イコライザー THE FINAL
弱きを助け強きをくじく男ロバート・マッコールの物語が、いよいよ最終章を迎えます。
なめてた相手が実はめちゃめちゃ強かったタイプの映画は多々ありますが、マッコールはホント強い。
というか、落差がすごいw
1ではホームセンターの従業員、2ではタクシー運転手と職を変えながら、安らぎを求めているものの、結局は誰かを助けたい思いに駆られ行動に移すというプロットから、今世の中に必要なのはこういう人だと思うばかりであります。
また、昨今のアクション大作映画を主演を張るのはトム・クルーズ(ミッション・インポッシブル:デッド・レコニングPART ONE)やジェイソン・ステイサム(MEG ザ・モンスターズ2)、キアヌ・リーブス(ジョン・ウィック:コンセクエンス)などのベテラン俳優ばかりでありますが、本作の主演デンゼル・ワシントン含め、みんな貫録がありながらも機敏に動き、主役としての務めを果たし、その上客を呼ぶ宿命のあるスター性もしっかり見せつけるからたまりません。
今回で最後のようですが、いったい彼の終着駅はどんな場所なのか、そしてどんな結末なのか楽しみです。
早速観賞してまいりました!!
作品情報
元CIAトップエージェントのロバート・マッコールが、19秒で世の悪を完全抹消する闇の[仕事]請負人(通称:イコライザー)として暗躍する姿を描いた『イコライザー』シリーズ最終章。
アメリカ・ボストンから遠く離れたイタリア・アマルフィに移住し、癒しと救いを求めたマッコールが、小さな町を救うため一度外した時計を再び装着し、最後にして最大の「仕事」を遂行する姿を、シリーズ最大のスケールで描く。
主演のデンゼル・ワシントンと通算5度目のタッグを組むと同時に、本シリーズ全てを監督してきたアントワン・フークアがメガホンを続投。
慣れ親しんだ関係によって本作も阿吽の呼吸で映画を製作した。
またデンゼルとは「マイ・ボディガード」で共演したダコタ・ファニングがCIA捜査官として出演。
前回とは違う関係性の役柄であるものの、19年ぶりの共演に映画ファンも感慨深い瞬間が訪れるに違いない。
映画の出演はおよそ2年半ぶりというデンゼル・ワシントン。
きっと本作のフィナーレを最高にするべく準備していたに違いない。
そんな彼の勇姿を目に焼き付けよう。
あらすじ
ある時、訪れたシチリアでの事件で負傷したことをきっかけに、肉体的にも精神的にも限界を迎えたロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、アマルフィ海岸沿いの静かな田舎町に辿り着く。
よそ者にも関わらず身内のように看病し、親しみをもって「ロベルト」と呼んで接してくれる街の人々。
昼の顔、夜の顔を使い分け、長い時間をたった一人、誰にも頼らず生きてきたマッコールにとって、それはまさに癒しと救いだった。
マッコールはこの街を安住の地と心に誓い、イコライザーのスイッチともいうべき腕の時計を外すことを決意。
そこで穏やかに残りの人生を送るはずだった。
しかし、小さなこの街にも悪の魔の手は忍び寄っていた。
街の人たちが次々と凄惨な事件に遭うのを見て、マッコールは再び[仕事]を再開する。
自分を救ってくれた大切な人々を、街を、今度は自分が救うため。
善良なすべての人々を救うのがイコライザ―の流儀であり、マッコール自身の大いなる復讐でもあるのだ。
しかしそれが引き金となり、事態はイタリア全土を巻き込む爆破テロ事件へと拡大してゆく・・・。
一度外した時計を再び身に着けるマッコール。
彼がカウントするのはわずか9秒。
怒りが頂点に達したマッコールに、もはや19秒は必要ない。
最後にして最大の[仕事]が始まる ――。(HPより抜粋)
感想
#イコライザーTHEFINAL 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) October 6, 2023
フークアとデンゼルが10年かけて描いた最強の男完結編は、これまでにない壮絶な怒りとバイオレンスがパンパンに詰まった見応えある作品でした。
てかフークアって見てるこっち側の心をコントロールさせるの上手いよね。町の人たちを見て思った。
#イコライザーよ永遠に pic.twitter.com/weLB9z8Dmy
有終の美。
単純明快なプロットでありながらこれまでにない暴力性と映像美で非常に満足。
長尺化の一途をたどるアクション映画に一石を投じた、見事な西部劇風アクション映画でした。
以下、ネタバレします。
こういうので良いんですよ、アクション映画は。
介抱してくれた医者やカフェの店員、憲兵の家族や魚屋、そしてすれ違うお婆ちゃんなど、どう見ても良い人たちしかいない港町。
俺、ここでなら終活出来そう、そんな思いをにじませながら日常を過ごすマッコール。
