君の名前で僕を呼んで
好きなハリウッド俳優ベスト10みたいなのがTwitterに流れてきましてね。
それに対して「これいつの時代だよ?」って突っ込んだツイートに目が止まりまして。
要は超有名どころのスターばかりで、最近話題の若手俳優なんて誰も知らないってことがよくわかるランキングだったんですけども。
これがまぁ映画好きとしては悔しいといいますか、悲しいといいますか。
ジョニデ以降洋画で客が呼べるスターがいないわけですから、何とかかっこいいスターがいたら薦めたいというのが現状なんですけども。
そんな中ですね、この人だったら女性陣がキャーキャーいうんじゃない?っていう、イマドキの塩系とでもいいましょうか、草食系とでもいいましょうか、メナードのビューネ君のような、毎日疲れたあなたをそっと包んで癒してくれる、そんな俳優さんが彗星のごとく現れまして。
その彼が主演の作品がこのたびアカデミー賞作品賞などにノミネートしたということで注目されてるんですね。
しかも作品の中身は避暑地での男性同士の恋模様ということで、BL好きの女性なら尚更必見の映画ではないでしょうか。
是非彼にはスターダムに乗ってもらって、久々に国内でもハリウッドスターブームが起きてくれたらいいなと期待を寄せております。
そんなこんなで早速観賞してまいりました。
作品情報
17歳と24歳の青年の、初めての、そして生涯忘れられない恋の痛みと喜びを綴ったアドレ・アシマンの同名小説を、イタリア人監督のよって映画化。
男女世代問わず誰にでも思い当たるような、胸の中にある柔らかな場所を思い出すようなまばゆい傑作として評価され、アカデミー賞作品賞はじめ4部門にノミネート、脚色賞を受賞するr快挙を成し遂げている。
また主演のティモシー・シャラメが史上最年少で主演男優賞にノミネートしたことも話題となり、世界中が今後の彼に注目している。
君の名前で僕を呼んで 【特典:寿たらこ描きおろしカバー&リーフレット付】 (マグノリアブックス)
- 作者: アンドレ・アシマン,寿たらこ,高岡香
- 出版社/メーカー: オークラ出版
- 発売日: 2018/04/20
- メディア: 文庫
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あらすじ
1983年夏、北イタリアの避暑地。
17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、アメリカからやって来た24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会う。
彼は大学教授の父パールマン教授(マイケル・スタールバーグ)の助手で、夏の間をエリオたち家族と暮らす。
はじめは自信に満ちたオリヴァーの態度に反発を感じるエリオだったが、まるで不思議な磁石があるように、ふたりは引きつけあったり反発したり、いつしか近づいていく。
やがて激しく恋に落ちるふたり。
しかし夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づく……。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのはルカ・グァダニーノ。
全く存じ上げない方なんですが、イタリアの映画監督さんだそうです。
ドキュメンタリーも撮ったり、自伝小説なんかも書くほどの才能の持ち主で、ヴェネツィア国際映画祭で審査委員も務めるほど国際的評価の高いお方。
ティルダ・スウィントンがよく作品に参加してるのが特徴でしょうか。
そんな監督の作品を簡単にご紹介。
ティルダ主演のサスペンス映画「 The Protagonists」で映画監督デビュー。
その後、当時17歳の女子高生が実体験を赤裸々に綴ったことで話題となった小説を映画化した「メリッサ・P~青い蕾~」、息子の友人との許されぬ情事におぼれていく上流階級マダムを描いた「ミラノ、愛に生きる」では、賞レースでもノミネートされる高い評価を受け話題となります。
