モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「1秒先の彼」感想ネタバレあり解説 リメイク作としての座組が完璧。京都行きたいなぁ。

1秒先の彼

一人の時はののんびり屋さんなのに、誰かといるとせっかちになる。

そんな人いませんか?

そう、僕がそれですw

 

誰かと作業したりどこかへ遊び行く際、めちゃめちゃ時間を効率よくしたいことを優先して、こちらのペースを強要してしまうんですよね…。

でも一人の時は時間なんて気にせずにダラダラ動く。

なんて協調性のない、独りよがりな性格なんだろうとw

 

今回観賞する映画は、そんなせっかちさんでのんびり屋さんな二人が織りなす、奇跡のラブストーリー。

 

台湾映画「1秒先の彼女」のリメイクなんですが、正直個人的には男性寄りの視点だったり男性的な思考や妄想が目立って気持ちが悪かったんですよね・・・。

SFとしての理屈に疑問はあれど、事の全貌を女性が知った時、あの涙は流せるだろうかと。

 

今回のリメイクは男女の設定が逆ということで、男性寄り過ぎるだろと腹が立ったオリジナルからどこまで改変できているのかが気になります。

モンキー的にはクドカンが監督せず脚本のみという部分に期待をしておりますw

早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

誰よりも1秒早く動いてしまう女性と、誰よりも1秒遅く動いてしまう男性。

普通に過ごす人々よりテンポがずれている2人が奇跡の出会いを果たす台湾発のラブストーリー「1秒先の彼女」。

90年代の台湾映画界で異端児と称され、「熱帯魚」や「ラブゴーゴー」などで多くの賞を受賞したチェン・ユーシュン監督の本作は、日本でも若い世代を中心に大ヒットした。

 

そんな彼の代表作とも言える本作を、「苦役列車」、「天然コケッコー」、「リンダリンダリンダ」の山下敦弘が監督、テレビドラマ「俺の家の話」や大石静と共同脚本を務めたNetflixシリーズ「離婚しようよ」など、常にヒット作を連発する宮藤官九郎を脚本を務め、男女の設定を逆転&舞台を京都に変えて大胆にリメイク。

 

人よりも1秒早いせっかちな男性と人よりも1秒遅いのんびりな女性に起きた「消えた1日」を、可笑しみと切なさを込ながらそれぞれの視点で描く。

 

主演には「ドライブ・マイ・カー」でセカンドキャリアを開眼した岡田将生が、かつての役柄を彷彿とさせる「残念なイケメン」として本領を発揮。

相手役には「線は、僕を描く」での好演や、「まともじゃないのは君も一緒」でのコミカルな役柄が印象的だった清原果耶が務める。

 

他にもクドカン作品常連の荒川良々羽野晶紀加藤雅也しみけん笑福亭笑瓶など多彩なキャストが顔をそろえた。

 

オフビートを得意とする山下監督と、常にアッパーなテンションを物語に注ぐクドカンの脚本。

テンポの違う二人がテンポの違う2人の物語を作るとき、一体どんな化学反応を起こすのか。

 

人よりテンポがちょっと早くても、遅くても、すべてのひとの人生がきっと愛おしくなる―そんな至福のラストシーンに涙する。

 

 

 

あらすじ

 

ハジメ(岡田将生)は京都の生まれ。

いつも人よりワンテンポ早く、50m走ではフライング。

記念写真を撮るといつもシャッターチャンスを逃してしまい、小学校、中学校、高校の卒業アルバムの写真はことごとく目を閉じている。

 

現在、ハジメは長屋で妹の舞(片山友希)とその彼氏のミツル(しみけん)と3人で暮らしている。


ハジメの職場は京都市内にある中賀茂郵便局。

彼は高校を卒業して12年間、郵便の配達員だった。ついたあだ名が、『ワイルド・スピード』。

度重なる信号無視とスピード違反で免許停止を食らい、それからは窓口業務だ。

 

ハジメと同じ窓口に座るのは新人局員のエミリ(松本妃代)と小沢(伊勢志摩)。

いつもふたりに「見た目は100点なのに中身が残念」と言われ、ふてくされる日々。

 

