逆転の発想でSF色を強めた創意工夫が見事である一方、命の選別や倫理観などを浅く感じてしまったことで、どこか現実味を感じなくなってしまった作品でございました。

 

まず最初に言っておきたいのは、僕自身が「いつ死んでも構わない」考えを持っていること。

 

これまで両親に多大な迷惑をかけ自由奔放に生きてきた僕にとって、やりたいことは全てやり尽した感があること、それに対する代償の大きさ、働いて寝るだけの日々に疲弊していることなど、この先生きていても今以上の素晴らしい未来が待っているとは到底思えず、ただただ「死を待つだけの肉体」と化しているせいで、今更自分が永遠の命を手に入れたことになったとしても、価値のある事だと思えないわけで、どうにも本作は響かなかった部分が大きいです。

 

いきなりマイナスなことばかり書いてしまって申し訳ありませんが、同じような気持ちで生きている人多いと思うんですよ。

「じゃあさっさと命を絶てばいいじゃんか」なんて思う人もいるでしょうが、要は人生のピリオドが突然来てしまったとしても後悔はないという意味です。

残りどれだけあるかわかりませんが、それまでは多くの絶望と小さな希望を見つけながら普通の日々をこなして生きているってのが今の僕の考えです。

 

 

今の若さを保ちながら永遠に生きることができるとしたら、男女間で捉え方は変わると思うんですね。

 

例えば女性ならいつでも子供が産めるだとか、若々しくいられることで美を保てることができるだとか思ったりすると思うんですよ。

男の場合なら、どれだけムチャをしてもガンガン仕事に打ち込めるとか、若さと体力を理由に諦めていた夢をいつまでも追いかけることができるだとか思ったりすると思うんですよ。

 

じゃあ全員が若さを保ったまま永遠に生きることが出来たら、世界はどうなってしまうんでしょうね。

 

劇中では出生率が過去最低だとか、自殺者もたくさん増えて自殺を合法化しようという動きがあるとか、映し出されてる世界が凄く平和そうなのに、報道の中身は中々ディストピアな内容なんですよね。

 

ずっと生きていれば楽しい毎日だと思える人と、ずっと生きていても苦痛だと思う人の二極化になっているってことなんでしょうか。

 

リナ自身は天音の願いを汲んで子供を設けましたが、報道から察するに、他の人たちは子供を産まずに自分の人生を謳歌している人で溢れてるってことですよね。

人口も変わらないってことなんでしょうか。

むしろ減る一方なのか?

 

年金問題とかも解消されてるんですかね。

老人にならないのだから年金システム自体要らなくなるのでしょうか。

雇用だったり給与だったりもどう影響するんでしょうか。

貧富の差も多分大きくなるんじゃないかな。

自然や生態系にも影響出たりするんでしょうか。

 

 

本作を見て僕が感じたのは、こうした背景ってのが全然見えてこないのが残念だったなぁと。

「永遠の命を手に入れた女性」にフォーカスを与えているから背景に重きを置く必要はないのかもしれません。

一体世界はどうなってしまうのかを説明だけでもしてほしいなぁと。

そこリアリティが見えてこなくて。

 

劇中では「不老化」の薬品を投与できる報道により、希望が殺到して受けることができるのがほんのわずかしかいないことから、赤い旗を掲げた団体が夜ごとデモを起こしていましたよね。

セリフから察するに、選別に漏れた人たちや費用を払えない貧困層に思えます。

 

リナが100歳近くになった時にはほぼすべての人が受けられるような安価になってるんだと思うんですが、やはり当初は富裕層が受けることができて貧困層は受けられない差別があったんだろうなと。

 

また、限りある命である人間を、科学の力で寿命を操作してしまうことに対する反発が劇中では小さすぎるんですよね。

きっとリナがプラスティネーションを学んでから、ボディワークスの代表になるまでの10何年間で、かなりの議論がされたのでしょう。

 

こうした背景を省略したことが僕の大きな不満でもあります。

描けなかったのではなく、描かなかったのでしょう。

それを描いたとしてリナの人生にどんな影響を与えるのかは物語的に必要ないんでしょうし、何より本作はSFの仮面を被ったヒューマンドラマなんですから。

僕が抱いた感想は、ある種場違いなのかなとw

 

死があるから生きることに意味がある

物語は、死体から脂肪と血液をを抜いて、プラスティックを体内に流すことで「死んでいるのにまるで生きている」かのような保存が可能になる技術を生み出し、それを紐で操ってポージングすることで、人間をまるでアートのようにできる「プラスティネーション」が、前半では描かれていました。

