ザ・バットマン/THE BATMAN
ティム・バートン、ジョエル・シューマカー、クリストファー・ノーラン、ザック・スナイダー。
偉大な監督陣らに共通する作品は、そう「バットマン」。
異形への愛が詰まった作品から、コミック感満載のポップな作風、リアルを追求した作品や、神と人間といった宗教観も含めた作品など、様々な監督がバットマンを通じて作家性を出してきました。
時代の節目に必ず公開されるビジランテヒーローに、誰もが胸を熱くしたことでしょう。
特にノーラン版バットマン3部作の2作目「ダークナイト」は、僕にとっても映画好きのきっかけとなった作品。
「ザ・バットマン」でもそんな新たな映画好きが誕生することを願いたいです。
さて今回の「ザ・バットマン」。
リドラーやキャットウーマン、ペンギンなど映画では久々に登場する面々が多くちょっと懐かしい感じもしますが、内容は「謎解き」なんだとか。
鈍重な作風で知られる監督が3時間もかけてバットマンを描くとあって、少々腰が重いです…。
とはいえバットマンですから、面白いモノになってると期待しないわけがない。
「ジョーカー」の衝撃は、ほんとに序章に過ぎなかったのか。
早速観賞してまいりました!
作品情報
ザック・スナイダー監督によって製作されたスーパーマン3部作。
当初単独映画「バットマン」をベン・アフレック自身が監督・主演で製作される予定だったが降板。
かわりに白羽の矢が立ったマット・リーヴス監督の手によって、再び新たなバットマンが誕生した。
昼は社交界の億万長者、夜は犯罪者への目を光らせるビジランテとして日々を送るブルース・ウェインが、必ず「なぞなぞ」を残して犯行に及ぶ犯罪者リドラー相手に謎を解いていく「謎解き」アメコミ映画。
SNSを駆使して市民を扇動し、世界の嘘を暴いていくリドラーが次に暴くのは「バットマンの嘘」。
原題とリンクしたかのようなメッセージ性に、探偵・バットマンというコミックの原点に帰ることで、バットマン史上最もエモーショナルで、最もフィルムノワールで、最もスキャンダラスな内容となった。
主演には「テネット/TENET」での活躍が記憶に新しいロバート・パティンソンを起用。
「トワイライト」シリーズで植え付けられたイメージを払拭し、第2のキャリアを歩み始めた彼にとってうってつけの役柄に違いない。
他にもインディペンデント作品を中心に爪痕を残すポール・ダノや、「ファンタスティック・ビースト」シリーズで活躍するゾーイ・グラヴィッツなど個性派俳優らが脇を固める。
知能犯によって徐々に狂気を見せ始めるバットマン。
バットマンは、そして我々はリドラーの謎を暴くことができるのか。
あらすじ
優しくもミステリアスな青年ブルース(ロバート・パティンソン)。
両親殺害の復讐を誓い、悪と敵対する存在”バットマン”になって2年が過ぎた。
ある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。
殺人を名乗るリドラー(ポール・ダノ)は、犯行の際に必ず”なぞなぞ”を残していく。
警察や世界一の名探偵でもあるブルースを挑発する史上最狂の知能犯リドラーが遺した最後のメッセージは——
「次の犠牲者はバットマン」。
社会や人間が隠してきた嘘を暴き、世界を恐怖に陥れるリドラーを前に、ブルースの良心は狂気に変貌していく。
リドラーが犯行を繰り返す目的とは一体——(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、マット・リーヴス。
J.J.エイブラムスが仕掛けたパニック映画「クローバーフィールド」をきっかけに著名な監督となったリーヴス。
それ以降「猿の惑星:新世紀」、「猿の惑星:聖戦記」とビッグ・バジェットを製作してきました。
彼の描き方は鈍重な面が強く、正直な所「クローバーフィールド」は置いといて、猿の惑星シリーズはかなり苦手でした。
今回も上映時間が3時間という情報を知り、「あ、やっぱりな」と。
長尺な上に、あのずっしり重厚な画をチンタラ見せられるなんて絶対集中力切れるじゃん…と。
とはいえ批評界隈は絶賛が相次いでるし、なんだかんだでバットマンですから、大いに楽しみたいと思います。
謎解きってミステリー要素があるから、意外と集中できたりして。
今回製作するにあたって、何やら「ゾディアック事件」を題材にしたりとか、ブルースの造形にニルヴァーナのカート・コバーンを連想させたとか、これまでのバットマンっぽくないアイディアが詰まってそうです。
マット版バットマンは、一体どんな物語になっているのか。
