アド・アストラ
僕がこの映画の予告を見て真っ先に思ったことは、
ブラピ、宇宙似合わねえ~w
です。
何というか、最近売れ出した俳優とか、駆け出しの俳優が宇宙を舞台にする映画をやるならまだしも、ブラピほどのベテランが今更宇宙を舞台にする映画に出演するって、なんか違くね?っていうか。
まぁそうなると「アルマゲドン」のブルース・ウィリスも、僕の定義で言うと似合わない部類に入ってしまうんですがw
あとあれだな、ブラピのお父さんは是非ロバ―ト・レッドフォードでお願いしたいところ。
トミー・リー・ジョーンズの息子だったら、もうちっと怖い人相の人でないとw
あとあれだ、リヴ・タイラー、地球で人待ちすぎねw
・・・だいぶ失礼な入り口になってしまいましたが、宇宙を舞台にお父ちゃん探しってお話のようで、ワンハリでのマッチョスタントマン役が記憶に新しい彼が、また違った一面を見せてくれるのではないかと楽しみにしております。
てなわけで早速鑑賞してまいりました!!!
作品情報
ヴェネツイア国際映画祭で銀師子賞を受賞した経験を持つ監督による、スペースヒューマンンドラマ。
先日行われた「ヴェネツイア国際映画祭」でお披露目となった今作は、批評家たちの絶賛評が後を絶たず、アカデミー賞候補最有力とまで言わしめた。
そんな今作は、宇宙探査中に消息を絶ってしまった父の生存が確認されるが、太陽系を滅ぼしかねない計画を実行しようとする「脅威」であることが判明。
息子は父親を捜すために宇宙へ捜索しに行くというもの。
ホイデ・バン・ホイテマが撮影監督に抜擢されたことで、宇宙空間での撮影はリアリティ溢れる映像になり、主人公演じるブラッド・ピットが、これまでにない演技でドラマをより際立たせている、とのこと。
「2001年宇宙の旅」や「ゼロ・グラビティ」などに匹敵するとの声もあり、また監督曰くジョセフ・コンラッド原作小説「闇の奥」からインスパイアされたとのことから、「地獄の黙示録」をも取り入れた内容になっていることが予想され、一体どんな作品になっているのか益々の期待が持たれる。
この言葉を聞けば、この映画が持つ引力に引き寄せられることだろう。
ラテン語で「星の彼方へ」という意味のタイトル。
主人公は宇宙での旅の果てに何を見るのか、そして父の行方は。
あらすじ
地球外生命体の探求に人生を捧げる父の影響から、自らも宇宙で働く道を選んだロイ・マグブライド(ブラッド・ピット)。
しかし父を乗せた宇宙船は、出発から16年後にその消息を絶ってしまう。
それから時が経ち、エリート宇宙飛行士となったロイだったが、ある日軍の上層部から、父が生存し、太陽系を滅ぼしかねないある計画に関与していることを聞かされる(Movie Walkerより抜粋)
監督
今作を手掛けるのはジェームズ・グレイ。
今回調べて分かったんですけど、ホアキン・フェニックスとグウィネス・パルトロウが共演した「トゥー・ラバーズ」という映画?劇場用ではなかった気がするんですけど鑑賞していて、監督が手掛けてたことを初めて知りました。
失恋して情緒不安定の男と、同じアパートに住む女性のラブストーリーなんですが、これが超せつねえ、ぱいすぅ~(すっぺえ)映画でして。
是非ご覧ください。はい。
で、今作に関して監督は、「2001年宇宙の旅」をやりたかったのかという質問に対して、スピルバーグとキューブリックを引き合いに、2人の作品に共通することはエイリアンが登場することだけど、今回そういうことはしてない、だって今日まで地球外生命体とのコンタクトはできてないわけだから、人類は宇宙で孤立なのだと。
そして一番未知である部分は人間の内側にあり、今作は宇宙という外への追求と、人間の心の中を探求する作品になっている、とのこと。
父親を失い、自分を見失っていた主人公の父親捜しは、自分を探すための旅でもある、ということなのでしょうか。
モンキー的に哲学を描くお話はちょっと不得意なので、よく噛みしめながら堪能したいと思います。
そんな監督の作品をサクッとご紹介。
ロシア系移民街という閉鎖社会での家族の話「リトル・オデッサ」でヴェネツイア国際映画祭銀師子賞を受賞、その後実際にあった汚職事件を元に描いた社会派サスペンス「裏切り者」を手掛けます。
他に、主演したホアキン・フェニックスとマーク・ウォルバーグを再び起用し、裏社会へ進んだ弟と父を継いで警官となった兄が悲劇を機に協力し合って復讐を誓う「アンダーカヴァー」、生きるために娼婦となる主人公の過酷な運命を描いた「エヴァの告白」、インディ・ジョーンズのモデルとなった人物の人生を賭けた冒険「ロスト・シティZ/失われた黄金都市」などがあります。
キャスト
今作の主人公、ロイ・マグブライドを演じるのはブラッド・ピット。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に出演し、レオ様との深い絆を見せてくれたのが記憶に新しいですが、こうも連続でブラピを拝めるってのはたまりませんな!
