モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「WAVES/ウェイブス」感想ネタバレあり解説 女子ウケ必至の「映え」ムービーにしか見えなかった。

WAVES/ウェイブス

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ipodが誕生したことで、たくさんの音楽を持ち歩くことができました。

時代はさらに進化、スマートフォンで優れた音質で聞けるようになり、さらにはストリーミングで実質無料で、いつでも音楽を引き出せるようになりました。

 僕も通勤中や移動中、はたまたジョギング中など、音楽を耳に注入しては、その時見た景色や匂い、心境などと重ねている生活を送っています。

 

このように人生と音楽は切っても切れない間柄として我々の心に根付いており、たとえ音楽を聴いていなくても、いつだって心のPLAYボタンを押せば、頭の中で音楽を鳴らすことができるし、1フレーズがまるで自分のことに思えて感極まったり、奏でるメロディやリズムに合わせて気持ちを高ぶらせたり落ち着かせたりするなど、常に寄り添ってくれる存在なのです。

 

そんな僕が走っているとき必ず脳内で流れる曲は、「LA・LA・LA・LOVE SONG」ですw(忘れてください)。

 

今回鑑賞する映画は、現在のインディペンデント映画を支える制作会社A24がお届けする、「ザ・プレイリスト・ムービー」とのこと。

音楽在りきの映画ってことなんですかね。

って言っちゃうと、突き放してるように聞こえちゃうかW

音楽と物語がシンクロする映画、ですね。

 

ほんと映画と音楽は切っても切り離せないですから、その辺を革新的に描いたお話なのだろうと期待しております。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

ハリウッドに新風を巻き込んだ映画製作スタジオ「A24」が2020年代の幕開けに用意したのは、傷ついた若者たちが、明日への一歩を踏み出す希望の物語。

 

将来を期待されているも、降りかかる災難によって人生を躓き始めてしまう男の末路、そして彼によって心を閉ざしてしまった妹に起きる愛の軌跡を、躍動するサウンド、画期的なカメラワーク、息をのむほど美しい色彩などでコーティングし、登場人物の心情に感情移入させていく。

 

さらにこの映画のもう一つの主役であるのが、現代の音楽シーンを牽引するアーティストたちによる名曲たち。

監督がプレイリストを作成してから物語を書き記したと語っている通り、全ての曲が登場人物の心情を表すかのように構成されている。

 

ある意味でミュージカル映画と語る監督が送る「プレイリスト・ムービー」。

あらゆる感情の「波」が寄せては返し、あなたに又とない映画体験をさせることでしょう。

 

 

 

 

あらすじ

 

高校生タイラー(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)は、成績優秀なレスリング部のエリート選手、美しい恋人アレクシス(アレクサ・デミー)もいる。

厳格な父親ロナルド(スターリング・K・ブラウン)との間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。

 

そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。

そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。

徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。

 

そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。

 

一年後、心を閉ざして過ごす妹エミリー(テイラー・ラッセル)の前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルーク(ルーカス・ヘッジズ)が現れる。

 

ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。

やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。

そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る・・・。(HPより抜粋)

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監督

今作を手掛けるのは、トレイ・エドワード・シュルツ

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A24で、しかも劇中の楽曲がすごい、青春モノの映画、ってことで鑑賞しようとずいぶん前から予定していたんですが、監督が「イット・カムズ・アット・ナイト」の方と聞いて、あれ…もしかして…相性悪いかも…となりました…。

 

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 夜に襲ってくる❝それ❞の感染から逃れるために、外界から避けるように森奥出ひっそり暮らす家族の前に、別の家族が助けをもとめにやってくるんですが、彼らを招き入れた途端、あれだけ厳重にしていたドアが開いていたことで、疑惑が深まり疑心暗鬼になっていくってお話なんですね。

 

心理スリラーであると同時に、これまで孤立していた家族の前に新たな人間が加わることで安らぎを手に入れたのに、疑うことしかできない悲劇ってのが、どこか現代の分断だとか閉鎖されがちな心情とかってのを想像させた映画だったんですけど、結局人間同士の話で、病原菌どこいった?っていうのが、なんかスッキリしなくて…。

