モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ビューティフルボーイ」感想ネタバレあり解説 相変わらず性懲りもなく愛すること以外ない。

ビューティフルボーイ

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ジョン・レノンの曲と同じ映画タイトルだね~、もしかして意識してるのかな?

と、思って調べたらどんピシャでした。

あの歌がこの映画で流れるのかぁ。

鑑賞するまで耳に慣れさせないで楽しみとっておくか。

 

 

僕は年齢でいえばもうお父さんで一人か二人くらい子供がいてもおかしくない年齢なんですが、未だに独り身。

だからこの映画に出てくるお父さんの心情よりも、シャラメが演じる息子の方に心動かされそうな気はしてます。

 

また、最近全然コメディやってくれないスティーヴ・カレルがまたもや快作をやってくれそうな予感であります。

そして「君の名前で僕を呼んで」でブレイクしたティモシー・シャラメがまたもややってくれそうです。

てなワケで早速鑑賞してまいりました!!!

 

作品情報

親と息子それぞれの視点で出版された2冊のノンフィクション小説を、8年もの長い期間を経てドラッグ依存を克服した息子と、彼を支え続けた物語として統合された本作

 

長男であるが故に親からの期待を一身に受けた主人公が、つい手を出してしまったドラッグに溺れてしまうも、何度裏切られても大きな愛と献身で支えた父により克服していく、見る者に確かな希望の光を与えてくれる珠玉の人間ドラマです。

 

 

タイトルのとおり、劇中ではジョン・レノンが息子ショーンに向けて作られた曲「ビューティフル・ボーイ」が起用されており、親子の心情に寄り添うように流れます。

また、ドラッグを克服した息子は現在、Betflixドラマ「13の理由」で脚本を手がける活躍をしています。

 

堕ちて行く息子を信じ続けた8年間の、痛ましくも美しい愛の記録です。

 

 

あらすじ

 

成績優秀でスポーツ万能、将来を期待されていた学生ニック(ティモシー・シャラメ)は、ふとしたきっかけで手を出したドラッグに次第にのめり込んでいく。

 

更生施設を抜け出したり、再発を繰り返すニックを、大きな愛と献身で見守り包み込む父親デヴィッド(スティーブ・カレル)。

 

何度裏切られても、息子を信じ続けることができたのは、すべてをこえて愛している存在だから。

 

 

父と息子、それぞれの視点で書いた2冊のベストセラー回顧録を原作とした
実話に基づく愛と再生の物語。(HPより)

youtu.be

 

監督

今作を手がけるのは、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン

 

ええ、毎度の事ながら今作の監督も存じ上げません。

ヨーロッパの監督は本当に疎い・・・。

 

一応日本で公開された作品で言うと、アカデミー賞外国語映画賞のベルギー代表に選ばれたという作品で、ブルーグラスミュージックと共に綴った一組の男女のお話「オーバー・ザ・ブルー・スカイ」ってのを手がけています。

 

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どうやら恋愛を経て家庭を築くお話のようなんですが、基本監督は「家族」をテーマに描くことを心がけているそうで、今作のテーマからも読み取れると思います。

 

 

そんな今作について監督は公式サイトで、これまで英語の映画を作ろうと思ったものの、いい題材にめぐり合えずにいたところ、偶然この本を手にし感銘を受けたそう

そこにはこれまで自分が手がけてきた家族の絆や、理想への幻想、時間の経過、といったテーマに共通していたことに加え、2人が語った物語の生々しい描写に心を動かされたとのこと。

 

この気持ちを自分の映画というフィルターを通して観衆に感じてもらい、人生を謳歌することを学んでほしいと仰っています。 

 

 

キャスト

父、デヴィッド・シェフを演じるのはスティーヴ・カレル。

 

僕としては彼のふっつーのコメディとかを見たいんですが、最近ちーっともやってくれない。

とはいえ、彼のお芝居はコミカルだろうがシリアスだろうが胸を打つものばかりですから大好きなんですけども。

それもこれも「フォックスキャッチャー」が評価されたからなんだろうなぁ。

 

近年は、「30年後の同窓会」と「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」、「バイス」が公開されましたね。

 

相変わらず映画に勤しんでおります。

どちらもいい映画でしたが、今作はそれを上回りそうな予感がしてなりませんね。

 

彼に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

そして彼の息子、ニックを演じるのはティモシー・シャラメ。

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はい~「君の名前で僕を呼んで」での熱演で世界中を虜にした彼の新作が今年も拝めるなんて、僕らは幸せ者ですね。

君の名前で~でも言及したんですが、こんな美青年をなぜ日本の女性たちは注目してくれないのか。

日本でももっと取り上げるべきですよ!彼の素晴らしさを!

そしてトム・クルーズみたいに何回も来日してもらいたい!