非常に楽しみです。
キャラクター紹介
- ブルース・ウェイン/バットマン(ロバート・パティンソン)・・・コウモリのマスクを被りバットマンとして2年間ゴッサムシティで犯罪者と戦っている裏の顔を持つ億万長者の社交界の名士。ブルースはまだ30歳で、経験豊富なクライムファイターではない。
- セリーナ・カイル/キャットウーマン(ゾーイ・グラヴィッツ)・・・行方不明の友人を探しているときにバットマンと接触するナイトクラブの店員であり泥棒。
- エドワード・ナッシュトン/リドラー(ポール・ダノ)・・・ゴッサムで無差別殺人を起こし、?マークを犯行現場に残す連続殺人犯。バットマンと法執行機関を暗号めいたなぞなぞで混乱に陥れる。
- ジェームズ・ゴードン(ジェフリー・ライト)・・・ゴッサム市警察の刑事。
- カーマイン・ファルコーネ(ジョン・タトゥーロ)・・・ゴッサムシティの犯罪王。
- ギル・コルソン(ピーター・サースガード)・・・ゴッサムシティの地方検事。
- アルフレッド・ペニーワース(アンディ・サーキス)・・・ウェイン家に仕える執事。
- オズワルド・”オズ”・コブルポット/ペンギン(コリン・ファレル)・・・コブルポットはまだ犯罪の王者ではなく、ペンギンと呼ばれることを嫌っている。
- ベラ・リアル(ジェイミー・ローソン)・・・ゴッサムシティの市長候補。
- ?(バリー・コーガン)・・・アーカムの囚人。
(以上ウィキペディアより)
おそらく初の試みとなるであろう「アメコミ×謎解きミステリー」。
一体どんな化学反応を起こすのか。
3時間という長尺が苦痛にならなければいいんですが。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#ザバットマン 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年3月10日
だからマットリーヴスは好きじゃない。
話こねくり回し過ぎ。
メインテーマがダースベイダーにしか聞こえない。
でもこのバットマンは無骨で良い。 pic.twitter.com/lfgIVqWpx6
ん~、バットマンシリーズの中では下位。
とはいえ、退廃的で絶望に打ちひしがれて暴力に走るバットマンはカッコイイ。
総じてロック。
以下、ネタバレします。
握れば拳、開けば掌
両親を殺された悲しみを憎しみに変え、街に蔓延る悪の一掃を遂行するブルース・ウェイン=バットマンが、知能犯リドラーのなぞなぞに苦戦しながらも推理し解決に導こうと奔走する姿を、ニルヴァーナを代表する90年代グランジロック調の音楽と、オレンジと黒を基調とした色味と滴る豪雨によって希望の光などどこにも見当たらないゴッサムシティの雰囲気が見事に融合し、バットマン史上類を見ない絶望感が押し寄せる世界観が見事だったが、やっぱり長尺過ぎて話をこねくり回し過ぎて面白さがどんどん消え失せていく作品でございました…。
小見出しに書いたことわざは、森田まさのり原作の「ルーキーズ」での言葉。
川藤先生を殴ろうとした新庄に対し送った言葉です。
本作を見終わった後、このことわざが浮かびました。
自分自身を「復讐」と名乗るバットマンは、その言葉通り怒りに身を任せ、そこらじゅうで悪さをしている奴らを見つけてはフルボッコにしてしまうんだけど、リドラーとの謎解き合戦の末、自らが「希望」になることだと悟るんです。
リドラー自身も「復讐心」によって、様々な事件を計画し実行した男で、こいつの考えに触れていくうちに、自分自身もリドラーと似たような性質をもってんじゃねえの?と段々意識し始めていくわけです。
一体俺は何のためにこんなことをしてるのか。
悪を一掃すれば街も良くなる、自分の復讐も終わる、それが「正義」だと。
しかしリドラーの場合、全ての悪事を明るみに出すことで、善だと表立ってた者を排除し、悪こそ正義だと言ってるかのよう。
市長が裏でやってたこと、地方検事が裏で私腹を肥やしていたこと、警察本部長もまた正義の象徴でありながら悪と繋がっていたこと。
そんなことを裏でやっている人が果たして「善」なのかと。
要はどちらも潰すことしか考えてないんですよね。
潰すことで復讐を果たし、これまでの恨みが消えると考えてる。
しかしリドラーと対峙していく中で、自分がバットマンである意味や意義を見出した結果、これまで握っていた拳を広げ、手を差し伸べることが「正義」であることに気付くシーンは、本作の中で一番印象に残るシーンだったと思います。
だってこれまでのバットマンシリーズで手を差し伸べて一般市民を救助する姿って在りました?
