モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「貞子DX」感想ネタバレあり解説 これならワタシのこと忘れないよね!!

貞子DX

Jホラーの人気アイコン「貞子」が誕生してから20年以上が経ちました。

今では時代の変化からかネタにされるような扱いになっていて、当初抱いていたあの怖さを知る一人としては少々悲しいです。

 

今回鑑賞する映画は、そんな貞子の原点回帰を予感させる一作。

前作でも扱われたSNSや動画をもっとリアルに駆使した内容になってそうです。

そこに今までやってそうでやってなかった「科学」を武器に立ち向かう主人公という設定がまた面白そう。

 

相変わらずホラー苦手と称しながらも怖いもの見たさで臨んでるモンキーは、本作をどう見るか。

てか今回ミステリー要素の方が強そうですね。

早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

「見た者が必ず一定期間のうちに死に至る」という呪いのビデオの恐怖を描いた映画「リング」によって、日本中はおろか世界中を震撼させたJホラー映画のトップアイコン「貞子」の最新作。

 

怨念がビデオを介して拡散されるという衝撃的な恐怖心を煽ってから20数年、貞子はとうとう現代社会にまで適応し「SNS」を使って我々に死と呪いの恐怖を与えていく。

今回はそんな呪いの拡散の真相と方程式、対処法を解明すべく、IQ200の天才女子大学院生が「科学」を武器に真っ向勝負に挑む「謎解き」タイムサスペンスホラーとなっている。

 

監督には「劇場版ATARU」や「劇場版99.9-刑事専門弁護士ー」といったTVドラマの劇場版を多く手掛ける木村ひさしを抜擢し、これまでホラー一色だった貞子シリーズをさらにエンタメ化させることに成功。

 

主演には子役時代からキャリアを重ね、数々のメディアで幅広く活躍す小芝風花を起用。

他にもTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEのメンバーとして活躍する川村壱馬や、2.5次元ミュージカルなどで活躍する黒羽麻璃央など、異業種なキャスティングを試みた。

 

お馴染みの井戸や、コロナウィルスの如く感染爆発を広げる貞子の呪いの威力。

果たして24時間以内に呪いを解明することはできるのか。

 

 

貞子

貞子

  • 池田エライザ
Amazon

 

あらすじ

 

“呪いのビデオ”を⾒た⼈が24時間後に突然死するという事件が全国各地で発⽣。

 

IQ200の天才⼤学院⽣・⼀条⽂華(⼩芝⾵花)は、テレビ番組で共演した⼈気霊媒師のKenshin(池内博之)から事件の解明を挑まれる。

 

呪いがSNSで拡散すれば人類滅亡と主張するKenshinに対し、「呪いなんてあり得ない」と断⾔する⽂華だったが、興味本位でビデオを⾒てしまった妹の双葉(八木優希)から⼀本の電話がかかってくる。


「お姉ちゃん助けて。あれからずっと⽩い服の⼈につけられてて……」

 

⽂華は「すべては科学的に説明できる」と、⾃称占い師の前⽥王司(川村壱⾺)、謎の協⼒者・感電ロイド(⿊⽻⿇璃央)とともに、<呪いの⽅程式>を解明すべく奔⾛する。

 

しかし24時間のタイムリミットが迫る中、仮説は次々と打ち砕かれ――。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

監督

本作を手掛けるのは、木村ひさし。

 

TVドラマの劇場版を手掛けるのがメインどころの一方で、「屍人荘の殺人」や「仮面病棟」などのホラーエンタメを製作してる顔を持つお方。

ぶっちゃけ粗のある作品ばかりではありますが、ミステリーとホラー両方を経験してる監督さんなんで、それなりのクオリティは期待できると思われます。

 

また監督は本作を「正にジェットコースタームービー」と仰っており、これまでにない恐怖体験をしながら楽しめる娯楽作品になってるのではと期待しています。

 

仮面病棟

仮面病棟

  • 江口のりこ
Amazon

 

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

  • 神木隆之介
Amazon

 

