新 感染2/新 感染半島ファイナルステージ
韓国発のゾンビ・パンデミックアクション「新感染/ファイナル・エクスプレス」。
列車内という密室の中で、ゾンビから身を守るため奮闘する人間たちの群集劇を描いたこの作品。
韓国映画ならではのアクションやドラマ性が色濃く描かれたことで、ただのゾンビ映画としてではなく、優れたエンタテインメント性を発揮してました。
また、かつて北朝鮮軍が南北統一を目指し攻めてきた「朝鮮戦争」といった韓国の近代史を下地にした脚本も光っており、ただのエンタメ映画として片づけてもいけない、非常に練られた作品でもありました。
そんな「新感染」の待望の続編「新 感染半島/ファイナルステージ」は、一体どんな物語になっているのでしょうか。
コン・ユ演じたお父さんの命を懸けた感動のラスト。
あれですべて解決したわけではなかったことは、鑑賞した誰もが感じたことでしょう。
そこから数年後の半島が舞台の本作。
予告を見る限り、パンデミック直後の前作とは全く違う姿になっているではありませんか…。
そうか、もう崩壊してしまったのか・・・
でもだ!
前作より遥かに期待できる舞台になってるじゃねえか!
本当に韓国映画なのかこれ?ってくらい、セットがすごいぞ!!
今の鬱屈したこの状況から解放してくれそうな爽快感を期待したいと思います。
早速先行上映にて鑑賞してまいりました!!
作品情報
2016年のカンヌ国際映画祭のワールドプレミアで絶賛の嵐となったノンストップ・サバイバル・アクション「新 感染/ファイナル・エクスプレス」。
韓国各地で発生した謎のウィルスによって狂暴化してしまった人間たち。
高速列車内に紛れ込んだことから大パニックと化した物語は、国内はもちろんのこと、世界中でヒットを記録した。
ファンたちの熱い議論「その後の世界はどうなったのか」という問いに答えるかのように作られた本作は、すでに崩壊の一途をたどり別世界となった、法も秩序もない半島が舞台。
そこに大金目当てで潜り込んだ元軍人を主人公に、島内で暴れる感染者と謎の狂気に満ちた軍団、生存者家族などが「希望という名の脱出チケット」を手にするために、命をかけた戦いに挑んでいく。
撮影機関に1年を設け、巨大セットに最新鋭のVFXを投入するなど、前作より遥かにパワーアップした内容で描かれていく。
誰も予測のつかない結末へと暴走する脚本も加えて、全てをスケールアップさせた本作。
全世界待望のノンストップサバイバルアクションを見逃すな!
あらすじ
感染爆発が半島を崩壊させてから4年後、家族を守れなかった元軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)は、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っていた。
そんな彼のもとに、ロックダウンされた半島に戻り、大金を積んだトラックを見つけ、3日以内に帰還するという仕事が舞い込む。
だが、潜入に成功したジョンソクのチームを待っていたのは、さらに増殖した感染者たちと、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊。
両者に追い詰められたジョンソクを助けてくれたのは、母ミンジョン(イ・ジョンヒョン)と二人の娘の家族だった。
大金を奪えばこの国を出られるという最後の希望にかけて、手を結ぶことにした彼らの決死の作戦とは──?(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けたのは、前作に引き続きヨン・サンホ。
アニメーション映画「豚の王」で長編映画監督デビュー後、「我は神なり」、「新感染」の前日譚とされるアニメーション映画「ソウルステーション/パンデミック」 など、作品を重ねるごとに監督としてステップアップしていると思います。
前作のヒットを受けて潤沢な予算を得た監督は、さらなる高みを追求すべくVFX技術の高い製作会社とタッグを組んで、よりスケール感のある作品に完成させたそう。
他にも徹底して作られた「荒廃した世界」は、見慣れた風景が壊されたことによる恐怖を際立たせたかったと語っており、そこから人間たちのヒューマニズムを映し出したかったそう。
そして本作最大の見どころとされる「カーチェイス」シーンについても一番尽力したと言及。
前作のような狭い範囲でのアクションとは対照的に縦横無尽に駆け巡るであろうカーアクションは、大いに期待したいですね。
キャスト
本作の主人公、故郷に戻る悲しき亡命者、ジョンソクを演じるのは、カン・ドンウォン。