そうすれば洋画がもっと盛り上がると思うんでけどね~。

 

彼に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

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他のキャストはこんな感じ。

カレン・バーバー役に、テレビシリーズ「アフェア 情事の行方」のモーラ・ディアニー

ヴィッキー・シェフ役に、「ゴーン・ベイビー・ゴーン」、「バードマン あるいは(ムチがもたらす予期せぬ奇跡)」のエイミー・ライアン

ローレン役に、「ショート・ターム」、「フロントランナー」のケイトリン・デヴァーなどが出演しています。

 

 

 

 

 

 

恐らく泣いてしまうほどの感動物語だとは思うんですが、そこまでの親子の葛藤が相当生々しいように思えます。

二人の役者がどこまで絆を組み立てていくのか楽しみです。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

全然きれいごとで済むような話じゃなかった・・・。

普通の親子愛とは違う何とも言えない気持ちにさせる葛藤の物語でした。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感動物語ではない。

ドラッグに依存してしまった息子を何とかして救おうとする父の苦悩の日々と後悔、何度経ち切っても頭をよぎるドラッグに手を染めてしまう息子の狂気の日々を、過去の父子の微笑ましいエピソードを挟むことで表面的に見える確かな愛を見せると共に、それが正しいものと思い込んだ父、それに実は苦しんでいた息子を内面から見せることで、少しづつ愛情のすれ違いを掘り出していく。

同時にいかに薬物というモノが人間を依存させていくのか、何度絶ち切っても絶つことができない危険性を正面から捉えた物語でございました。

 

正直、結末は薬物を克服して父と子の間に再び愛情が生まれ互いがありがとう、なんていう物語と思って鑑賞したわけですが、とんでもない。

薬物を摂取して克服したとしてもそれは完全な克服なんかではなく、再発していない期間が継続されているだけ、だから断ち切るには周囲の協力なしでは無理だということを映画を通じて我々に教えてくれるものだった。

劇中では何をきっかけにニックが薬物に手を出したか、なぜそこまで追いつめられたのか、という部分は明確には言及されていない。

 

しかしステップファミリーという家庭環境が変わったことで自分の立ち位置に苦しんでいくニックが、軽い気持ちで手を出してしまったことでシラフになるにつれ苦しさが増幅し、何度も手を出し、終いには一番強い刺激の薬物「クリスタル・メス」に依存してしまうことから、決してニックを追い込んだのは自分自身でないということがわるし、もちろん手を出してしまったニックが一番悪いわけだけど、彼の事を考えていて実は全く心を読み取れていなかった父親にも原因があり、積み重なってしまった負の連鎖があちらこちらで見え隠れしていた物語だったなと。

 

親子の関係ってこんなにも難しいのか、とも考えられる映画だった。

親が近すぎてもダメ、離れすぎてもダメ。

近すぎると周りが見えなくなるし、離れすぎると子供のサインが見えなくなる。

連れ子になってしまった場合は特に難しいのかもしれない。

6歳のボクが、大人になるまで」でも描かれていたけど、やっぱり親が変わると子供は大変なんだなぁって思ったけど、あの映画はここぞという時に父親が正しい道へ導いてくれてたんだよなぁ。だからドラッグに走ることもなく、道を踏み外すことなく大人になったんだよなぁ。

 

実際自分に当てはめてみると、何とかぐれずに少年時代を過ごしたのは親のおかげだと思ってるけど、あの時はホント親の存在とか愛情とかが疎ましく感じ、やはり管理される状況って嫌だ!ってなって高校卒業後は自立したわけで。

もし僕がニックと同じ状況になったら両親は一体どう接したのだろう、なんてことまで考えてしまって。

きっと身を粉にして自分をケアするんだろうなぁとか。

 

 

・・・と映画に関係のない話をしてしまいましたが、内容としてはホント感動するような話ではなく、とにかく父と息子の苦悩の話で、どんなに道を踏み外したとしても愛をもって接することしかできないという物語だったなと。

 

 

親父の苦悩。

お父さん、デヴィッドは最初こそ更生施設にいれればきっといつものニックに戻る、なんて甘く見ていたのでしょう。

しかし彼が思っていたほどドラッグ依存克服は簡単なものではなかった。

これで大丈夫と思ってたら再発。自立したい意思を尊重して大学へ行かせても再発。

彼のためにドラッグがどんなものか試したり、専門家から話を聞いて知識を深めてみたり、とにかく日常生活の中でニックへの依存度が高くなる一方。

病院や施設から抜け出した、と一報が入れば一目散で探しに行く、それが遠くの大学だったとしても。

一番象徴的だったのは、2番目の妻であるカレンとの間にできた子供たちの発表会や水泳大会を見に行く姿。

視線は彼らを見ているのに、頭や心はニックの事でいっぱい。

子供の頃一緒にサーフィンをしていた時の波の音が流れるところなんか、もろに想起させるシーンでしたよね。

 

そして時折挟まれる過去の回想エピソードが、デヴィッドの「なぜあんなにかわいかった息子が・・・」みたいな気持ちを助長させるものになっていて、待ち合わせをしたダイナーで思い出す、クリンゴン語でコーラを注文する件とか、弟ができた時の愛くるしい表情とか、車の中でハードロックを聞かせたときとか、再婚した時に見届け人として参列する直前の緊張したニックの面持ちとか、夜眠れなくて子守歌として「ビューティフルボーイ」を歌う件とか、一体どこで踏み外してしまったんだろう、一体どこで子育て間違えてしまったんだろう、と、親子の仲睦まじいエピソードを見せられるたびに、父ならではの辛さが垣間見えたシーンの連続でした。