そして、シチリアの孤島に恋人とバカンスでやってきた人気歌手の前に、元カノが子供をつれて現れたことで、愛蔵渦巻く人間模様から思いも寄らぬ事件へと発展していく、フランス映画のリメイク「胸騒ぎのシチリア」などを手がけています。
他にも、以降のイタリアンホラーに多大な影響を与えたとされるクラシックカルト映画「サスペリア」のリメイク作品を、ティルダとダコタ・ジョンソンを招いて手がけています。
キャスト
主人公の17歳エリオを演じるのはティモシー・シャラメ。
見てくださいこの美しいお顔立ち・・・。
日本でもファンが増えそうなタイプの俳優さんだと思うんですよ、ええ。
きっと出演作もこれから増えてきて、気がついたらどこぞのヒーロー映画に名を連ねるようなスターになるのでしょうか。
今回初めて彼を見ると思ったら、彼「インターステラー」でマシューの息子役で出演してたんですね~。
どっちかと言うと父と娘の物語なのであまり印象がなかったんですが、まさかこんなに大成するとは。
そんな彼の出演作をご紹介。
ジェイソン・ライトマン監督が、ネット社会での他者とのつながりを求める人々を描いた「ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界」で映画デビュー。
その後クリストファーノーラン監督の「インターステラー」、年に一度顔をそろえるクリスマスの日を舞台に、それぞれが問題を抱えながらもひた隠して晩餐会をやり過ごすも相同に発展していく家族を描いた群像コメディ「クーパー家の晩餐会」などに出演しています。
彼に関してはこちらもどうぞ。
そしてエリオと親密になっていく青年オリヴァーを演じるのは、アーミー・ハマー。
これまで「ソーシャル・ネットワーク」のイケメンカヌー部の双子や、「J・エドガー」ではフーバー長官の片腕でデカプーとがっつり絡む演技で注目を浴び、「ローンレンジャー」でジョニデとコンビを組むも、おいしいとこ全部持っていかれ、「コードネームU.N.C.L.E.」ではハゲかけヘンリー・カヴィルとコンビを組みイケメンスパイを演じてきました。
これだけの容姿がありながら、中々単体での主演作ってのがないので、改めて映画で主役を張るのって難しいことなんだなと彼を通じて感じますが、引き立て役としては評価されてるということなんでしょう。
今回もあくまでシャラメ君が主役ですから。
彼の出演作品はこちらもどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
エリオの父、パールマン教授役に、「シェイプ・オブ・ウォーター」、「リンカーン」のマイケル・スタールバーグ。
エリオの母、アネラ役に、「サンローラン」、「僕とカミンスキーの旅」のアミラ・カサール。
キアラ役に、「マラヴィータ」、「愛を綴る女」に出演したヴィクトワール・デュボワ。
マルシア役に、「メゾン ある娼館の記憶」、「カミーユ、恋はふたたび」に出演したエステール・ガレルなどが出演します。
男性同士の恋模様を89歳になる監督がどう描くのか。
彼らの心理描写もみどころですが、イタリアののどかな避暑地といった風景も楽しめそうな今作。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
痛みを葬るな!
まばゆい光と美しい緑の中で描かれる美しくも儚い初恋の物語でした!
以下、核心に触れずネタバレします。
なんて美しいんだ。
考古学教授を親に持つ主人公の前に現れた大学院生。
夏の終わりが訪れるまで彼と生活していくうちに、少しづつ芽生えていく恋愛感情を、主人公の細かい仕草や小道具などでもどかしさやとまどい、衝動、葛藤などをキチンと映すことで観衆に伝える演出に加え、北イタリアの照り付ける日差し、それに呼応して光り輝く緑と川のせせらぎが静かに心に染み入って、極上の初恋物語へと昇華していき、最後に語られる父親の言葉が全ての報われない人たちへエールを送る。
狂おしくて儚くて痛みが溢れてるんだけど、確かに愛があった、君の勇気は決して無駄ではなかったと語ってくれる映画でございました。
最初から最後までため息が漏れるほど美しい風景、美形男子同士が探り合いながらお互いの気持ちを知っていく適度な距離感を丁寧に近づけていき、放たれる幸福感。
