モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」感想ネタバレあり解説 女は男の玉拾いではない。

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

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ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが、今度は肉体改造して地味な女性に!?みたいな出だしでエンタメ情報を「めざましテレビ」で放送していたのを今でも覚えてるんですが、その時に、あ、そうだこれアカデミー賞ノミネート無かったな・・・と。

 

残念ながらノミネートはされませんでしたが、僕はテニスのダブルスのお話なのかな?と思ったら、男VS女のガチンコテニスバトルだったんですね~。

しかも事実に基づいた話。based on true storyってやつです。

 

一体なぜそうなったのか?

気になるけど、これ調べたらダメなやつだよね?結果わかっちゃうもんね!

ガマンガマン!

というわけで早速観賞してまいりました!

 

作品情報

1973年、男女平等を求める運動が、まだ始まりに過ぎなかった時代。

女性アスリートにも男子と同じ賞金をと訴える女の行動に目をつけた男性優位主義の男が挑戦状をたたきつけてきた。

そして女子現テニスチャンピオン29歳VS男子元世界チャンピオン55歳の、まさしく性差をこえた戦いが繰り広げられる。

 

スポーツ界はもちろん、政治や社会、課程といった日常の全てにおける男と女の関係を変えた世紀の戦いの全貌を、パワフル且つユーモアを交えて描く。

 

「ベストを尽くせば世界を変えられる」と信じる女が全女性の敵に挑む。

 

あらすじ

 

全米女子テニスチャンピオンのビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は怒りに燃えていた。

全米テニス協会が発表した次期大会の女子の優勝賞金が、男子の1/8だったのだ。

仲間の選手たちと“女子テニス協会”を立ち上げるビリー・ジーン。

資金もなく不安だらけの船出だったが、著名なジャーナリストで友人のグラディス・ヘルドマン(サラ・シルヴァーマン)がすぐにスポンサーを見つけ出し、女子だけの選手権の開催が決まる。

 

時は1973年、男女平等を訴える運動があちこちで起こっていた。女子テニス協会もその機運に乗り、自分たちでチケットを売り、宣伝活動に励む。
トーナメントの初日を快勝で飾ったビリー・ジーンに、かつての世界王者のボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)から電話が入り、「対決だ! 男性至上主義のブタ対フェミニスト!」と一方的にまくしたてられる。

 

55歳になって表舞台から遠ざかったボビーは、妻に隠れて賭け事に溺れていたのがバレ、夫婦仲が危機を迎えていた。

再び脚光を浴びて、妻の愛も取り戻したいと考えたボビーの“名案”が、男対女の戦いだった。

ビリー・ジーンに断られたボビーは、彼女の一番のライバルであるマーガレット・コートに戦いを申し込む。

マーガレットは挑戦を受けるが結果は完敗、ボビーは男が女より優秀だと証明したと息巻くのだった。

逃げられない運命だと知ったビリー・ジーンは、挑戦を受ける。

その瞬間から、世界中の男女を巻き込む、途方もない戦いが始まった──!(HPより抜粋)

youtu.be

 

監督

今作を手がけるのは、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス

 

このふたり、夫婦で映像製作しています。

元々はミュージックビデオ製作だったそうですが、ディスコグラフィーを見てみると、トンでもねービッグバンドたちのMVを手がけてるんですよ。

スマパンの「Tonight,Tonight」をはじめ、R.E.Mオアシストラヴィス、そしてレッチリ

 

彼らの近年の曲では一番有名であろう「By The Way」は彼らがMV製作したんですね~!!知らなかった!!!

youtu.be

アンソニーがレッチリの熱烈ファンであるタクシー運転手に拉致られちゃうやつねw

当時スカパーに入ってたので、スペシャやらM-ONなんかで死ぬほど見た記憶があります。もち、歌も大好きっ!

 

 

そんなMV畑で実力をつけてきたお二人は、今作が長編映画3作目と少なめ。

ですが!

