東京リベンジャーズ 血のハロウィン編 決戦
邦画では「鋼の錬金術師」以来の2部作公開となった「東京リベンジャーズ2」。
前編にあたる「運命」編は、おさらいありまくり、回想ありまくりという尺を伸ばしまくった構成に加え、上映時間が90分という短尺ぶり。
しかも東卍と芭流覇羅の抗争直前で幕を閉じるという勿体ぶりは、もはや「壮大な予告編」といわれても仕方のない前編だったと思います。
とはいうものの、東卍結成時の仲睦まじい創設メンバーのシーンは、前編における最大のハイライトであり、後編で描かれるであろうメンバーらの「なぜこんなことになってしまったのか」という後悔と慟哭を見せつけっられることで、我々も涙するのでしょう。
しかし映画の外側では、間もなく公開というタイミングで「場地演じる永山絢斗が薬物所持で逮捕」という衝撃的なニュースが飛び込み、「決戦編」の公開が中止になるのか延期になるのか、ファンは不安がよぎったことでしょう。
もしかしたらこの「外側」での出来事によって、作り手が伝えたい結末とは別の形で受け取れたりするのでしょうか。
そんなことが起きたらそれはそれでドラマチックなのだろうけど、やっぱり現実で起きたことはしっかり反省してほしいですね。
というわけで早速観賞してまいりました!!
作品情報
2017年から2022年まで「週刊少年マガジン」で連載し、コミックの累計発行部数は7000万部を超える人気コミックを実写化した「東京リベンジャーズ」。
第1作目は興行収入40億円を超える大ヒットを記録し、その年の実写映画ナンバー1を獲得するほどの人気となった。
本作は原作で最も泣ける「血のハロウィン」編を2部作として製作。
東卍創設メンバーらに起きた悲しい事件を背景に、各キャラが様々な思惑を張り巡らせた「運命」編。
「決戦」編は、そんな彼らがいよいよ「血のハロウィン」と呼ばれた抗争を開始。最悪の結末を避けるべく、仲間たちの未来のためにタケミチが戦いに身を投じていく。
前作でタケミチを演じた北村匠海を筆頭に、吉沢亮、山田裕貴、今田美桜らが続投。
新たに村上虹郎や永山絢斗、高杉真宙、そしてサプライズゲストに高良健吾を迎え、スケールを大きくして物語を描く。
監督も前作と同様英勉がメガホンを取り、もっとも泣けるエピソードを盛り上げるべく力を発揮する。
日本映画史上最大のセットを作って製作した2部作。
スタッフが最もやりたかった「血のハロウィン」編が、いよいよベールを脱ぐ。
あらすじ
東京卍會結成メンバー6人の絆を引き裂いた過去の悲しい事件に端を発する、かつての親友同士の戦いがついに始まった。
敵対する芭流覇羅(バルハラ)から場地(永山絢斗)を連れ戻すため戦うことを選んだマイキー(吉沢亮)と、復讐のためマイキーの命をねらう一虎(村上虹郎)。
それぞれの思いを受け止めながら、タケミチ(北村匠海)は恋人のヒナタ今田美桜)や仲間たちの未来を明るいものに変えるべく戦いに身を投じていく。(MovieWalkerより抜粋)
キャラクター紹介
- タケミチ(北村匠海)…27歳でいまだ童貞の冴えないフリーター。凶悪化した東京卍會に殺害されたヒナタを救うため、高校時代に何度もタイムリープを繰り返しついに成功!……したはずが、再び目の前でヒナタが命を落とす。喧嘩は弱いが、いざとなると根性を見せる熱い男。
- ドラケン(山田裕貴)…絶大な強さでマイキーを支える東京卍會の副総長。長身&剃り上げた側頭部にドラゴンのタトゥーを入れるなど見た目はイカついが、情に厚く仲間想い。闇落ちしそうになるマイキーにストップをかけられる唯一の存在だったが、現在は死刑囚となり服役中。
- ナオト(杉野遥亮)…ヒナタの弟。自分との握手がタケミチのタイムリープのトリガーになることを知り、姉を救うために警察官になった。無鉄砲なタケミチに時に呆れながらも、ヒナタを命がけで救おうとするタケミチを信頼し協力。タケミチにとっては心強い存在。
- ヒナタ(今田美桜)…タケミチの高校の同級生で、タケミチの人生唯一の彼女。明るい美少女で、初対面のマイキーにビンタをくらわせるなど肝の据わった一面も。タケミチの活躍で東京卍會に殺害されない未来を生きていたはずが、再び東京卍會に狙われ死亡する。
- 三ツ谷(眞栄田郷敦)…東京卍會の弐番隊隊長。結成時のメンバーで、東京卍會には必要不可欠な存在の1人。複雑な刺繍が入った特攻服を自ら仕立てるほど手先が器用で、服飾のセンスがある。マイキーへの信頼は強く、場地と一虎の事件に苦悩するマイキーを静かに見守る。
- 半間(清水尋也)…東京卍會と敵対する“芭流覇羅”(ばるはら)のNo.2に君臨する狂気の男。左手に“罪”、右手に“罰”のタトゥーを入れ、口癖は「ダリィ」。東京卍會とタケミチを徹底的に敵視し、東京卍會を潰すことに暗い情熱を燃やす。裏で密かにキサキと繋がっている?
