28年後…
コロナウィルスによってかつてない生活を余儀なくされた私たち。
政府による制限と解除を繰り返し、ワクチンを投与しながらなんとか未曽有の危機から脱出を果たせたわけですが、とある映画の世界では「まだ終わっていなかった」わけで…。
「トレインスポッティング」以降敬愛してやまないダニー・ボイルと、「シビル・ウォー」のアレックス・ガーランドが手掛けた「28日後…」の続編にあたる作品が、今回鑑賞する映画。
主人公ジムが突如目覚めるとそこは「パンデミックから28日後」だったことや、レイジウィルスによって「ゾンビではなく人間の状態」で襲い掛かってくる斬新な設定に面白さを見出した人も多かったことでしょう。
あれから28年後、え!?まだ生きてたの!?しかもどっちも!?と思った人も多いはず。
何故まだ生き延びているのか、そして未だ希望は見えないのか。
様々な展開が予想されるでしょうし、未曽有の危機を乗り越えた僕らだからこそ、想像すると怖い世界が映っているのかもしれません。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「スラムドッグ$ミリオネア」「イエスタデイ」のダニー・ボイルが監督、「エクスマキナ」「シビル・ウォー:アメリカ最後の日」のアレックス・ガーランドが脚本を手掛けたポストアポカリプス・ホラー「28日後…」、「28週後…」の続編。
第1作から28年後のロンドンを舞台に、感染者から逃れ孤島で身をひそめながら暮らす父子が、生き抜くための命がけの闘いをする姿を、規格外の恐ろしさと不気味さ、そして続編へと続く謎を明かしながら、未曽有の危機を経験した我々が「もしかしたら起こったかもしれない世界」を想像させるサバイバルホラー。
監督のダニー・ボイルと脚本のアレックス・ガーランドは本作について「世代ごとで出来事に対する記憶や思い入れに差がある」ことをテーマに描いた。
パンデミック後に誕生した息子が、経験豊富な父親から「生きる術」を学びながら描かれる本作には、そうした二人の「ただ幸せになりたい」と願う家族を映し出す。
主人公ジェイミー役には、「キック・アス」「クレイヴン・ザ・ハンター」のアーロン・テイラー=ジョンソンが担当。
ジェイミーの妻・アイラ役には、「最後の決闘裁判」、「ザ・バイクライダーズ」のジョディ・カマー。
感染を逃れて生存しているケルソン博士役には、「教皇選挙」のレイフ・ファインズ。
他にも、「罪人たち」のジャック・オコンネル、「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」のエリン・ケリーマンなどが出演する。
本作は3部作構想となっており、次回作はガーランド脚本で本作の続編が2026年に公開予定とのこと。
続編には第1作目で主人公を演じたキリアン・マーフィーが同じ役で出演することもアナウンスされており、そういった意味でも本作は見逃すことができない。
ある任務のために孤島を離れた父子は無事生還することができるのだろうか。
そして、進化した感染者とは。
あらすじ
感染を逃れたわずかな<人間たち>は、ウイルスが蔓延した本土から離れ、孤島に身を潜めている。
対岸の本土にいる感染者から身を守るため、島の人々は見張り台を建て、武器を備え、コミュニティの中の厳しいルールに従って“安全に”生活している。そこに暮らす家族が、ある任務を実行するために島を出て本土に向かおうとしている。
父親のジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と息子のスパイク(アルフィー・ウィリアムズ)だ。
「その子にはまだ早い」と言う人々の忠告に対し、ジェイミーは「大丈夫だ」と島民を説得し、2人は頑丈な門の外に出る。
本土と島をつなぐのは一本の土手道だけ。
そして、島を離れて本土に行けば、誰も救助には来ない——。
美しく、緑豊かな大自然が広がる本土だが、感染者はどこに潜んでいるか分からない。
弓矢を構えて森を抜ける2人の前に、変わり果てた姿の<感染者たち>が現れる。
人間の頭蓋骨が積み上げられた塔。
人間が、人間ではなくなっている世界——。
