モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

【ネタバレ】映画「散歩する侵略者」感想と解説 チープなSF感が不気味さとユーモアを誘う!

散歩する侵略者 

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本作のタイトル、深ぁ~く考えるとギャグマンガのタイトルにも見えてくるんですけど気のせいでしょうか。

もしかしたらこれはコメディなのか?

 

そもそも黒澤清監督作なんてこれっぽっちも見てない自分だから、そう予想してしまうのは仕方がないのか。

 というか、これは地球を侵略する純粋なSFなのか、はたまた大切なものへの愛おしさを現したヒューマンドラマなのか、それとも本当の夫を取り戻すまでを描いた夫婦のラブストーリーなのか。

 

予告編を観るたびにジャンルで括ることのできない本作に、沸々と興味がわいて鑑賞しようと決心した話題の作品。

 

とかいっておきながら、長澤まさみが一番の目当て、だったりする。

てなわけで早速鑑賞してまいりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

劇作家・前川知大氏率いる劇団「イキウメ」の人気舞台を、国内外で常に注目を集める監督が映画化。

 

数日間の行方不明の後、夫が侵略者に乗っ取られて帰ってくる、という大胆なアイディアを基に、誰も見たことがない、新たなエンターテインメント映画が誕生した。

 

家族、友人、所有、自分。彼らは私達の大事な《概念》を奪っていくことで侵略しようとたくらむ。

それが失われると人はどうなってしまうのか。

信じられないことが起こる今の世の中に届ける、切ない愛の物語です。

 

散歩する侵略者 (角川文庫)

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映画『散歩する侵略者』オリジナル・サウンドトラック

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あらすじ

 

 

数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。
急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海(長澤まさみ)。
夫・真治(松田龍平)は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか…?

 

その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。
ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は取材中、天野(高杉真宙)という謎の若者に出会い、
二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきら(恒松祐里)の行方を探し始める。

 

やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。
「地球を侵略しに来た」真治から衝撃の告白を受ける鳴海。

当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。(HPより抜粋)

 

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監督

この作品を手掛けたのは黒澤清。

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レンタルビデオ店員時代、さんざん同僚にこの人の作品を薦められたが、全く見たいと思わず避けて通ってました。

最たる理由は、なぜかキャスティング先行で手を出した「リアル~完全なる首長竜の日~」を見て、個人的にハマらなかったことかと。

 

明らかに彼の作品チョイスを間違えたことを後悔しておりますw

トウキョウソナタとか見よう見ようと思っていまだ観てないし・・・。

 

まぁあの時よりかは、今作のほうが得る物が大きいと信じております。

 

そんな監督の代表作をざっくりと。

1983年に「神田川淫乱戦争」で商業映画デビュー後、コンスタントに作品を世に送り続けています。

マインドコントロールにより猟奇殺人を引き起こていく謎の若者と刑事の対決を描いた「CURE」は世界で話題を呼び、その4年後には、インターネットの世界を舞台に巻き起こる恐怖を描いた「回路」が第54回カンヌ国際映画祭国債費評価連盟賞を受賞。

 

これを機に、世界の映画祭で出品することが増え、世界的に評価されていきます。

 

その後も、秘密を抱えたせいでバラバラになってしまった家族の行方を、現代的な問題も取り入れ描いた「トウキョウソナタ」は第61回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞。

 

昏睡状態の恋人を目覚めさせるため意識の中へ入り込む、ホラーテイストに綴った作品で、自身15年ぶりとなった劇場映画「リアル~完全なる首長竜の日~」、謎めいた隣人によって日常が脅かされていく「クリーピー 偽りの隣人」や、全編海外作品として製作した「ダゲレオタイプの女」で話題を呼びました。

 

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 こちらもどうぞ。

 

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キャスト

加瀬鳴海を演じるのは長澤まさみ。

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おぉ~片方の目から涙・・・。

近年は岡田准一主演の「追憶」や人気原作コミック実写映画「銀魂」に出演など、話題作に引っ張りだこです。

 

黒澤作品は今回が初めてだそうです。

松田龍平と夫婦を演じますが、どんな掛け合いをしてくれるのか楽しみです。

彼女の出演作品はこちらをどうぞ。

 