色々粗が見えてしまったのも、不満のひとつでしたね。

 

とはいえ心理描写はさすがだったので、今回もスリラーではなくドラマ色の強い心理描写をカメラに収めてくれることでしょう。

 

 

また監督は今作について、ウォン・カーウァイの「恋する惑星」のように2人のエピソードを分けたこと、「ブギーナイツ」のような音楽が重要な意味を持つ物語にしようと考えていたそう。

様々なアイディアが物語にどう及ぼすのか楽しみです。

 

 

 

キャスト

高校生のタイラー・ウィリアムズを演じるのは、ケルヴィン・ハリソン・ジュニア。

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監督の前作から抜擢された今後期待の若手俳優さん。

 

2020年は「ルース・エドガー」にも出演し、優等生と裏の顔を見せながらも、ステレオタイプに押し込められてしまう苦しさにもがく少年を熱演されてたのが印象的です。

 

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他の作品にも出演してるようで、「それでも夜は明ける」や、「エンダーのゲーム」に端役で出演、TVシリーズ「ROOTS/ルーツ」に主演、「バース・オブ・ネイション」でも印象を残す役柄で注目を浴びてきた様子。

監督の前作「イット・カムズ・アット・ナイト」でも主人公である父親の息子役で熱演されてました。

 

見た目からの笑顔や明るい表情と、涙を流した時の悲しい表情のギャップは、すごく記憶に残る俳優さんだと思います。

今後の活躍に期待ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

タイラーの妹エミリー役に、Netflixドラマ「ロスト・イン・スペース」に出演しているテイラー・ラッセル。

タイラーの父、ロナルド役に、TVシリーズ「THIS IS US」、「ザ・プレデター」、「ブラックパンサー」のスターリング・K・ブラウン。

タイラーの母、キャサリン役に、ブロードウェイミュージカル「レント」、「ハミルトン」、「ルイスと不思議の時計」のレネー・エリス・ゴールズベリー

ルーク役に、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、「ある少年の告白」のルーカス・ヘッジズ。

アレクシス役に、ジョナ・ヒル監督作「mid90s ミッドナインティーズ」の公開が控えるアレクサ・デミーなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直得意でないジャンルの楽曲が並ぶので、僕の心の琴線に触れるか少々不安なんですが、きっと誰の人生にもあり得る物語という視点で観れたらいいなと思ってます。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

寄せては返す、ではなく、引き離しては引き寄せられる、様々な愛の波。

憎悪を愛情に変換するだけで、この世界は素晴らしい。

しかし、期待値を上げずに臨んだけど、そこまでの良作とは思えなかった・・・。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色んな波が押し寄せる。

裕福な家庭に育ち、レスリング選手として将来のスター候補とされながらも、父親からのプレッシャーや様々な不運によりメンタルを削がれていく長男と、彼の大きな過ちにより失意の底に墜ちてしまった妹を包んでいく様々な愛の軌跡を、型破りなカメラワーク、豪華なプレイリスト、強みを帯びた配色、美しい風景などでデコレーションすることで、どの場面も「映え」な映画として機能し、現代に横行する様々な憎しみを浄化するかのような煌きと美しさを味わせてくれた画期的な作品でございました。

 

 

兄妹のエピソードを中心に描いてはいるものの、登場人物全てに温かな愛が漂うかと思えば、突き放すかのような憎しみが介在していた今作。

 

「WAVES」のタイトル通り、愛が寄せては返す波のようなお話だとイメージしてましたが、どちらかというと「愛だと思っていたもの」=「身勝手な押し付け」によって引き離されたかと思えば、「愛とは思ってなかったモノ」=「他者による優しさ」に引き付けられているようなお話だったのではないでしょうか。

 

アレクシスを愛していると思っていたタイラーも、タイラーに絶大な期待を寄せながら愛を注ぐお父さんも、DVという歪んだ愛を与えていたルークのお父さんも、「愛している」をはき違えた行動や言動のように思え、結果的に拒絶されてしまうわけで、押しつけがましい愛ってのはこんなにも厄介で面倒なものなのかと。

