ティーン・スピリット
優勝すればスターの道を約束されるといっても過言ではないオーディションですが、日本と世界では意味合いが変わってますよね。
世界でいうと「アメリカン・アイドル」で優勝したケリー・クラークソンや、「Xファクター」のワン・ダイレクション、「ブリテンズ・ゴット・タレント」のポール・ポッツのように、すでに実力が伴っている、プロの世界に入っても余裕で渡り合っていけるような歌唱力の持ち主でないと、なかなか優勝などできません。
それだけ実力主義なんですよね、海外のオーディションて。
じゃあ日本はどうなのか。
一応過去には「ASAYAN」のような番組がありましたし、現在でも日韓合同のグループを作るためのオーディション番組「PRODUCE 101」など、ルックスはもちろん、実力のある歌手を発掘する方針の番組は存在します。
しかし日本は未完成の状態、今後成長しそうなダイヤモンドの原石を見つけるようなオーディションに思えます。
それこそここ数年芸能界をにぎわせるアイドルグループが、実力重視でなく将来性などを見込んで採用する傾向と同じように、スタッフとファンが育てていくスタイルが国内では主流です。
ただこれはあくまでアイドルに特化した場合の話なので、ちゃんと実力を計るオーデイションも存在しますけど、僕としては海外のオーディションとはだいぶ差があるように思えます。
多分、戦略の規模の差とかもある気がしますけどね。
国内だけなら日本もこのやり方でいいのかもしれないけど、世界規模でやるならこれだと通用しないよね、みたいな。
今回鑑賞する映画は、そんなオーディションで栄光をつかむべく、田舎から飛び出してきた少女の青春音楽映画。
上で上げた海外のオーディション番組を思わせるような過酷さと華やかさを再現してくれることでしょう。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「Xファクター」出身の伝説的アイドル、ワン・ダイレクションを筆頭に、海外で人気のオーディション番組を題材に、音楽の才能を秘めた若者たちが、夢と希望を胸に抱きながら競い合う姿を、田舎から出てきた少女を主人公に描く青春音楽映画。
架空のオーディション番組とはいえ、予選での過酷なプロセスや舞台裏で巻き起こる悲喜こもごもに至るまで、裏も表もリアルに映し出していく。
また昨今、映像の美しさと音楽の力が観衆の心に突き刺さるような演出が、興行の優劣のカギを握るといってもおかしくない音楽映画。
今作も「ラ・ラ・ランド」の音楽チームだったスタッフを中心に楽曲を製作している時点で保証付きだし、エリー・ゴールディングや、オウル・シティなど現在のポップシーンをリードするアーティストたちの楽曲を使い、主人公の心情にマッチしたナンバーをセレクトしているから、ときめくこと間違いなし。
もがき苦しみながらも栄光をつかもうと必死に歌う主人公たちの姿に、そして物語を彩るEDMに、あなたも胸を熱くすることでしょう!
あらすじ
イギリス南部のワイト島。
ポーランド移民の娘である17歳のヴァイオレット(エル・ファニング)は母親のマーラ(アグニエシュカ・グロホウスカ)と2人暮らし。
父親は彼女が幼い頃に家を出て行ったまま帰って来ない。
学校の友人も少なく、孤独な日々を送る彼女にとって、唯一の心のよりどころが「音楽」だ。
バイト先のパブのステージで歌うヴァイオレット。
その歌声に惹かれたのは、パブで飲んでいたクロアチア出身で元オペラ歌手、ヴラド(ズラッコ・ブリッチ)だった。
見知らぬ相手に声をかけられ、戸惑うヴァイオレットだが、ヴラドの言葉に少しだけ勇気づけられる。
そんなヴァイオレットが街で目にしたのは、「ティーンスピリット」の広告。
昨年の優勝者がプロデビューを果たし、国際的人気を誇る公開オーディション番組だ。
その予選がワイト島で開催されることになり、自分にとって大きなチャンスだと信じたヴァイオレットは参加を決意するのだった―。(HPより抜粋)
ここから鑑賞後の感想です!!