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 鳴海の夫・加瀬真治を演じるのは松田龍平。

 

相変わらず表情の少ない方ですが、彼が侵略者を演じるとなると話は別。

ナイスキャスティングじゃないでしょうか。全く心情が読めなそうですもんね。

 

近年は「モヒカン故郷に帰る」、「殿、利息でござる!」、「ぼくのおじさん」と一癖も二癖もある役柄を好演していたのが印象的です。

 

彼も今回初めて黒澤監督作品に参加とのこと。

 

彼に関してはこちらをどうぞ。

 

 

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侵略者と共に行動するジャーナリスト・桜井役に長谷川博己。

 

シン・ゴジラ」での大活躍が記憶に新しい、いぶりがっこをオンザリッツな長谷川さん。

正義感溢れる矢口蘭堂のときと違い、ひげを生やしてグラサンかければ、もうそれだけでジャーナリストさと軽薄さを醸し出す風貌に。

役者ってすごいね。

 

彼に関してはまた今度ということで。

 

 

 

 

 

その他キャストはこんな感じ。

侵略者・天野役に、「PとJK」、「トリガール」に出演している高杉真宙。

謎の女子高生・立花あきらを演じるのは、「ハルチカ」「サクラダリセット」の恒松祐里。

鳴海の妹・明日香役に、黒澤監督作品「Seventh Code」に続き2度目の出演の前田敦子

丸尾役に同日公開の「三度目の殺人」にも出演の満島真之介

車田刑事役に、意外にも「トウキョウソナタ」で黒澤作品経験者!アンジャッシュ児島一哉

鈴木社長役に、こっちはまさかの黒澤作品初参加!光石研

牧師役に「クリーピー 偽りの隣人」から2度目の出演の東出昌大

医者役に黒澤作品常連の小泉今日子

品川役に、これで黒澤作品3度目の出演の笹野高史というオールスターキャストとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは一つのジャンルでは括ることのできない壮大な物語なのか。

監督作品に変な免疫ができてしまったモンキーに、この映画を理解できるのか!?知るか!?

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想

あれ??いい意味で拍子抜け!

古き良きSF作品を網羅した、ラブコメヒューマン映画でした!!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな展開だとは。

地球人の概念を奪うことで、徐々に侵略していく宇宙人。

乗り移ってしまった者を引き留める者もいれば、彼らの行動に密着し、この地球がどうなっていくかを見届けようと画策する。

人類は崩壊してしまうのか。

それを食い止める打開策は見つかるのだろうか。

 

 

まず感想を書く前にですね、この9月9日という日は、映画好きにとってはま~忙しい日だったわけです。

何てたってノーランの「ダンケルク」、是枝ベネチアコンペ作品「三度目の殺人」、そしてこの「散歩する侵略者」。

 

正直見て書いてが3回あるだけでかなりしんどいのに、内容がまたどれも重そうで、難しそうで、頭使いそうで。

順番とかも気にしなきゃなぁ~とか思いながらも、結局は見たい順で鑑賞したんですけども。

 

まずダンケルクを最速上映で見て朝までに書いて、そして昼前に起きて三度目の殺人。

もうこの辺で、ただでさえ頭がおバカなのに、糖分が足らないせいか(って理由にさせてw)、言葉が出てこない。

かなり無理矢理書き上げて、座席予約した時間まであと20分・・・。

 

これは途中寝てしまうかもしれない・・・。

でもせっかく見に来たんだからしっかり見なければ!って感じで今作に臨んだわけですよ。

 

 

で、フタを開けてみたらですよ。

 

あれ??なにこれ意外とB級に仕上がってておもしれーじゃんっ!!て。

 

これ概念がどうたらこうたらってイントロダクションに書いてあったから、ま~た小難しい話と思ってたんですけど、とんでもない!

 

ぶっちゃけそんなこと気にしなくても、終始シュールな笑いが散りばめられてて、そんでもって、昭和のSF作品を彷彿とさせる結構普通の侵略モノで、とにかく安心と懐かしさを感じるテイストだったなぁって。

 

最初日テレのロゴが出てきて嫌な予感がして。

画質も最近の日テレのTVドラマの画質で。俺日テレの妙にクリアな画質好きじゃないんですよ。

あの画質のせいですべてが軽く見えちゃうんですよね~どんなシリアスモノでも。

 

 

でもですよ?

