クリード 過去の逆襲
映画ファンがこよなく愛す「ロッキー」シリーズ。
イタリアの種馬が次々と現れる強敵や己自身に打ち勝つ姿に、我々は何度も感動しました。
その系譜は、かつてライバルであり盟友だったアポロの息子を主人公とした「クリード」として現代によみがえりました。
優雅な生活でありながら隠し子であったことにいら立ちを募らせたアドニスが、この世で生きる証を打ち付ける姿、アイデンティティを確立していく姿、そしてその背中を押す存在がロッキーという巡りあわせ。
こんなの感動するなという方が無理です。
2作目となった「炎の宿敵」もロッキー4で登場したドラゴの息子という組み合わせに、往年のファンをも巻き込んだ続編となりましたね。
そんなクリードシリーズもとうとう3作目。
僕個人としては、もうロッキーの姿もなく、続編として蘇らせたライアン・クーグラーも脚本だけってことで、ようやく独り立ち、いやここからがクリードの旅路なんじゃないかと。(これで最後みたいだけど…)
しかも主演のマイケル・B・ジョーダンが監督ですよ。
スタローンと同じ道歩んでるじゃないっすか!!
あと2作は監督主演でやるのかな?(だからこれが最後みたいなんだって…)
とにかくここから新たな船出という意味で楽しみにしております。(もういい…)
アドニスは、過去に打ち勝つことができるのか!
早速観賞してまいりました!!
作品情報
ボクシング映画の金字塔「ロッキー」シリーズは、主人公ロッキーがリング上で数々の因縁や死闘を繰り広げながら、ライバルらと共にハングリーな男たちの生き様や存在証明を、拳を交えながら見せつけてきた。
本作クリードは、そんなロッキーのかつてのライバルであり親友のアポロの息子を主人公にした、まぎれもなくロッキーサーガの現代の主人公。
ロッキーからボクシングのイロハを教わり頂点を目指した第1作、父と息子2世代における因縁の勝負を描いた第2作を経て、今回は己が犯した「過ち」と対峙。
家族同然だった幼馴染を宿敵へと変えてしまったアドニス・クリードの過去を紐解きながら。拳でそれを乗り越えていく姿をエモーショナルに描く。
前作で監督を務めたスティーブン・ケイブル・Jr.から主演を務めるマイケル・B・ジョーダンが監督を務めることになった本作は、日本のアニメをこよなく愛するマイケルが、「ドラゴンボール」や「NARUTO」、「はじめの一歩」などのアクションシーンを参考にしたカメラワークに挑戦。
これまでのボクシング映画とは一味も二味も違う作品へと仕上げた。
ライバルで幼馴染のディミアン(ディム)役には、「ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ」で注目を集め、MCUドラマシリーズ「ロキ」や「アントマン&ワスプ クアントマニア」、そして今後のアベンジャーズのヴィランとして登場予定のジョナサン・メジャース。
そのインパクトのある表情と屈強な肉体から、クリードの座を脅かす存在に相応しい存在としてベストな配役だ。
またクリードの妻ビアンカ役のテッサ・トンプソンや、前作のライバル、ヴィクター・ドラゴ役のフロリアン・ムンテアヌらも引き続き出演。
アドニスをどう支えていくかに注目だ。
栄光をつかんだ最強の男と、彼の過ちにより全てを失った男との血と涙の決闘。
最大にして最後のゴングが鳴り響く!!