そんな世界で2人は、驚くべきことに感染を逃れて生きている人間=ケルソン博士(レイフ・ファインズ)に出会う。
彼は語る「感染者は進化している、もう別物だ。」と。(HPより抜粋)
感想
#28年後… 鑑賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) June 20, 2025
忘れるな、人は必ず死ぬ。
隔離された英国内で生存するため成長していくスパイク少年の姿を映す新章。
ダニーボイルの映画はいつも音楽がいい。そして容赦なく悲惨な描写を見せたかと思ったら突然ふざける。なんだ、あの最後は。
なめてんのか。 pic.twitter.com/ZSM55WECf9
あれから28年。
感染者から逃れるため、そして生き抜くため、掟を守る民の中、思春期の少年は成長を遂げる。
ダニーボイル節が炸裂する気味の悪い演出とロックの融合。
ここに満足しながらも、最後はなんなんだ。
以下、ネタバレします。
ざっくりあらすじ。
冒頭、テレタビーズを見る子どもたち。
しかしなぜか脅えながらTVを見つめている。
大人たちは子どもたちに部屋から一歩も出るなと忠告。
物音が聞こえなくなった途端、感染者たちが子供たちを襲い始める。
ある少年は、「逃げて」という母親の声に戸惑いながらも、父のいる教会へ一目散で逃げる。
父は十字架の前で祈りを捧げていた。
父は「これは救いだ」と言い、息子に十字架を渡して隠れるよう促す。
感染者に襲われた父もまた、感染者になっていく。
大陸内での感染爆発をふせぐことはできたが、英国は隔離されていた。
見捨てられた生存者たちは、満潮時は渡ることができない孤島でコミュニティを形成し、衰退した文明ながらもそれなりの幸せを噛みしめながら暮らしていた。
ある朝、ジェイミーは息子のジェイクを起こし、支度をするよう促す。
今日はスパイクにとって、一人前の男になるための日だった。
病に冒され寝たきりの母アイラに「学校に行く」と嘘をつき、父と共に島民に歓迎されながら、干潮時にしか渡れない1本道を歩く父子。
そう、これはスパイクが一人で感染者と戦える術を身につけるための通過儀礼だった。
ジェイミーは時折優しい父の姿を見せながらも、感染者を殺す際は厳しく教える。
これまで弓矢の訓練をしてきたスパイクだったが、いざ目の前にすると足がすくむ。
地べたを這いずり回って移動する「スローロー」なる割とイージーな感染者の首めがめけて矢を命中させたスパイクに、父は満足げだった。
小屋を見つけ、持って帰れそうな物資があるか確かめていると、宙づりのまま感染した男性を発見する。
体には「ジミー」という名が刻まれ、顔は袋で覆われていた。
ジェイミーはすかさずスパイクに「殺せ」と命じる。
慣れれば殺すことが楽になる、割り切らなければ自分が感染者になってしまう。
だからこそジェイミーは、躊躇することなく仕留めろと忠告する。
森の中を散策すると、鹿の大移動や広大な野原に目を奪われる。
しかし丘の上には進化した感染者「アルファ」がじっと立っていた。
普通の感染者よりも凶暴な彼らに見つかってしまった父子は、煙突のある小屋の屋根裏部屋に隠れることで難を逃れる。
矢を使い切った父子は、干潮になる時間を待ちながら、アルファたちの様子を伺う。
夢を見ていたスパイクは突然ジェイミーに起こされる。
動物の移動の振動によって建物が崩れる一歩手前だった。
アルファたちが再び襲い掛かる前に、急いで孤島に向かう父子。
すると後ろからアルファが一体猛追してくる。
躓きながらも急いで島へ向かう父子は、ホイッスルで監視担当に合図を送り、ギリギリのところで島へと戻ることに成功する。
一人前になって帰還したスパイクを歓迎するため、島内はお祭りムード一色。
自慢の息子の武勇伝を盛って語るジェイミーの姿に、困惑するスパイク。
酒に酔って外に出たスパイクは、父親が人妻との逢瀬をしている姿を見て愕然とする。
家に帰ったスパイクは、母アイラの看病をしていたおじさんから、本土で孤独に暮らす医者の話を聞く。
本土で見たのろしは彼が行っていたことを知ったスパイクは、父ジェイミーにも同じ話を聞く。