韓国の俳優はなかなか顔と名前が一致しないのがよくあるんですけど、韓国版「ゴールデンスランバー」でようやく彼の顔と名前を覚えましたw
といっても、ゴールデンスランバーの時のような姿とは全く違う装い。
髪は伸び、やつれた感じに見えますね。
「1987、ある闘いの真実」でも、民主化運動に励む大学生を熱演していたのが印象的です。
彼に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
終末後の世界にいる母親、ミンジョン役に、「バトル・オーシャン/海上決戦」、「美しき日々」のイ・ジョンヒョン。
ジョンソクの唯一の家族で義理の兄、チョルミン役に、「哭声/コクソン」、「26年」のキム・ドユン。
希望を失わない元軍人、キム役に、「ラスト・プレゼント」、「それから」のクォン・ヘヒョ。
生き残るためにハンドルを握る少女、ジェニ役に、「ソウォン/願い」、「無垢なる証人」のイ・レ。
少女ユジン役に、イ・イェウォン。
人間性を失った狂気の軍人、ファン軍曹役に、「シークレット・サンシャイン」、「ベテラン」のキム・ミンジェ。
631部隊の隊長、ソ大尉役に、ク・ギョファンなどが出演します。
終末世界を描いたコリアン・ゾンビアクション。
すごく何かに似ている気配がしますが、敢えてここでは言わないようにしましょうw
前作から明らかにパワーアップした、いや、し過ぎの本作。
どんな出来栄えになっているのでしょうか。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
自分もピンチの状態だとしても「命」を救う価値はあるのか。
フルスピードのカーチェイスが爽快のパニックアクションでした!
でも、明らかに前作の方が良かった…。
以下、ネタバレします。
マッドマックスね、なるほど。
前作のパンデミックから4年後の半島を舞台に、大金強奪に挑む元軍人と半島に生存した家族が協力して脱出を試みる姿を、崩壊した巨大セットを全速力で追いかけるゾンビに縦横無尽に駆け回る武装車、さらには閉鎖社会で生まれた愚弄の極みな娯楽が人間の狂気を掻き立て、最後には「自己犠牲」と「命を救うこと」に対し、一定の答えを提示したパニックアクションエンタテインメント作品でございました。
「東京国際映画祭」の特別招待作品で鑑賞された方のレビューに、「マッドマックス
」というワードがとにかく飛び交っていたのを記憶しているのですが、なるほど、確かに「マッドマックス2」の要素と「マッドマックスサンダードーム」の要素を盛り込んだコリアンアクションになっているなぁと。
ゾンビを蹴散らすために重装備された改造車や、ゾンビを誘導するために派手なライトでデコレーションされたトラック、閉鎖された世界で生き抜くために、またはかつての平和な生活からの飢えにより、狂気を糧に鎬を削る生存者たち。
そしてそんな彼らの唯一の娯楽が、活きの良い生存者を檻に放り投げ、ゾンビと「かくれんぼ」する姿を高みの見物で娯楽に徹するなど、どこからどうみても「マッドマックス」だよなぁと。
特に序盤とクライマックスに用意されたカーチェイスは、破壊された車両によって狭まれてしまったメインストリートを疾走し、襲いかかるゾンビをまるでボウリングのピンのように蹴散らす描写は爽快。
かつて韓国の市街地という設定から、障害などのある程度制限された道のりを有効活用して、さらに加わる障害を吹っ飛ばしていく。
なるほど、「積み上げたモノぶっ壊して まとわりつくモノ払って」よろしく、全力少年スタイルで今回はいったわけですね。
前作では高速鉄道という狭い範囲でゾンビとの肉弾戦が爽快だったわけですが、外は外でこういうゾンビ遊びができる、しかも車をかっ飛ばすのは4年間この地で生きながらえた少女2人が体力面では弱いけど車なら対等に戦えるってのは、「全力少女」ってことで良いアイディアだったのではないでしょうか。
特にクライマックスでの現金輸送トラックと、少女たちが運転する車とのコンビネーションは素晴らしかったですね。
631部隊のアジトから現金輸送車を奪い返し逃亡を図るも、シマを荒らされた復讐から631部隊が暴走しまくり。
しかも自分たちのことはお構いなしで照明弾をバンバン撃って、ゾンビを呼び寄せ行く手を阻めるという作戦。
理屈や理論で追走するのでなく、細胞レベルで瞬時に動く彼らはまさしく人間の姿をした獣!
脂と汗とでテッカテカの肌に、ボロボロの薄汚れた服を纏った容姿。
配給担当の男にツナ缶出せや!と迫る姿は正に欲望の塊であり狼!