あらすじ
ロッキーの魂を受け継ぐチャンピオン、クリード(マイケル・B・ジョーダン)の前にすべてを失ったムショ上がりの幼なじみデイム(ジョナサン・メジャース)が現れる。
実はクリードは以前、家族同然で育ったデイムを宿敵へと変えてしまう過ちを犯していた。
その過ちによってデイムはクリードへの復讐を企むようになり、かつての仲間同士の血と涙の殴り合いへと発展してしまう。(Movie Walkerより抜粋)
感想
#クリード 過去の逆襲観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) May 26, 2023
過去への恐れを拳で断ち切れ。
ロッキーシリーズからの脱却を図ろうと挑戦した意欲は買うが、話もライティングもキャラの使い方も肝心の試合のカメラワークも好みではない。何より熱さが伝わってこない。マイケルは無理に監督やらなくてもよかったのでは。 pic.twitter.com/xiUl5weuqW
いやいやドラゴ出すならもっと効果的な使い方あるでしょうが。
これまでメンターだったロッキーの代わりがいないので、アドニスがどう乗り越えるかが弱く感じた残念な続編でした。
以下、ネタバレします。
過去を断ち切るために。
アドニスはいつだって過去と戦ってきた男。
自分が誰なのかをリングで証明し、父を殺した男を倒し、今回で晴れてヘビー級王座のタイトルを保持したまま引退を遂げ、これで晴れて一人の父として、そしてボクシング界を盛り上げるために尽力するようになった。
しかし今回アドニスが一番目を逸らしてきた過去と向き合うことになる、というのが本作のテーマ。
やってきたのは、かつて虐待され苦しんでいたグループホームで出会った「兄弟」とも言うべき親友デイム。
刑務所から出たばかりのデイムはアドニスに出会うや否や、再びボクシングの道を歩みたいと語る。
年齢的に厳しいが、彼の夢に協力したいアドニスは、ヘビー級チャンプのスパーリングの相手としてデイムをジムに呼ぶ。
しかし彼のやり方はボクシングではなく喧嘩そのもの。
チャンプ側からスパーリングを拒否されたデイムを庇うアドニス。
そんな時、チャンプの対戦相手でかつてアドニスとも戦ったドラゴが、何者かに襲われたせいで試合が中止となってしまう。
そこでアドニスはチャンプの相手にデイムを指名。
まだプロでもないデイムはアドニスの計らいによってヘビー級王座のタイトルに挑むチャンスを掴む。
試合は反則行為スレスレの攻撃ばかりを繰り出すデイムが勝利。
しかもデイムは、アドニスに復讐を誓うのだった。
お前の全てを奪ってやると。
果たしてアドニスは、デイムの暴走を止めることができるのか。
そして目を逸らしてきた過去と向き合うことができるのか。
というのが、ザックリしたあらすじ。
今回の物語では、アドニスが今の家に来る以前のグループホームで出会ったデイムとの過去が明かされます。
グループホームでレオンという男から虐待を受けてきたアドニスは、たまたま店先でであったレオンに暴行を働いてしまい、それに応戦するべくデイムは拳銃を突きだし脅すという行為をしてしまいます。
それを警察に見られてしまったこと、また全かを持っていたことからデイムは現行犯逮捕され懲役罰を受けるのです。
デイムは刑務所からアドニス宛てに手紙を送っていましたが、母の計らいによってその手紙をもらったことさえ知らず生きてきました。
母はなぜアドニスに手紙を渡さなかったのか。
それはデイムという男の本性を理解していたからです。
今になってその手紙を読んだアドニスは、ドラゴを襲った男がデイムの仲間であったことを知り、どんな手を使ってでもチャンプになるというデイムの悪質な考えをようやく知るのでした。
虐待を受けてきたせいで自分をどう守るかという考えに固執するあまり、アドニスは娘に対しても「感情を制御」することより「身を守る術」を優先して教えていました。
そんな過去をデイムとの再会によって思い出してしまったアドニスは、徐々に自分を見失い、妻ビアンカとの関係も悪化する一方。
この負の連鎖を断ち切るためには、デイムをリングの上で倒すことしか道はなかったのであります。
誰にだって目を伏せたい過去はある。
別に目を伏せたまま生きていても生きることはできるが、それを乗り越えてこそ見える景色があるのではないか。
その景色はきっとこれまでの景色よりずっとクリアで希望に満ちたものに違いなく、乗り越えた者にだけ感じる素晴らしさがあるはず。
本作はこれまでの道のりよりはるかに険しい道を歩むアドニスの姿に心震わされる物語だったのではないでしょうか。
不満はめっちゃある
・・・というキレイごとのような語りで一旦締めるとして、僕としては非常に残念な続編だったというのが本音。
先ほども書いたように、過去=デイムという構図にし、一度降りたリングに再び戻ってそれと向き合い乗り越えていくという筋書きの物語だったわけです。
今回やんちゃでガキンチョなアドニスのメンターであったロッキーを登場させないことで、過去作からの脱却を図ろうとしたわけですが、どうにも熱くならない。
ロッキーの代わりを担うのが妻のビアンカであり母だったりするんですよね。
いつまでも話を切り出してくれないアドニスに「あなたを理解したい」と詰め寄るビアンカは、結果的に心を開いたアドニスをもう一度リングへ上げるための役割を果たすんですけど、彼が悩みを打ち明けてから自分の話をし出すんですよね。
いや、話してほしかったらさ、先に自分の悩みを打ち明けない?
