モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「沈黙のパレード/ガリレオ劇場版3」感想ネタバレあり解説 沈黙罪ってなんで無いんだろう。

沈黙のパレード

フジテレビが誇る人気コンテンツ「ガリレオ」が再び劇場版となって帰ってきました。

 

俳優・福山雅治にとって代表的な作品であると共に代表的キャラとあって、今回も彼のクセの強いワードと性格が披露されることでしょう。

 

ミステリーとしても秀逸ですし、何より原作者・東野圭吾の得意パターンでもある「謎解き後のキャラたちのなんともいえない哀愁」がたまりません。

 

沈黙とはただ黙ることですが、何も言わないことが事件を物語る、そんな意味を含んでるのではないかとモンキーは考えますが、果たしてその真相やいかに。

早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ベストセラー作家・東野圭吾の人気シリーズを映像化したTVドラマ「ガリレオ」。

福山雅治の個性強めのキャラや、次々と難事件を解決する姿が世間にハマり高視聴率を叩き出し、2度による劇場版も製作。

大ヒットしたあのシリーズが、再びスクリーンに帰ってきた。

 

今回もバディを組む女性刑事と共に、沈黙を貫き無罪となった男が殺害されたという「ありえない」事件に挑み、誰もが語りたがらない供述から真実を暴き出す。

 

TVドラマから製作に携わった監督が再びメガホンを撮り、福山はじめお馴染みのキャストが集結。

ゲスト俳優にも椎名桔平吉田羊、お笑い芸人など主役も脇役もこなす個性豊かな面々が、事件に深く関わっていく人物を熱演。

ガリレオの推理を阻んでいく。

 

主題歌も福山雅治と柴咲コウのユニット「KOH+」が担当。

登場人物への鎮魂歌として鑑賞後の余韻に影響を与えるだろう。

 

前2作を凌ぐ怒涛の展開と心揺さぶる人間ドラマに、シリーズ最高傑作と呼び声の高い本作。

我々は観賞後「実に面白い」とうなづける作品になっていること間違いなしだ!

 

 

 

あらすじ

 

天才物理学者・湯川学(福山雅治)の元に、警視庁捜査一課の刑事・内海薫(柴咲コウ)が相談に訪れる。

 

行方不明になっていた女子学生が、数年後に遺体となって発見された。

内海によると容疑者は、湯川の親友でもある先輩刑事・草薙俊平(北村一輝)がかつて担当した少女殺害事件で、完全黙秘を貫き、無罪となった男・蓮沼寛一(村上淳)。

蓮沼は今回も完全黙秘を遂行し、証拠不十分で釈放され、女子学生の住んでいた町に戻ってきた。

 

町全体を覆う憎悪の空気。

そして、夏祭りのパレード当日、事件が起こる。

蓮沼が殺された。

 

女子学生を愛していた、家族、仲間、恋人…全員動機があると同時に、全員にアリバイがあった。

そして、全員が沈黙する。

 

湯川、内海、草薙にまたもふりかかる、超難問!

果たして湯川は【沈黙】に隠された【真実】を解き明かせるのか…!?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

監督

本作を手掛けるのは、劇場版全てを手掛ける西谷弘

 

フジテレビに所属する制作ディレクター。

2022年はシャーロックの劇場版「バスカヴィル家の犬」を手掛けましたが、どう考えても予算が足りないのが見え見えで、ミステリーとしても残念な作品になっておりました。

個人的には本作でその汚名を挽回してほしいなと期待しております。

 

何せ監督の持ち味は、TVドラマの時とは想像もできないほどの映画的世界観の構築をすること。

TVカメラとは違うカメラを用いることで、どことなく作品への「深み」を演出させるのが得意な監督だと僕は思ってます。

またそうすることでTVドラマの劇場版という枠組みを外し、洋画とも引けを取らないクールな映画に仕上げることのできる「職人監督」なのではないかと思ってます。

 

ガリレオシリーズはじめ、外交官黒田勇作シリーズ、「マチネの終わりに」や「昼顔」など、どれもムード漂う大人のドラマになっているのも共通点だったりするのでしょう。

そんな深みのあるミステリーを本作でも堪能したいですね。

 

真夏の方程式

 

 

 

 