監督
今作を手掛けるのは、マックス・ミンゲラ。
全く存じ上げないんですが、お父さんは「コールド・マウンテン」や「イングリッシュ・ペイシェント」の監督として知られるアンソニー・ミンゲラだそうで、バリバリの2世。
俳優として映画デビューし、端役ではあるものの「ソーシャル・ネットワーク」や「スーパーチューズデー」などに出演歴があります。
また「ルイの9番目の人生」の脚本も手掛けており、お父様譲りのマルチな才能を発揮しています。
今作で監督デビューを果たしたそうで、これからの活躍が楽しみな存在です。
キャスト
今作の主人公ヴァイオレットを演じるのは、エル・ファニング。
ダコタ姉ちゃんの妹としても有名なエルちゃん。
多分ですけど、歌を披露するのってこれが初なんじゃない?
彼女の作品全部観てないんで確実ではないんですけど、そんな気がします。
なんかこれだけ蛍光色の強いライトをバックに、真顔の画像を見ると、「ネオンデーモン」の時の彼女を想起させるんですけど、あれとは真逆の映画だと思うんで、怖がらないようにしますw
サントラでは彼女の歌が収録されてるってことで試しに聞いてみたんですけど、第一印象としては、地声と歌声が結構一緒だなぁと。
結構いるじゃないですか、話してる声とまるっきり違う声で歌う人。
僕はそういうギャップがもしかしたらあるかなぁと期待して聞いたんですけど、意外とそのままだったなぁと。
実は彼女の地声、あまり好きじゃなくて。
そこまでトーンが高くないってのと、どこかこもってる感じがして。
比較するのもおこがましいですが、お姉ちゃんのほうがいい声してるなぁと。
もちろん歌はめちゃめちゃうまいですよ!
映像で観たらまた印象が変わるかもしれません。
そもそも歌手ではありませんし、好みの問題ですからw
彼女に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
ヴラッド役に、「2012」、「プッシャー」のズラッコ・ブリッチ。
ジュールズ役に、「アイアンマン3」、「ザ・ギフト」、「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」の、」レベッカ・ホール。
マーラ役に、「インビジブル 暗殺の旋律を弾く女」、「チャイルド44 森に消えた子供たち」のアグニエシュカ・グロホウスカなどが出演します。
モンキー的には大好きな青春×音楽映画。
ノリノリのエレクトロ・ミュージックに体揺らしながら観ちゃうんだろうなぁw
ビンボーゆすりだと思われないように気をつけねば!
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
ん~無難!無難すぎる!
監督がやりたいことが凄く分かるんだけど、上っ面だけしか表現されてないんだよなぁ。
以下、ネタバレします。
田舎でくすぶって終わりかい?
田舎で暮らし母子家庭で育った主人公ヴァイオレットが、「歌が好き」という自分の得意分野を活かすに活かせない苦しい私生活の中で、ようやく希望への出口を見つけ羽ばたいていく姿を、海外のオーディション番組さながらの設定や舞台演出、ヴァイオレットはじめオーディション挑戦者の圧倒的パフォーマンスに魅了され、説明少なにどんどん進んでいく物語のテンポの良さが、まるで若い頃の時間の経過を現しているかのようなスピードと重なることで、如何に抽象的な記憶しかなく輝かしく光眩しく酸いも甘いも濃密な青春時代だったのかを思い出させてくれると同時に、夢見る若者たちにくすぶってないで挑戦してみろ、と教えてくれる映画でございました。
エル・ファニングって、普段はきっとおてんばで可愛らしい女の子だと思うんですけど、どの映画を見てもいつも心ここにあらずで不愛想な女性を演じてるなぁ、演じてなくてもそういう表情をするのが上手いなぁって思うんですけど、今回も「あ~あ、歌思いっきり歌いたいけど、親うるさいし学校つまんないしバイトかったるいし友達付き合いもめんどくさいし、てか田舎マジつまんない」みたいな顔をずっとしてるのがね~、ドはまりっしょw
そんな顔をしながらの毎日を送ってると、バスの窓の外に大きな「TEEN SPILIT」の文字。
ここから彼女の人生が大きく変わっていくわけですね~。