ド頭で立花あきらが人殺して血まみれの姿で道路を放浪してる時のBGMがですね~まぁ~マヌケなBGMでしてww

オーボエ主体のオーケストラBGMなんですけど、どこかのほほんとした締まりのない音楽で。

 

この瞬間、あれ?思ってたのと違うぞ?

結構笑っちゃっていいタイプの話なのか?と。

 

 

これを皮切りに、身勝手で理屈が通らず、会話の成立しない侵略者たちと、彼らに関わる人間とのシュールな掛け合いが展開されていくんですね~。

 

前半はコメディの要素を含みながら、侵略者による「外からでなく内側からの侵略」を日常レベルで描いていく。

後半は鳴海と真治、桜井とあきらと天野の行動や思想の対比を描きながら、二つが一つに交わり各々の世界の終わりを見極めてく壮大なヒューマンドラマへと広がっていきます。

 

 

 

 

結局概念て何の事よ?

まぁ~概念概念言ってますけども、結局それって何ですか?と。

実際のところよく使う言葉ですけど、じゃあどういう意味って聞かれると曖昧なことしか言えない程度のおバカさんがですね、とりあえず辞書で調べたところによると、

 

同類のものに対していだく意味内容
 
同類のもののそれぞれについての表象から共通部分をぬき出して得た表象。対象を表す用語について、内容がはっきり決められ、適用範囲も明確な、意味。

 

ということだそうで、まぁ当たり前のものってことなんですかね。

 

この概念を奪うことで侵略者たちは人類を理解しながら地道な活動をしているわけなんですが。

概念がいかに私たちにとって大事なものか、逆に如何に概念が私たちそのものを歪ませているのかを、概念を奪われた者たちによって描かれていました。

 

 

家族という概念を奪われた鳴海の妹は、自由奔放に生きた姉とは違い、期待を親から押し付けられるという背景があったが、概念が無くなったことで縛られることなくどこかへ消えていき、

学歴コンプレックスだった刑事は、自分と他人という概念を奪われたことで比べることを止め、引きこもりだった丸尾は所有という概念を奪われたことで、どこか開放的になり、反戦まで掲げるアクティブな男として生まれ変わる。

 

また鳴海が仕事のオファーを受ける会社の社長は、仕事という概念を奪われることで、少々子供じみた行動ではあったが、目の前の仕事を壊すという行為に走る。

 

このように人格が崩壊するほど強い概念を持った者もいれば、概念が無くなることでどこか幸せになったように見えてしまう人もいたりと、なんとなく皮肉を込めた内容になっていた気がします。

 

 

で、結局我々が持つ概念というのは、実は嫌々ながら対象を受け入れていたってのも事実で。

 

例えば、あきらが警察官を射殺してしまった時の桜井の言動、「この星では人を殺したら罰を受けなければいけない。」

これ正に概念で、それに対して概念のないあきらは、あれ警察嫌いって言ってたじゃん?なんてやりとりがあったり。

鳴海の「やんなっちゃうなぁ、もう!」って言葉とは逆の行動にでるあれだって、何かしらの概念が働いてるんだけど、表向きは拒んでいても、体はその概念によって動かされていて。

たぶんあれは愛なんだと思うんですけど。

 

 

で、最後は概念を奪えば人類なんてちょろいもんだぜって思ってた侵略者が、ある概念によって結果侵略できないというオチが、また素晴らしいんですよ。

 

なんつったらいいんだろ、要は「それでも世界は素晴らしい」っていうざっくりな結論ということでw

 

もう何言ってるかわからなかくなってきたwさすがに疲れてきた・・・。

 

 

古き良きSFとは。

途中でも書きましたけどこの古き良きSFって何よ?ってことなんですけど。

 

単純にウルトラセブンとかで繰り広げられるチープな演出なんだけど、深く見ると案外的を得た問題提起だったり、それこそウルトラシリーズで遡るなら「ウルトラQ]という素晴らしい作品があるわけで。