てか、ここ最近あまり目立った映画に出てなかったんですよね。
「マリアンヌ」とNetflix作品「ウォー・マシーン」くらい。
まぁ「プランB」という製作会社を持ってるから、プロデュース業も忙しいのかなと。
今回彼も製作に名を連ねてるんですけど、監督の前作「ロストシティZ」もプランBが製作してるんですよね。
きっと当時から彼の作家性に惹かれてたんでしょうね。
で、今回念願の主演作に抜擢という経緯なのでしょう。
ブラピはあまり演技での評判がよろしくないってのが通例なんですが(僕は見ていてそうは思わないけど鼻につく部分はあるw)、どうやら今作での彼の演技はかなり高評価のようで、もしかしたら「マネー・ボール」以来のアカデミー賞主演男優賞ノミネートもあるかもしれませんね。
どうやら2時間ほぼ出ずっぱりのようなので、彼の細かな表情から心情を読み取るような映画なのかもしれません。
彼に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
ロイの父・クリフォード役に、「スペースカウボーイ」、「ノーカントリー」のトミー・リー・ジョーンズ。
ロイの妻・イヴ役に、「アルマゲドン」、「インクレディブル・ハルク」のリヴ・タイラー。
ヘレン・ラントス役に、「ワールド・ウォーZ」、「ラビング/愛という名前のふたり」のルース・ネッガ。
コロネル・クルーイット役に、「マッシュ」、「ハンガーゲーム」のドナルド・サザーランドなどが出演します。
今年は「ファースト・マン」という実在の宇宙飛行士の物語が公開されましたが、それよりもかなりフィクションで壮大な物語になってることでしょう。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
壮大な宇宙を舞台に繰り広げる父と子の絆の物語。
星の彼方で見つけたものは、そう、在るべき自分でした。
以下、核心に触れずネタバレします。
本当の自分。
技術の発達により更なる宇宙開発に力を入れた近未来を舞台に、宇宙の彼方で行方不明となった父を探しに、少佐である息子が43億キロかけて旅に出る物語。
壮厳でありながら、常に孤独が付きまとう宇宙の美しさと厳しさを存分に引き出す鮮明な映像と、
精神肉体共にタフでありながらも、父を失ったことで抱えてしまった心の穴をひた隠しにしている宇宙飛行士ロイが、旅の途中で起こる出来事によって徐々に心を解き放っていく姿を、
主人公のナレーションと細かな表情により、表面的にはエンタメ要素の多い描写でありながらそうでないことを知らしめ、一人の男の心の再生に寄り添った壮大なドラマに仕上がった、類まれなるSFドラマでございました。
正直予想のつく話の結末ではありましたが、結末までの過程を敢えてドラマチックにせず、静かに主人公の心に寄り添うような作りは見ごたえがありました。
また、宇宙を舞台にした壮大なドラマは、近年で言えば「ゼロ・グラビティ」や「インターステラー」などが思い浮かびますが、どちらかというとこれらの作品よりも、色彩や構図などによってアートな部分が強く表れていたように感じ、そういう意味で言えば今作は、これらとは一線を画した作品にも思えます。
主人公に課せられたミッションを遂行するにあたり、度重なる過酷な試練を高度なスキルと判断力でクリアする辺り、しかも、約15分に一度の感覚で入れ込んでくる構成は、正にエンタメ的なエピソードだったにもかかわらず、
物語の確たる部分は、自分の目的を実現するために何もかも切り捨ててしまったことで、誰も必要としない価値観を持ってしまった主人公が、まさに自分と同じようなことをして世紀の発見を実現しようとする父を探し当てることで、誰かを必要とすることが、どれだけ人間が生きていく上で必要なことか、
そんな喪失してしまった心を取り戻す、本当の自分を見つける旅であることを描いた物語でしたね。
人類が未だ知らぬ未知の領域に向おうという姿勢は、非常に理解ができます。
そりゃあ地球人以外の知的生命体と遭遇出来たら大発見であり、偉業であり、今後の我々に多大な影響を及ぼす存在であるから、挑戦する価値はあるわけで、その未来のためにいや自分の夢の達成のために尽力するということに、僕は賛成だったりするんです。
が、いやいや待てよ、その挑戦の前に人間の事をもっと理解するべきじゃないですか?と。
自分の事を理解するべきなんじゃないですかと。
宇宙を知ろうとする前に自分を知ろうと。
まず外ではなく、内からなんじゃないですか、ってことですかね。
だいぶかみ砕いた言い方になっちゃってますけど、そんなことをもっと哲学的にしたお話だったのかなぁと、空っぽの頭絞って答えを出してみました。
そんな宇宙の舞台にした心の旅、具体的に良いなぁ!ここ!
