モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ウインドリバー」感想ネタバレあり解説 シンプルで奥が深くて面白い現代西部劇。

ウインド・リバー

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アメコミ映画好きからすると、MCU以外でホークアイとスカーレットウィッチが共演だなんて!あの師弟愛が再び!みたいな興奮もあるっちゃああるんですが、一旦そこは忘れて堪能したい社会派サスペンスでございます。

 

で、今回の映画は脚本家として名を上げた人の監督デビュー作品でして、彼がこれまでどんな作品を執筆してきたのかを意識してみると、なんとなくこの映画が何を伝えたいのかや演出面といった裏側が覗けるんじゃないかと。

 

早速観賞してまいりました!!!

 

作品情報

ボーダーライン」、「最後の追跡」などアメリカの地方を舞台に、我々の目に見えないアメリカの暗部を浮き彫りにし問題を投げかけ、そのテーマの奥深さから批評家達を唸らせ絶賛を受けた脚本家テイラー・シェリダン.

 

本作は雪深いネイティヴアメリカンの保留地で起きた殺人事件を背景に、現代のアメリカが抱える闇にフォーカスをあてた作品を手がけた。

 

心に傷を抱えた孤高のハンターと新人女性FBI捜査官という対照的な二人を主人公として進む物語は、荒れ果てた大地での慢性的な問題を下地に、なぜ少女だけが殺されるのかという謎を、苦難の連続にあいながらも寄り添い心を通わせながら殺人事件の真相に近づいていく。

 

スリリングな演出やアクションシーンも要所にいれることで、圧倒的な緊迫感と重みを加えたミステリー仕立てのクライムサスペンスとして完成させた。

 

今作で監督デビューした彼の評価は軒並み高評価であり、ついにはカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞する快挙を成し遂げた。

 

「ボーダーライン」、「最後の追跡」、そして今作とアメリカ西部開拓地域を舞台にした「フロンティア3部作」の最終章と位置づけした今作。 

少女殺害から浮かび上がるアメリカの闇にあなたは何を思うか。

 

あらすじ

 

なぜ、この土地(ウインド・リバー)では少女ばかりが殺されるのかーー 

 

アメリカ中西部・ワイオミング州のネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。

その深い雪に閉ざされた山岳地帯で、ネイティブアメリカンの少女の死体が見つかった。

第一発見者となった野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、血を吐いた状態で凍りついたその少女が、自らの娘エミリーの親友であるナタリー(ケルシー・アスビル)だと知って胸を締めつけられる。

 

 コリーは、部族警察長ベン(グラハム・グリーン)とともにFBIの到着を待つが、視界不良の猛吹雪に見舞われ、予定より大幅に遅れてやってきたのは新米の女性捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)ひとりだけだった。 

 

死体発見現場に案内されたジェーンは、あまりにも不可解な状況に驚く。現場から5キロ圏内には民家がひとつもなく、ナタリーはなぜか薄着で裸足だった。

 

前夜の気温は約マイナス30度。肺が凍って破裂するほどの極限の冷気を吸い込みながら、なぜナタリーは雪原を走って息絶えたのかーー

 

監察医の検死結果により、生前のナタリーが何者かから暴行を受けていたことが判明する。

彼女が犯人からの逃走中に死亡したことは明白で、殺人事件としての立件は十分可能なケースだ。

 

しかし直接的な死因はあくまで肺出血であり、法医学的には他殺と認定できない。

そのためルールの壁にぶち当たり、FBIの専門チームを呼ぶことができなくなったジェーンは、経験の乏しい自分一人で捜査を続行することを余儀なくされ、ウインド・リバー特有の地理や事情に精通したコリーに捜査への協力を求める。

 

コリーとジェーンはナタリーの父親マーティンのもとを訪ね、事件発生の夜にナタリーが恋人に会いに行っていたことを聞き出す。

心を病んだ妻とドラッグ中毒の息子を抱えるマーティンは、かけがえのない存在である愛娘の命を奪われて憔悴しきっていた。 

 

捜査を進めるコリーとジェーンは、鬱蒼とした森の中で白人男性の遺体を発見。彼の身元はナタリーの恋人のマット・レイバーン(ジョン・バーンサル)だった。

 

 

その夜、自宅にジェーンを泊めてやったコリーは、つらい過去を打ち明けた。

 