ないですよね。
今回ここに着地していく物語って部分は非常に感銘を受けました。
それって談合社会
B’zの「Liar!Liar!」って歌の一部に「先生はママと 政府は火星人と 警察は悪い人と 僕の知らないとこでとっくにああナシがついてる それってダンゴウ社会」って歌詞があるんですね。
本作で描かれてることはまさにそういうことだったんじゃねえかと。
麻薬組織を束ねていたマローニを挙げたことで市長になったドン・ミッチェル市長でしたが、実は裏社会を牛耳るフィルコーネの協力によって市長の座に就いたことが明かされます。
また、警察本部長もゴッサムシティ内で蔓延している麻薬「ドロップ」を横流ししていたり、地方検事はドロップ漬けになりながら悪人を起訴しない代わりにフィルコーネから賄賂をもらっていた。
街をよくしたいと言いながら、裏社会の人間と繋がり金もうけしたり地位を得たりしているわけです。
現実世界でもこういう汚職事件が横行してますが、人々の上に立つ人たちがそんなことしたら腹立ちますよね。
さらにはブルースの親父も関与していることがリドラーによって明るみになり、ゴッサムシティ再開発の一環で計画していた慈善事業が、親父が死んだ後にマローニやファルコ―ニらによって資金洗浄に使われていたという。
この慈善事業が無くなったことで劣悪な環境で育った孤児エドワード少年は、憎悪に駆られてリドラーになってしまったという流れなんですね。
まぁこんな人たちが上に居たら、いつまで経っても街は良くならないですよ。
麻薬王逮捕したのに麻薬はなくならない。
それがまさか正義を司る人や治安を守る人、市民を束ねる人が関わってるんですから。
マット・リーヴスはやっぱ好きじゃない
ざっと本作のテーマだのメッセージ性だのを語ってきましたが、監督について語っていきましょう。
ノーランバンバットマンでリアル路線を走ってきたバットマンですが、本作でさらにリアル志向に持っていった感じです。
そこに「探偵バットマン」を取り入れたことで、さらにリアル志向になった感じがします。
実際「チャイナタウン」のようにプライベートアイとして活動するバットマンが、やがて街の巨悪にたどり着いてしまう構成によって、格好こそアメコミですがアメコミを忘れてしまうほど犯罪映画でしたし、白人と黒人の2人組がサイコパスが犯した事件を捜査していく「セブン」を意識した映像でしたね。
セブンもひたすら雨が降ってましたし、とにかく街全体が薄暗く身の毛がよだつ雰囲気でした。
フィンチャーつながりで言えば「ゾディアック」にも繋がっていきますよね。
犯行現場に謎を残して消え去るシリアルキラーとして有名な「ゾディアック事件」に翻弄される3人の男を描いた作品でしたが、作品を模倣するのではなく、あくまで「事件」そのものを題材に取り入れたのだと思います。
バットモービルも今回登場。
怒号のように轟くエンジン音でペンギンを威嚇し、追走するバットモービルはフォルムも走り具合も「マッドマックス」。
というか「ワイルドスピード」の世界に「マッドマックス」のインターセプターが出てきたみたいな感じでしたよw
どのバットマンシリーズもゴッサムシティは、薄暗い時もあればサイケデリック調なデザインのもあるんだけど、全部荒れてるんですよね。
本作は他の作品と差別化するために、さらに暗くてジメジメしてて悪い人しかいないような、腐敗感MAX絶望感MAXな街に仕上げてます。
このように往年の作品を組み込むことで、アメコミ版フィルムノワールを作り上げた監督の意欲は買います。
しかし3時間という長さにするほどの物語だったのかというと、いささか疑問です。
というか不満です。
前半は非常にのめり込めるんですよ、ブルースがもうヤバくてw
チンピラフルボッコしたり、警察官にも手を出しちゃうし、メット取ったらパンダメイクで痛そうな感じで。
そんなブルースがアルフレッドやゴードンと共になぞなぞを解いていきながら、一体犯人は誰なんだ!ってのと、ゴッサムシティの黒い部分を見つけていくっていう。