ただの変態だとしか語らない父に対し、病の母親をほったらかしにして人妻と遊んでいる親父よりマシだと反発。
殴られたスパイクは母の部屋にこもり、ジェイミーに「母さんに近寄るな」と反抗するのだった。
意を決したスパイクは、母アイラを連れて島を離れ本土へ向かうことを決心。
小屋を燃やし、島民の気を引かせた隙に脱出した二人は、野宿の際にスローローに襲われそうになったり、巡視船が沈没したせいで本土に不時着し一人になってしまった兵士エリックと合流し、感染者と戦ったりしながらkルソン博士のいる場所へ向かう。
道中、先を歩くアイラがボロボロになった列車の中に逃げると、そこには女性の感染者が叫んでいた。
なんと彼女は身ごもっていたのだ。
アイラは急いで股に手を伸ばし、生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえる。
エリックは感染者の子供だと叫びこちらに銃を向ける。
感染者の母親を銃殺し暴走を止めないエリックだったが、やってきたアルファに首根っこごと引きちぎられ瞬殺。
追いかけてくるアルファから逃げるスパイクは、寸でのところでケルソンに助けられる。
体中にラードを塗って感染避けをしていたケルソンは、赤ん坊を抱いたアイラとスパイクを自分の住処へ案内する。
そこは死んだ者たちの骨で作られた柱や、頭蓋骨を積み立てた塔が並んでいた。
ケルソンは「メメント・モリ」というラテン語で「死を想え」という言葉をスパイクに教える。
生存者であろうが、感染者だろうが、誰もに「死」が訪れる。
そのことを忘れてはならないという意味を込めて、この慰霊碑を立てたと語る。
その日の夜、アイラの病状を診たケルソンは、彼女がガンに冒されており、治す術はないとスパイクに告げる。
泣き崩れるスパイクを麻酔で落ち着かせ、赤ん坊を渡したアイラは全てを悟って、死を受け入れる。
やがて焼却炉で骨となった母親の頭蓋骨を慰霊碑のテッペンに飾るスパイク。
一回りも二回りも大きくなったスパイクは、赤ん坊を孤島に預け、一人本土で暮らすことを決意する。
・・・というのが本作のざっくりしたあらすじです。
メメント・モリ
ガーランドの前作「シビル・ウォー」でもポストアポカリプス的ポリティカルサスペンスアクションだったわけですが、本作と違うのは少年を主人公にすることで、この「戦わなければ生き残れない」状況下の中でも、人の死を想いながら暮らすことの重要性を見せる物語性は、シビル・ウォーとはまた一味違う清々しさがあった作品でした。
また、第1作目の「28日後…」では、旅の果てに疑似家族となっていく姿をうつしだしていましたが、本作では両親を思うあまり、思春期ならではの反抗や葛藤、そして成長を映していく物語になっており、スパイクが少しずつ逞しくなっていく姿に感情移入させられる作品だったのではないでしょうか。
ダニー・ボイル監督作ということで、一体どんなバイオレンスとそれに合わせた音楽で魅了してくれるのだろうとワクワクして臨んだわけですが、相変わらず悪趣味な冒頭が最高です。
テレタビーズ(多分録画したもの?)って割とほのぼのしたキャラの番組だと思うんですけど、それを見ている子供たちがちっとも楽しそうじゃない冒頭。
それもそのはず、家の下ではお父さんやお母さんたちが感染者たちとバトってたわけで、ほのぼのした子供向け番組を見tル場合じゃないってのは子どもたちも肌で感じているのが見て取れるわけです。
もちろんそんな子供たちも残念なことに感染者に噛まれ、テレタビーズが映るブラウン管に血しぶきが飛び散るという何とも悪趣味な演出。
噛まれる所を直接見せはしないモノの、なんて最悪な演出だと開いた口が塞がりません。
今回感染者たちも進化したということで、2種類の感染者たちが登場。
1つはスローローと呼んでいる感染者で、基本的には匍匐前進で移動し、ミミズなんかを啜って食べているキャラ。
見た目はガーディアンズオブギャラクシーのドラッグスのような太った人たちで、あまりの動きの鈍さ故狙うには格好の餌食として登場します。
這いつくばって移動するから体は泥だらけで緑ががっており、粘液がべっとりついてるからまぁ気持ち悪い。
まるで太ったナメクジです。