 

そのめんどくせえ感情は相手との間にあった愛を壊すきっかけとなり、タイラーは罪を犯してしまうことになってしまうわけで、いわば前半のパートは、引き寄せていた愛を引き離してしまうようなお話だったと解釈しました。

 

 

逆に妹のエミリーちゃんは、家族の中ではお兄ちゃんにばかり目をかける家父長ロナルドのせいで、どことなく存在感薄目。

家族からの愛は受けていたと思うけど、彼女的にはあまり愛されてないんじゃないかって感じが凄く伝わってましたね。

 

兄がやらかしたことで見えない存在たちから罵声を浴びせられ、学校でも周囲の目に気になり過ぎ孤立。

内向的な性格がさらに内向的になっており、自暴自棄にはなっていないものの、自分の感情を押し殺していたように見て取れます。

 

きっとルークが教室の外でぶつかってなければ、声をかけてくれなければ、あのまま青春を過ごしたことでしょう。

 

エミリーはルークの優しさや愛を注がれたことで気持ちが和らぎ、結果愛を引きつけたように思えます。

 

 

人生は波乱の連続で、いつ何が起こるかわからない。

良い時もあれば悪い時もある。

もしかしたらいい時ってのは実力なのかもしれないし、努力の賜物かもしれないし、運だったりするのかもしれない。

逆に悪い時は実力不足かもしれないし、努力が足りないからかもしれないし、運が悪いだけなのかもしれない。

ずっといい事なんてないし、ずっと悪い事なんてない。

今作のテーマである「波」のように小さな波が立ってる時もあれば、大きな波が訪れては引くときもある。

 

これからも僕らはいかなる「波」にも耐えられるように、受け止められるように、引いたとしてもくじけないような心を持ち合わせていないといけないし、時にそれらによって立ち上がれなくても、いつか来るであろう「良い波」に備えておかなくてはいけない。

 

また心も水と同じように、滞っていれば腐ってしまうわけで、波風を立たせることで潤うのも事実。

滞ってしまった時のために、在りし日の良き思い出をしっかり焼き付けることで乗り越えたいものです。

 

 

 

前衛的な作り。

話の内容に関しては、兄弟に起こる悲劇と救済のような感じでしたが、今作はお話よりもお話をどう見せるかという技術面の方が際立っていたように思えます。

 

冒頭、タイラーとアレクシスが海岸沿いをドライブしている映像が流れますが、車内での模様を360度横に回転して映す斬新なカメラワーク。

レスリング部のワークアウトも、足元からこれまたグルグル回転して映すメリーゴーランド状態。

 

他にも登場人物の表情を捉えるために、カメラを寄せたり引いたりする縦横無尽な動きをしてるし、恐らく大きな出来事や感情の起伏があるときにカメラレンズを変えて映しているのも感じられた自由奔放な撮影。

 

画角も時折変える手法もあり、特にタイラーがやらかしてしまった時の表情をおさめる為にいわゆるスマホ画面のサイズで彼を捉えたり、エミリーの至福のひと時を映す際も画角を変えることで、まるで彼女の人生の美しい瞬間をトリミングしてしまったかのような感覚を得ることができました。

 

色彩に関しても、強みを帯びた配色で全面的にカラーリングしてました。

タイラーの部屋のカーテンが太陽の光を浴びることで、濃い目の3色で映し出されていたり、その部屋に入る直前のエミリーの部屋は青ざめた壁がちらりと映ることで、彼女の心情や設定が垣間見えたり、タイラーが事件を起こしてしまった際は辺り一面が赤と青のパトランプで覆われることで、彼の混乱した状態を現し、連行された際にはタイラーの顔面にパトランプと緑色を当てることで、後悔と怒りと平静が混在した、なんともいえない心情を捉えることができます。

 

光の具合も見事で、劇中様々な木漏れ日が登場人物を照らすんですけど、海の中の神々しいタイラーとアレクシスや、夕方の公園のスプリンクラーではしゃぐエミリーとルークも多幸感に満ちていた瞬間でしたし、その際に浮かぶ虹ってのも、心を喪失していたエミリーが希望を見出した瞬間にも感じられた場面でした。