- アッくん(磯村勇斗)…高校時代のタケミチの親友。明るい性格で赤く染めた髪が特徴。前作では凶悪化した東京卍會に所属し、キサキの飼い犬となって自殺に追い込まれた。しかしタケミチが変えた未来で念願の美容師になっているはずが、再びキサキの手先となり……
- 場地(永山絢斗)…東京卍會結成メンバーの1人で壱番隊隊長だが、一虎と起こした“ある事件”により運命が変わってしまう。高校内ではメガネ姿で一見真面目なガリ勉風だが、実は留年しており学力は壊滅的。が、喧嘩はめちゃくちゃに強い。長い髪と八重歯が特徴で、ペヤングが大好き。
- 一虎(村上虹郎)…東京卍會と敵対する“芭流覇羅”(ばるはら)のNo.3。マイキーに強烈な恨みを抱き東京卍會を敵視しているが、実は東京卍會結成メンバーの1人でもある。場地と起こした“ある事件”をきっかけに少年院に収監されていたが、出所後東京卍會崩壊を狙う。鈴のついた揺れるピアスと、首元の虎のタトゥーが特徴。
- 千冬(高杉真宙)…見た目に反し喧嘩っ早く、高校入学早々周囲の不良を圧倒。その報復で大勢にボコられそうになっていたところを、場地に救われる。以降場地に憧れ、東京卍會に入隊し壱番隊副隊長に。新たな相棒・タケミチと共に、“芭流覇羅”に寝返った場地を奪還しようとする。
- キサキ(間宮祥太朗)…東京卍會と敵対し潰された“愛美愛主(めびうす)”に所属していたが、正式に東京卍會に詫びを入れ入隊を許される。マイキーに異常な執着を見せ、マイキーの大切なものを着々と狙っていく。東京卍會が凶悪化していった元凶となる男。
- マイキー(吉沢亮)…異常な喧嘩の強さと、カリスマ性を併せ持つ東京卍會の伝説の総長。小柄で金髪の超美形だが、そのハイキックは殺人的威力を持つ。一見飄々としているが仲間への想いは誰より強く、場地と一虎が起こした事件に激しい葛藤を抱えている。甘いものが大好き。
(以上HPより)
いよいよ運命の結末。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編決戦観賞。おそらく原作通りの流れなんだろうが、あそこまでしないと止められなかったのか?と疑問が残る後編。そしてエピソードの肝である馬地が物語をグッと締めるキャラで、彼がせっかく良い芝居をしただけに非常に勿体無い。 pic.twitter.com/Wn6JHpk0hc
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) June 30, 2023
え、結局タケミチは何をしたのか・・・。
あ、主役は彼でなくて東卍創設メンバーってことなのか。
明らかに続編を匂わせるかのような締め方で、1作としても中途半端な作品でした。
以下、ネタバレします。
何のための2部作だったのか
TV局主導製作+原作コミックの実写化という文化は、シネコン誕生以降の日本映画産業において稼げるコンテンツとしてこの20年ファンを楽しませてきたこと、そして「推し活」文化にあやかって原作キャラをしっかり体現化する俳優陣の活躍もまた今後のキャリアとしても重要なコンテンツであることは間違いなく、それらに関しては悲観も楽観もない立場であることを前提に感想を述べると、一体この2部作の何が面白いのかさっぱりわからない。
単純に2つに分けずに1つの作品として上映すれば、それなりの感動を受けたに違いない。
運命編で語られた創設メンバーの仲睦まじい姿と仲を引き裂くことになった事件の真相、そして今回の決戦編で明かされた「馬地のチームに対する思い」と死を持って悲惨な状況を防ぐ確固たる意志。
