モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「すばらしき世界」感想ネタバレあり解説 コスモスの花を与えられる人でありたい。

すばらしき世界

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「 罪」を犯した者には「罰」を与えられる。

 

だから悪いことしたらダメだよ、牢屋に入れられちゃうよ、なんて親から言われて育ったこともあって、大人になった今でも悪いことなんかしてません。

…どこまでが悪いことかは置いといて(意味深w)。

 

とまぁすくすく大人に育ったわけですが、どうにもこの世界は息苦しいです。

理不尽なことや不条理なことがたくさんあって、「怒り」が沸いて、たまに爆発しそうになります。

でも、理性を抑えないで行動に移しちゃうと、この世界では「悪い人」扱いされて牢屋に入れられちゃうんですね。

 

曲げたくない気持ちがあったとしても、我慢しなきゃいけない。

じゃないと、この世界ではアウト、なんですね。

 

でもって、この世界=社会ってのは、悪いことしてもしてなくても「適応」できない人は、ポイされちゃうんですよね。

一度踏み外すと、戻ってくるのが大変ですし、別に戻る必要ないのに、戻らないと適応外」のハンコを押されてしまう。

 

「生きる」って苦しいですね。

 

 

今回鑑賞する作品は、元殺人犯の男を通じて「人間」と「社会」の今を描くお話。

ゆれる」以降ずっと追いかけてみてきた監督が、どんなメッセージを送るのか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

作品情報

「ゆれる」「ディア・ドクター」の西川美和監督が、初めて原作モノに挑んだ長編映画。

直木賞作家・佐木隆三が実在するモデルを主人公にしたノンフィクション小説「身分帳」の設定を現代に置き換え、人間の愛おしさや痛々しさ、社会の光と影をあぶりだしていく。

 

人を殺めたことで13年もの間刑務所で過ごした男が見た新たな世界。

まっすぐな正義感を持ちながらも一度キレると手に負えなくなるという気象の荒い性格の彼を、密着ドキュメンタリーを撮影するTVマン二人の視点から覗き見ていく。

 

社会のレールの外れた主人公と周囲の人たちを通じて、「人間」とは「社会」とは何か、この世界が果たして本当に「すばらしい世界」なのかを問いていく。

 

果たして彼はこの世界で何を想い、何を見つめるのか。

その姿を見て、私たちはどう捉えるべきか。

 

身分帳 (講談社文庫)

身分帳 (講談社文庫)

  • 作者:佐木隆三
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: Kindle版
 

 

 

 

 

 

あらすじ

 

 冬の旭川刑務所でひとりの受刑者が刑期を終えた。


 刑務官に見送られてバスに乗ったその男、三上正夫(役所広司)は上京し、身元引受人の弁護士、庄司(橋爪功)とその妻、敦子(梶芽衣子)に迎えられる。

 


 その頃、テレビの制作会社を辞めたばかりで小説家を志す青年、津乃田(仲野太賀)のもとに、やり手のTVプロデューサー、吉澤(長澤まさみ)から仕事の依頼が届いていた。

 

取材対象は三上。

 

吉澤は前科者の三上が心を入れ替えて社会に復帰し、生き別れた母親と涙ながらに再会するというストーリーを思い描き、感動のドキュメンタリー番組に仕立てたいと考えていた。

 

生活が苦しい津乃田はその依頼を請け負う。

しかし、この取材には大きな問題があった。

 

 

 三上はまぎれもない“元殺人犯”なのだ。

 

津乃田は表紙に“身分帳”と書かれたノートに目を通した。

身分帳とは、刑務所の受刑者の経歴を事細かに記した個人台帳のようなもの。

三上が自分の身分帳を書き写したそのノートには、彼の生い立ちや犯罪歴などが几帳面な文字でびっしりと綴られていた。

人生の大半を刑務所で過ごしてきた三上の壮絶な過去に、津乃田は嫌な寒気を覚えた。

 


 後日、津乃田は三上のもとへと訪れる。

戦々恐々としていた津乃田だったのだが、元殺人犯らしからぬ人懐こい笑みを浮かべる三上に温かく迎え入れられたことに戸惑いながらも、取材依頼を打診する。

 