登場人物紹介

  • 湯川学(福山雅治)・・・帝都大学の教授。変人でありながら天才的頭脳を持つ物理学者。論理的な思考と科学的検証で難事件を解決し、警察関係者から「ガリレオ先生」と呼ばれる。
  • 内海薫(柴咲コウ)・・・警視庁捜査一課の刑事。正義感が強く、事件の真相解明のためには労をいとわず奔走。湯川を信頼しており、捜査に行き詰まると湯川に相談に訪れる。湯川のバディ的存在。
  • 草薙俊平(北村一輝)・・・警視庁捜査一課の刑事。湯川と同じ帝都大学出身で、親友。今作では、草薙が担当した事件で無罪になった男が、再び他の事件の容疑者として浮上する。

 

  • 並木祐太郎(飯尾和樹)・・・殺害された女子学生の父で、菊野商店街の定食屋「なみきや」を営む。
  • 並木真智子(戸田菜穂)・・・並木祐太郎の妻。祐太郎と共に「なみきや」を切り盛りする。
  • 並木紗織(川床明日香)・・・並木夫妻の長女。歌手になることを夢見る女子学生。幼いころから商店街の人々に愛されて育った。
  • 並木夏美(出口夏希)・・・並木夫妻の次女。明るく人懐っこい性格で「なみきや」の看板娘に。姉の死を乗り越え、明るく振る舞う。

 

  • 戸島修作(田口浩正)・・・並木夫妻の幼馴染で親友。菊野市で冷凍食品会社「トシマ屋フーズ」を営む。
  • 宮沢麻耶(吉田羊)・・・菊野商店街にある老舗の本屋「宮沢書店」の店主。菊野市で開催されるパレードではチーム菊野を取り仕切っている。
  • 高垣智也(岡山天音)・・・菊野市にある印刷会社デザイン部に勤めている。紗織の恋人。
  • 増村栄治(酒向芳)・・・女子学生殺害事件の容疑者・蓮沼寛一の元同僚。
  • 新倉直紀(椎名桔平)・・・菊野市に住む音楽プロデューサー。紗織の才能を見出し、スターに育て上げようとする。
  • 新倉留美(檀れい)・・・新倉直紀の妻。自身もかつて歌手として活動していた。

 

  • 蓮沼寛一(村上淳)・・・かつて草薙が担当した少女殺害事件で完全黙秘を貫き無罪となり、今回の事件で女子学生を殺害した容疑者として浮上する男。
  • キクノン…菊野市の公式マスコットキャラクター。菊の妖精をイメージして作られたいわゆる”ゆるキャラ”だが、初めて見た湯川は「全くゆるくない」とコメント。

(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も湯川の推理によりどんな真実が浮かび上がるのか。

そしてその先にある人間模様とは。

その動機に、また涙してしまうのでしょうか。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

法で裁くことのできない犯人を前に苦しむ人たちの思いが全面的に現れた、なんとも歯痒さと後味の悪さが残る作品。

正にガリレオ劇場版ならではの切なさよ。

しかし湯川よ、もっと科学的に仮説を立てて実証してもいいんだよ…随分と頭だけで事件を捜査し過ぎじゃないかね。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

被害者の家族と草薙に感情移入

行方不明だった少女が遺体で発見された事件を皮切りに、黙秘を貫き裁きを免れた犯人と思しき男の殺人事件へと発展していく本作。

愛する人を失い苦しむ家族や友人、そして法の目を掻い潜って無罪を勝ち取った男に対する無力さに、再び苦しむことになる草薙にフォーカスを当てると共に、ひとつひとつのパズルが湯川の推理によって完成されていく過程も楽しめる、優れたミステリー作品でございました。

 

今回二つの事件の容疑者として浮かび上がる蓮沼という男。

どうやら父親が自白させるのが巧い元刑事だったそうで、彼はもしかしたらそんな父親が自慢げに語る自白テクを見て「沈黙すれば罪には問われないと思った」のかもしれないというセリフがありました。

 

様々な物的証拠や接点アリバイなどが目の前に提示されても、ただただ完全黙秘すれば裁判でも無罪になって、しかも保証金ももらえてしまうっていう。

 

え?嘘でしょ?

そんなことってあるの?