 

レイカ(清原果耶)も京都の生まれ。

日本海に面した漁師町の伊根町で育った。

いつも人よりワンテンポ遅く、50m走では笛が鳴ってもなかなか走りださない。

 

現在、彼女は大学7回生の25歳。

アルバイトをいくつも掛け持ちし、学費を払いながらの貧乏生活だ。

写真部の部室に住み込み、ひとりぼっちで夜食をとりながら、ラジオを聴いている。

 

ある日、急停車したバスに追突した高校生を看護するハジメの姿をみて、既視感をおぼえたレイカ。

郵便局でハジメの窓口にいき、胸の名札『皇』の文字を見つめる。

 

街中で路上ミュージシャン・桜子(福室莉音)の歌声に惹かれて恋に落ちるハジメ。

早速、花火大会デートの約束をするも、目覚めるとなぜか翌日に。

 

“大切な1日”が消えてしまった…!?

 

秘密を握るのは、毎日郵便局にやってくるレイカらしい。

ハジメは街中の写真店で、目を見開いている見覚えのない自分の写真を偶然見つけるが…。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

登場人物紹介

  • 皇 一(岡田将生)・・・何でも1秒早い郵便局員。仕事は効率的にこなせても恋愛は不得意。よく「残念なイケメン」と言われる。
  • 長曾我部麗華(清原果耶)・・・何でも1秒遅い大学生。留年し続けて現在7回生の25歳。毎日郵便局に通い、とある宛先に手紙を送り続けているが…。
  • 釈迦牟尼仏憲(みくるべけん)(荒川良々)・・・謎のバス運転手。レイカと同様に「消えた1日」の秘密を握る。
  • 皇清美(羽野晶紀)・・・ハジメの母。いつも忙しないハジメのことを心配している。
  • 皇平兵衛(加藤雅也)・・・ハジメの父。ハジメが高校生のときに「みょうがとパピコ」を買いに行ったきり戻ってきていない。
  • 桜子(福室莉音)・・・ハジメが想いを寄せる路上ミュージシャン。ハジメと “花火大会デート”の約束をする。
  • 皇舞(片山友希)・・・ハジメの妹。ハジメとミツルの3人で長屋で同居している。
  • ミツル(しみけん)・・・舞の彼氏。ハジメのことを「お義兄さん」と呼んでいる。
  • ラジオDJ(本人役・声のみ)&写真屋の店主(笑福亭笑瓶)・・・ラジオ番組「笑瓶のおばんざいナイト」のラジオDJ。ラジオを通してハジメの悩みをよく聞いてくれる。/ハジメの写真が飾られていた写真館の店主。
  • エミリ(松本妃代)・・・ハジメの後輩で 元カノ。交際期間26日でハジメをフった。
  • 小沢(伊勢志摩)・・・ハジメの同僚。ハジメに毒舌で的確なツッコミを入れる。

(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

クドカンワールドを山下監督がどう仕上げたのか。岡田君と清原さんが見せる独特のテンポ感にも注目です。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

オリジナルで感じたキモさを男女逆転で解消。

こっちの方が清涼感があって好き。

そしてめっちゃ京都行きたくなる・・・。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

リメイクの方が好きだな。

せっかちな郵便局員の青年とのんびり屋さんの大学7回生女子による、中々タイミングの合わない2人に起きる奇跡の瞬間を描いた本作は、絶妙なワードセンスでユーモア性を持たせながらしっかり泣き落としもできるクドカン脚本を、山下監督が得意とするオフビートな演出で抑え、京都の府民性と空気感を表現した見事なリメイク作であったと同時に、オリジナルよりも清涼感を感じた作品でございました。

 

全体的にオリジナル作品と何ら変わりのない物語ではありましたが、一の父親にもけじめをつけさせるエピソードや、バスの運転手ではない清原果耶の代わりに、舞台を移動することができるナビゲーターを用意することで、本作の肝であるSF要素「のんびり屋さんにたまに訪れる時間の帳尻合わせ」が一人ではない世界を構築し、物語を二人だけにしない工夫が施されたリメイクだったように思えます。

 

