海賊とよばれた男
ワンピース、パイレーツオブカリビアンに告ぐ海賊の代名詞になるのでしょうか。
つったって、モロに海賊の話ではないと思いますけども。
ガソリンスタンドでお馴染みの出光を作った人をモデルにしたお話だそうです。
一人の男が如何にして一大企業を築き上げていくのか。
きっと岡田くんがやってくれることでしょう。
ただ「永遠の0」のような感動を押し付けるようなものになってるんでしょうけど・・・。
というわけで、今回試写会で鑑賞してまいりました!
作品紹介
原作
原作は、瞬く間に大ヒットした「永遠の0」で小説家デビューをした百田尚樹の「海賊とよばれた男」。
今作もベストセラーとなっており、2013年には「本屋大賞」も受賞しています。
コミックにもなっているようです。
海賊とよばれた男 コミックセット (イブニングKC) [マーケットプレイスセット]
- 作者: 須本壮一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/06/23
- メディア: コミック
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あらすじ
主要燃料が石炭だった当時から、石油の将来性を予感していた若き日の国岡鐵造(岡田准一)は、北九州・門司で石油業に乗り出すが、その前には国内の販売業者、欧米の石油会社(石油メジャー)など、常に様々な壁が立ち塞がり、行く手を阻んだ。
しかし、鐵造はどんな絶望的な状況でも決して諦めず、それまでの常識を覆す奇想天外な発想と、型破りな行動力、何よりも自らの店員(=部下)を大切にするその愛情で、新たな道を切り拓いていった。
その鐵造の姿は、敗戦後の日本において更なる逆風にさらされても変わることはなかった。そしてついに、敗戦の悲嘆にくれる日本人の大きな衝撃を与える“事件”が発生する。
石油メジャーから敵視され圧倒的な包囲網によりすべての石油輸入ルートを封鎖された国岡鐵造が、唯一保有する石油タンカー「日承丸」を、秘密裏にイランに派遣するという“狂気”の行動に打って出たのだ。
イランの石油を直接輸入することは、イランを牛耳るイギリスを完全に敵に回すこと。しかし、イギリスの圧力により貧困にあえぐイランの現状と自らを重ね合わせた鐵造は、店員の反対を押し切り、石油メジャーとの最大の戦いに挑む。
果たして、日承丸は英国艦隊の目をかいくぐり、無事に日本に帰還することができるのか?
そして、国岡鐵造は、なぜ“海賊”とよばれたのか?その答えが、明らかになる――。(HPより抜粋)
監督
監督は山崎貴。
原作×監督×主演と今回同様のタッグで「永遠の0」を作り上げ、大ヒットを記録したのが3年前。今回もまた同じように年末興行を盛り上げる1作となるのでしょうか。
個人的にはこの人の作品で、よかったと思うことなどほとんどありません。
VFX技術なら国内1,2を競う腕を持ってるとは思いますが、作品性を問われると「?」なところばかり。
とにかく感動を押し付けてくるあの演出にうんざりです。
とはいえ、日本映画で数々の賞を取り、数々のヒット作を世に送り出したことは、紛れもない事実。
そんな彼がどんな作品を手掛けてきたのかというと、
少年たちと未知のロボットとの交流を描いたSFファンタジー「ジュブナイル」で映画監督デビュー。
その後、昭和30年代の東京下町を舞台に、個性豊かな人たちの心温まる人情物語を、監督お得意のVFXにより当時の街並みをリアルに再現したことでも話題を呼び3作作られた「ALWAYS 三丁目の夕日」や、
実写化不可能とされてきた国民的アニメ「宇宙戦艦ヤマト」を、これまたVFXを駆使したことで壮大なスケールで描くことに成功し、また木村拓哉を主演に迎えたことでも話題となった「SPACE BATTLESHIP ヤマト」、
あの「ドラえもん」を3DCGで描き、数あるエピソードの中でも、一番泣けるといわれた「さようならドラえもん」を脚本に取り入れ、「ドラ泣き」のキャッチコピーで日本国民を泣かせた「STAND BY ME ドラえもん」などどれも大ヒットした作品ばかり手掛けてきています。