 

それを隣で見ていたカレンの気持ちもなかなか切ないもので、きっとカレンはニックが非行に走るような子供ではないと思っていたのでしょう。だって大学に6つも合格するような秀才で弟や妹の前ではいつも遊んでくれる頼もしい長男だったのだから。

そんな長男のドラッグ依存によって、頭の中がニックいっぱいになってしまった夫の姿をまじまじと見ていられないわけで、彼女の苦悩ってのもよく描かれた板と思います。

 

特にニックが実家を訪れ逃走したシーンでは、カレンが車で追走するんですが、途中であきらめ涙を浮かべるんですよね。

この映画のすごく印象的なシーンで、なぜ息子を追いかけなきゃならないんだろう、って我に返った瞬間だったのかなと。

これまで母として接してきたのに、この時だけはそれを忘れて追いかけてしまったというか。血がつながってないのに自分の子供として接してきたのに、この時だけ夫を狂わせてしまった元凶を許せないあまりに、みたいな。

 

信じては裏切られ、の連続で一時デヴィッドがニックの存在をもう忘れるような気になるんだけど、やっぱり息子を忘れる事なんてできないってなっていく姿はやはり親、なんだなと。

相変わらず性懲りもなく愛すること以外ないんだなと。

 

ニックの苦悩。

彼がなぜドラッグに手を染めるようになってしまったのかってのは、上でも書いた通り明確な部分はありませんでしたが、新しい家庭環境でのストレスというか、本当の自分を見てもらえなくってしまった環境が一つの要因であると思います。

 

最初こそ両親から離れて自立したい意思を見せていた彼ですが、離れたら離れたでドラッグに再び溺れていく。

溺れたら溺れたでやはり父の愛を欲するわけで、実家に戻る。

戻ったら戻ったで結局ドラッグをやり出す前の立場に、本当の自分を出せない苛立ちに弟のへそくりに手を出しドラッグを衝動的に購入しに行ってしまう。

やっぱりここにいたら僕はダメになる、と再び父から離れたとしても誘惑には勝てない。

今度は母親の下で更生に励む。支援者の献身的なケアにより、これまでで一番長くクリーンな状態になり、今度こそは大丈夫と実家で受け入れてもらうも、ミーティングで帰りが遅くなったが電話を入れなかったことに、再び手を出していないか確かな証拠を出せと責められることをきっかけに再び自暴自棄に陥っていくニック。

一度は離れた彼女にもドラッグをやらせ二人して墜ちていく。

一体どうしたら彼は更生できるのか、観てるこっちも突き放したくなるほどニックは辞めては再発の繰り返しをしていく。

 

どちらかというと焦点は父親の方に向けられている気がして、ニックが今一体どんな気持ちかとかって部分はそこまで多くなかった気が。

そっちよりもドラッグにはまってしまう彼の表面的な部分が目立った映画だったように思えます。

これはもう妄想に過ぎませんが、マリファナ経験のある父と共にマリファナを吸ったことが彼にとって一番素直でいられる時間だったのかな。だからこれをしてれば父は自分と向き合ってくれる、そう感じたのかなぁと。

 

いずれにしてもニックがどんどんドラッグに冒されていく姿を見てれば、絶対薬物に手を出してはいけない、と思える反面教師的な映画だったとも。

 

最後に

映画的なことを言えば、正直退屈に作られた流れだったように思います。

時系列はぐちゃぐちゃで物語の起伏もない。

最後には盛り上がるような演出もない。

とにかくモヤモヤしていく父親と何度もドラッグを繰り返す息子、これをひたすら反復していく。

 

ただこの退屈な中にドラッグの恐怖があり、父と子の愛情のすれ違いや苦悩と葛藤ってのが存在していて、8年という月日は我々が思うようなドラマチックで劇的なものなんかではなく、もっと壮絶な日々だった、ドラッグ依存が人生をどれだけ台無しなことにしていくかってことを嘘偽りなく描いてたんだなぁと。

 

スティーブカレルの中々力になれない寄り添ってやれることしかできないっていう怒りと脱力の振れ幅の見せ方や、ティモシーシャラメが、ハイだろうがシラふだろうがドラッグに溺れるとこうなるんだぞっていう演技は圧巻。

特に目をトロンとさせて夜の街をさまよったり車を運転したり、親父に金せびったりしたときの激高する姿なんかは本当にドラッグやってんじゃないかと思うほどの迫真の演技。

これを都会から離れ山々に囲まれた美しい自然の中で暮らす家とそれを照らす太陽の光を多用することで、ビューティフルボーイがまさにビューティフルボーイになっていたなぁと。

音楽も良かったんだけどどれも何の曲かわからなかったなぁ。後で調べるか。

 

 

親子の愛だけでは薬物を克服することなんてできない、でもできることはそれでも寄り添って治療を見守ることだけなんだと。それと支援者の協力ね。

キレイごとのように見せる映像に綺麗事では済まされない生々しい現実の話。

というわけで以上!あざっした!

 

Beautiful Boy

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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10