ってのをザックリ解説しようかと思います。
美しくも孤独な宇宙の果てで。
結局僕は画的にかっこいいなぁ!
とか、
こういうシーン好き!
みたいなことしか心がときめかないので、簡潔に言えば、こういう内容の映画は得意でないし、ものすごく好みではなくて。
でもちゃんとこういう展開いいね!
ってのがこの映画にもありまして。
冒頭での地球からものすごく高く作られた宇宙ステーションとか面白いじゃないですか。
一応宇宙なんだけど、地球と繋がった施設で作業している時に、海王星から放たれたサージ(電磁波みたいなことですかね)が襲ってきて、船外活動しているロイがピンチになってしまう件。
なんか宇宙にいながら地球へ真っ逆さまに落ちていくってのは、恐らくそこにはまだ重力が存在してるからなんだろうけど、ぱっと見、宇宙だから落ちるのってある意味斬新だなぁと。
しかもロイという男がどれだけ危機管理能力が高くてメンタルが強いかってのを描いてるから、冒頭でしっかり設定を教えてくれるのがいいですよね。
話は進み、君の親父、宇宙へ行って消息不明だったけど生きてんのよ~、でもさ、あの人、地球に災いもたらすようなことしてるかもだから、君、そこへ行って何とかしてきて。
っていう極秘任務、いわばミッションですね、こういう設定は僕好みの展開でして、一体彼はどうやってそこまで向かうんだろう、あ~きっと目的地に行くまでの間に、いくつもの難関が待ち受けてるんだね!
う~んワクワク!って気持ちにさせてくれましたね。
そしてどうやって目的地まで向かうかっていう流れも面白い。
まず月へ行くんです。
もう月へ行くこと自体がちょっと気軽になってるというか、ロケット自体が観光用の飛行機とでもいいますか。
「月に着くまでの間、ごゆっくりおくつろぎください」、とでも言われてるかのようなリラックスした雰囲気。
もちろん皆宇宙服は着てるけど、ゆったり座ってるんすよね。
しかもブランケットと枕をロイがキャビンアテンダントに頼むんですけど、125ドルもするんですよね。
高っ!
金取るんかい!