監督作品で個人的に好きなのは「寄生獣」でしょうか。
色々不満は多いものの、まだ大作映画の主役には時期尚早だった染谷将太を抜擢し、重傷を負うまでとその後の演技の変化で観衆を魅了し、橋本愛の貴重なベッドシーンも拝め、万人受けするようホラー要素をなるべくそぎ落としたこと、など演技面やストーリー性、CG描写やバトル要素などなど総合的に見れば個人的に好感触でありました。
前編での、母が寄生され最後に戦わなくてはいけなくなる部分は特によかったと思います。
こちらもどうぞ。
キャスト
主演の国岡鐵造を演じるのはアイドルグループ「V6」のメンバーである岡田准一。
岡田君の作品を見るのは、「SP THE MOTION PICTURE」以来です。
個人的には彼がアクションをやらないと見ない傾向にあります。
TVドラマのほうが印象が強くて、彼が映画に出るというイメージがあまり無いからなのかもしれません。
やっぱり彼は「木更津キャッツアイ」のぶっさんで「タイガー&ドラゴン」の竜二なんだよなぁ。
演技面では高倉健をリスペクトしてることもあり、今後もヒューマンものだったり時代劇などに積極的に出るんでしょうね。だったら是非やくざ映画やってくんねぇかな。無理かw
そんな岡田君がこれまでどんな作品に出たかというと、グループで出演した「COSMIC RESCUE」や「ハードラックヒーロー」を経て、人気テレビドラマの映画化「木更津キャッツアイ日本シリーズ ワールドシリーズ」で役者としてのキャリアを積んでいきます。
その後役者としてひと皮向けるきっかけとなった作品で、父の仇討ちのため江戸へ出てきた侍が、個性豊かな人たちと触れ合うことで成長していく姿をユーモアを織り交ぜ描いた「花よりもなほ」で日刊スポーツ映画大賞石原裕次郎新人賞を受賞。
そこからは映画を中心に役者活動をしていき、劇団ひとり原作の小説を映画化した「陰日向に咲く」、要人警護にあたるSPたちの活躍を描いた人気ドラマの映画化「SP MOTION CAPTURE」、
有川浩の人気小説を実写化し、メディアへの取締りを法制化した架空の日本を舞台に、本の自由守る図書隊たちの政府との攻防を描いた「図書館戦争」など人気作に立て続けに出演しています。
そして、監督との前タッグ作「永遠の0」と、切腹を命じられた主人公と、男を監視する役目の若侍が、事件の真相や主人公の崇高な生き様を描いた「蜩ノ記」で、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞と最優秀助演男優賞のダブル受賞を果たしました。
ダブル受賞は初めてのことだそうで、ジャニーズとして受賞したのも彼が初めての快挙だそうです。
太平洋戦争で零戦パイロットとして命を絶ったという、血縁上の祖父の存在を知った青年。口をそろえて臆病者だったと語る生き残ったかつての戦友。天才的な操縦技術を持ちながらも、生きて帰ることに執着した祖父はなぜしたのか。腰抜けのレッテルの貼られた祖父に憤りを感じつつも腑に落ちない、真実の見えないまま最後の人物にたどり着いた青年は、思いがけない真実を耳にする。
現代と戦時中のエピソードを行き来することで徐々に宮部久蔵の人物像が浮き彫りになって行く展開と、VFXを使ったことで戦争のシーンをリアルに再現したのも重なり、戦争について、命について今一度向き合う作品となっています。
とはいえ、ブルーシート越しに見えるであろう敵機を想像して演技して(CGだからしょうがないけどさ)、なんて無茶な芝居をする山崎監督だけに見る側のことを全く考えないやり方に残念で仕方なかったですね。
起伏のない単調な運び、全編通して締りのない重々しさ、とにかく必死に泣かせようとする過剰な演出などなど、とにかくこうしたら感動するんだろ?という手法に、劇場でなくテレビでよかった、CMはさんでくれてありがとうと思ったのは私だけではないはず。
そんながっかりな作品でしたが、やはり主役に抜擢された岡田君の迫真の演技はよかったとます。演技に緩急をつけることで宮部久蔵のあらゆる面を感じることができたし、孫を演じた三浦春馬と同じ感情を持つことができた、心にくる演技だったのではないでしょうか。