そんな彼らがあの銃を持った前髪垂れ男と、トラックを盗んだ女は一体誰なんだ?何の目的でここへやってきたんだ?なぜトラックを盗むんだ?などといった理由など考えることなく、俺らの邪魔する奴は生贄だ!と言わんばかりに追いかける訳であります。
こんな野獣化した部隊をどうやって撒くかという作戦も、少女たちが乗る車が輸送トラックをサポートする形で進んでいく。
横に付けられたらさらに横に付け挟みっこし、ぶつけあいながら瓦礫に突っ込ませるアクションや、照明弾によって群がってしまったゾンビたちを上手く利用し、敵の車両を潰しにかかるといったシーンもあり、瞬きできないカーアクションが連発。
終いには、訪れたばかりの場所で見た「エスカレーターの中で息苦しそうに身もだえているゾンビ」たちを解放することで敵を一掃するといった伏線の回収もされており、全編とおして「ゾンビ」たちは「敵」ではなく「アイテム」のような存在にすることで、脱出したい主人公たちと、シマを荒らされた部隊たちとの対立に特化させた作品になっていたように思えます。
命を救うこと=自己犠牲?
本作のテーマは果たして何だったのだろうかと、見終えて考えてたわけですが、やはり主人公が過去にした過ちから脱するためにしたことが一つのテーマになっているのではないかと推測します。
主人公ジョンソクは、パンデミック直後に姉夫婦を国外へ脱出させるために用意された客船に向って直進していたところから物語は始まります。
そこへ助けを求める一組の夫婦に遭遇。
乗せてほしいと懇願されるも、ジョンソクは定員オーバーであることや、他人を助け散る余裕がない事から無視してしまうのです。
客船に乗ったはいいモノの、目的地の日本ではなく香港へ向かう時着つけたジョンソクは、姉と子と共のいる部屋から離れ大佐の元へ。
しかし姉がいた部屋には感染者が降り、姉と子供はゾンビたちの餌食になってしまうわけであります。
たまたま救援物資を取りに来ていた姉の旦那チョルミンは、騒ぎになっている部屋に行くやいなや妻と子供が餌食になっている姿を目撃し、助けに行こうにもジョンソクが身を挺して制止したため、助けることができず。
こうして二人は香港でアメリカ人が仕切るマフィアに世話になっていく、というのが序盤のあらすじです。
その後荒れた生活から抜け出したいのか、それとも守れなかった命に対して自暴自棄になっていたのか理由は明確には描かれてませんが、ボスから命じられた「半島に行ってた禁を盗んでくる」ミッションに義兄チョルミンと共に向かうわけです。
実は半島で出会った家族の母親は、かつてジョンソクが客船へ向かう途中助けを求められるも見捨てた母親ミンジョンとその娘であることが明かされます。(てか、ジョンソクよく覚えてたな、ドンだけ後ろめたかったんだ)
借りを作ったのだから必ず娘たちを救ってと託されたジョンソクは、部隊に捕まってしまったチョルミンと彼女たちを救うため、ミッションを強行していくのであります。
常々ハリウッド映画やゾンビ映画では、「自己犠牲」することで誰かの命を救うというヒロイックな描写が描かれることが多いと思います。
ヒーローたるもの誰かの命を救うためには多くの犠牲を伴うといった常套句は、今でも通用する謳い文句ではあります。
前作「新感染/ファイナルエクスプレス」でも主人公のお父さんや、マ・ドンソク演じた子供が生まれる予定のお父さんなど、自分の身を犠牲にして子供を助けるという描写がありましたね。
しかし本作は、そういった「自己犠牲」とは違う「命の救い方」を提示していたと思うんです。
寧ろ自己犠牲しようとしていた人を、最後の最後まで見捨てず救うという選択をすることで、過去に冒した過ち=呪縛から解放されていくという着地。
そもそも軍人として国に尽力していた好青年なわけですから、救える命があるならば全力で救うってスタイルに向かっていくドラマ性は悪くないし、自己犠牲しようとしていた者は、救うために犠牲になろうとしていたよりは、どちらかというと出口がない事に対する「諦め」にも見えて、救いの手が見えた瞬間、やっぱり生きたいという欲望が爆発したんですよね。
なんというか、これだけ分断されてしまいがちな社会なわけで、弱者だったり救えない者は簡単に切り捨てて生き延びるみたいな流れになってきちゃってるわけですよ。
いやいや待てよ、自分が助かるためにただ見殺しにしちゃっていいのかい?
そこにまだ救える命があるのであれば救うことが出来んじゃん?