3年前に娘のエミリーを亡くしたコリーは、それが原因でネイティブアメリカンの妻と離婚し、幼い息子とも離れ離れに暮らしている。コリーの留守中に失踪を遂げたエミリーは、ナタリーと同じように自宅から遠く離れた場所で変わり果てた姿となって発見され、事件の全容は未だ不明のまま。

 

コリーはそれ以来ずっと、娘を守ってやれなかった罪悪感に苛まれ続けていた。

コリーの心の傷に触れたジェーンは、部外者の彼が献身的に捜査に協力してくれている理由を察するのだった。

コリーとジェーンはベンが応援に駆り出した若い保安官4人を引き連れ、マットの同僚たちが寝起きする山奥のトレーラーハウスに乗り込んでいく。

 

やがて不自然な言動を連発する警備員たちとジェーンらとの間に一触即発の緊張が走り、両者が一斉に拳銃を抜いて対峙する非常事態が勃発する。

 

はたして事件当夜、この人里離れたトレーラーハウスで何が起こったのか。

ウインド・リバーの静寂を切り裂く凄まじい銃声が鳴り響くなか、ついに明らかになる衝撃の真実とは……。(HPより抜粋)

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監督

今作を手がけるのはテイラー・シェリダン。

 

冒頭や作品情報でも書いたとおり、脚本家として名を上げたお方。

「ボーダーライン」然り、「最後の追跡」然り、今回も似たような内容だなぁと思ったらこれ3部作だったんですね~。

 

しかも今作は過去2作で立場的に言えるようになったから、かねてより作りたかった、アメリカ最大の失敗ともされるネイティヴアメリカンの保留地問題を題材にしたんだとか。

 

なんかこの問題に共鳴してくれる監督がいなかったから、自分がやったって仰っていますが、今後監督業は考えてないのかな?

 

どちらかというとですね、僕は最後の追跡が大好きです。

これネットフリックスでしか配信してないんですが、その年のベストにも入れました。

 

監督2作目の「モンタナの目撃者」も素晴らしい現代西部劇スリラーなので是非。

 

www.monkey1119.com

 



 

 

 

 

キャスト

 野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバートを演じるのはジェレミー・レナー。

 

冒頭でも書きましたが、「アベンジャーズ」のホークアイ役が有名ですね。

他にも「ミッション・インポッシブル」シリーズのブラント役や、「ボーン・レガシー」、傑作「メッセージ」にも出演していたのが記憶に新しいところ。

 

 

新人女性FBI捜査官、ジェーン・バナーを演じるのはエリザベス・オルセン。

 

彼女の歴史ですが、一応子役時代からお姉ちゃんにくっついて作品に出演していたそうですが、途中から学業に専念したかなんかで活動していなかったそうです。

 

その後ガチで演技の勉強を積み、カルト集団から逃げ出し姉夫婦の下で暮らし始めるも、洗脳の呪縛から逃れられない苦悩の姿をスリリングに描いた「マーサ、あるいはマーシー・メイ」で劇場映画デビューします。

 

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その後、20年間監禁された末に、突然解放された男が復讐を胸に誓うも、あまりに悲惨で悲しい末路を辿ってく韓国映画のリメイク映画「オールド・ボーイ」、日本が誇るポップアイコンが再びハリウッドで映画となって蘇った「GODZILLA」、戦後間もない時期に活躍したものの29歳の若さでこの世を去った伝説のカントリーシンガーの光と影を描いた「アイ・ソー・ザ・ライト」など大小問わずさまざまな作品で輝き続けています。

 

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そして彼女をスターダムに押し上げたのが「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」.

以降スカーレット・ウィッチ役として,ディズニー・プラスで配信されてる「ワンダヴィジョン」で主演を務めるなど、レギュラー出演を果たしています。

 

彼女のフィルモグラフィーを見てみるとですね、実は共演者の多くがMCUに出演している人たちばかりってことに気づくんですね~。

 

オールドボーイでは、主人公の男役はサノスを演じているジョシュ・ブローリン。しかも濡れ場までやってますからね~。

そしてアイ・ソー・ザライトではロキ役のトム・ヒドルストンと共演。

アベンジャーズAoUでクイックシルバー役のアーロン・テイラー=ジョンソンとは兄弟という役柄でしたが、GOZILLAでは夫婦役で共演しているややこしさ。

そして今回ホークアイ役のジェレミー・レナーとですから!!