他の作品もどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
国岡商店の店員・東雲忠司役には「ALWAYS 三丁目の夕日」で監督の作品に出演した吉岡秀隆、
同じく国岡商店の店員・長谷部喜雄役を、「寄生獣」をはじめ数々の監督作品に出演経験のある染谷将太、
英語が堪能な国岡商店の店員・武知甲太郎役を、「HK 変体仮面」の鈴木亮平、
日承丸の船長・盛田辰郎役を、「ALWAYS 三丁目の夕日」に出演していた堤真一、
鐵造の最初の妻・ユキ役には、「本能寺ホテル」の公開が控えている綾瀬はるか、
国岡商店店員たちのまとめ役・甲賀治作役を「続・深夜食堂」が公開中の小林薫が演じています。
というわけで、「永遠の0」の時同様、がっぽり儲けます!賞もいっぱいもらいます!なんて下心が見えそうな気もするし、低い期待値でのぞんだ試写会。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
こんな男がトップにいたら仕事楽しいだろな。
でも、まぁ~お行儀のいい映画だこと!!(皮肉)
以下、核心に触れずネタバレします。
石油にすべてをかけた男の生き様をとことん見せつけられた作品でした。
馴れ合いでつながっている業界の歯車をぶち壊すべく、いいモノを安く提供し、つまらない枠組みを取っ払うことで業界をのし上がる、その荒々しいやり口で領域を侵していくことから、周りは彼を海賊と呼び、後に日本から世界の海原を駆け巡る、男の浪漫があふれた映画だったわけです。
その熱意が戦後の日本を強く逞しく変化していったといっても過言ではないでしょう。今こうして平和に暮らしているのも、彼のような国を思う人が頑張ったからこそなんでしょうね。
この作品を見て、じゃあ俺も!と明日への活力となる人も少なくないんじゃないでしょうか。それだけ熱いモノがあったと思います。
でもですね、仕事に情熱を注げないような私にとっては苦痛の2時間半でしたよ。
もちろん映画的に見てもそうだし、あまりに頑張って仕事している人たちを見せつけられて、これ以上何を頑張れってんだよ!とも感じてしまったり。
まぁ裏を返せば昔の人たちも安月給で社畜として頑張ってたんだよ、なんて肩を叩いて、ま、頑張ろうぜ、って励まされてる感じもしなくもない。
この辺は好みというか、今自分が仕事にどれだけ向き合っているかによって評価が変わってくるんじゃないでしょうか。
私はもちろん好みではなかった、ということです。
この好みでないという理由は映画的にもあって、原作未読での鑑賞であったものの、上下巻という大作を2時間半でおさめようとしたのはやはり無理があったように思えました。
その原作の長さゆえ、各エピソードが薄っぺらい。
全てを詰めようとしたのが見え見えでどうにもノッてこない。
どこを一番盛り上げようと考えたのかも全くわからずおいしいところをちょこちょこ入れた感じ。
戦後を迎えた日本と、戦前の活気あふれる日本という時系列を交互に描くことで、鐵造の仕事に対する情熱や、店員たちを家族のように愛情を注ぐといった人物像を積み上げていきながら物語は展開していくわけですが、確実に鐵造以外の人物に尺が足りない。
だから、ほかの人物が何をどうしようがグッと来ない。
会話の端々に出てくる上海でメジャーと渡り合った件がなければ、ハセのすごさがわからないし、その後の彼の末路に何も感情が沸かない。
綾瀬はるかとの夫婦のエピソードも短すぎる。
イランの人々を救ったとかそんなシーン出てこないから伝わらない。
一番わからないのは、鐵造があそこまでがんばる原因は何なのか。
原動力はどこから来るのか。
根っこの部分を少しでも見せてくれたらよかったです。
この戦前と戦後の時系列を行き来したのはきっと、戦後で迎えた危機が過去にもあって、それを乗り越えたんだから、鐵造は負けない!みたいなことが理由な気がするんだけど、それを繰り返しやったあげく、エピソード終盤、打開策を見出しいざ!ってとこで数年後...テロップ
ってこら!