しかしこんなのどかで暮らしやすい町にも悪の手は伸び、やがてマッコールの逆鱗に触れる…という非常にわかりやすい物語。
これまでのイコライザーは、マッコールと親身になった若者に危機が訪れることが引き金となりマッコール無双が描かれてきたパターンでしたが、今回は懇意にした人に悲劇が訪れるモノの、町全体と救いたいという意思が行動を起こすという一風違ったパターンでの物語でした。
またそれらが冒頭侵入したシチリア島でのマフィアに直結するという回収も秘めており、捜査を依頼したCIAエージェントとの絡みも活きてくるという、100分少々という比較的コンパクトな尺の中で、一切間延びのしない見事な脚本であったと感じております。
さらに、今までにない暴力描写は物語の中で的確にスパイスを与えたのはもちろん、未だ衰えを知らないマッコールのポテンシャルをも感じさせるアクションであり、個人としてはイコライザーシリーズの中で一番楽しめた作品だったように思えます。
もっというと、今回明らかにこれまでとは違う映像の解像度だったんですよね。
冒頭のワイン蔵の中でマッコールに射す一筋の光から、まるで粉雪が舞うように部屋中に埃が舞っていたり、夜に浮かぶ炎で彩られた明かりが、舞台となる港町をよりロマンティック且つムーディーに見せていて、一度湧き上がった暴力描写での興奮を鎮めるかのような見事なコントラスト描写だったのではないでしょうか。
まだまだ行きますw
今回シリーズ上、一番アクション描写の少ない作品だったように思えるのです。
実際マッコールが敵と戦ったのはシチリア島でのマフィアとの9秒間による秒殺風景、港町を牛耳ろうとするマフィアの弟分を始末するシーン、そして敵のアジトに潜入し抹殺するクライマックス。
たったこれだけです。
ホームセンターの工具を駆使したアクションで魅了した1や、嵐吹き荒れる中かつての同僚とタイマンを張った2のような壮大なアクションは、今回鳴りを潜めたものになってはいたものの、圧巻のアクションを見せるための「溜め」が非常に効果的だったんでんすよね。
着々と準備と戦略とアングリ―ゲージを進めていた描写が「溜め」となり、「必殺仕事人」的アクションを「放出」するんだけど、ここを尺を長く使わずに圧巻の強さをみせるから非常に爽快なんですよね。
冒頭で重傷を負ったマッコールが、驚異の回復力を見せるけどまだ本調子じゃないってのも理由にありそうですけど、マフィアの愚行を静かに見守りながらシチリア島の件をダコタファニングに調べさせ、色々な点と線が繋がったことで「行動」に移す。
その「行動」はかつてのマッコール以上に鮮やか且つ残虐性に富んだ殺し方で、その瞬間瞬間のインパクトはどれも凄まじいもの。
だからこそ、ダラダラやらない、マッコールと敵が拮抗しない、敢えて「圧倒的」な強さを見せるからこそ、この映画は観ていて清々しいのだと、見ながら感じておりました。
ずっと褒めてますけどまだ褒めますw
今回僕がグッと来たのは、港町の市井の人たちをマッコール目線で見せる監督の姿勢です。
どういうことかというと、マッコールはカフェで紅茶を飲んだり、杖を突いてリハビリがてらに町を散策しながら、この町の人の良さを目で肌で感じていくんです。
これをマッコール目線でたっぷり見せるんですよ。
石畳の階段を駆け下りて学校に通う子供たち、広場の隅っこで談笑したり酒をかわしながら談笑する老人、町の人が皆利用する魚屋の風景、フードコートの如く食事を提供する夜の浜辺で賑わう人たち、さらには広場の壁を使って野外映画館を催し、町の人がみんなで見守るような「ニューシネマパラダイス」的風景など、見た人誰もが「この町に行ってみたい」と思えるような賑わいと人の良さを余すことなく魅せているわけです。
そして、澄み切った水に一滴ずつ泥を垂らすかのように、町の中で「悪事」を働く若者が浮き彫りになっていく。
徐々に淀んでいく町の風景を少しずつ見せることで、マッコールの怒りのバロメーターと我々観衆の怒りのバロメーターがリンクしていくんですよ。
それこそフークアってこういう形で見る人の気持ちをコントロールさせるのが巧い人だよなぁとつくづく感じた作品でしたね。
マグニフィセントセブン然り、トレーニングデイ然り、視点となる人物の気持ちがわかるような見せ方をするのは見事だなぁと。
その分かりやすさ故に、多少の雑さも感じるので、総じて「素晴らしい」とまではいかないんですけど、今回はこの部分が僕の中でかなり効果的に働いたのもあって非常に楽しめました。
ダコタファニングの使い方はもっとできたはず
その雑な部分に関して、決して文句ではないんですけど、どうにかならなかったかというのがダコタ・ファニング演じるCIA捜査官コリンズ。
徐に彼女のデスクにマッコールが直電。