 

コンテンポラリーダンスで生計を立てているリナに、何かを見出したエマが彼女を拾い、自分の職場で働かせるわけです。

 

前半は現実とさほど変わらないのにどこか近未来感のある風景が満載でした。

冒頭から映像の光度が最高。

白がかった部分とは対照的に色味のある服や背景は強く映し出してることで、我々が普段見ている世界ではない感覚にさせてくれます。

 

プラスティネーション自体もアート性豊かで、普段目にしないことも手伝って非現実的にさせてくれますし、食べ物だって青いソースのついたパンを頬張り、口に青いソースがついているシーンが映し出されますが、明らかに見た目がまずそうなのに美味しそうに見えてしまうのも面白いなぁと。

 

前半では子供を捨てた後ろめたさがあるリナと、死体をモノ扱いしながら「死への抵抗」を願う人たちに希望を与えるエマとのシーンがメイン。

プラスティネーション自体が死体だけど生きているように見せる技術で、「魂は消えても肉体が残る」ことが、遺された者や逝ってしまった人が人生を豊かにできる手段であることを伝えた内容でした。

 

 

またエマの弟・天音の登場により、死を留めることに意味があると考えるエマと、その先にある「老齢と死を克服する時代」を見据える天音の対立も見えてきます。

死ぬことを恐れないことで人生を豊かにできると考える天音に対し、「生と死が対極にあるのでなく、生の中に死がある」と考えるエマ。

その間でリナはどう決断を下すのかが前半の見どころとなっています。

 

 

物語はリナが不老化の手術を受けることを決断してから数十年後の未来に舞台を移し、不老化を望まない者の登場により、リナは永遠に生きることが果たして人生にとって素晴らしい事なのかを揺さぶられていくことになっていきます。

 

 

後半は幾度かの過去の回想以外はモノクローム映像。

不老化処置しない人や出来ない人を対象に受け入れる「天音の庭」という名の島で暮らすリナと息子、その他の住民を描いていました。

非現実的な舞台やアートなど近未来的な映像が多々あった前半と比べて、先の未来の話なのに逆を行っている映像表現は斬新です。

普通ならもっと未来化された舞台を設定しがちなんですが、今でも普通に存在する島を舞台にすることで、前半以上に人との距離感を縮め、ヒューマンドラマ要素を強めていた感じがします。

 

 

人生をどう生きていくかを永遠の命を手に入れることで、様々な見方を与えてくれる本作。

不老化処置を受けない人物や不老化処置がうまく機能しなかった者との出会いを通じて、当たり前にある「若さ」があるからこそ終わりを迎えることの価値を見出し、人生を豊かにさせていく物語だったのではないでしょうか。

 

全てを手に入れたからこそ、失った何かを欲してしまうのが劇中での自殺志願者なのでしょうか。

リナはそれとは違う見方をすることで、人生を受け入れていくのが印象的です。

 

きっと僕も不老化処置を受けずに、人生を生きていく気がします。

でもいつ死ぬかわからないと脅えているよりも、不老化処置を施すことでピリオドを自分でつけることができるってのも悪くなかったりするんでしょうか。

 

 

最後に

実際に人間をプラスティネーションする技術ってのはあるみたいで、「人体の不思議展」てので展覧する機会があったみたいですね。

とはいえ、人間をはく製にして自宅に置いたところで、お客さんがやってきたら気味悪がられませんかね?

本人は「故人といつでも会える」って意味では良いのかもしれませんけど、世間がどう見るのか・・・。

 

見終わった後の一言が僕の感想の全てを物語っている通り、前半はすごく面白いのに後半が急につまんなくなっていったんですよね・・・。

恐らく前半での視覚的なSF要素がアイディアとして画的に楽しかった半面、後半モノクロでドラマチックにしてしまってるからなのかなと。

あと後半ガンガン編集して進行してエピソードを繋いでいたたのも、それまで技巧的な見せ方をしていたのにやっつけに見えてしまったというか。

 

とはいえ主演を演じた芳根京子は相変わらず素晴らしく、体をくねらしながら心情を表現するダンスシーンや、終盤での小林薫との船のシーンでの涙の出し方なんかすごく自然で見入ってしまいました。

 

科学を扱っていながらたどり着くのは哲学のような死生観。

僕自身題材が合わなかったことや、単細胞なのでこういう映画にはどうも…。

それでも見ごたえのある作品であることは確かなので、僕の感想を読んで気分を害した方は絶賛評を読んで気分を直してください・・・。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10