校内ではどいつもこいつも自信満々で「応募した?もちろん、トリオで(んだよ結局ひとりじゃねえのかよ)」とか、「彼氏のBMWで行くわ」とか、正直今の自分がよほどパーフェクトだと思ってるのか、並々ならぬ覚悟のやつは誰一人いないっていうね。
こういう奴らは基本、TVに出れることに重きを置いていて、あれよあれよと有名になってチヤホヤされたいだけっていうのが関の山なんですよ。
それに比べてヴァイオレットは、誰も聞いてもいないバーでメジャーでもない曲を披露したり、部屋の中で思いっきりノー・ダウトを聞きながら踊ってストレス解消したり、それこそ好きな音楽をipodで聞きまくって、いつかいつの日か歌を披露したい夢を募らせてるわけです。
この辺りは僕も似たような高校生活を送っていたので、すごく共感できる序盤で、誰も自分のこと分かってない、俺はもっとできる、みたいに井の中の蛙な日々を送っていたし、クラスの中で音楽やってる奴の音楽性に全く理解できなかったし、とにかく早く東京へ出てやりたい事やりたいって想いが大きかったです。
ただ僕の場合オーディションでなく、自分で新聞配達しながら学費払って専門学校行ってって選択をしたので、ホント好き勝手やらせてもらったってのが強いんですけど、ヴァイオレットはそうではないので、その辺りから僕とは大きく違ってくるんですけども。
10代って人生の中で一番色々なことが楽しい時期だと思うんです。
将来の事、友達の事、恋人の事。
どれもこのまま時間が止まっていてほしいと思うほど楽しい。
将来の事なんか未来予想図だけとてつもなく大きくて、そればっかり考えて特にそのための努力をしていなかったり、友達も恋人もこの関係がいつまでも続くと思ってる。
その時は楽しいけどその先の楽しさを見いだせていないというか。
次のステップを踏むための何かを見つけぬまま、時を進めてしまう、そんな残酷さもはらんでるのが10代の時間だと思うんです。
もちろん利口な奴もいて、みなとうまく付き合ってる間にしっかり自分の将来を見据えて磨いている子もいるわけで、全員が全員じゃないんだけど、結構その時間を疎かにしている人、多いよなぁって。
だからその時間を無駄にしてはいけないと思うんですよ。
ヴァイオレットは才能ありきな所もあるけれど、何より大事なのはチャレンジすることを決断したこと。
そして掴んだチャンスを逃さないように訓練をしたこと。
確かに素人ではブレスの位置がおかしいのは当然で、それを変えるだけで抜群に歌が上手くなることもあるわけで、そのポテンシャルをさらに引き出してくれるヴラドというパートナーもいる幸運に恵まれている。
そうしためぐりあわせが彼女の背中を後押ししてくれるってのが凄く羨ましいなぁって。
仮にこのオーディションがダメだったとしても、それ以外にも挑戦して失敗したことがこの時期では大きな糧に繋がることがあるわけで、これがもう少し歳をとると、後に引き返せなくなったり、引きずったりするんですよ。
大人のおれがそういう道を歩んだんだから、そうに決まってるw
よくオジサンオバサンがいうじゃないすか、「若いうちの苦労は買ってでもしろ」って。
どうせ大人になったら挑戦なんかせず、安定を求めてしまいがちなので、是非10代の方はこの映画に感化されて失敗してもいいから挑戦してみてほしいなぁ、なんて、鑑賞中に感じました。
オーディションについて
別に僕はオーディション番組なんて全然興味がないから知識も教養もないんですけど、この映画を通じて、海外のオーディション番組がどういうモノかをなんとなくですが理解したつもりです。
てか意外なことが多すぎるなぁって。
この「TEEN SPILIT」って番組は、初めて100か国で放送されるくらい人気の番組に成長したようで、そこからスターも何人か輩出してるほど実力のある番組なんですね。
どうしてそこまで凄いスターが生まれるのかってのをヴァイオレットの視点で知ることになるんですけど、いきなりオーディションの予選から空気が違うw
歌をみんなの前で披露したり、何人かで踊ったりして、その場で合否を言い渡されるという中々トラウマになりそうな現実を突きつけるんですね。
その後2次予選でも、用意した歌をアカペラで歌わせたり、用意してない歌も歌ってと言われる。
この時点でどんな歌も歌えるレパートリーとそれを自分のものにできるかというスキルも試されるっていう、なかなかハードなオーディションだなあと。
これしかも予選よ?