 

 

良くも悪くも「インスタ」映画。

このように監督の挑戦的でアーティスティックで前衛的で画期的で斬新な作りが、物語を盛り上げていたように思えます。

 

しかし、楽曲を先に決めてから脚本を構成したという製作過程や、こうした演出に挑戦したという心意気は買いますが、物語自体に大きな工夫や施しが無いために、単純に普通の話を劇的にしてるための「ごまかし」にしか感じられない部分が、僕の中では大部分を占めてしまったというのが、今回の感想。

 

例えていうのであれば、客足を稼ぐために、大した単価でもないのに、大した味でもないのに、家でもできちゃう程度のスイーツを、見た目重視でデコレーションして、キラキラしたものに目が無い女子たちの人気を得ようとしている、昨今のスイーツカフェ事情と瓜二つな映画にしか見えなかったのであります。

 

何が言いてえのかっていうと、見た目と中身がイコールになってないというか。

 

誰にでも起こりそうな家族の破壊的な悲劇と癒しみたいな物語を、見せ方を変えたことですごく大袈裟で劇的に仕上げてるというか。

もっと人物を深く掘る作業とかしてほしかったし、別にタイラーだけの話でもよかった気がするし(でもエミリーパートの方が好き)。

 

タイラーの抱えてたものって、演じていたケルヴィン君の前作「ルース・エドガー」と似たような、抑圧された環境で苦しみながらも期待に応えようとする、裕福な家庭にありがちの悩みだったと思うんですけど、ルースエドガーの方が、ルース君の心情を然り捉えていて物語に拍車をかけていたように思えたんですね。

そういう登場人物の抱えている辛さや苦しみみたいなものを、序盤で時間割いておけば、前半の山場がもっと重くなるのになぁと。

一体誰がタイラーをここまで追いつめてしまったのか、みたいなのを。

 

もちろん黒人というだけでアメリカで成功しづらいというアドバンテージがありながら、自身の努力と鍛錬により裕福になり大きな家を持てた実績があるから、家父長である俺がルールで俺が裁いて俺の前では好き勝手させないっていうロナルドが、タイラーを追い詰めてしまったってのは理解できるんですけども。

 

あれ、ずるいよなぁ、すねてるタイラーに俺の前でそんな態度するんじゃねえ、お前が決めて行動したことだって言っておいて、実際はお前がけしかけたんじゃねえか!って思えたもんなぁ。

ああいう親いるよなぁ。

 

 

・・・話が逸れましたが、単純にこの後どうなるんだろう、という予想もすぐできてしまいましたし、愛や感情の波は立ってましたが、お話の波は意外にも一定のリズムとテンポで起伏もそこまでなかったなぁと。

やっぱり2人を描くよりも、一人の人物の人生の波を描いた方が「WAVES」として成立してたような気がします。

 

 

最後に

途中、インスタ女子やインスタ映えを仕掛ける飲食店を小バカにするような例えをしましたが、不快にさせてしまったら申し訳ありません・・・。

自分の「好き」は、誰にも咎められるようなものではありませんものね・・・。

 

とはいえ、やっぱり好きになれない映画でした。

A24作品て、僕の中では佳作の域で留まってしまうか、それ以下の時が多くて、実は相性良くないんです…。

 

エピソード的にはね、グッとくることもあったんですよ!

しばらく会話をしてなかったお父ちゃんがエミリーと釣りに行くことで、お互い気づかされたこととか憎しみを吐き出すとことか、これまで一人で抱えていたものを吐き出して抱擁することで「愛」が磨かれていくあの瞬間。

あそこはちょっとウルっときたなぁ…。

親父にあってタイラーにないものがあの場面にはあったなぁと。

 

 

やっぱり世界は憎しみで覆われるよりも、愛と優しさで覆われたほうがいいに決まってるので、隣人を愛し、隣人を赦そう、って心構えが必要ですし、ミスチルのタガタメじゃないですけど、もしも子供たちが被害者に加害者になった時、親として兄妹としてできることは、相変わらず性懲りもなく愛すること以外ないってことで。

というだけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10