その後の押し寄せる痛み。
多感な十代の、それもわずかな夏の時間。
そこで起きた出来事をまばゆい光で優しく包み込んで永遠にしまい込んでしまいたくなる至福の時間だったように思えます。
ダメだとわかっていても止められないヤキモキした思いを随所で見せるティモシーシャラメの卓越した演技によって、忘れかけていた初恋のあの感じを見事に体現してくれた作品だったのではないでしょうか。
何というかお話としては、男と男、いわゆるゲイのお話ではあるんですが、もうここまで来ると美しい男同士の恋愛では括れないというか、男なんてただの記号でしかなくて、人間と人間が向かい合って愛し合うくらいのレベルにまで到達していて。
とにかくティモシーくんの少年ぶりとアーミーハマーの一通り経験した大人の色気と余裕が見事に歯車に噛みあっていて、欲しがる者と受け入れる者の対比とか、ひと夏の恋と分かっていても、自分の事を好きな女子がいても止められない歯がゆさというか切なさというか、濃密でそれでいて繊細で、あぁあああぁああなんかもうベストカップルなんですよ!ええ。
娯楽大作好きな僕としては、正直こういうヨーロッパ映画っぽい描写の映画ってどこかダレるというか、退屈になっていく、眠くなっていく、なんてことがしばしば訪れるんです。
本作も理解しにくい映像が所々あって意識が薄れそうになるんですけど、恋路が気になって目が離せないんですね。
必ずどこかしらにエリオの視線や仕草や動き、相手を思うがゆえに取ってしまう幼い彼の言葉がありまして。
これが少しずつ蓄積されていくことでエリオの恋に対する正直な気持ちだったり、そこから現れる苦しさが伝わってですね、こっちまで溜まらなくなるんですよね。
あ~俺もガキの頃あったよそういうもどかしい気持ち!
なんかもう止められなくて枕に顔ツッコんで、あああああっ!!って叫んでたよ、どうしようもなくて、みたいな。
そういう経験した人たくさんいると思うんですよ。
普通の事で全然恥ずかしいことじゃないんですけど、今回相手が男ってことで秘密にしなきゃいけないわけですよ。
時代が1983年ですから。
今のようにオープンじゃない。
まして両親と一緒に暮らすわけですから、プライベートなんか筒抜けですよ。
ああ俺もうどうしたらいいんだ!って。
でも最後に語る父親の言葉が胸に染みるんですよね。
僕はほかの家族の親とは違って君を咎めたりしないと。
その気持ちに正直にならないと、30歳までに心が崩壊するぞと。
きちんと心と向き合って行動しろよ、それでダメでもいんだよと、痛みを葬るなよと。
父ちゃん最高じゃねえかと。
普通思春期を迎えた親父がこんなこと息子に言いますか。静観ですよ。
父ちゃん照れくさそうでしたけど、しっかり息子のためを思って話してくれるんですよ。優しく。
僕はここ涙ぐんじゃいましたね。
自分の息子を肯定してくれる親。
グッときました。
エリオのもどかしさとメタファー。
最初エリオはやってきたオリヴァ―に対して侵略者だっていうんですね。
これって今の自分の生活を脅かすような邪魔者みたいなニュアンスにも聞こえるんですけど、結果自分の心を侵食していった、って意味にも聞こえる冒頭のセリフ。
それから、知らぬ間に目で追いかけていき、バレーボールで肩に触れられることで一気に自分の中のモヤモヤに気付いていきます。
モヤモヤしている自分を見られたくなくて、そそくさと逃げ出すのなんてモロですからね。
それからというもの、サングラスをかけてはオリヴァ―を見たり、彼がそのギターもう一回弾いて、というと、バッハの雰囲気を別の作曲家のアレンジで弾くことで、気を惹こうとする。
だけどオリヴァーはアレンジするな、バッハはバッハでやれと。
お前ひねくれてねえで素直になれ、とオリヴァーは言っているようでした。
エリオのモヤモヤも段々エスカレート。
パンツ一丁で股間をいじくりだしたり、アプリコットに穴を開けて、その穴にアレを突っ込んで自慰行為してしまったり、オリヴァーの洗濯物にあったショートパンツを頭からかぶって腰を動かそうとしたりと一見変態ではありますが、その全てが抑えきれないこの気持ちバーイT-BOLAN状態になっていました。
