君は月夜に光り輝く
余命モノや恋愛に死を絡めるような作品ばかりが作られすぎていること。
正直言い傾向じゃない。
多分ですね、セカチューの大ヒットが一番の原因だと思うんですよ僕。
背景としては、どうしても政治的な案件や差別とか貧困をテーマにした作品を作ろうとするとスポンサーが嫌がり予算を出してくれなかったり、配給会社が難色を示したりってのがあるそうで。
結局悲しいお話ってなると、こういう余命モノにたどり着いてしまうってのがあるそうで。
また国民全体が、特に若い層がそういう社会問題とか貧困問題に関心が薄いから、そういう映画を作っても当たらない、って配給会社が思っていると思うんです。
実際「万引き家族」ヒットしたじゃないですか、彼らの思惑は外れたわけですよ。
もっとやればいいと思うんです。
てか、やり方だと思うんです。
問題を孕みつつもエンタメにする、そういう作り方をすればウケると思うんです。
まずは作ってくれ、観に行くから。
・・・とこの映画を否定するような書き始めですが、僕の意見としては今までどおり「余命モノ」を製作し続けつつ、社会問題をテーマにした娯楽映画ももっと製作される環境になってくれれば。
五分五分になってくれればいいなぁと。
はい、長くなりましたが、今回鑑賞する映画は、あの「キミスイ」を大ヒットさせた監督が今度は「キミツキ」って略語で再びヒットを狙ってる「余命モノ」です。
キャッチコピーが「あなたのせいで、生きたくてしょうがない」ですって。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!!
作品情報
第23回電撃小説大賞を受賞した佐野徹夜のデビュー作『君は月夜に光り輝く』を、「君の膵臓をたべたい」や「響~HIBIKI~」など、若者の恋愛や青春映画を作り続ける売れっ子監督の手によって映画化。
死期が近づくと体が発光する“発光病”という不治の病を患った女子高生と、確実に迫りくる死に向き合いながらも、「人生の質」を求めることを選択し、強く美しく生きる高校生が織り成す物語を、、“死生観”をテーマに、ファンタスティックに美しく描く青春純愛映画です。
この春、『君月』の儚くも美しい命の輝きに、日本中があたたかい涙に包まれます。
あらすじ
高校生の岡田卓也(北村匠海)はクラスの寄せ書きを届けるために行った病院で、入院中の同級生・渡良瀬まみず(永野芽郁)と出会う。
明るく振舞う彼女が患う病気は〝不治の病・発光病〟。
細胞異常により皮膚が発光し、その光は死が近づくにつれて強くなるという。そして、成人するまで生存した者はいない
―。
卓也は病院から出ることを許されないまみずの〝叶えられない願い〟を代わりに実行し、その感想を伝える【代行体験】を行うことに。
代行体験を重ねるごとに、まみずは人生の楽しみを覚え、卓也は彼女に惹かれていく。
しかしその反面、迫りくる死の恐怖が2人を襲う。
そして卓也に隠された〝ある過去〟を呼び覚ます。命の輝きが消えるその瞬間。
まみずが卓也に託した最期の代行体験とはーー。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのは月川翔。
1年間の間に「となりの怪物くん」、「センセイ君主」、「響~HIBIKI~」と3本も製作した超売れっ子監督さんであります。
その理由も「君の膵臓をたべたい」の大ヒットのおかげといっても過言ではありませんし、全て製作が東宝ということで、監督を他の配給に渡したくないのでしょう。多分。
とりあえず今のような映画をあと1,2年はやってもらうとして、それから雇われ監督として出なく自身の作家性が色濃く出るような映画を作ってほしいですね。
監督に関してはこちらをどうぞ。
登場人物紹介
左上より。