あ、この時代はもうサクッとペイできるのね。
で、月へ到着すると、観光客がはしゃいでるわけですよ。
ロイを監視するクルーイット大佐も、「君の父が見たらガッカリするね」と言ってたけど、そうだよなぁ、そういうために宇宙開発に携わったわけでもないかもだしなぁ。
月にはどうやら武装集団がいるってのも皮肉が効いてる。
地球だろうが宇宙だろうが資源を目的に争う奴らの存在ってのは変わらないってロイが語る辺りは言い得て妙。
どこの国のやつらかはわかりませんが、月の裏側にある発射基地へ行くまでの道中で襲われる展開も、これまでにない絵面でよかったですね。
もう重力によるチンタラした動きってのはないんですね。
とはいえ、地球の動きのようなスピーディーさはないですが、まさか月でカーチェイス見れるなんて。
で、月の裏側ですから、光が消えて影の中を車は突っ走ります。
てか、途中案内標識建ってたね。
で、月を経由して火星へと向かうわけですが、途中で救難諡号を受けたことで、寄り道します。
ロイは任務があるから無視して別の船をよこせっていうんですけど、他のクルーはその任務がどれだけ重大なのかを知らないから無視できないってことで立ち寄ります。
結局中は、実験用に連れて行ったとされるエイプが凶暴化していて、人間を襲ってしまったことでクルーが誰も生き残っておらず、ロイはかろうじて無傷で済みましたが、一緒に行った船長は残念ながら死亡してしまします。
こノエピソードでロイが語る「怒り」についてはしっくりきましたね。
この動物は実験で連れてこられ、結果孤独になってしまったことで怒りを露わにしていたわけですが、この動物を、取り残されているであろう父と重ねたと思うんですね。
さらに自分自身も崇高な宇宙飛行士として感情を殺していたけど、今になって父が生きていたってことに対して、抑えていた怒りが芽生えだしたみたいな。
寄り道しなければ気付かなかった感情を思い出させてくれた場面だったように思えます。
火星は火星で、月とは全く別次元の世界。
山々が連なり赤い土ぼこりが画面を覆うようなこの星は、月のように観光で賑わうような場所ではなく、これぞ宇宙というようなまっさらな場所。
建物の中も赤で統一された照明が際立っており、父へメッセージを送るために用意された部屋も、壁が縦と横に線の入ったごつごつしたもので、火星の山々をイメージしたような作り。
心を休めるための部屋も、火星にはない花や自然の美しさを鮮明なグラフィックで映し出した(絶対有機ELだよあれw)モニターで覆われた壁に、椅子が一つというシンプルかつ未来的デザイン。
ここではようやくロイが心を解きほぐす姿が垣間見えます。
最初こそ用意されたような文言をただ読み上げるだけなんですけど、結果メッセージは送信されても返信が無い。
ならば本当の自分の言葉で語れば伝わるのかもしれないと。
これまでのロイなら1回目の行為を何度も続けたんでしょうけど、ここまでの旅の中で心理状態に変化が訪れるわけです。
月での襲撃やエイプとの遭遇、今まで引っかかっていた何かが鮮明になり、自分を厳しく課していた心を見つめ直し、優しさを取り戻していくかのような。
それによって4~50台で安定していいた心拍数が上昇し、任務は不可能という烙印を押されてしまうロイ。
これを機に、ロイの孤独なミッションがさらに過酷なものになっていく、という展開になっていくわけです。
まぁこの後、ロケット勝手に乗り込み作戦は、あんな火花散ってる状態でどうやって外部から侵入できるのよ?
点火してんのにどうやって入ったか見せてくれないからわかんないし、盛り上がりに欠けるなぁって部分もありましたが!
結局このあとやってしまうことは、まるで父がやってる事と同じってのが、親子似た者同士とでも言いましょうか。
任務のためなら仕方のないことってやつで。
果たして火星から海王星って長距離の中で、ロイは正気を保ちながらたどり着けるのか。
その後は本編でお楽しみあれ。
最後に
宇宙の狂気と欲に駆られた父と、彼を制止するロイってのが「地獄の黙示録」にも通じるし、
進化した存在を追い求めた「2001年宇宙の旅」にも通じるし、
それをモチーフにした「インターステラー」や、
宇宙活動での切迫した重さをリアルに表現した「ゼロ・グラビティ」も入ってたし、
火星であの荒廃した雰囲気は「ブレードランナー2049」も想起させる。
また、トミー・リー・ジョーンズとキーファー・サザーランドがかつて同じプロジェクトで共に働いていたって過去設定は「スペース・カウボーイ」だし、
そういった過去の名作傑作に多大なオマージュをささげ、ブラッド・ピットが絶妙な心理描写で物語を引っ張っていくって作りは、映画ファンとしてはなかなかゾクゾクする内容だったのではないでしょうか。
ブラピが来日した際、「人にやさしく」という言葉を残した真意は、今作からも見て取れるように、目標に固執するあまりに孤独のまま人生を終えるより、誰かのそばで心を通わせることで優しくなれることが人間としてあるべき姿なのではないか、ってことなんでしょうか。
宇宙、それは最後のフロンティア、なんてロマンな要素を含みながらも、実際は孤独で暗くてまるで自分の心の嫌な部分を見せつけられるような恐怖めいた場所で、そんな空気を出しながらも、到達した答えの素晴らしさと美しさに感動できた映画でした。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10