この二人はあの名作「リトル・ミス・サンシャイン」と、男の夢と刹那を描いた良作「ルビー・スパークス」を手がけたお二人なんですね~。

今年FOXサーチライトのまとめ記事を書いたので作品に関しては是非そちらでどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

 

キャスト

主人公ビリー・ジ-ン・キングを演じるのは、エマ・ストーン。

 

彼女とジェニファーローレンスは20代最強の女優だと思います。

シリアスな演技も素晴らしいし、コメディやらせたらとてつもなく面白い!

てか好きだ!あ・・・心の声が・・・

 

日本でも「ラ・ラ・ランド」をきっかけに知名度が上がったし、ファンも増えたでしょうから是非今作も見て欲しいですね。

女王陛下のお気に入り」でものし上がりたい女を見事に演じてますので是非。

 

 

 

男性勇姿主義の元テニス男子世界チャンピオン、ボビーリッグス演じるのは、スティーヴ・カレル。

 

今作で一番楽しみにしている所、それは彼のユニークな演技。

ここ最近の彼は「フォックスキャッチャー」で味をしめたのかシリアスなものばかり。

マネー・ショート」は一応コメディではありますが、カレルの役どころはぶちギレ手ばかりの性格。あれも笑えましたけど、なんか違うというか。

カフェ・ソサエティ」のときも、作品のテイストがロマコメっぽいとはいえ、彼が何か笑わせるようなことはしてないし。

 

30年後の同窓会」も、息子を亡くして落ち込んでいる状態から、友によって笑顔を取り戻していくけど、笑わせてくれたのはブライアン・クランストンだし。

 

なので久々に彼のコメディアン俳優としての、ぶっ飛びぶりを堪能したいのであります。

ただこれコメディ映画ではないでしょうから、はみ出るようなことはしないと思いますけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

マリリン・バーネット役に、「オブリビオン」、「ノクターナル・アニマルズ」のアンドレア・ライズブロー

グラディス・ヘルドマン役に、「メリーに首ったけ」、「テイク・ディス・ワルツ」のサラ・シルヴァーマン。

ジャック・クレイマー役に、「インデペンデンス・デイ」の大統領役でお馴染みビル・ブルマン

テッド・ティンリング役に、「007/ゴールデンアイ」、「チョコレートドーナツ」のアラン・カミング

プリシラ・リッグス役に、「リービング・ラシベガス」、「31年目の夫婦げんか」のエリザベス・シューなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

現在でも男女の性差は日常に潜んでいますが、当時は今よりもっと表面的だったのでしょう。ビリージーンキングの一世一代の大勝負に、ボビーのクソ野郎振りが楽しみです!

ここから観賞後の感想です!!!

 

感想

 男どもの主張があまりにも情けない・・・。

女は男のためにあるんじゃねえ!と戦った一人の女性の逞しさとその裏での苦悩を描いたウーマンリブ映画でした!!!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この勝負があったからこそ。

1973年のアメリカを舞台に、テニス最強女子プレイヤーによる男子と対等の賞金をと訴えることをきっかけに、フェミニズムとウーマンリブを突き進む姿ともに、ギャンブル依存症に苦しむ男子テニス元世界チャンピオンの家庭内での主権をもてない悲哀と、自ら広告塔になり繰り広げるさまざなパフォーマンスをユーモア全開で描いていきながら、テニスという競技を前面にだすのではなく、敬意を払えられていない女の苦しみ、男性優位主義と謳いながら家庭内や自身における心の苦しみ、そしてセクシャリティによる苦しみなどを丁寧に物語に組み込むことで、性別を問わず誰の心にも優しく問いかけてくる大変楽しい映画でございました!

 

 

なぜ男と女で優勝賞金が違うのか?しかも8分の1も!

チケット料金一緒なのに?試合の数も一緒なのに?