これらが一つの物語としてしっかりつながった状態で見れば、物語としてのカタルシスは相当なモノで、原作未読で全くファンでもない自分でさえも涙を流したかもしれない。
不良映画はとにかく拳を武器に戦う姿が魅力的だが、それ以上に魅力的なのは仲間たちとの固い絆であり、その絆を守るためにを命を賭けて戦う姿勢こそが観る者を熱くさせるわけです。
そんな熱い絆で結ばれた彼らの物語を、2部作として引き裂くのか。
さすがにこの2部作は失敗だと強く言いたい。
構成面でも、1本の映画としての2部作というよりかは、完全にTVドラマの第2話のような入り方。
前作のラストシーンから始まり、それが終わるとオープニングシークエンスで運命編のあらすじを解説するかのようなダイジェストで流し、いよいよ「決戦編」が始まるかと思ったら、幾度となく挿入される回想のオンパレード。
確かに「決戦編」と銘打ってる以上、本作一番の見せ場は後に血のハロウィンとして語られた芭流覇羅との一騎打ちなわけだが、どうしても馬地と千冬のエピソードに強引に顔を出すタケミチばかりで、他のメンバーの思惑や決意などの尺が足らない。
要は決戦までのタメもなければ決戦までのワクワクもない。
一虎とサシで落ち合うドラケンや、何を企んでるかわからないキサキの不敵な笑み、避けて通ることはできないかとジャングルジムの上で悩むマイキーの姿など、それっぽい描写はあれど、いよいよ始まる決戦!という雰囲気を味わえない流れだったんですよね。
恐らくタケミチの立ち位置に問題がある気がするというか。
1の時のタケミチの行動は非常にわかりやすい上に、最後のタイマンでの勝利によって彼の成長ぶりとカタルシスが用意されてたからまだ楽しめたんですが、本作に関してはまるで策がない上に、決戦が始まれば隅に追いやられてしまうキャラに成り下がってる。
一応ど根性パワーで周囲の仲間たちを鼓舞する活躍を見せるけど、結局はキサキの思惑通りに進んでしまい、何もできずじまい。
その代わりに馬地が自死をすることで、マイキーは闇落ちすることなく正気に戻り、何もできなかったタケミチは最後においしい所をかっさらって一番隊隊長になって終わりって、物語としてどうなん?と。
しかもこのままこの時代に留まるとか言い出す始末で、未来が変わったのかどうかさえ分からずに終わりって、映画として酷すぎるでしょ。
これでリベンジャーズが終わると言っておきながら、この締め方は明らかに「続編やります」と言ってるかのようなやり口で非常によろしくない。
これで映画のプロジェクトを終わらせるなら、1の時のように、馬地だけが死に、マイキーが闇落ちしなかったことで、現代へ戻ってヒナタが存命がどうか確かめてピリオドを打つべきだったのではないかと。
この結末には非常に腹の立つ終わり方でした。
褒めポイントも一応語ります
このままいくと愚痴だけの感想になってしまうので、しっかり褒めポイントもあるぞってことを書き残しておきたいと思います。
結局のところタケミチが主役だと思いながら見ていた自分の視点が間違っていたわけで、この血のハロウィン編の主役は創設メンバーだということですね。
そうやって見てみると、彼らの絆が強く描かれたエピソードではあったわけです。
なんでそんな思考になってしまったのかと「運命編」で一番悩んだキャラ・一虎でしたが、今回ようやく彼の思考が理解できました。
要は自分を守るためには、マイキーを敵と見立て彼を殺すことで英雄になれば、自分の中でより「正義」であることが証明され救われる、そういう思考の元でマイキーを敵視していたってことですよね。
自分の犯した罪をこれ以上否定すれば、もっと追い込まれて精神に異常をきたしたことでしょう。
それを防ぐために、自分が自分であるためにそうまでしないといけなかったと。