一応ビアンカは歌手としての自分から身を引いて、プロデューサー業をやってるんですけど、本来なら歌いたいわけです。
でも耳が悪いせいで断念せざるを得ないと。
立場と本音の間で葛藤したけど、それを乗り越えて今を受け入れるという選択をした、だからあなたにもそうなってほしいと、もう一度リングに上がれっていうわけです。
正確には「やるしかないんじゃない?」みたいな背中を押すような語りかけでしたけど。
これを先に話しているから、アドニスも口を開きやすくなるんじゃない?と思ってしまったわけですよ。
メンターなのだから彼の心の内を引き出してケアしてほしいのに、結局彼が口を開くのを待ってるだけ。
また母も手紙出すのが遅いですって。
一度発作してるっていう命のリミットが迫ってるのに、悪魔デイムと会ったって話聞いたらすぐ出した方が良かったと思うんですよね。
まぁ映画ですからそこにツッコミ入れても変な話ですけど、物語は結局アドニスにデイムからの手紙を出した後、母はすぐ亡くなってしまうと。
死ぬ間際にアドニスをアポロと思い込んで話し出し、過去の後悔を語るという構図は涙を誘いはしましたけど、要はこれきっかけでアドニスはようやく過去を話そうと決意するわけですよ。
構成としては無難な展開ではあるんですけど、アドニスのメンターという面で考えると、母もビアンカもロッキーのような役割を果たせていたのかなぁと考えると、正直弱いなぁと思ってしまったんです。
また全体的に余韻というか間を置きすぎていて、全体的に話が長いんですよ。
細菌の映画の特徴とも言うべき演出なので、今更そこを突いてどうすんのって話なんですけど、今回に関しては物語自体がものすごくシンプルなために、そんなに「間」を作っても何の効果もなく、終盤にサプライズやどんでん返しが待ってるわけでもないパターンなので、時間をかける必然性がないんですよ。
アドニスの少年期になぜかデュークが映ってましたけど、あれ映しておいて何の回収もないので、回想シーンはもっとタイトでもよかった気がしました。
現チャンプとデイムの試合もリアリティないですけど、ロッキーでやってますからそこへのツッコミは置いといて、あそこももっとタイトでいいと思います。
入場シーンとかに時間を割くのではなく、デイムのこれまで隠していた凶暴性だったりどうしてもチャンプになりたいっていう野心溢れる姿にクローズアップすべきだったのかと。
要はさっさとアドニスVSデイムをやれよって話です。
リング外での攻防戦をメインにして、それでも過去と向き合えないアドニスのウジウジした姿をさらけ出し、母やビアンカに何度も弱い姿を見せ、娘という強い後押しを受けて、もう一度リングに立つ。
3年のブランクは相当なモノで、中々思うように体が動かないけど、ここで強い見方ドラゴの登場!みたいな熱い展開で、彼との友情を前に出していくみたいな。
そう!!