- 渡良瀬まみず(永野芽郁)・・・不治の病・発光病を発症した少女。隔離された病棟での入院生活を余儀なくされている。宣告された余命は過ぎ、余命ゼロとなっている。自分が「叶えられない願い」を卓也に代行してもらい感想を語ってもらう“代行体験”を発案する。(HPより)
- 岡田卓也(北村匠海)・・・クラスメイトが書いた寄せ書きをまだ会ったことのない同級生・渡良瀬まみずに届ける羽目に。発光病を患うまみずが大切にしていたスノードームを壊してしまったことをきっかけにまみずとの“代行体験”を始める。姉の鳴子を事故で亡くしている。(HPより)
- 香山彰(甲斐翔真)・・・まみずと卓也の同級生。兄を発光病で亡くしている。まみずと卓也が出会うきっかけを作るが、本当はまみずに恋をしている。(HPより)
- 岡崎(優香)・・・まみずを担当している看護師。まみずの前に現れた卓也を時に励まし時に叱る。(HPより)
- 岡田鳴子(松本穂香)・・・卓也の亡き姉。発光病により命を落とした香山の兄の恋人。卓也の心から拭えない“ある過去”のキーパーソンとなる。(HPより)
- 渡良瀬律(生田智子)・・・まみずの母親。一日一秒でも長くまみずに生きてほしいと思い、まみずの心を揺さぶる卓也の存在をよく思っていない。(HPより)
- 平林リコ(今田美桜)・・・まみずの“代行体験”の一環で出会う、卓也のバイト先の先輩。卓也に恋をする。(HPより)
- 岡田恭子(長谷川京子)・・・卓也の母親。娘の鳴子をなくした心の傷が癒えておらず、心が少し不安定。(HPより)
- 深見真(及川光博)・・・まみずの父親。律と離婚しており、まみずとは会えていない。(HPより)
発行病ってのは実際ないと思うんですが、仕組みが知りたいですね。
そして体が光ることでロマンティックな雰囲気になるんでしょうね。死が近づくサインだってのに。皮肉ですな。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
人生が光り輝いたのは君のおかげだ。
月の引力に引き寄せられるように出会った二人の前向きなロミジュリ映画でした!!!
以下、核心に触れずネタバレします。
初々しく清々しい。
発光病で入院しているクラスメートに寄せ書きを渡しに行くだけの出来事が、代行リストを通じて互いの気持ちを育みながらも、やがて訪れる死に直面し生きたくても生きることのできない彼女の歯がゆさを、彼女の分まで生きる決意をした男性が包み込んでいくという、東宝お得意の難病モノ恋愛青春映画でございました。
「グミが食べたい」から始まった代行リスト。
そこから育まれていく二人の互いへの想いを、なかなか態度や言葉で表現できないもどかしさを感じさせる序盤は、青春真っ只中の少年少女の微妙な距離感を見事にとらえていて非常に好感を持てる。
最初こそ他人行儀で人見知りな空気が漂っていたが、それを病人にもかかわらずアグレッシブに能動的に要求するまみずに対し、それをすべて受け入れて淡々とこなす卓也。
気が付けば教室の隅っこではしゃぐ程度の仲の良さを築き上げていく二人の間に芽生えていく感情や表情を、監督はしっかりカメラに捉えていて、彼らがどのタイミングで恋愛感情を芽生えさせるのかが見て取れます。
自分の気持ちに正直になれずカッコつけてしまう姿は、かつての自分を想起させるこっぱずかしさを秘めていて、見ていて目を伏せたくなるような場面が何度も映し出されており、監督はこういうもどかしいシーンを作るのに適した人だなぁと、今作を通じて改めて感じました。
この映画、もちろん難病モノ余命モノという手垢の突きすぎるジャンルの映画でしたが、他にも最近のトレンドともいえる要素が含まれていました。
普通なら病院である女性側が落ち込んでいてそれを見舞いに来る度に励ます男性、という構図ってのが一般的だと思います。