キャスト

本作の主人公一条文華を演じるのは小芝風花。

 

実写版「魔女の宅急便」で主演に抜擢されて以降、数々の作品に出演する彼女。

あれから8年が過ぎ、彼女も立派な大人になりましたね。

近年ではTVドラマの映画化「妖怪シェアハウス」で主演を演じたり、TVドラマ「トクサツガガガ」でのコメディエンヌぶりが評判を呼ぶなど、少しづつ女優の幅を広げているのが印象的。

 

またホラーが苦手という彼女は、本作への出演に対し不思議と恐怖感を抱くことはなかったそう。

台本がポップな掛け合いばかりだったために、ホラーならではの緊張感を生むような間を作るのに苦労したとのこと。

クイズ番組に出演するような東大生をイメージしながら役作りしたという彼女の天才ぶりを堪能したいと思います。

 

魔女の宅急便

 

 

他のキャストはこんな感じ。

自称王子様占い師・前田王司役に、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのボーカルで、「HiGH&LOW THE WORST X」に出演した川村壱馬。

謎の協力者ハッカー・感電ロイド役に、ミュージカル「刀剣乱舞」、映画「野球部に花束を」の黒羽麻璃央。

一条双葉役に、「アイネクライネナハトムジーク」、「麻希のいる世界」の八木優希。

人気霊媒師Kenshin役に、「イップ・マン序章」、「マンハント」の池内博之などが出演します。

 

 

 

 

 

 

ビデオよりも速いスピードで拡散されていく貞子の呪い。

ぶっちゃけSNSの媒体元に消してもらうのが一番手っ取り早いかと思うんですが、そういうツッコミはせずに楽しみたいと思います。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

ホラーアイコンは新時代へ突入!

これなら貞子は忘れ去られない存在になるねww

ぶっちゃけ科学で解明してないじゃんてツッコミは置いといて、呪いのエンタメ化、生活様式に着目した視点は新しかったかと。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

不規則な生活はいけません。

「呪いのビデオを見たら24時間以内に死ぬ」という貞子の呪いを解明すべく立ち向かうIQ200の女子大生と、隣でひたすら喚きながらもときたま王子スマイルで金言をこぼす自称占い師を軸に描く本作は、伝承でなく伝統を選んだホラーアイコンの切なる願いに、ウィルスに敏感な現代社会に適応した生活様式を掛け合わせ、さらには呪いなスピリチュアルをビジネスとして消費させてきた者たちへの自虐などを盛り込んだ、笑い9割怖さ1割の楽しいエンタメ作品でした。

 

中田秀夫が作り上げた「リング」はJホラーの傑作として今も尚語り継がれていますが、同じ手法で作品を作り続けても飽きられるだけ。

そんなホラーアイコンを今後どう生存させるべきか、どう持続させるべきかに着目した答えがこの映画には詰まっていたと思います。

 

劇中では都市伝説とされていた「呪いのビデオ」による20数年前の事故を残し、天然痘をはじめとするウィルスがどう生存しているかという構造を説明しながら謎の解明をしていくという構成になっていました。

当時は7日間で死ぬと言われていた呪いが、何故24時間以内へと短縮されたのか。

宿主を見つけて生きるのがウィルスの活動原則にもかかわらず、時間を短縮したらウィルスは滅亡してしまうはずなのに。

 

最初こそ科学で解明しようと奔走する文華でしたが、サブリミナルメッセージもなければ、自己暗示、持病持ち、あらゆる角度から模索するも、ことごとく失敗。

 

蓋を開けてみれば化学など全く持って通用せず、呪いは科学では解けない方程式だと認めざるを得ない気持ちに傾いていき、「呪いのビデオを一緒に見ればセーフ」という、たまたま起きたケースだけで答えを導き出してしまう偏差値の低い答えには驚きましたが、それだけでは終わらないのが「貞子の呪い」の強さ。

 

結果的には行き当たりばったりで答えを出してしまう結末には少々戸惑いましたが、僕としては貞子の呪いというよりかは、貞子が自分を忘れて貰わないための「生きる術」を見出した作品だったのではと感じています。