 

また人間に入り込むという点では、「遊星からの物体X」だったり、「ボディ・スナッチャー」だったりと、これまでSFの基盤というか根っこというかそういったものをモチーフにして描かれているから、非常に楽しめました。

 

しかも、この辺りで言うと「ワールズエンド 酔っ払いが世界を救う!」とか、概念を持たない宇宙人てことになると「メッセージ」にも絡んでくる。

 

自身の守ってきたものを奪われないために、相手のものを奪うという行為こそが戦争を生む、だから原因は自身の内側にあるみたいなことを丸尾君が言うんですけど、その思想をブラコメにした「博士の異常な愛情」とかにも通じてくるのかなぁ~なんて。

ちょっと飛躍し過ぎですが、監督色々なものを取り入れて作ってるなぁ~と見ていて思いました。

 

 

もっと言うとですよ、爆弾積んだ飛行機にマシンガンで対抗する桜井のノーカットのシーン。

あれって「北北西に進路を取れ」にも見えるなぁって。

あそこBGMなしでやったら完璧。

 

探せば元ネタがいっぱい見えてきそうな今作は、そういう部分からでも楽しめる作品でありました。

 

 

役者たちがまたいいんだ!!

もうなんてったって、長澤まさみです。

 

「愛なんてもうこの家庭にはどこにもない」と突如失踪し戻ってきた夫に対し、行き当たり八つ当たりさしあたり八つ当たりなツンツンキャラから、後半は徐々に理想の真治へと変貌を遂げていく侵略者によってデレデレになっていく様は、ツンデレ女性が好きな私にとっては、もうごちそうさまです、はい。

 

 

また、完全に鳴海のヒモのような存在となっている夫・真治を演じた松田龍平もうまいんですよ。

 

いつもながらですね、無表情というか感情のかけらもない、ぬぼぉ~っとした顔がかわいくもあり小憎たらしくもあるんですが、少しづつ血が通っていく感覚というか、脳内に閉じ込めたはずの真治が自我を取り戻していく、もしくは、侵略者が真治として形成されていく姿が、物語が進むにつれてこちらに伝わり、クライマックスでの概念を奪った時の、あれ?なんだこれ?という演技が、非常に良かったです。

 

 

そして、一番掴みにくいキャラだったにもかかわらず、一番人間臭かった桜井演じる長谷川博己もよかった。

あの滑舌のいい早口言葉も、姿かたちを変えればチャラさが二倍にも三倍にも増し、「シン・ゴジラ」でも感じた大衆の前で何かを訴える姿は、妙な説得力を感じます。

「人類にひとつの危機が迫っています!!」ってあそこね。

 

 

で、脇役ながら妙な気持ち悪さを放った、教会の牧師役の東出君も笑ってしまった。

あの顔で愛とはなんちゃらをひたすら語る顔ww

 

前田のあっちゃんも、長澤まさみの前で淡々とこなせるほどリラックスした演技が様になってたし(妹役ってのは許せんがなっ!)、

アンジャッシュの大島、じゃなくて児島も、途中コテンパンにされちゃう辺りはコント臭が出てたけど、ちゃんと役者だったし、

セクハラしてる時のいやらしい顔が見事だった光石研、

三度目の殺人とはキャラがまるで違う満島慎之介などなど、いい役者がそろった作品だった気がします。

 

ちょっと個人的には、若杉、垣松の若手二人が存在感薄かったかなぁ~と。

粗暴な感じで侵略者やらせるんなら、男は清水尋也君の方が侵略者っぽくって適役だった気がします。

 

 

最後に

もう体力が5%くらいしか残ってないので渾身のまとめに入りますが、予告編があまりにもシリアスな空気を出しているので、非常にもったいないです。

 

客席もまばらだったために、笑えるシーンがあっても客から客へ派生しない状態になっていて益々もったいないなぁ~と。

 

 

そんでもってですね、さすが日テレ製作です。

何が地球を救うかよ~くわかってらっしゃる。

プロット聞いてうちがやらなきゃ誰がやる!?なんて思ったのかしらw

 

 

 

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10