三上は取材を受ける代わりに、人捜しの番組で消息不明の母親を見つけてもらうことを望んでいた。

 

 下町のおんぼろアパートの2階角部屋で、今度こそカタギになると胸に誓った三上の新生活がスタートした。

 

ところが職探しはままならず、ケースワーカーの井口(北村有起哉)や津乃田の助言を受けた三上は、運転手になろうと思い立つ。

しかし、服役中に失効した免許証をゼロから取り直さなくてはならないと女性警察官からすげなく告げられ、激高して声を荒げてしまう。

 

 

 さらにスーパーマーケットへ買い出しに出かけた三上は、店長の松本(六角精児)から万引きの疑いをかけられ、またも怒りの感情を制御できない悪癖が頭をもたげる。

 

ただ、三上の人間味にもほのかに気付いた松本は一転して、車の免許を取れば仕事を紹介すると三上の背中を押す。

やる気満々で教習所に通い始める三上だったが、その運転ぶりは指導教官が呆れるほど荒っぽいものだった。

 


 その夜、津乃田と吉澤が三上を焼き肉屋へ連れ出す。

教習所に通い続ける金もないと嘆く三上に、吉澤が番組の意義を説く。

 

「三上さんが壁にぶつかったり、トラップにかかりながらも更生していく姿を全国放送で流したら、視聴者には新鮮な発見や感動があると思うんです。社会のレールから外れた人が、今ほど生きづらい世の中はないから」。

 

その帰り道、衝撃的な事件が起こる・・・。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、西川美和。

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長編映画第2作「ゆれる」以降、「ディア・ドクター」、「夢売るふたり」、「永い言い訳」と、ブレイク以降ずっと追いかけている監督さんです。

 

是枝裕和監督の下で映像制作をやっていたこともあり、是枝風味がどことなく漂っている雰囲気を持ってると僕は感じてるんですが、どちらかというと西川監督の方が人間を滑稽に描いてる感じがします。

ディアドクターの鶴瓶も、夢売るふたりの松たか子も、永い言い訳のモッくんも滑稽さがにじみ出てたなぁと。

 

だけどしっかりその裏の部分、弱さとか脆さとか痛みとか辛さも逃さず描くんですよね。

このふり幅が魅力なのかなと。

 

是枝監督のは絶対1度は観ないといけない気持ちですが、西川監督はたまにもう一度見たくなる感じ?

たまのあの映画に包まれたいっていうw

そう捉えてます。

 

監督に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

キャスト

刑期を終え、娑婆に出てきた主人公、三上を演じるのは役所広司。

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もはや日本映画の宝といってもいいほど、どの映画も輝かしい演技をされる役所さん。

彼がスクリーンに映ったら安心ですもんねw

 

今回の三上について役所さんは、「堅気になろうと懸命に社会での適応を試みるけど、人間的欠陥がたくさんある」と捉えて撮影に臨んだそう。

しかし監督から「もう少し真摯な態度にしましょう」と修正されたんだとか。

 

またクランクイン前に監督と共に旭川刑務所に、役作りもかねて見学に行かれたそうで、重罪者が多く収容される場所もあって、いろいろ詮索してしまったそう。

movie.walkerplus.com

いったいどんな演技をされているのか楽しみですね。

 

 

彼に関してはこちらもどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

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他のキャストはこんな感じ。

TVディレクター、津乃田龍太郎役に、「あの頃。」、「泣く子はいねぇが」の仲野太賀。

三上の弁護士・庄司勉役に、「アルキメデスの大戦」、「家族はつらいよ」の橋爪功。

庄司の妻、教子役に、「罪の声」、「修羅雪姫」シリーズの梶芽衣子。

スーパーの店長・松本役に、「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」、「おらおらでひとりいぐも」の六角精児。

ケースワーカー・井口久俊役に、「ヤクザと家族」、「浅田家!」の北村有起哉。

下稲葉組組長・下稲葉明雅役に、「アウトレイジ」シリーズ、「HANA-BI」の白竜

明雅の妻・マス子役に、「ディア・ドクター」、「泣くな赤鬼」のキムラ緑子

TVプロデューサー・吉沢遥役に、「MOTHER マザー」、「シン・ウルトラマン」の長澤まさみ。

三上の元妻・西尾久美子役に、「Fukushima50」、「最後の忠臣蔵」の安田成美などが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただでさえ生きにくいこの時代。

それ以上に生きにくいであろう三上に、優しくて暖かい世界は訪れるのだろうか。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

監督、すごく良かったです!