シチリア島でマフィアがなんかヤバいモノを運んでるぞと遠回しに伝えることで、彼女は現地に飛んで調査を開始。
すると、全く情報の無いテロリストの存在や、港町を牛耳るために悪事を働くマフィアの存在を知り、マッコールとコンタクトを取りながら独自で調査を続行。
素性がバレたこともあり彼女は車の爆破を間近で喰らい大怪我をしてしまうのであります。
最後に、彼女をパートナーに選んだ理由が「かつてマッコールと同僚であり友人だったスーザンの娘」であることが明かされ、本作は幕を閉じます。
大事な友人の子供が立派なエージェントとして成長し、それを間近で見守りながら協力するという友人への恩返しをしてるかのような今回の関係性だったわけです。
そして今回の事件の発端が、前作でのタクシー運転手をしていた際に乗せたであろう老人の年金がたった1クリックですべて詐欺られてしまったことに対する行動だったわけです。
きっとまだ道半ばであろうコリンズに、「正しいこと」は何かを背中で見せたマッコール、きっと彼はそういうことを伝えたかったのかもしれないとボンヤリながらも受け止めたコリンズの眼差し。
イコライザーシリーズは、もしかしたら引退間近の自分の遺志を継いでくれる存在を探すための旅だったのかもしれないという含みを持たせたシリーズだったのかもしれません。
という仮説を立ててみた結果、やっぱりコリンズと共にマフィアを片付けるとか、わかりやすい共同作業をもっと見せてほしかったという文句はあります。
基本的に同じ場所で会話をするのが数シーンしかないうえに、マッコールは港町に蔓延る悪を、コリンズはマッコールが発見したシチリア島のマフィアの件を追わないといけないという都合が生じており、中々共同作業に移るようにはならない構図になっているんですよね。
だからこそ、野蛮人と揶揄されたマフィアのボス・ヴィンセントをサクッと倒した後、コリンズが追っていたテロリストを一掃する2人の姿を拝みたかったなというのがよかったなと。
要は「マイ・ボディガード」以来の競演である2人の掛け合いがもっと見たかったというのが願望としてあったための言い分であり、別に今回の内容で全然かまわないんですよw
最後に
しかし今回見た時に、クライマックスはあの石畳で作られた港町を舞台に攻防戦が行われるのだろうと期待していたのですが、まさかマフィアらが攻め込んでくる前にマッコール自らが敵のアジトでフルボッコにするという流れは意外でした。
昨今のアクション映画なら、きっとロケーションを活かしたアクションメイキングをするもんだとばかり思っていたわけですが、今回いい意味で裏切られた感じがします。
もはや老齢の域に達したデンゼル・ワシントンがアクティブに動けるわけもなく、そうした配慮があった、もしくは誘致した町自体でそうした派手なシーンは撮れなかったという事情があったのかもしれませんが、個人的にこのイコライザーってこういう「敢えて壮大なアクション映画にしない」意気込みが好きだったりするんですよね(だから2は好きになれなかったのだけど)。
そして今回の「イコライザー3」が、昨今予算の増大化と長尺化とリアルな近戦格闘メインになっているアクション映画に対して、こういう程度のモノを量産することこそアクション映画の辿る道なのではと、言ってるような気がするんですよね。
いつまでもトム・クルーズが大掛かりなアクションをできるわけがなく、幾ら好きだからと言ってキアヌ・リーブスにアクションをさせ続けるのもどうかと思うわけです。
だからこそ彼らより年上でアクションをこなすデンゼルが老齢になってもできるアクション映画は、こういうので良いんだよ、もっと俳優として心理描写もしっかり見せる演技とアクションをするべきだと言ってる気がするというか。
何とも余計なお世話で好きにさせたらいいことなんですけど、決してアクションシーンが少なくても、インパクトを残すような描写できれば立派なアクション映画だと思うんですよ。
すごくどうでもいいんですけど、ラスト、チャオと言ってカフェを出ようとするマッコールを、サッカーチーム勝利で歓喜する住民に止められて共に歓喜して踊る姿で幕を閉じるわけですけど、あの「チャオ」ってあの街から離れようとして別れの挨拶をしたのかな?と思ってて、それを住民たちが止める=「マッコールさんここにいて」というシーンに思えたんですよね。
それを受けれたマッコールはこのまま留まると見たんですけど、果たして本当にジエンドなんでしょうか。
次の場へ移って正義を全うするっていう続編は本当に無いのでしょうか。
邦題は「ザ・ファイナル」ですけど、原題は「3」なわけで、「4」はないのかなと。
個人的に一番好きになった作品なので、これで終わってもいいんですけどねw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10