コカイン・ベア
動物が襲い掛かってくる映画は、ヒッチコックの「鳥」やスピルバーグの「ジョーズ」、「ジュラシックパーク」、最近では「MEG」を筆頭に多々製作されています。
ただ基本的に動物って限られていて、大体がサメかワニかヘビ、しかもB級またはC級モノがほとんど。
上に挙げた作品はあくまでメジャースタジオ製作のパニック映画なんですよね。
そこに1匹の動物、しかもちょいとカンフル剤的なものを加えて、人を追いかけたらどうなるだろう。
はい、今回観賞する映画は、コカインを過剰摂取してしまったクマさんが人々を襲うという、とんでもない実話から着想を得たパニックアドベンチャー。
この手の「ネタ」ってB級パニック映画野郎からすると非常に興味をそそる内容ですが、どうもただのスリラー映画で留まってない様子。
早速観賞してまいりました!!
作品情報
1985年9月11日の朝。麻薬密輸人のアンドリュー・カーター・ソーントン2世がFBIに追われ、セスナ機からコカインが入ったバッグを投げ捨てた。しかし、こともあろうに体重80kgの巨大なクマが、その白い粉を食べてしまった―
そんなウソみたいなホントの話を、「ピッチ・パーフェクト」や、「チャーリーズ・エンジェル」のリメイクと、ガールズエンパワメントを主とした映画でヒット作を量産している監督の手によって映画化。
ジョージア州の森を舞台に、刑事やギャング、子供たち、観光客らが、コカインを吸引したクマに遭遇し、いまだかつてない惨劇を繰り広げていく。
監督を務めるエリザベス・バンクスは本作を「コーエン兄弟×死霊のはらわた」と豪語しており、怖さと可笑しみの絶妙なバランスを本作に詰め込んだ。
また製作総指揮には、「LEGOムービー」や「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が大旋風を巻き起こしている天才クリエイター・コンビ、フィル・ロード&クリストファー・ミラーが参加した。
キャストには、「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」オールデン・エアエンライク、「ストレイト・アウタ・コンプトン」のオシェア・ジャクソン・Jr、2022年に急逝したレイ・リオッタなどが名を連ね、本作の真の主人公であるクマに翻弄される姿を熱演した。
ただでさえ遭遇したら危険な動物であるクマが、コカインを摂取するとどんな行動を起こすのか。
脳内お花畑のクマさんが、容赦なく人間に襲い掛かる姿をご堪能あれ。
あらすじ
1985年のある日。
ジョージア州上空を通過するセスナ機には大量のコカインが積まれていた。運び屋アンドリュー・カーター・ソーントン2世(マシュー・リース)は、雇い主である麻薬王シド(レイ・リオッタ)の命令どおり、森にコカインの入ったバッグを投下するが、その直後、自分自身も誤って落下、ブツの場所をシドに伝える前に死んでしまう。
テネシー州ノックスビル。
TVのニュースでは、空からコカインが降ってきた、と報道されている。
引退間近の刑事ボブ(イザイア・ウィットロック・Jr.)は、そのコカインがシドのもので、チャタフーチーのブラッド山近辺に残りがあると読む。
シドとの長年に渡る因縁に決着をつけるべく、愛犬ロゼットを新人警官のリーバ(アヨーラ・スマート)に預け、ボブは1人、チャタフーチーへと向かう。
ミズーリ州セントルイス。
シドは2つの大きな悩みを抱えていた。
1つはもちろん、行方知れずのコカインのこと。
もう1つは、妻をガンで亡くした息子のエディ(オールデン・エアエンライク)がその哀しみから立ち直れないことだ。
シドは最も信頼するフィクサーでエディの親友でもあるダヴィード(オシェア・ジャクソン・Jr.)に、エディのケアとコカインの回収を命じる。
絵を描くことが大好きな13歳のディーディー(ブルックリン・プリンス)は、アートキャンプに参加するため、なんとしてもブラッド山の滝を描きたいのだが、看護師の母親サリ(ケリー・ラッセル)は忙しくてそれどころではなさそうだ。
そこで彼女は、友達のヘンリー(クリスチャン・コンヴェリー)と一緒に学校をサボり、こっそり森へと足を踏み入れる。
だが2人はそこで大量のコカインを発見、さらにそのコカインを食べて凶暴になったクマに襲われてしまう!