そこに漬け込んだのがキサキであり、敵視しているとはいえこれ以上奴の手中にいかせないよう体を張って守っていたのが馬地であったと。
馬地に関しても全く考えの読めないキャラではありましたが、千冬との馴れ初めから彼の人となりが「運命編」以上に描かれることで、クライマックスでの自死が周りの熱を一瞬にして冷ますほどの影響と、今回の戦いに誰よりも重い覚悟で臨んでいたくらいメンバーに対して熱い思いがあった男だったわけです。
タケミチも先ほどおいしいところ全部持ってくと小バカにしましたが、馬地の覚悟を未だ理解できてないマイキーをあそこで止められたのは、誰よりもしびれる啖呵を切れる、創設メンバーと距離のあるタケミチしかいないわけで、主役らしくしっかり見せ場で存在感を示したことは確か。
また決戦の舞台となった廃工場跡のセットも圧巻で、つぶれた車が積み重なった場所でのアクションは、スタントマンがやったとは思いますが、よくあんなところから大胆に転げ落ちられるな、あんな足場の悪い所でアクションができたなと目を見張る部分はありました。
こういう団体での激しい格闘っていつもどうやってアクションデザインしてるか不思議でしょうがないんですけど、あれだけの数相手にしっかり立ち回れる役者陣も相当なリハーサルを積んで臨んだんだろうと考えると、かなりリアルなケンカファイトでしたよね。
だってマイキーと一虎が対峙する周りで周囲の誰もがぶつからずに暴れまわって走り回ってるわけですよ。
しかもマイキーの前に急に飛び込んできて瞬殺されるっていう一連のシーンをそのままカメラ回してやってるわけですから、かなり気合の入った決戦シーンだったんだろうなと。
こうした真剣な撮影現場だったにもかかわらず、物語を半分に切って2部作にしてしまったことが本当に悔やまれるなぁと。
長尺になってもいいからドラマパートとバトルパートなんかで区切らずに、一つの物語にすれば、よりドラマチックになったのになぁと。
最後に
運命編では壮大な予告編となってしまったわけですが、ふたを開けてみればやっぱり分けずに一つにまとめた方が絶対作品として良かったなぁという思いが強く表れてしまった決戦編でした。
原作ファンの方が一番楽しめればいいとは思うんですが、お金を払って見た以上言いたいことは言わせてもらうスタンスで感想を書きました。
また今回公開前に起きた永山絢斗逮捕に触れないわけにはいきません。
今回の主役の一人は彼が演じた馬地であり、物語を動かすキーパーソンとしてその役割を見事に果たしていました。
時折見せる生真面目な姿や、内に秘めた仲間への熱い思いを、馬地というキャラにしっかり詰め込んで演じた芝居は、今回の事件がなければ多くのファンを喜ばせたことでしょう。
また彼の俳優としてのキャリアにも今回の役柄は大きなインパクトを与えたことでしょう。
実際ドラケンを演じた山田裕貴が本作でブレイクしたわけですから、大きな飛躍も期待できたわけです。
なのに…。
ピエール瀧の時もそうでしたが、ああいうことが明るみになると、薬物を使って演技をしたのではないかと「疑い」というフィルターを通してみてしまうことになり、運命編と決戦編を同じように見れないなんて人も出てくるのではないかと。
どう見るかはそれぞれの自由ですが、僕の場合上映中は意識せず見れたものの、劇場を出た途端やはり思い出してしまいました。
そういった意味でも作品にケチがついて勿体ないと思ってしまう映画になってしまいました。
今後こういうことが起きずに映画が作られるよう、叱咤激励しながら見続けたいですね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10