 

なんという偶然でしょうw

今後もMCU出演者と共演を重ねていくんでしょうか。逆に貫いて欲しいなw

 

 

 

他の出演者はこんな感じ。

殺害された少女のボーイフレンド、マット役にNetflixドラマ「パニッシャー」や、「ベイビー・ドライバー」、「ザ・コンサルタント」のジョン・バーンサル

殺害された少女の父親マーティン役に、「ローンレンジャー」、Netflix映画「最後の追跡」のギル・バーミンガムなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

この広すぎる場所でどうやって殺されたのか。

その真実に近づいたときどんなアメリカの闇が浮かび上がるのか。

ここから観賞後の感想です!!!

 

感想

やっぱり映画はシンプルで奥深いのがいいよね。

またもや現代西部劇の傑作を作ってしまった監督の脚本が素晴らしい!

正にアメリカの闇だ!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

  

荒野を雪山に変えた西部劇。

ワイオミング州にあるインディアン保留地ウインドリバーで起きた一人の女性の遺体発見をきっかけに、いかにこの場所か不毛の地であり無法地帯であるということ、そして強者でなければ生き抜くことができない過酷な環境であるということや、現在でも社会問題となっていることを念頭に置きながら、2人の主要人物の置かれた状況やバックボーンを丁寧に抽出していく運び、そして突如訪れる緊張感と激しい銃撃戦といったアクション要素で飽きさせない工夫をうまく施してあり、総じてシンプルでいて奥が深く作られた良質映画でございました。

 

監督の前作「最後の追跡」でもそうでしたが、アメリカ西部地方における貧困や過酷な環境、強さこそ正義みたいな場所でのマイノリティだったり、そこで暮らすためには避けて通れないような行動を描くことで、今この場所で何が起きているかを下地にしながらうまく物語を作り上げるのが本当にうまいなぁと。

 

今作でもそれがうまく映画として完成されていたのをみると、今後この人脚本の作品は俺全部高評価にしちゃうんじゃないかってくらいな気持ちになりましたね、今作も。

 

 

物語の構造は至ってシンプル。

過去に娘を殺されたハンターと正義感の強い女性新人捜査官が、雪山の中を裸足で10キロも走って死んでしまった少女の原因を探るべく、タッグを組んで雪山の中を捜索するという流れ。

 

このウインドリバーが辺り一面何もなく警察官は6人、救急車を呼ぼうにも1時間もかかる。

しかもいつ吹雪になるかも晴れるかもわからないような天候で、時期が春だってのにマイナス20~30度の世界。

いつだって他の場所に住むことはできたのにこの地に住み着き、娯楽もなければやることもない(だからって薬かい)。

しかもそれでいいと思ってる奴らがうじゃうじゃいる。

そんな奴らがすることは羊のようなか弱い女性に暴行を働き、強さを主張することでしかないどうしようもない狼ばかりってのを、順序良く描いてる。

 

しかも遺体で見つかった少女は、冷気によって肺を痛め血で呼吸ができなくなって死んだというのが死因のため、FBIは関与できない、捜査できない、応援も呼べないという三重苦。

結果少数精鋭で捜査しなくちゃいけない。

新人女性捜査官と地元のハンターだけで。

 

 

全く立場の違う正反対の2人がタッグを組んで互いを理解し合って絆を深めていくって流れもいわゆるバディムービーとして成立しているし、こういう不利な状況で悪を追い詰めていくって設定がまた映画を面白くさせている。

しかもこのハンターってのがいわゆる西部劇でいうガンマンになっているというか。

 

さらに彼は捜査官でも保安官でもないから犯人を裁くことができないっていう立ち位置なわけで、それが最後活きてくる構造になってるんですよね。

その時のジェレミーがほんとカッコイイ。

 

 

そして西部劇でもよくあるように、こういう広い場所で何か起きた場合自衛するしかないからみんな銃を持ってるんですよね。

だから自然と力がないと生きていくことができない土地になってる。

 

で、誰かを殺したとしても警察官はこの地に6人しかいないもんだからちょっとやそっとじゃ死体なんて見つからない。

 

そして中盤と後半で行われる銃撃戦も用意されているし、ハンターである男が自分の過去との決着を今回の事件でしようとするこなど、西部劇要素も盛りだくさんなわけで。

 

 

エピソード的につらい描写もあったけれど、シンプルなのにいろんな要素が凝縮されたエンタメになってるってのが、非常に楽しかったですね。

 

 

あそここういう意味だよね。

まぁ大したことではないですが、あれこれ気づいた細かいことを。

最初ハンターのコリーが、雪山でうつぶせになって羊を襲おうとしているピューマを撃つシーンがあるんです。

彼は野性衛生局に勤めてるってことで、羊を守るためにハントをしているってわけですね。

 