いま私たちが生きている世界は「すばらしい」のか。

元極道の男を通じて、生き辛さと温かさを教えてくれる良作でした!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロクでもない世界

人生の大半を刑務所で過ごした男が、短気で一本気な性格ゆえ、理不尽な出来事や筋の通らないことに目を背けられない息苦しさにさいなまれながらも、社会=他者との繋がりを通じて社会復帰を目指す道のりを描いた本作は、優しさと怒りを交互に使い分けることで圧倒的な人間味を出した役所広司や、一念発起して物書きになろうと決心するも半端な気持ちだった男の心変わりを見事に演じた仲野太賀ら演者の魅力、さらにほのかなユーモアを挟みながら、普段過ごしているはずの景色を一変させてくれる構成や演出で物語を描いてくださった監督の力にやられた渾身の1作でした。

 

 

社会のレールの上を歩いているはずなのに、幸福を感じていない私たち。

 

SNSを開けば、喜びにあふれた言葉で溢れているかと思えば、世の中の不平不満ばかりが後を絶たない。

きっと理不尽な出来事に遭遇したんだろう。

許せない出来事があったんだろう。

その場はぐっとこらえつつも、吐き出す場所が欲しくて、つい書き込んでしまったんだろう。

 

そうやって心を整えることで、社会の場で平静を装って過ごしている。

そうでもしないと、やっていけないのです。

 

 

こんな人たちが多々溢れている今、生きている世界を「すばらしき世界」と思ってる人は一体どれくらいいるのでしょうか。

少なくとも僕は、思えてません。

とにかく息苦しい、生き辛い、なんでこんなに辛抱しなきゃいけないのかというネガティヴ思考が脳内のほとんどを占めています。

 

しかし時に、生きてるって良いな、この世界は素晴らしいなと思えることもあります。

 

通勤時、必ず挨拶してくれるおばあちゃん。

「また来てくれたの!いつもありがとうね」と声をかけてくれる中華料理屋の女将。

タバコの銘柄をいつも覚えてくれているコンビニのお兄さん。

 

ごく当たり前の生活の中で、どこの誰かもよくわかっていない人たちとの些細な挨拶ややり取り、偏屈な自分に偏見を持たず普通に接してくれる他者からの温かさを知ることで、実は「すばらしき世界」と思えたりする。

 

きっと当たり前すぎて他者から受けた優しさに気付けないくらい心に余裕がない人も多いと思う。

しかし今改めて生活を見つめてみると、この世界は実に素晴らしい世界だったりするのではないだろうか。

 

今僕らに必要なのは、野に咲く花のように健気な心を育てることなんじゃないだろうか。

 

そして忘れてはならないことは、実は心のどこかで「誰か」を必要としていて、それ以上に自分を必要としている人がいること。

社会とは誰かとの繋がり。

例えレールからはみ出してしまったとしても、孤立せずに繋がっていれば何度だってやり直せる。

手遅れなんてのはない。

まだ間に合う。

 

本作は、社会からはみ出してしまった男・三上が、社会での生き辛さに我慢ならない出来事に出くわしていくものの、「社会」に適応できるよう尽力する人たちの「優しさ」に触れることで、一見ロクでもない醜いだけの世界の中に、慈しむ価値のある美しい世界であることを知らしめてくれる作品だったと思います。

 

監督作品ではベスト級の面白さ。

「ゆれる」で大好きになった西川監督の映画。

今回、彼女の中で1,2を争うほど好きな作品になりました。

 