そこにセリーナが介入してくることで、ロマンス要素もちらりと覗かせる。
なんていうかミステリー要素が強くて、ノワール感が悶々としてて、先が早く知りたくなるんですよね。
でも後半からミステリー要素が薄れてくるんですよね。
というか、サプライズとして出す謎の答えが、全部サプライズになってない。
ファルコ―ニが父親だと告白するセリーナ、ブルースの父がファルコ―ネと繋がっていたこと、リドラーがあっさりつかまっちゃうところ、そんな彼が最後に残した計画がリドラーに感化された人たち。
リドラー軍団は議事堂占拠事件をモチーフにした設定ってことで、リアリティあるとは思ったけど、クライマックスに登場する敵としてはイマイチパンチが弱い。
他に関しては読めました。
セリーナとファルコ―ネが接触した時に多分そうだろうなぁと感じたし、親父の関与は観る前からなんとなく予想してた。
で、親父がやったことは子供にも責任があるって理屈でブルースを追求するリドラーって流れになっていくんだけど、そこに持っていくことで街の巨悪から急にしっぽりしちゃって。
別にブルースにつなげなくても、街の巨悪を明るみに出してファルコ―ネが「ネズミ」って部分まででいい気がするというか。
それこそファルコ―ネがネズミってのも「え!?」ってならないんだよなぁ。
あとファルコ―ネが巨悪の根源なのに、彼よりもペンギンの方が出演時間長い気がするんですよね~。
そもそもペンギンてファルコ―ネよりも力ないんで、ぶっちゃけ今回登場しなくてもいいと思うんですよ。
キャラとして確立してるから出さざるを得なかったんでしょうけど、別に要らないっすよね。
あとはもう無駄なシーン多すぎ。
ブルースの語りも長いし、ラストのバイク並走も無駄に長いし、ペンギンのカーチェイスも長いし、これ見よがしなシーンも多すぎだし。
そもそも鈍重な映像なんだから色々ひっぱ並んでもいいじゃん、さっさと次行けよってなっちゃいましたね。
で、次のシーン行ったら行ったで急に話が飛んでるところもありましたよね。
急に映像がリークされたニュース観てるとか、何の脈絡もなくセリーナが付けてたコンタクトのカメラ越しから連絡来るとか。
多分泣く泣くカットしたんでしょうけど、ちょっと唐突だなぁと思っちゃいました。
最後に
監督は「クローバーフィールド」で9.11やって、「猿の惑星」シリーズで人種間の分断を描くなど、現代で起きている問題を映画に取り入れる巧さがあるんだけど、過去作と比べると本作は現実問題を巧く入れられてないかなぁと。
一応SNSで拡散することで同調させてリドラー軍団を生んじゃう描写が非常に今っぽいんですけど、おお!とはならないというか。
とはいえパティンソンのバットマンは良かったですね。
カート・コヴァ―ンをイメージしたキャラクター像ってのが見事にハマっていて、本と絶望を絵にかいたような薄幸感で、何かに憑りつかれてるかのように不健康で血色悪くて。
それでいてなりふり構わず暴れまわる姿にギャップが生まれるからたまらない。
被弾しまくってるのに防御しないでノシノシ近づいてフルスイングでパンチするのとか、今のアクションぽくなくて潔いというか。
ガジェットも胸のバットマークがブレードになったり、ムササビスーツ着て落下したり、コンタクトレンズがカメラになってたり、腕にスタンガン装着してたり、色んなガジェットが何とかすれば手に入りそうなもので出来てる感じがいいですよね。
ダークナイトとかだと金に物言わせてる感じがしますけど、こっちは富裕層じゃなくても揃えそうな感じw
マスクも結構顔が出てるタイプで、耳も小さめに変化。
結構バレちゃいそうな気がしましたけど、こういうバットマンも悪くないっす。
色々愚痴書きましたけど、あくまで監督の作風が好みでなく、バットマン自体は良かったです。
ジョーカーも登場しましたけど、次回作にヴィランとして登場するのでしょうか。
とりあえず、頼むから上映時間短くしてくれ…。
てかインターミッションくれ。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10