で、この構図がそのまま終盤で描かれるんですよね

正にピューマが羊を襲ってる状況で、見えないとことからライフルで仕留めるという。

まぁピューマが誰で羊が誰かってのは本編をご視聴してねということで。

 

 

それとラスベガスから直行してきたFBI捜査官であるジェーン。

こんな寒い場所だなんて想定しておらず、薄着で来てしまってるんですね。

 

だからコリーの義理の父親の家で防寒着を切るんですが、この防寒着がコリーの死んだ娘のもの。

 

この服を着ることで、ジェーンがコリーの娘の代わりとして見せてるんですね。

だからコリーは終盤ジェーンを守るって行動に結び付くんじゃないかと。

 

守ることができなかった娘への思いを、ジェーンを守ることで補うというか、過去から脱却するというか。

そんな伏線になっていたんじゃないかと。

 

 

あとは銃撃戦ですよね。

これが凄い。

 

殺された少女の弟を探しに、あるトレーラーハウスへ行くとラリッてるやつが戸を開けて登場。

催涙スプレーをかけてジェーンにダメージを与えるんですが、ここから一気に緊張感が高まります。

 

部屋の中に入り、奥の廊下を歩くとスプレーを巻いた奴がライフルでスドンと反撃。

ジェーンは普通の銃なんですけど、向こうはライフルなんですよね。

このライフルの音がでかいでかい!

うわ、銃の音こんなに大きいのかよと。

 

 

で、終盤がガチの銃撃戦。

 

掘削現場の作業員たちに少女の恋人の家を案内してもらう道中、ある作業員がちょっとした墓穴を堀るんですね。

すると作業員たちがいつしかジェーンたちを囲むような歩き方をしている。

それに気付く警備員が急に気を高めて一触即発の状態に。

 

このあとジェーンがドアの前に立ってノックをし続けるんだけど、中にいるはずの同居人が出てこない。

すると警察官の無線にコリーから連絡が。

警察官はジェーンに大声でドアから離れろと警告します。

 

そこから一気に銃撃戦。

ドアの向こうからライフルでジェーンをズドンとしたあと、作業員対警備員の乱れ撃ち。

 

おいおいこんなのみんな即死じゃねえか、と思ったら一応防弾チョッキ着ていたみたいで。

ジェーンは何とか生きながらえるんですが、警備員たちは即死。

 

ジェーンピンチ!と思ったら遠くの方からどんどん作業員を撃ち落とす銃弾が!

 

コリーが遠くから作業員を仕留めてるんですね。

ガンガン仕留めます。

無敵です。無双です。

 

作業員たちはどこから狙ってきてるか把握できないんだけど、どんどん撃たれます。

しかもライフルだからすげ~吹っ飛ぶんですね。

あれ、こんな映画だと思ってなかった。

 

 

このように一気に緊張感が高まりドンパチしていく展開がまぁ最高で。

 

最後はこういう意味って話ではないですが、僕が唸ったシーンということで書いてみました。

 

最後に

この映画で伝えたいことは、ネイティヴアメリカンがこういう無法地帯な場所で暮らすことにアメリカ政府は何も対応してくれないということ、そしてその無法地帯で力の弱い女性が餌食にされてしまっていること。

 

これも政府は何も対応していない。

しかもエンディングで明らかになりますが、不明者のデータを調べていないという事実。

 

常に恐怖と悲しみを抱えながら生きている彼ら。

そんな場所に追いやった彼らにも目を向けてほしい、と監督は強く願った映画だったのではないでしょうか。

 

 

他にもですね、ジェレミーレナ―がめっちゃいい演技します。

 

獲物を狙う姿や犯人を追い込むときは強く鋭く、ジェーンを誘導する姿は父親にも似た逞しさ、そして自分の過去を明かすときは、目からこぼれない程度の涙を浮かべて語り、悲しさと繊細さを魅せ、最後にはそっと心に寄り添うようなほほ笑みと優しさを浮かべる。

 

あれ?ジェレミーでこんなに心動かされるの初めてかも!

ベストアクトなんじゃないのこれ!?

 

ぜひこの映画を見てゾクゾクしてほしいと思います。

ホラーとか表面的なゾクゾクではなく、描かれている内容でゾクゾクしてほしい。

しかも雪山が舞台ですから。

 

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10