やはり彼女はちょっと普通の人とは違う自分を滑稽に描きながらも、何か危なっかしい出来事が起きるかもしれない緊張と、人の温かさや慈しみを映し出すことで生まれる緩和を適度に置くことで、主人公や周囲の人物を魅力的に描いてるんですよね。

 

今回も、短気で一本気で曲がったことが大嫌いな元極道という、普段周りにいなそうな人物が主人公。

長きに渡って過ごした刑務所でのルーティーンが体に染みついていることから、シャバでの生活でもつい出てしまう姿が非常に愉快。

 

新しく住むことになった東京のアパートもきっちり整理整頓されていたり、刑務所の中で習得したミシンの腕前が、顔に似合わず几帳面。

普通免許を取得するための自動車教習では、腕を振って足を上げてワンツーワンツーと水前寺清子の歌が聞こえてきそうなくらい完璧な姿勢で、車に乗る際は大きな声で「8番!三上正夫!」と、まるで刑務所で点呼でも受けてるかのような声のデカさ。

同乗する青年の猫背っぷりと、含み笑いをこらえながらも淡々と返事をする教官の姿が、彼と社会の溝のようにも思えて、自ずと笑い出してしまうユーモアさ。

 

また、刑期を終えたにもかかわらず人を殺めたことを反省してないのか、それとも極道魂がしっかり根付いてしまっているのか、ついつい昔の言葉や対応が出てしまうのもユーモアとして描かれていましたね。

 

万引き犯と勘違いしてしまったことで友好的な関係となるスーパーの店長・松本。

 

ひたすら詫びをし、彼の家まで買い物した商品を持っていく道中で、実は昔ヤンチャをしていたことや同郷である共通点から意気投合していくんですね。

 

そして、彼のカバンに入っていた自動車教習の教本を見た松本が、免許取れた際には仕事斡旋するよと口約束する件があるんですけど、「それならスーパーで用心棒やるよ!昔よくやってたんだよこうやって手をひねって!」と、相変わらず手を出すことしか手段のない反省の無さに見えるも、思わず吹き出してしまうやりとり。

 

 

こんな風に、一見怖そうな人だけど人間てこういう面白いところもあるんだよと、側面だけで判断するのはもったいないと諭されているような気にもさせてくれる場面でした。

 

 

しかしやっぱり元極道。

元々人を殺めてしまったのは妻を守るためで、正当防衛だと言い張る三上は、出所する前の所長とのやりとりや、シャバに出て社会復帰しようと奮闘するも、デカい声で騒ぐ下の階の住人と揉めたり、終電を逃した口実でサラリーマンに絡む半グレっぽい輩に暴力でケリをつけようとしてしまう姿も。

 

その姿はまるで水を得た魚のように活き活きと映っており、彼のドキュメンタリーを撮るためにビデオカメラを回し続ける津乃田も怯えて逃げてしまうほど。

 

また、持病のせいで仕事に就けないことから生活保護を受けることに恥じらいを感じているせいか、ついケースワーカーとのやり取りで苛立ってしまう場面や、刑期中に免許を失効してしまったことで免許センターに訪れるのですが、厳しいルールを突き付けられて、これまたついカッとなり声を荒げてしまう場面、万引き犯と疑われ怒りをあらわにしてしまったり、TVに出ることを聞いたスーパーの店長が親身なアドバイスをしているのに、早く社会復帰したい焦りから怒りをあらわにしてしまう場面など、半生と欠陥した性格からか、昔の顔に何度も戻ってしまうんですよね。

 

心の中では「こんな俺ではだめだ」と思っていながらも、瞬間湯沸かし器のようにポー!!っと沸騰してしまい、手を出してしまう我慢の無さは、どうにも治りそうにないなぁなんて見てしまうんです。

 

 

でも、それでも彼のために何とか社会に適応できるようにしたいと、弁護士夫婦やケースワーカー、津乃田、スーパーの店長が親身になって繋がり続けることで、三上は少しずつ適応していく姿が描かれてます。

 