 

 

劇中では、毎日の生活リズムについて言及するセリフが、後に呪いを止める策へのヒントへと繋がっていくんです。

それこそ僕らは朝起きてご飯を食べ、歯を磨き服を着替えて仕事に向かう朝のルーティーンから1日を始め、夜はほとんど決まった時間に就寝するという規則正しい生活を過ごしています。

このリズムが少しでも崩れていくと、やがて体は免疫が下がりウィルスに感染しやすくなり、体を患ってしまうのです。

 

ここに貞子の付け入るスキがあったわけです。

 

今我々はコロナ禍によって、これまで適当だった手洗いがいつの間にか定着しました。結果的にはインフルエンザの予防にも繋がり、新しい生活様式によって別のケースでも効果を発揮していることが窺えます。

 

そう、貞子というウィルスにかかならいためには、そうした決まったルーティーン、生活リズムを崩さないことが正しい予防であると答えを明示したのです。

 

貞子はもう7日間だけでは満足できないんです。

毎日自分の事を思い出してもらわないと、忘れられてしまうのです。

SNSには毎日溢れるほどの情報が浮いては消え、問題となっては消費される現代社会にも重なった変異だったのではとも思います。

 

正直本作は「ホラー」たらしめる要素はジャンプスケア程度で全体的には薄れており、笑いに特化することで恐怖心を和らげているため、貞子に対する怖さは昔に比べたら雲泥の差です。

しかし、身近に生活の一部としてホラーアイコンを眺めなくてはならないという、新しい形の呪いを見せることで、貞子を慣れ親しむと共に一生続けなくてはならない怖さを見せることに成功していた作品だったのではと感じます。

 

WithコロナならぬWith貞子です。

死なないための予防策=手洗いアルコール消毒を「貞子の呪いのビデオを見る」に置き換える発想。

このアイディアは僕としては非常に面白い発見だったのではと思います。

 

スピリチュアルビジネスへの言及

今回もうひとつ面白い試みとして、自称スピリチュアルバイオレットナンバー1のKenshinというキャラを使って、呪いや都市伝説、怪談、超常現象を専門として飯を食ってる奴らへの言及もしていた作品だったように思えます。

 

簡潔に申し上げると、人生全てエンタメだと自負するKenshinは、自ら貞子の呪いを拡散し、「呪いは存在する」ことで民衆に恐怖を震撼させ、自分に相談すれば呪いを解き放てると豪語することで仕事が増えるという自作自演のようなことでビジネスとして成功を収めていたのです。

 

そう、都市伝説とされていた「貞子の呪い」を再び世間に浸透されたのはKenshin本人だったことが明かされます。

しかもこの話題を盛り上げるために選ばれたのが文華。

見るものすべてインプットし問題を解き明かしてしまう天才ぶりから、呪いや超常現象など「ありえない」と湯川学の如くKenshinを全否定していくのです。

 

実際Kenshinも呪いなんて「ありえない」と思っているスピリチュアリストの風上にも置けないなまけた奴なんですが、メディアによってイメージが定着した自分と真逆の人間と対立関係になることで、さらに話題を振りまくよう計画しており、結果貞子の呪いは瞬く間にお茶の間で語られていくのであります。

 

僕自身「神さまなんて信じないタチ」ですが、旅行に行くたびに導かれるように神社に立ち寄りお参りをすることがあります。

何百年と歴史ある場所で祭られた神さまに、願掛けやら厄払いやらと称してお賽銭を投げて願い事をしてしまうんですよね。

 

でもあれって結局のところ、神社を運営するための収入の一部になっていて、結局神さまを使ったビジネスじゃないかって。

そうでもしないと神社はずっと生き残れないんですよ結局。

お参りをするためにお賽銭を投げないと、入館料を払わないと運営できないんですよ。

 

本当に厄を払えたのか、パワーをもらえたのか、ご利益があったのかなんて確証がないわけで、でも皆が皆そこでお願いごとをするわけです。

神社による謳い文句に釣られて。

 