まずはじめに語りたいことは岡田将生のヒロインとしての役柄でしょう。

オリジナルでは女性が務めたこの役を、30歳で恋愛成功経験の少ない「残念なイケメン」でせっかち野郎というキャラクターを、岡田君がしっかり笑わせながら務めた点においては、本作で一番魅力的な部分だったのではないでしょうか。

 

妹カップルと長屋に住みながら真面目に郵便局に勤めるモノの、自分の居場所はここではないという小さな葛藤も持ち合わせる人物という設定は、もしかしたら心のどこかで一変する状況を待っている=誰か自分を別世界へ誘ってくれないかというヒロイン性を含めたキャラだったように思えます。

 

そんな彼が出会ったのが鴨川でストリートミュージシャンをやっていた桜子。

何度かあの場所をサイクリングした経験があるんですが、橋の下とはいえあんな場所で歌を歌ってたら邪魔じゃ!!と思ったのは僕だけではないはずw

しかも桜子が歌ってる歌が「きょうと~おおはらさんぜんいん♪」ってデュークエイセスの歌ですよw

 

年配の方なら誰もが知ってる歌でしょうけど、俺らより下の世代で知ってる人そうそういねえぞw

なんてチョイスだ!と若い女性が古い歌をカバーするというギャップにクスっとしてしまいましたw

 

しかも岡田君、いや一が勤務する郵便局の窓口の隣には元カノが働いてるっていう中々気まずい職場環境の中で、桜子からCDもらったりお弁当もらっていちいちはしゃぐ彼の姿は完全に恋する男子です。

素敵ですw

 

ですが、この桜子ちゃん、裏では熱狂的ファンからコワモテな取り巻きを使って脅したり、一とのデートをすっぽかそうとするほど嫌な女だったんですね~最悪。

 

そんなことを知らずな一は、せっかち故に恋愛成功経験の乏しい過去から、これで人生変わったらいいなぁと夢見る男子なわけです。

それをラジオのパーソナリティに電話越しで打ち明ける姿がたまりません。

しかもクドカンらしいのは、このラジオをおかあちゃんが聴いていて妹の電話経由で話しかけるという公共電波を使っての親子トークw

さすがですw

 

また麗華パートを描く後半は、オリジナルでは男性がやっていた役柄を女性に置き換えることで、オリジナルで感じた「意識のない女性を連れ回すキモ男子」感を打ち消した見事な改変だったと感じております。

 

もちろんオリジナル同様意識のない一を、荒川さん演じるバスの運転手を使って3時間かけて天橋立まで移動し、そこから体の大きな一を人力車を使って移動するという改変を施すことで、小柄な女性が身を削ってまで彼を海に連れていきたいという純粋な思いに変化。

子供の頃からずっと胸に秘めていた思いが徐々に実を結んでいくという切なさが、この人力車を一生懸命轢く姿から感じられたように思います。

 

またオリジナルで「嘘だろ…それはやったらかんあやろ」と感じたのが、時間が元に戻る手前のシーン。

要は意識のない女性に男性がキスをして去るというもので、これが作り手の妄想として一線を越えているように感じ、非常に気持ち悪かったのであります。

 

もしかしたら山下監督もクドカンもここが嫌だったから男女逆転にしたのかもしれませんが、本作では麗華が一にキスをするような行為はないですし、海辺で写真を撮るシーンも、やたら体を動かして変なポーズを取らせるといった行為も省略されていたために、キモさはしっかり軽減されてましたね。

 

そう、本作で大事なのは「ずっと連絡を取れなかった大好きな人」と、あの時叶えられなかった夢を実現するということだと思うのです。

そこを表現するために、いわゆる男女間の恋愛要素をなるべく打ち消して作り上げたのが素晴らしかったと思います。

 

そういう意味で本作は、青年と大学生という年齢差がありながらも、清涼感のある大人の「奇跡の1日」に留めているのが、個人的には素敵な物語だなぁと感じたのです。

 

 

作り手に関して

また作り手に関してですが、クドカンらしさもしっかり出てきたのが個人的には嬉しいです。

それこそせっかち故にスピード狂である一が、度重なる違反切符によって免停くらって内勤に回された過去や、そこから生まれたあだ名がワイルドスピードってのがすでに面白いw