そんな奴に野宿の際、ゆっくりスパイクに近づき首を噛まれそうになるシーンはゾクゾクすることでしょう。
そしてもう一体、アルファと呼ばれる感染者。
普通の感染者とは違い腕力が並外れていて、体も分厚い。
弓矢を12本刺されてもビクともしない固い体ですし、鹿も人間も首を掴んだら脊髄まで引っこ抜くほどの剛腕。
ケルソンも麻酔で眠らせないと近寄れないくらい、危険な感染者として登場します。
普通の感染者たちも、基本人間と同じく食わないと生きていけないわけで、パンデミック時の様な格好ではなく、衣服はボロボロでガリガリ。
追いかけてくる速度も1作目より明らかに遅いことが窺えます。
そんな感染者たちを弓矢や銃で仕留める度に血が飛び散ったり、死体をがっつく感染者たちの姿を生々しく描いているあたりは、第1作目よりハードな描写だったのではないでしょうか。
また序盤では、イギリスの行軍が行進したり弓を一斉に放つかつての戦争の姿を重ねながら孤島で暮らす子どもたちを映していました。
「ブーツ」呼ばれる詩が朗読されながら映るそのシーンでは、まるで今も昔も「生き抜くためには思考を停止させて戦う兵士を作り上げるしかない」といってるかのような描写で、男は戦う術を学び、女は農業をはじめとしたサポートをするための学びを受けていて、子供たちに考える余地を与えずに大人たちが手引きしているようにも思えて不気味でした。
音楽もYoung FathersのノイジーなEDMが炸裂。
ネイチャーホラーとも村ホラーとも呼べる本作を見事に盛り立てており、特にサントラの2曲目の「Lowly」は、デヴィッドボウイぽさがありながら、モータウンビートに乗せて歌われたいかにもイギリスっぽいロック調の曲で、個人的にはお気に入りです。
もちろんラストでは第1作目のオープニングでも起用されたJohn Murphyの「in the house」が流れるので、おさらいして臨んだ人ならテンションが上がることでしょう。
あのラウドでグランジでノイジーなギターサウンドが、本作での「逃げることしかできない切迫感」を煽る手伝いをしてくれますし、この曲がどんなシチュエーションで流れるか楽しみにしてほしいと思います。
最後に
孤島に一度戻ってもう一度本土へ向かう、ってのが面倒な展開だなと思ったし、島の掟を破ってでもジェイミーは本土へ向かうようなシーンがなかったことはちょっと悲しかったかな。
ちゃんと親子3人の姿をもっと見せればよかったのにと。
とにかく基本的には「褒め」なんですけど、どうしてもラストが解せない・・・。
冒頭、一人十字架を持って隠れていた少年の名前はジミー。
スパイクが彷徨う本土でも、どこかしらに「ジミー」の名が刻まれています。
そう、序盤で宙づりになっていた男性の体にも彼の名前が刻まれてましたよね。
そのジミーがラストに登場するわけですが、紫の女王下のジャージを着て、沢山アクセサリーをつけたギャングっぽい格好で登場し、襲われるスパイクを助けるわけです。
別にそれは良いんですけど、このジミーの仲間があらゆる色で分けられた、それこそヒーロー戦隊のような色わけで現れ、感染者たちをノリノリでやっつけるんですよね・・・。
は?急にタランティーノみたいな、いや、何というかこれまでのシリアス路線を台無しにするかのような際立ったくキャラの登場に、僕は思わず「なめてんのか」と。
本作は3部作構想で、既に次回作が来年公開されることが決まっている、ということは、本作のラストはきっとそれに繋がるような閉じ方になるんだろうと予測はしていたわけですが、なんだこれはと。
僕の中で割りと良い内容と思えただけに、がらりとテイストが変わって困惑どころか、それなりの怒りが沸きましたw
とにかくジミーは、スパイクとは違う成長をしていて、死を想うようなことはせず、親の敵討ちの如く感染者たちを殺してきたんでしょう。
続編はそんなジミーとスパイクが対峙する展開になるんでんしょうか。
まぁ、監督がダニー・ボイルじゃなくなるらしいんで、そこまで期待してませんがw
とにかく、やたらシリアスで分かりやすい物語だったので、楽しいことは楽しかったです。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10