しかしこの物語は重病人のくせに活発で、見舞いに来る男性がどこか現実に嫌気がさしていて心を閉ざしているという構図になっている。
で、これから死が待ち受けている女性を通じて健康な男性が生きる活力をもらう筋書きになっているのであります。
監督の作品「君の膵臓をたべたい」でも描かれていたように、死というゴールが決まった人の方が普通の人よりも生きたい意欲に満ち溢れているという皮肉にも聞こえる描写は、この物語でも同じ気がします。
しかしキミスイと違うところは、彼女の元気で前向きな姿はあくまで表向き。
病気によって死が確定している自分の人生に巻き込んでしまった卓也に対し、大きな罪悪感を抱いていたのであります。
ただ卓也はそうでなかった。
彼には姉がいて、姉の恋人も発光病で亡くしてしまっていた事が明かされます。
恋人を失って虚ろな日々を送っていた姉が読んでいた中原中也の本の言葉を見てしまった卓也。その後姉は車に轢かれて命を落としているのです。
ただの事故死なのか自殺なのか、その理由は本人しかわからない。
そんな過去を抱えた卓也は、まみずに会うまでそれに縛られていたように感じます。
近しい人が死んでしまった時の喪失感を彼は知ってたのです。
死んでしまうことは悲しい、それは周知の事実で、だからこそその分相手に尽くし最期まで寄り添おうとしていた、嫌なことも彼女のためならと奔走していたのかなと感じます。
確かに悲恋の話ではありますが、2人のもどかしくも清々しい関係性が凄く好感触ですし、その先に待ち受ける結末は儚くも美しく彩られた映画だったのではないでしょうか。
死んだように生きている人は、見て損はないと思います。
代行はつらいよ。
余命ゼロといういつ死んでもおかしくない状況の彼女を思いやってなのか、病室に入って飛び込んだ彼女が超タイプだったのか、それとも本当に優しい性格の持ち主なのか、卓也が最初何を考えていたのかは序盤ではよくわからなかったものの、卓也の行動は同じ男としてすごく好感を持てるし見習いたい部分ではあります。
遊園地に一人で行ってうさ耳のカチューシャつけてジェットコースターに乗ったり、その後僕の初恋パフェという巨大イチゴパフェを一人で食うなかなかの荒行、いや罰ゲーム的代行をよく引き受けるよ。
普通ならあの代行の時点でブチ切れ案件だ。
しかし卓也はへこたれない。持ち前の優しい性格はどんどん加速しはじめ、逆に次は何したらいい?とおねだりまでする。欲しがるね~。
それもそのはず彼は2度目の訪問で彼女が父からもらったスノードームを落として破壊してしまったのだ!
罪滅ぼしに何でも言うことを聞くよ、といった手前これ以上引き下がるわけにはいかないのだ。それが男のプライドってもんだ。
ただいきなりお父さんになんでお母さんと離婚したか聞いてきて、という代行はきつい。この案件はもっと仲を深めて頼むもんだろう。
ド頭から一人遊園地という荒行をさせたからこれくらい平気だとでもおもったのか、まみずよ。お前案外ドSだな。
しかし粗業を経験した卓也はどこかで思考回路のネジを落としたのかすんなり受け入れ父を訪ねに行ってしまうのだ。
君ってホントに優しいね。たまに、なんかじゃないですよ。
ちなみにですね、見ず知らずの若え兄ちゃんに本当の事情なんか話すわけないでしょってのが家族ってもんだと思うんですが、お父ちゃんもお父ちゃんでべらべら話しちゃうから映画は怖い。
どうやら経営していた会社が自己破産したせいで娘の治療費が払えない、だから形式的に離婚して入院費を工面してるから会えないっていう、結構重い話。
そこでなぜか卓也の口から偽装離婚ですか?という言葉。
君高校生でそんな言葉知ってるの?さっきもまみずに罪滅ぼしとか言っていたけど、もっとさ、高校生らしいワードチョイスできないかな?