なぜそこを飛ばすんだよ!!
これは腹が立ちました。
こんなことが延々続き、パターン化し、盛り上がりにも欠け、生ぬるい感じで進んでいく。
でもって音楽がエンニオ・モルコーネの「ニューシネマパラダイス」のテーマ曲を彷彿とさせる、郷愁感漂うBGMがいらんところまで使いまわされ、挙句の果てには国岡商店社歌をみんなで歌うという。なんだこのごり押し感は!?
そして何よりむず痒かったのは、全員が超前向きだということ。
これにはまいりました。
監督の映画、思い返してみると全員クソまじめすぎて人間味がない。
だから皆演技が嘘くさく見える。これずっと思ってました。
せめて一人でもいいのでこの世界観をぶち壊すような人間臭い、そんでもって何かしら足を引っ張るようなやつがいたらいいんですけど一人も出てこない。
今回も弱音や愚痴を吐く人はいるんですけど、すぐ立ち直る。
葛藤ほぼなし。
鐵造もじゃあどうしよう、こうしよう!と即断即決がモットーな故、へこたれてもすぐ「ここで終わりやないっ!」と、すぐ立ち上がる。
うん、そのバイタリティわけてください。
作品の内容に関しての不満はこんなところでしょうか。
で、役者たちはどうかというと演技派がそろってるので下手な奴など一人もいませんでしたが、岡田君が一人で20代から60歳、果ては96歳までやる意味はあったのでしょうか。
一応ライバルは、石統という国内の石油を牛耳ってるところのボスである國村隼なんです。
たぶん同年代という設定なんでしょうけど、見た目が特殊メイクをした岡田君より明らかに年上であり、非常に不自然に見えました。
何より話の半分以上が60歳の時の鐵造なので何のための岡田君起用なのかもわからず。
他にも鐵造57歳時のハセ(染谷将太)があまりにも若すぎる。
小林薫に至っては鐵造より年上の設定だけど元気すぎる。
何歳差なんだろ。
このあたりの実年齢と役柄の年齢に無理があって、少々きつかったですね。
大体岡田君のメイクが宍戸錠に見えて仕方なくてw
中肉中背しかも恰幅のいい感じにしたと思うんだけど、そこから頭が離れない。
あとは通訳を通してGHQと会話することね。
さんざん通訳通して会話したのに最後字幕が出て話が進むという何ともシュールな演出。
通訳ムダ!
というような残念な感想になってしましました。
で、この映画見て思ったのが「半沢直樹」に似てるなぁと。
あのドラマ、クソまじめな人たち、解説テロップ何でもアリの演出、ひたすら繰り返し流れるBGM、幾度となく訪れるピンチ、と共通点が多いなぁと。
唯一違うのは爽快感溢れるピンチの脱出。
この要素を加えて、解説とかガンガン入れて、でもって若いころの鐵造をそのまま岡田君にやってもらって60歳の役を別の人にやってもらう2部作構成のほうがおもしろい気がしました。
もう映画になってないかもしれないけど、面白さで言ったらこっちのほうが断然おもしろいよなぁと。一理あると思うんですけど。どうですかね。
主旨がずれてるかな。
長々と不満な点をあーだこーだ言いましたが、ぜひともこのブログを訪れてしまった岡田君ファンの方々お手柔らかに。
彼に関しては批判してませんのでwそれ以前に作品自体がアカンと。
まずは何を軸に置くかを考えてから作ってほしかったですね。
あれもこれもって足したら味気ないに決まってるでしょ。
監督は一回VFXやらないで真剣に映画を撮ることを考えてみたらいいと思います。
一番最後のタイトルで締めるやつ、個人的にはあれが一番ひどいと思った。
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10