今回一番驚いたのはこの部分。

 

実際そんなやり方で刑を免れるのかどうかは調べてみないとわかりませんが、もしそんな奴が自分の大切な人を殺害し、ただただ自分のしたことを黙り続けて無罪になって、しかもノコノコと自分の前に平然と現れたら、誰だってはらわた煮えくり返るし、「法で裁けないのなら自分で裁く」という考えが頭に浮かぶのも自然でしょうと。

 

物語は、その犯人と思しき人物が殺害されたことを発端に、愛する人を失った家族や友人たちに容疑が向けられていく。

当時事件を担当し、犯人を法で裁くことができなかった草薙をさらに追い詰めていくという展開になっており、作品全体に彼らの悲壮感が常に漂う作品でした。

 

これに草薙の後輩の内海と草薙の親友である湯川が捜査に絡むことになり、先輩の気持ちを汲みながらも捜査に没頭する内海と、終始ドライな態度を取りながらも、心に引っかかっている親友の気持ちを浄化させてあげたいと願い、捜査に協力する湯川の心情を読み取りながら、ドラマを組み立てられていく。

監督のこうした巧さが際立った作品だったのではないでしょうか。

 

 

正直僕は本作を見る前に、きっとこの物語は「オリエント急行殺人事件」のように紗織に関わったすべての人物たちが結託して蓮沼を殺害し、湯川と草薙は彼らが蓮沼と同じように沈黙を貫くことで捜査が暗礁に乗り出し苦悩していく、そんな展開を予想していました。

しかしそこは東野圭吾原作。

丸パクリというわけではなく、しっかり二転三転するミステリー展開になっていたことは良かったです。

 

隠された真実が明るみになったことで、何故蓮沼は再び菊野市にやってきたのか理由が分かったし、ラストシーンでのある人物の「沈黙」にも合点がいく内容になってたなぁと。

 

 

さて物語の中身についてですが、冒頭から見てるうちに涙がこみ上げる流れでした。

2017年の菊野市で行われたのど自慢大会の模様から始まるんですが、そこで歌を披露してるのは、これから遺体で発見されることがあらすじで既に分かっている紗織の姿。

 

緊張して「もう一度最初からお願いします」と頼む紗織に、家族や友人、街の人たちが懸命に励まし応援してるではありませんか。

それだけ彼女が愛されていたという意味を込めた冒頭の映像から一変、舞台は一気に現在の時間軸に戻り、行方不明だった紗織が遺体で発見されたという捜査会議へ。

 

1か月後に「なみきや」に現れた蓮沼の姿を見て以降、紗織の家族や街の人たちが、何かある度に彼女を思い出してしまう回想シーンは、見てるこちら側に自然と感情移入させる上手な構成でした。

 

草薙に至っても、捜査会議に呼ばれて蓮沼の写真を見て瞬時に嘔吐してしまうあたりから、事件の捜査の陣頭指揮を執っていくうちに、どんどんと顔がやつれ、目にクマができ、整えてた髪もボサボサになり、白髪の混ざった無精ひげまで蓄えていくほど疲弊してる表情は見てられません。

 

最初の事件で蓮沼を逮捕したはいいものの、自白させられなかった自分の力のなさ、罪を犯した人を正当に裁くことができなかった警察の力のなさ、そしてその悔しさと心にまとわりついた呪いが、15年後に再び自分を苦しめることに。

さらに容疑が被害者の家族かもしれないという事態に、相当苦しんだことでしょう。

 

仮に被害者の家族が犯人だったら逮捕しなくてはならないわけで、ますます自分を追い込んでしまうわけで、物語は悲しくも見事にそっちの方向へ転がり込んでいくわけです。

さらには蓮沼が行ったように被害者の家族たちも「沈黙」を貫く。

 

 

このような展開で一体誰が真犯人で、どうやって締めくくるのかは見てのお楽しみですが、見終えた後も何とも言えないスッキリしない締め方だったなぁと。

あれしか草薙を救うことができなかったとも思うし、被害者たちを救うこともできなかったよなぁと。

黙秘することで罪人を裁けないという法の穴を突き付けておきながら、黙秘させるよう仕向けることで救えることもあるみたいな。

 

今回のケースに至ってはあれをさせることで、罪の重さを最小限にすることができたという解釈をしてるんですが、果たして本当にそれでいいのかって気持ちも自分の中にはあるわけで。

 

そこは当事者か周囲の人間でないと判断できなかったりするんでしょうか。

と、こんな感情が本作のラストで湧き上がってスッキリしないという気持ちになりました、はい。

 

画質がどうも…

全体的には登場人物の気持ちに凄く動かされたのと、こちら側が予想していた展開を越えたミステリーだったことで楽しめたのですが、本作の画質がどうもデジタルすぎるというか、明るすぎて「映画」って感じに見えなかったんですよね・・・。

 

それこそ「容疑者Xの献身」では、舞台の季節が冬ということもあって寒色系の配色で雰囲気を演出したことで、それがTVドラマと映画との差をプラスに働かせた良作だったと思ってるし、「真夏の方程式」では海のある街を舞台に描いた「夏」の物語で、海の青さを鮮明にさせながらも時折背景が合成にも見える違和感もあって、これはちょっといただけないなぁと思えた部分が残ったんですよね。