反社であったことに負い目を感じてるせいか、やりたい仕事と適している仕事がイコールにならずにいる状況が続く中で、視点を変えて職を探してみてはというケースワーカーのアドバイスが好転し、職にありつくことをきっかっけに、スーパーの店長から自動車教習のローン代を後払いでいいからとお金を頂いたり、残りの資金を弁護士夫婦が肩代わりしたり、彼の就職をみんなが祝ってくれたりと、三上はようやく人の優しさに触れることで変化していくんですね。

 

なんでも立ち向かうことが正義じゃない、時には目を瞑って逃げる勇気も社会では必要なことなんだ。

もしカッとなってしまったら、私たちの顔と言葉を思い出してほしい。

やがて三上は、彼らのために「普通」になろう、恩を仇で返す様なことは絶対しないと心に決めていくんです。

 

この「優しさ」に触れていくシーンの連続で涙腺が決壊してしまい、ラストシーンまで目を真っ赤にして見てましたw

ダメなんすよね~人の優しさを見せられると。

 

正に緊張と緩和で構成したことで、心を持ってかれた瞬間でした。

 

 

他にも、三上の短気な性格の原因が、母親からの虐待=ネグレクトなのではないかという現代の問題も映し出していましたね。

 

三上は施設に預けられたものの、脱走してしまったことから親と疎遠になってしまった過去があり、そのあと迎えに来たであろう母親を探すために、TV局に協力を依頼するんです。

 

出所後、弁護士夫婦の家出すき焼きをごちそうになる三上が、たまたまTVで流れた「養子縁組の光と影」というニュースを見て、痛い思いをして生んだ子供を養子に出すなんて、要らないから捨てるってことでしょ!と言い放つんですね。

弁護士は母親のひっ迫した生活状況では子供を幸せに育てられないという事情から養子に出したという見方もあると、別の視点で見ることも大事だと促すんですが、首を縦には触れない三上の姿が映し出されていました。

 

しかし、津乃田は、三上は親から虐待を受けていて捨てられたのではないかと推測。

図書館で調べ上げたデータによれば、性格に何らかの欠陥がある人は、ネグレクトだったという統計が出ていることを三上に告げるシーンが挿入されていました。

 

また兄弟分の家に九州へ行った際のソープ嬢との会話では、震災をきっかけに体を売って生計を立てている彼女の身の上話に耳を傾ける三上の姿も。

彼女曰く、あと半年したら子供を迎えに行って幸せに暮らすという会話がされており、冒頭のニュースを見て感じた三上とは違い、別の視点で見ることも大事だという弁護士の言葉を理解したかのような表情が見て取れました。

 

ここから透けて見えるのは、三上のような男を生み出さないためには、母親からの愛情も大事だけど、生活環境によって愛を与えられない母親の息苦しさや、弱者に寛容でない社会の仕組みも問題なのではと訴えてるように感じます。

 

決して説教臭くなく現代の問題を物語に組み込む監督の巧さが出ていた部分とも言えるのではないでしょうか。

 

 

最後に

人生は我慢の連続だけど、空は広い。

ラストはある意味、マス子が三上に言った言葉に沿うように、空を映して幕を閉じます。

この空を映すことで、どこか我々に答えを見つけてほしいと思える終わり方でした。

ある種皮肉にも取れるかなぁ。

 

 

せっかくカタギになると決心したのになぜ理不尽なことばかりされるのか、なぜ自分のしたいように生きることができないのか、どいつもこいつも偽善でキレイごとばかり言って、こんな世界のどこがいいんだ。

だったらいっそのこと、自分の方から社会と縁を切ってやる。

 

我慢できない性格ゆえに、社会にうまく溶け込めない苛立ちを隠せない三上でしたが、自分を支えてくれる人たちの優しさに触れることで改心していく物語。

どんなに生き辛くても、花を与えてくれる人がいることを、三上はようやく知っていきます。

 

今でもはみ出した人には厳しい社会ですが、三上が救われるような世界が、映画だけでなく現実でも在り続けたいと願った作品だったのではないでしょうか。

 

すばらしき世界を知った三上は、きっと幸せだったと思う結末でした。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10