それから、彼らの部屋の構図も二人の心情を見事に表しています。
一番印象的なのは、バスルームが共通ということ。
そこを通れば行き来できる仕組みになっていて、エリオは互いの気持ちを知ってから扉を開けたままなんですよね。
だから夜に帰ってきたオリヴァーが小便してる時扉は開いている=心を開いているという見方ができるんだけど、用を足した後、オリヴァ―は閉めてしまう。
彼はまだエリオに飛び込もうとしないんですね。
まだ早い、大人になれよと。
行き急ぐなよと。
あとハエですね。
すごく気になったんですよこのハエ。
股間いじってる時。
あとオリヴァーと二人で出かけて道端で寝っ転がってる時。
このハエってのはエリオの気持ちのためらいの現れなのかなと。
ハエは周りをぶんぶん飛ぶ虫なので、まぁ鬱陶しいですよね。
それを追い払おうとするエリオを紐解くと、君が今抱いている思いはよくない!っていう自制心なのかなと。
もっというとハエはオリヴァー自身なのかなと。
追い払うことでエリオはやろうとしていた行動を実行するので、なんかそういう風に感じました。
他にも野外クラブみたいな場所で別の女性とダンスを楽しんでいるオリヴァーを喫煙しながらじっと見てる姿なんて動揺の現れですし、
オリヴァーが最初から身に着けていたダビデの星のネックレスは、エリオもオリヴァーと同じくユダヤの血を引いている家系で、エリオはほかの血が混ざっているからという理由でしてないんですけど、途中で身に着けていた。
しかも母親にそれを見られている、ということは、この時点で母親はエリオの気持ちを知っていたのでしょう。
また今作は彫刻にもスポットをあてており、何らかのメタファーがあるとは思うんですが、いかんせんおバカなモンキーですから、全く知識がないのでわかりませんw
とにかく画で情緒を知らしめる監督の演出と、見事に演じるティモシーくんの卓越した演技がマッチした映像の数々だったことは、見れば納得の作品だったと思います。
最後に
冒頭から高音で奏でるピアノが、この物語の眩しさだったり初恋のきらびやかさ、若さ、危うさ、まとめて青春チックな雰囲気を醸し出しており、一気に没入できる素晴らしいオープニング。
ほとんどのBGMがピアノで彩られていて、それもまた画の美しさをさらに高めていたように思えます。
ティモシーくんのギター演奏も、長回しでいろんなアレンジで同じ曲を弾くテクニックも素晴らしいですし、言葉も英語やフランス語イタリア語などあらゆる言葉でセリフを言うインテリジェンスな面が映画にもハマっていました。
なんだこいつすげえな!
いかんせん彼ばかり目がいきがちですが、彼の相手役のアーミーハマーも見事です。
自分の気持ちを抑えられないエリオとは対照的に、余裕をもって誰とでも接しながら、エリオにそれとなくアプローチする大人テクニック。
にもかかわらず、卵を割るのが下手くそ、というかあれ動揺を現してる?
そしてあの顔立ちでめっちゃ頭いいというのもピッタリ。
彼らだからこそ成り立つ美しさだったように思えます。
北イタリアで描かれた17歳による少年からちょっと大人への一歩を歩んだ、ひと夏の経験。
ラストに魅せた表情は、恋の終わりの切なさとともに、ちょっと逞しさが垣間見える顔で締めくくられます。
僕らはそうやってちょっとずつ大人になっていったのでしょう。
あの頃の僕らをもう二度と経験することはできない。
眩しい太陽と汗ばんだシャツ、そよ風に揺れる木々と青々とした草木の匂い。
当時の風景が心に刻まれていたのかと思うと、今日はちょっとだけ思い出に浸りながら夜風にあたって一人酒なんてしたくなっちゃう、そんな思いにさせてくれる映画でした。
非常に素晴らしい映画でした。
というわけで以上!あざっした!!
レイター!
君の名前で僕を呼んで コレクターズ・エディション (初回生産限定) [Blu-ray]
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満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10