 

 

今回も季節が夏ということで「容疑者X」の時のような寒色系の配色ではなく、黄色や赤が強く放たれるような暖色系の配色を出した色味だったんですが、僕としてはそれが強すぎやしないかと、しょうもない所に目が行ってしまいましてw

 

もちろん前作から9年も時が経てば撮影技術も進化してるわけで、デジタル化された画質でよりクリアに鮮明に作品を彩ることができるわけなんですが、これが僕としては逆に映画としての良さを損ねているように思えてしまったわけです。

 

ガリレオシリーズ、というか西谷監督にはTVでは表現できない部分を映画で挑んでる人だと思っていて、その差を画質だったり配色だったりで勝負してる人なんじゃないかなぁと。

 

もちろん潤沢な予算をもらえたことでTVドラマでは出来ない大掛かりな演出をやっていたし、それが後に描かれる悲劇とは真逆の楽しさを生み出していたわけで、そこに関しての色味云々に関しては全く文句はないんだけど、結局そのままのトーンで描いていくから、湯川や内海を寄りで撮った際に、妙に肌艶の良さがクローズアップされててしらけてしまうというか、それが「TV的」な構図に見えてしまったりとか、色々な雑念が生まれてしまったわけです。

 

今回内海なんか鎖骨辺りにだいぶ汗をかいていたのが簡単に見えるくらい鮮明な映像だったんですけど、そんなにクリアにしてどうすんの?なんて思ってしまってw

なんかこうもっと画質を使い分けるみたいなことってできなかったのかなと。

 

その辺は映画製作に関してど素人なので、色々出来ない理由があるとか事情を知らない僕の勉強不足から生まれた感想なんですけど、今回はどうもTVの延長のような画質に見えてしまったというか…。

 

とはいえですよ、ラストの取調室での草なぎの横顔を寄りで捉えた映像はむっちゃ好きです。

 

窓から差し込む夕日が顔に差し込んで、「あなたはそれでも黙秘を続けますか?」と問うんですけど、色々翻弄されて疲弊した草薙の表情から一筋の光が見えたかのような意図とも取れる夕陽の色合いが素晴らしかったですね。

これに対して容疑をかけられた人物には対面に座っていることから後頭部に夕陽が差し込んでおり、これもまた深読みできる構図というか。

 

とにかく色々と「どうなのこれ?」と思った部分をダラダラ書き連ねてしまいましたw

 

 

最後に

しかし劇場版ガリレオは、湯川が科学を基に仮説を立て実証して真実を見つけるというシリーズ定番の流れを全然やってくれないのがモヤモヤしますねw

 

容疑者Xの時は、大学の友人だった天才が犯人かもしれないというところから湯川は事件に首を突っ込み、真夏の方程式ではたまたま訪れた場所で事件が起きたことから事件に首をツッコむ。

 

今回はこれらとはちょっと違うパターンではありましたけど、内海が持ってきた案件を「科学で協力できる事件ではない」と突っぱねておきながら、なみきやの常連になって彼らの側に立ち、尚且つ草薙の過去に深くかかわった事件てことで捜査に協力するという。

 

劇場版でここまで「科学を扱って事件に関わる」ような流れでないのは、ちょっと不自然というか。

正直湯川で無くてよくねえか?とさえ思ってしまうんですよねw

それもこれもTVドラマで毎度のようにあったパターンが好きだからという理由であり、やはりそのパターンを壊して湯川が事件に関わるようにするのが劇場版との差なのかなと。

 

どうでもいいですが、福山雅治と椎名桔平が競演してるって「いつかまた逢える」以来じゃないですかね?

そういう意味でも懐かしいなぁと。

 

これ「なみきや」の主人の役がずんの飯尾じゃなくて今田耕司だったら俺多分ずっとニヤニヤしてたなぁw

そんなキャスティングにしてなくてよかったですw

 

あとは主題歌「ヒトツボシ」が非常に良い。

紗織の鎮魂歌という意味合いで製作されたそうですが、歌詞を紐解くとまぁ切ない・・・。

君の物語の邪魔しないようにとか、見事なフレーズですよ。

 

だってみんなずっと亡くなってしまった大切な人に固執してるわけじゃないですか。

紗織の物語をずっとひきずってるわけですよ。

そんな彼らに対して星の上にいる紗織からそっと語りかけてくれるような歌でしたよね。

そういう意味でもエンディングでずっとモヤモヤしたままの状態でいる僕らをも救済してくれる歌だったんじゃないでしょうか。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10