Kenshinは結局貞子の呪いによって死んでしまいますが、本作はそういうスピリチュアルビジネスに、貞子というコンテンツを使ってメスを入れた物語でもあったのではないと感じました。

 

ウザキャラ・前田王司

本作は木村ひさし監督のコメディセンスが爆発した作品でもありました。

彼が前田という自称占い師のキャラを使って笑いをたくさん盛り込んだことで、「貞子は怖い」という概念を壊し、さらには「ホラー映画苦手」という人でも楽しく怖がれる作品に昇華した手腕を見せていたと思います。

 

占いで知り合った顧客の女性が貞子の呪いで死んでしまったこと、さらにはそのビデオを見てしまったことで、自らも呪いにかかってしまった前田。

Kenshinの相談所で自殺を図ろうとしたところに文華が居合わせたことから、呪いを解明する彼女の助手としてバディを組むことになります。

 

クサすぎるセリフや仕草、女性なら誰でもちゃん付けする馴れ馴れしさや、話す時の距離の近さなど、全てがウザい前田。

早くしないと呪いで殺されると喚いたり、人の話を誤訳してバカを見せつけるなど、とにかくめんどくさくてウザい彼を、秒速で突っ込む文華というやり取りを何度も見せつけます。

 

TVドラマ「ATARU]の時もこんなやり取りがあったなぁと思い出しました。

北村一輝と栗山千明の掛け合いが、正に本作の文華と前田という立ち位置だったなぁと。

 

正直LDHの人間の演技なんてたかが知れてるとタカをくくってましたが、前田演じた川村さんは見事にハマっていたと思います。

黙っていればかっこいいのにここまでウザキャラをやれるって、かなりの技量を持ってるんじゃないかとw

 

ホントいちいちウザいですw

人の話は聞かないし、寧ろ聞き間違えるし、騒いで喚いて困らせてのオンパレードにもかからわず、急に鼻をすすって臭いセリフを吐いて「どう、俺ってイケてるだろ」と言わんばかりのカッコつけスマイルを見せつける。

これにメロメロになってしまう相手だったら彼のポンコツイケメンキャラが成立しません。

ここに東大生っぽい地味な私服で異性に興味が感じられない天才が鋭くツッコミを入れることで、見事な笑いを生んでいるのです。

 

後半から終盤に連れて、この掛け合いが濃度を上げていき、怖さで盛り上げるのでなく笑いで盛り上げていく構成も、木村監督だからできた芸当だったのではないでしょうか。

しかもエンディングまで貞子を使って笑いに持っていくのも、往年のファンからするとげんありかもしれませんが、これは僕としてはありだったかなと。

 

 

最後に

逆「24」のようにカウントダウンしていく文字表記や、科学で解明するといっておきながら全然活かせてないプロット、何故身近に生存する人の姿になって近づいてくるのかなど、あまり映画的な演出になってない部分や、回収できてない部分などが目につきましたが、前作の「貞子」に比べたら数倍面白く、しかも今の現代社会に適応したテーマ性を秘めていたという点、そこに今後もみんなに覚えていてもらいたいというホラーアイコンの切なる願いを結び付けたアイディアは、新しい試みとしては十分に機能した、楽しい娯楽映画になっていたと思います。

 

ただこれをやってしまうと、次の貞子はどうすればみんなに見てもらえるかという課題もできてしまったのかなぁとw

原点回帰するという手もいいかと思いますが、正直もう貞子で思いっきり怖がることは難しいかなとw

 

だってもうこれだけ「キャラ」として定着してしまうと、脳内で「昔ほど怖くない」って刷り込まれちゃってるから、怖さだけでは勝負できないですよね・・・。

また社会が色々変化したらそれに合わせて変化して、みんなの前に現れるのが一番なのかなぁ。

 

ただ今回はこういう形を提示したのは僕的にはありでした。

映画的な満足度はそこまで高くはないですけどw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10