それは男は家族を養わなれけばいけないし、何といっても男の試合の方が面白い。という何ともナンセンスな考えの持ち主であるプロモーターの考えにぶち切れテニス協会を抜け、仲間や同志を集い女子テニス協会を立ち上げるビリー・ジーン・キング。

 

確かに男性と女性で身体的な差は一目瞭然である。だからどうしたって、男が強くって女が弱いって構図が我々の中に根付いていることは容易だ。

しかし、この物語はそういう男性優主義の超偏見に対し、論点が違うということを強く訴えている。

 

力がどうだということではない、生物学的な話ではない。

なぜ男の方が女より優れていると思っているのか、なぜ男より女の方が劣っていると思い込んでいるのか。

そういう考えがあるからいつまでたっても男は女を見下し、何か権利を主張すれば力で抑え込もうとする。私たちは性別がどうであれ同じ人間であって、権利は平等にあるということを、テニスでの勝負を通じて痛烈に訴えている作品でありました。

 

これが1970年代に実際にあった出来事だということだというのに、歴史が変わった出来事だったというのに、現在でも女性の立場は劇的な改善がされていないのが現状ということが非常に悲しい。

確かに当時に比べれば見違えるほどオープンな社会にはなったと思うけど、ハリウッドの映画業界で言えば、「ゲティ家の身代金」での追加撮影の際、マーク・ウォールバーグミシェル・ウィリアムズの賃金の格差が実際にあったり、我々が住む日本でもまだ男の影に隠れてしまっている女性の存在が、男の力によって優遇されていない女性の存在が後を絶たない。

 

そんな肩身の狭い女性が権利を勝ち取るために、必死にもがき孤独に戦う姿に非常に感銘を受けた作品だったと思います。

ビリーは決して男より女の方が優れている、どっちが凄いかどっちが強いかということを証明するために戦っているのではなく、我々女性にも敬意を払ってほしいという願いを強く心に持っており、それがたまたま賞金の差が大きすぎたことに落胆し行動に移ったわけであります。

 

 

そしてビリーにひとつの大きな転換期が訪れることで、男が女がという性別をも超えた部分について悩み考えていきます。

ただ時代はまだそのことについては差別意識が強く、今それが明かされれば完全にテニスの世界から抹消されてしまうことは当然であり、ビリーはそれとも戦う宿命になっていくというのも物語に組み込まれていたんですね。

今回こういう勝負に出られたのは、ウーマンリブ活動が丁度始まった時期だからできただけで、彼女の身に起きた変化に対して大っぴらにすることはまだできなかったと。

それに関しての決着は描かれていませんが、ビリージーンキングという女性のその後の人生を劇的に変化させるエピソードとして非常に大事な部分だったんだなと。

 

で、実はさりげなくアプローチしているという点で面白かったのが、テニスコートという世界の中に何も染まっていない「白」というユニフォームの色に、様々な色をつけようと小さなアクションを起こすデザイナーのテッドの存在も大きかったなぁと。

その役をアラン・カミングがやっていたというのもすごく意味のあるキャスティングで、我々は同一ではなく、それぞれが違う色で構成されている生き物だということを、ユニフォームにいろんな色を付けることで主張してるんですよね。

さりげなくというのは、もちろん時代的なもので彼もビリーもまだ公にできない秘密を抱えているからということなんですが、いずれ僕らは堂々と主張できる、とラストで語るテッドの言葉に光を感じた瞬間でもあったなと。

 

 

他にこの物語はそんなビリーという女性を通じて、自由を勝ち取るために何をすべきかという部分と、その自由と地位を獲得するためには孤独とも戦わなければならない(劇中で流れるエルトン・ジョンのロケットマンがそれを示唆しているのもうまい)ということも盛り込んでいたなぁと。

踊る大捜査線」で和久さんが青島に言った言葉、「正しいことをしたければ偉くなれ」という名言があります。

ビリーは自分の主張を世間に知らしめるためには、トップにならなければいけないと考えており、頂点に立てば世界が変わるということで、テニスに没頭していたんですね。

そういう正しい考えの持ち主が上に立ち平等を訴えることができれば世界が変わる、正しいことができると。

それを体現しようとするビリーの意志に、僕は和久さんの言葉がふと思い浮かびました。

まぁ「踊る~」はいろんな人が批判してますけど、僕は大好きですということが言いたいw

 

女が辛いのと同様に。

あくまで主役はビリージーンキングであり、彼女が女性の権利を勝ち取るために戦う姿が主な軸ではあるんですが、この映画はそれだけが見どころではありません。

 