尚且つ私書箱の場所が天橋立であることを知った一が、バイクを飛ばして現地に向かうわけですが、劇中でバスの運転手が明かした通り、洛中から天橋立まで3時間もかかると言ってるわけです。

 

にも拘らずはじめは爆走して往復してるにもかかわらず、日が暮れる前に行って帰ってくるほどのスピードを出してるわけです。

おそらくこのシーンをクドカンが監督してたら、やんちゃ感丸出しのハイテンションな描写で描いたことでしょう。

しかし本作の監督は彼ではなく山下さんなわけで、ここは敢えてゆったりまったり感を表面的に出しながらサラッと描いてしまうわけです。

この一見アンバランスでギャップ感のある演出が本作の肝で、深く考えてしまった僕は無性に笑えたシーンでしたw

 

またクドカン脚本の妙は演者同士の掛け合いです。

妹カップルと一がデート前夜に交わす会話が凄くナチュラル且つテンポのいい会話なんですよね。

歌がワンテンポ早い一を注意する彼氏の一言とか、ラジオで悩みを打ち明ける一にカップラーメンを用意しながら間を明けずにツッコむ妹、そして電話越しから登場する母ちゃんの説教など、どの掛け合いもクドカンらしさが出た物語だったと思います。

 

またワードセンスも絶妙で、2個ついてるからこそ誰かのシェアできるアイス「パピコ」をうまく使ってるわけですよ。

物語としては一が失踪した父ちゃんに「パピコ」を買ってきてと頼むことから、パピコは皇家にとっては忌まわしい存在なわけなのに、3人になった皇家がパピコを食べるには2つ必要で、結果ひとつ余るわけです。

残りをもらった妹が「やったー!3人最高!!」とか空気読まずに叫ぶわけですw

すると隣で母ちゃんが泣くというw

 

たった一つのアイテムでここまで遊ぶのってさすがっすよねw

 

他にも音楽配信が主流の現代でCDを欲しがる一、にもかかわらず桜子が歌ってるのがデュークエイセスのカバーっていうデジタルとアナログのギャップ感を出す笑いも、しっかり計算されてたように感じましたし、お父ちゃんにもう一つ頼んだ「みょうが」もしっかりこねくり回した後に回収する構成もさすがだったと思います。

 

そんな本作は山下監督とあって、全体的にしっかり彼の作品と思えたオフビート感を出していました。

特に麗華パートになって以降の物語の運びはものすごく静かで緩やか。

終盤に差し掛かった際には、一気に前半で彩った掛け合いも影を潜め、麗華がやりたかったことや一の父親がつけるけじめなどをじっくり見せていく演出に。

 

音楽も抑えたり、時には消したりして、当事者をカメラでしっかり捉えることで、彼らの思いが一気に表面化していくシーンは最高です。

 

 

最後に

SF要素としてはオリジナルでも感じましたが、さすがに無理のある設定ではあります。

ですが本作はのんびり屋さんという性格に「名前が難しい漢字ゆえに書くのに時間がかかる」という要素を加えることで、おかしな設定を可愛らしい可笑しみへと変えることで、違和感を軽減させたように感じます。

 

確かに時間は誰にでも平等にあるわけですが、せっかちよりのんびりのほうが損をしているよなぁとも思うわけで、もし神様がいるのであれば世界中ののんびり屋さんのためにこうした「奇跡の1日」を与えてもいいのかもしれません。

そうすることで、本作のようにタイミングの合わない相手との時間を過ごせたら素敵ですよね。

 

落ち着いて考えるとストーカーじみた話ではあるんだけど、タイトルの通り彼が1秒先にいるのだから追いつくまでに時間を要するわけで、そりゃ追跡してしまうよなぁとw

だからこそオリジナルで感じたストーカー感を男女逆転にしたり、執拗に体に触れないように心掛けた点に関してはしっかり配慮されてたように感じます。

 

岡田君の京都弁は多少の違和感はあったけど、京都×清原果耶は抜群にベストマッチでしたねw

あぁ~京都行きてえw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10