ヴィクター・ドラゴをもっとうまく使えよって話。
今回ドラゴは、アドニスが所属するジムから新たに誕生したチャベスというチャンプの相手として登場するんですけど、デイムが用意した暴漢に襲われて試合断念してしまうってキャラになっちゃってるんですよ。
で、一応アドニスのスパーリング相手として登場するんですけど、先にチャベスの相手として出てきちゃってるからサプライズ性が薄れてしまってるんですよね。
てかさ、チャベスなんて新たなキャラ出さずに、デイムの相手をドラゴにして、デイムが勝つ、その敵討ちみたいな形にしてアドニスが復帰する、その手助けをドラゴ自身が買って出るって流れで良くね?と。
もう完全にロッキーのプロットのパクリですけど、今回の話の流れだったら俺は数倍こっちの方が面白いと思うんですけどね。
そういうかつてのライバルが自分の復活を手伝ってくれるからこそアドニスは強くなれるというか。
ロッキーというレジェンドシリーズから脱却を図りたいのは十分に理解できるんですけど、あのシリーズの精神性まで脱却する必要はないというか。
また全体的に照明が明るすぎるんですよね。
もう眩しくて色々と。
アドニスの暗い過去だったりそのせいで凹んでる姿も白みがかってるんで、キャラの感情が弱く見えてしまうんですよ。
もっと陰影をつけたりコントラストをつけないとせっかくのアドニスの心の影が活きてこないというか。
また試合全体のアクションも正直見づらかったです。
今回日本のアニメを参考にしたアクションコーディネートやカメラワークに挑戦したようですけど、それ以前にキャラにカメラが寄り過ぎていて、リング上での動き回る姿が全然ないんですよね。
ここだ!って所でスローモーションにしたり、流れる汗を際立たせるようなルックはいいんですけど、ぶっちゃけ何やってるかわからないんですよね・・・。
これも好みの部分になってくるんですけど、あとちょっとカメラを引いてくれれば、互いがどういう足の動きしてリングを移動してるかとか、パンチを繰り出してるかが見えやすいのになぁと。
革新的な映像をやってみたかった気合は受け入れますが、この映像に関しては自分の好みではなかったですね。
最後に
今回で最後のクリード作品になるんでしょうか。
なんか最後に「クリードSHINJIDAI」っていうアニメーションが流れましたけど、あれは100%見ませんw
2125年が舞台で、火星やら体から変な模様が浮かび出てくるようなSFじみた設定で、クリードの血を受け継いだ者同士が戦うんだか戦わないんだかよくわかんない話でしたけど、いくらなんでもそんなシリーズに飛躍してまで続けるユニバースじゃないでしょうw
だったら普通にクリードの娘が主人公のボクシング映画の方がよっぽどマシというかw
まぁやるのは構いませんが、僕は見ませんw
しかし今回マイケル・B・ジョーダンが監督を務めるという楽しみもあって期待していたんですが、監督の面でも残念に思えてしまった作品だったなぁと。
試合の最中、急に檻が出てきたり、無観客になって二人きりで殴り合いして、気が付いたら12ラウンドって、どんな端折り方してんのよw
そりゃないよw
普通に最終ラウンドまでダイジェストで攻防を見せりゃいいじゃない!
あとさ、最終ラウンドなのに疲労感出てないんだよね二人とも。
まだまだやれそうな雰囲気出てんのよ。
それじゃリアリティないって。ただでさせ二人ともピーク越えた年齢なんだから。
とりあえずジョナサン・メジャースは、先の暴行事件の報道も手伝って、妙な怖さがにじみ出てましたね。
あ、これはアドニス勝てないな…みたいなヤバさはすごく出てました。
とりあえず、僕はクリードに関しては1が一番好きです。
今回は辛口な感想になりましたが、もし続編やるならまた見たいと思います。
できれば監督はちゃんと職人を呼んだ方がいいと思います。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10