ビリーの敵になるボビー・リッグスにも様々な葛藤がありました。

元世界チャンピオンである肩書をいつまでもぶら下げるボビーは、奥さんのお父さんの会社にコネ入社したものの仕事をさせてもらえない退屈な日々。

引退後シニアとして活動していたものの、その賞金金額は少なく、ギャンブル依存症という問題も抱えていました。

 

夕食でも子供とコショウの粒がいくつあるか賭けようよ、と子供に提案されそれに乗ろうとするボビーでしたが、奥さんに咎められるんですね。

そりゃあ夕食の時にする話じゃないし、子供にそんなこと教えるもんじゃなりませんてことなんだろうなぁと思ったら、それが伏線になっていたわけで。

 

で、それを奥さんとかなり話し合ってきたのでしょう。絶対賭け事はやめて、夫として家庭を安心させるよう支えてと。

要はボビーの家庭では、彼が優位に立たされていない状況にあったわけで、彼もまたビリー同様お金を持たせてもらえてないと。

 

そんな彼にとっておきのアイディアが思い浮かぶんですね、それが性差を超えた戦いだったと。

ギャンブルがダメだというのは負けてしまうからであって、要は負けなきゃいい。勝てる勝負をすればいい。

男性優位主義の金持ちをスポンサーに向かえ、女子で一番強い奴と戦い自分が勝つことで彼らは喜ぶし、その中で自分も好きな賭け事ができる。そして大金を稼ぐことで夫として家長として家庭も安泰だと。

 

一石二鳥にも三鳥にもなるアイディアだと。

 

で、ボビーはとにかくこのエキシビジョンマッチを世紀の試合とともに、お金ががっぽり稼げる試合にしようと、男性優位な考えを持つ輩からとにかく金を稼ぐんです。

そのためにピエロになり、あらゆるパフォーマンスをしていく。

マリンブーツを履いてカッパを着て適当なラリーをしたり、羊をコートに放って羊飼いとなりながらテニスの練習をしたり、ブロンド美女軍団を従え、フライパンでテニスをして女は台所にいればいいなどとインタビューに答えたり、挙句の果てにはヌード撮影ww

 

テレビで過激な発言をして煽ることで、視聴者を増やそうとする原因は、掛けに勝って大金を稼ぐためなんですよね。

男が強い!とかはボビーにとっては二の次に感じます。

とはいえ女をなめてるのがこの練習風景を見ていると非常に理解できるんですがw。

 

そんなテキトーな練習とアミノ酸に頼って臨んだ試合。果たしてビリーが勝つのか、ボビーが意地を見せるのか。

 

ということで、ボビーもまたビリー同様戦わなければならない理由や、苦しみや悲哀、葛藤が描かれていることで、彼にも情が沸くような描かれ方をしているんです。

 

最後に

ビリーのエピソードもとても重要だけど、ボビーを敵にしてフェミニズムな映画にするんじゃなくて、ボビー側にもこうした側面を見せることで、わかりやすい善悪にせずに描いているのがこの映画は素晴らしいと思うんです。

 

そう、ビリーが戦う相手はボビーじゃないんですよね。その向こう側でふんぞり返って試合観てボビーに勝つ方に賭けている奴らなんですよね。

この試合に勝つことでこいつらの考えを変えてやろうと。その鼻へし折ってやろうと。子育てと家事だけするのが女じゃないんだよと。それをしている私たちに敬意を払ってよと。男が外へ出て稼いできてやっている、なんて考えはナンセンスですよと。

今じゃすごく敬遠されるような考えですが、このころはそれがまだ当たり前にように蔓延していたわけです。

 

ドラマ要素ばかりの感想になってしまってますが、もちろんそんな部分があるからクライマックスの試合を観てると手に力が入るんですよね。

これまでふざけていたボビーがマジになっていく姿が凄く印象的です。

 

是非その辺は劇場でご覧いただいて。

 

女性が活躍しやすくなった時代のきっかけはここにあったと言っても過言ではない出来事を作品にした映画。しかしまだビリーが見据えた世界は近づいてはいるもののいまだ実現はできていない。

日本のトップが女性になるのもいつのことやら。

 

女を軽く見ている奴らにこそ見てほしい映画だったのではないでしょうか。

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10