まぁいいや。
そして代行はどんどんエスカレート。
病室をトータルコーディネートしたいというお願いを叶えにIKEAだかニトリだかのインテリア専門店でカーテンやら雑貨を代行して購入。
海が見たいといえば自転車でひとっ走りしてチリンチリンと緩やかに走り、まみずに海の風を感じてもらう代行。
一体パケ代にいくらかかってんだろうというくらい常にビデオ通話なので、卓也の財布が心配だったが、それはその後の代行で解消される。
次の代行はメイド喫茶でメイドの服を着たい、というものだった。
さすがにそれはかなわぬ願いで、結局面接は形だけでソッコーキッチンでひよこちゃんチキンライスを作らされ、そのまま採用という形に。
そしてまみずの願いはリコちゃんなるメイドのバイトの子の写真をおさめ、それを見せることで代行完了。
だったように思えたが、まみずは卓也がメイド服を着ていないこと、そしてりこちゃんが卓也のタイプであることを聞いてしまい、女の子ならではの嫉妬に駆られてしまったのだ。
なのでまみずは卓也にバンジージャンプをやって来いと命令。
さすがの卓也も抵抗するが、ちゃんとバンジーしてくる従順さを見せる。
とうとう卓也は壊れてしまったのか、彼女が中学の時にやるはずだったロミオとジュリエットのジュリエットの役まで買って出るのだ。
これは別に頼まれてやったのではなく、彼自らが決断したのだ。
女の役を男がする時点で、クラスメートはそこをいじるだろうし、女子はきっと男をメイクする喜びとどんどん美しくなってくる卓也にワーキャー喚くってのが目に見えたわけだが、そんな場面はどこにもなく、なんて行儀のいいクラスなんだろうと。
そしてこの劇は寸劇になることが観衆の立場から感じる要素なんだが、観衆は最初こそ笑ったもののロミオとジュリエットの迫真の演技に静まり返ってしまうくらい。
なんて行儀のいい観衆なんだ。
男は女の頼みなら何でもするのが務め。と僕は思う。
だが女は頼むことをしない、自分が思っていることを察して男に動いてもらいたいのだ。それが「気の利く男」という現代で一番モテる要素。
卓也はまさに言われて動く鈍感な男から、先回りして彼女を喜ばせる気の利く男に成長を遂げたのだ。
俺はこの映画の何を観てきたのか。解説しながら出てきた出口がこれか、と書きながら苦笑している。
ただ自分は、こういう何でも男に頼んでくる女性に弱い。
あれやって、これやって、お願い~、的な。
多分やだっていうと思う。でも多分言うことを聞くと思う。
だからまみずはかわいいのだ。
俺はこの映画の何を観てきたのか。解説しながら出てきた出口がこれか、と書きながら苦笑している。(デジャヴ)
最後に
とりあえず高校生の初々しい恋愛描写にうっとりした点と代行地獄について書いてみましたが、映画的には脇役の存在が本筋に全然必要なくてびっくりしたし、特に卓也の友人が急にしゃしゃり出てきて「俺まみずのことが好きだったんだ」とか見舞いにも来ないでどの口が言うんだ!?ってなったし、まみずのお母さんあんなに卓也に拒否反応起こしていたのに、どのタイミングで許したの!?とか、発行病が急に症状出した時のCG描写がクソひどすぎて逆にファンタジーだったし、序盤の遊園地でジャンポケ齋藤が卓也と同じことしていて、まさか彼も代行しているのか!?って思ったのは俺だけ?とか、まぁ色々変な部分が多々ありまして、どうしてもっとシンプルにやらないのだろうと首をかしげてしまった映画でしたね。
もっと言えば発光病って実際にあるんですか?
だってまみず一人ならまだいいものの、卓也の姉貴の恋人まで発光病って不自然でしょう。で、その発光病が物語に効果的じゃねえし。普通にガンでいいよ。
てかね、死ぬまでにやりたいリストって、もう完全に「死ぬまでにしたい10のこと」とか「最高の人生の見つけ方」のやり口なんですよ。
せめてこの素材使うなら、え!?マジでこれやるの!?ってやつを入れてよ。バンジーとかぬるいよ。
宇宙行くとか百歩譲って海外行くとか、あとは犬が自分を散歩させるってしょうもないやつ入れるとか。これはやりすぎか。
とまぁ愚痴が止まらないのでこの辺にして。
とにかく籠の中の鳥のような存在のまみずは、卓也というかけがえのない異性のおかげで、「私は私でよかった」という答えに辿り着き、卓也もまたまみずを通じて生きていくことに対する使命感を得たことは非情に良かったのではないでしょうか。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10