そして予選決勝では、ちゃんとした衣装を用意されオーディエンスの前でパフォーマンス。
もちろんTVだからそれなりのお化粧や舞台演出もド派手で、ショーさながら。
やっぱり世界100か国放送の予算規模だけあるなぁと。
ロンドンでの決勝もホテルの部屋が用意されてるし、専属のスタッフがスケジュール管理してくれるし、いきなりメジャー契約しない?って話が降ってくるし、業界も一目置いているくらい金の卵が集まってる証拠ですよね。
また夜はクラブで派手に楽しむことができるのもステキ。
田舎でくすぶっていたヴァイオレットは見事に都会の楽しさ、芸能界の楽しさを味わっちゃうことで失態を犯してしまうってのも、また青春だなぁと。
そしてTVショーなので、オープニングに出演者みんなで歌を披露するのも面白い。
アウルシティの「Good Time」に乗せて、出演者が一人ずつ登場し、歌とダンスでショーを盛り上げるスタイルってのが視聴者としては最高に楽しいんだろうなぁって。
一応審査員はいるんだけど、この番組自体が視聴者の投票で決まるっていう方式なので、こういうのも大事なんでしょうね。
そしてバイオレットの本番前の緊張感あふれる廊下ワンカットのシーンから、本番で無我夢中に歌い踊る姿!
直前まで嗚咽するくらい緊張していた彼女。
この時絶対「あ~家に帰りたい、応募するんじゃなかった、いっそのこと死にたい」くらいのどうしようもない気持ちになっていたことでしょう。
緊張しているということは本来の実力以上のものを発揮しようと考えるから出るわけで、普段通りと意識した方が緊張しません。
しかし緊張した方がそれだけ真剣に臨もうという意識の現れですから、決して不要ではないんです。
・・・とどうでもいい話をしてしまいましたが、その緊張から心のままに解放して見せるパフォーマンスが本当に最高なんです。
またまた自分語りになりますけど、初めて代々木の野外ステージで演奏する機会がありまして、それまでライブハウスのハコの規模しかやったことのない僕はいつも以上にガチガチでしたw
でももうステージに立ったらリハでやってもいない動きとか、俺こんなに良い声出してたっけ?ってくらい調子が良くて無心でやってて。
いつもこの状態でパフォーマンスできたら、さらにいいステージングが出来たろうに、っていう過去の反省もありましたけど、ヴァイオレットもこの時の僕と同じような気持ちだったと思うんです。
多分ね、オーディエンスが凄く応援してるのとか、盛り上がってるの見えてないですよ。
それだけ無心だったと思うんです。たぶんヴラドから教えてもらった呼吸法もうまくできてないと思います。
でも彼女の歌の才能を彼らは認めてくれて虜になったわけですから、それも彼女の実力なんですよ。
僕も見ていてすごく目を奪われました。それだけ圧巻のステージでしたね。
またA~Bメロはしっとり歌い、サビでバンドがインして爆発するような楽曲はライブでもブチ上がるので、選曲の点でもナイスだったなぁと。
海外のオーディションは素人が出演しているとはいえ、その過酷な審査とレッスン、プロ並みのパフォーマンスを披露しなければならないくらい、リアルなものでした。
日本のオーディション番組も素質のある人を選ぶんじゃなくて、既に実力ある人をレッスンして磨き上げるような取り組みをしてやってほしいっモノです。
最後に
なんか映画のこと全然言ってないんで、最後に言わせてもらうと、すごく編集されててテンポがあるんだけど、その分ヴァイオレットの心情への深みまでカットされてる気がしたし、どれも無難な展開になりがちなのが強く感じました。
90分という短い上映時間でしたが、別にあと30分くらい使って、オーディションでのすったもんだを取り入れて、それに翻弄されるヴァイオレットが様々な苦難を乗り越えてつかみ取るような流れの方が盛り上がったよなぁと。
ヴラドと仲違いしたのにあっさりと仲直りしたのとかもそうだし、親との軋轢もこれといった衝突もないし、どのエピソードも薄いのが非常に残念。
また一番懸念していたエル・ファニングの歌声ですけど、音程は合ってるし普通に歌はうまいです。
ただ、iの発音が凄く強く出ていて聞きごたえあったんですけど、声量と声域がやはり弱く(てかラストのパフォーマンスほとんど歌ってないよね・・・)、もう一人の出演者の女の子の方が全然歌が良い。
選曲が微妙だったけど、あれだけの容姿で軽やかにセクシーに歌いあげるんだから、視聴者の好みは絶対こっちだったんじゃない?って勘ぐっちゃう。
まぁそれだけで勝負が決まらないのがオーディションなんでしょうけどね。
もうちょっとスピリットを感じさせてほしい映画ではありましたが、是非10代の方は挑戦することをやめないでいただきたい!きっと財産になりますよ。その先の人生で。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10