命の価値ってそういうもんじゃん?みたいな。
行き過ぎた答えかもしれないんですけど、それくらい「救うことの意義」みたいなものが本作では提示されていたように感じるんですよね。
とはいえ続編これでいいのか?
とまぁ、モリモリのアクションに「命を救う」ことについてを描いたお話だったわけですが、何でしょうこの全体的に「違う」感じ。
前作も確かにアクションが凄くて、狭い場所をうまく利用して進んでいく過程でしっかり登場人物が活かされたドラマになっていたから、ゾンビアクションだけじゃない感動があったと思うんです。
ですが今回明らかに前作からガラリと変わり過ぎて、これ続編って言っていいの?といいたくなるような内容になっていて、真正面から受け止められないというか、ちゃんとうなづけないというか。
ジョンソク一行の真の敵は631部隊なんですよね。
たぶんこの631部隊って、日本が細菌兵器を実験するために編成された「731部隊」のことを指してるような気がするんですけど。
そうなると、日本が入国拒否したとかってセリフなどを組み込むと、なかなか攻めてる話だとは思うんですけども。
今回正直歴史的背景って、この部分と北朝鮮が安全ていうどっかの国のジャーナリストだかなんだかわからない男が話している内容程度でしか解釈できなくて、その辺も前作のように歴史的背景をドラマにうまく組み込めてない気がするんですよね。
ドラマ要素で言うと、ジョンソクが背負ったモノってのがやっぱり弱いんですよね。
見捨てた命、守れなかった命、俺はなんてちっぽけな奴なんだ・・・そして命じられたミッションでたまたま出会った家族、偶然にもあの時見捨てた母親、託された命、いやあなたも救わなければ僕がここに生きた意味がない!と意味を見出し救う。
ってのがジョンソクパートなんですけども、単純に母親や娘たちとのコミュニケーションが少ないから、ジョンソク理解が早い!突破口見つけるの早い!って感じに見えて。
なのに最後スローモーションで感動を煽るから鼻につくというか。
きっとアクション重視で行くことでドラマパートを後回しにしたんでしょうね。
そんなアクションというか、カーアクションも正直どこかもったいないというか。
一番の理由はCGが粗いことでしょうか。
明らかにセット感のある街の中で同じ道をひたすら走ってるし、ドリフトしながら蹴散らしていくパターンばかり。
しかもなぜかそこを早回しで見せてスピード感を出すんですよ。
リアルなドライブ感になってないというか。
せめて印象的な所はスローモーションにした方が効果的じゃない?
あとカメラがやたら近距離と遠距離ばかりなんですよね~。
遠距離は空撮ばかりで、それも空撮でなくCGに見えたなぁ。
他にも中距離から疾走する車両たちをカッコよくみせていないというか。
あとは単純に「631部隊」が追いかける意味ですよね。
ソ大尉は死のうと思った矢先に飛び込んできた希望に誰かを差し置いてでも脱出したいから追いかけるのはわかります。
ですが、ファン軍曹たちはトラックの中身が食糧だと思ってて、それが奪われて追いかけているんですよね。現金が積んであることも、それを船まで運ぶことも分かってない。
だからあそこまで追いかける意味って食糧が理由じゃなんかスッキリしないというか。
これファン軍曹もソ大尉のように中身と目的を知っていればもっと必死な追走をするだろうし、何より「現金持って帰ってくれば助かるぜ!」ってミッション1本化したほうが物語的にシンプルで都合がいいというか。
ファン軍曹が食糧だと思い込んでいるのだとしたら、もっと半島で暮らしたい理由を明確にしてないと、あそこまで追いかける理由が薄くなりません?
シマを荒らされたことも理由なんでしょうけど、どうしてもこの「追いかけている理由」ってのが弱い気がしまして。
とはいえ、日本じゃ決してできない描写であったことは確実で、潤沢な予算で良くここまで表現できたよなぁと。
そういうところは買いたいですね。
最後に
どうしても前作との比較になりがちな感想になってしまいましたが、ゾンビたちが押し寄せてくる阿鼻叫喚な描写は前作と引けを取らない怖さでしたし、襲い方のバリエーションも増えてましたね。
4年経ったのだから彼らもパワーアップしてると尚良かったんですが・・・。
とりあえず続編が製作されるとしたら、半島からさらにパンデミックが拡大したお話にでもなるのでしょうか。
それとも「猿の惑星」新シリーズのような全面戦争とかになるのか…w
製作されるなら観るつもりではあるので、出来ればもっとドラマ要素をください、監督お願いしますw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10