ディーディーが滝に向かったと知ったサリは、森林警備隊員のリズ(マーゴ・マーティンデイル)と野生動物管理官ピーター(ジェシー・タイラー・ファーガソン)の助けを借りて子どもたちの捜索を開始する。
無人になった森林警備隊のオフィスで、非行少年3人組“ザ・デュシャンズ”のキッド/口ひげ(アーロン・ホリデイ)、ベスト(J・B・ムーア)、ポニーテール(レオ・ハンナ)がたむろしていると、ダヴィードとエディが現れる。
ならず者気取りの3人はトイレでダヴィードを強盗しようとするも即座に返り討ちに。
キッドから「森で大量のコカインを発見し “東屋”に隠した」と聞いたダヴィードは、エディとキッドを連れて森へと入っていく。
麻薬王一味、子どもたちと母親、警察、レンジャー、不良少年たち…
それまで何の接点もなかった人々のそれぞれの思惑が絡み合い、事態はどんどん複雑に。
しかも、相変わらずクマはコカインを大量摂取してハイ&超危険。
果たして、最後まで生き残るのは誰だ…!?(HPより抜粋)
感想
#コカインベア 観賞。そもそもなんだが果たしてコカインを過剰摂取したクマは人なんて襲うのだろうか。奇怪な行動があまりにも少ないし、なんならラリったクマがどんな風に見えてるのかを知りたかった。周りの人間のエピソードがことごとくつまらなくてそういうとこがエリザベスバンクスだなって。 pic.twitter.com/CI2Wfswp3Z
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) September 29, 2023
実話をいかに面白くするかという脚色が下手くそ過ぎて、登場人物のエピソードが全く面白くない・・・。
クマの暴れっぷりは痛快ですけどね。
以下、ネタバレします。
果たして過剰摂取したクマは人を襲うのか
1980年代のポップミュージックとクマの暴れっぷり、そしてクマに華麗に襲われる人たちの姿を面白おかしく描いた本作。
実話を基にした物語として、どうやって膨らませるか。
それはたくさんの人物をクマと絡めることで、たくさん襲わせること。
それはいい。
やっぱりコカインを過剰摂取してトチ狂ったクマが、リミッター解除の如く無作為に人の体をむしゃくしゃ食べ散らかす描写はこの上なく痛快です。
爪で掻っ捌いた腹から臓物が飛び出てきたら小熊がむしゃむしゃ食べたり、少年の首根っこを根こそぎ捌いたり、手も足も引き裂いたりと容赦ない。
おそらくコカインの匂いがしたから襲ったのだと解釈してますが、とにかくコカインが欲しくてたまらなく、ひたすら人間たちを襲うクマの姿は圧巻であります。
しかし僕は劇中ある疑問にぶつかりました。
そもそも人間がコカインを過剰摂取したらどうなるのか。
致死量を超えれば死ぬでしょうし、そこまでいかなくとも過剰に興奮状態になったりしてひたすらハイテンションになるでしょう。
パルプフィクションのユマ・サーマンみたいにひたすらハイになって踊ったりするのかもしれません。
ではクマが過剰摂取したらどうなるのか。
劇中では人を襲います。多分コカインの匂いがするから。
だけれどコカインの匂いのしない人間まで襲うのは何のためなのか。
冒頭アメリカクマは比較的穏やかなほうで、死んだふりをするよりかは闘った方が生存確率が高いなんて表記が出ますが、コカインを吸引したら闘争本能が出るのだろうか。
いや、マジでわからない。
人間と同じようにハイになって踊ったり、幻覚だらけの状態で徘徊したりしないのか。
そういう描写が本作には全然ないんです。
ただ、人を襲うだけ。
一応これはコメディとして作られてるようですが、俺がコカインベアの監督をするなら、熊の登場に一旦は驚くけど、あまりに突飛な行動をとるクマに唖然とする人間のリアクションを見せた方が面白いと思うんですよね。
冒頭ハイキングをするカップルが、出没したクマに喜んだのもつかの間、様子がヘンだと気づき一目散に逃げるというシーンがありましたが、そこをもっと膨らませてコメディとして遊んでみてはどうかと思ったんですよ。
それこそ木に頭をぶつけていたクマの描写がありましたが、急に逆立ちしたりとか普段やらないであろうステップを踏んでみるとか、現実離れかもしれないけど踊ってみるとか。
明らかに不自然で不可解な行動を見せるコミカルさをこちらに眺めの尺で提供したのち、見事に食われるというギャップがもっと欲しかったですね。
襲われる際も、最初は顔をぺろぺろ舐めるだけで被害者の緊張を緩めるとかして見事にがっぷりいかれるとか、そうした緊張と緩和はジャンプスケアだけで芸が感じられませんでした。
また、本作は実話を基にしたフィクションなんだから、絶対こっちが判らないモノを見せても良いと思ったんですよ。
それこラリッたクマの視界がどんな風に見えてるのか。
実際の熊は極度の近視だそうで、ほとんどぼんやりとしか見えてないそう。
その分嗅覚が優れているので標的を探しやすいそうです。
こうした習性をコカイン摂取によってチート級にしても面白いと思うんですよ。
普段見えなかった視界が鮮明になったり、鼻がバカになったり。
あくまで劇薬なので、そうした嘘みたいな効果が出ても良いと思うんですよ、嘘の話なんだから。
他にも鮮明になった視界によって、どれもこれが新鮮に見えて興味津々になったりとか、人間という生物を鮮明に捉えたことで今までと違った感覚に陥るとか。
そうした、今までと違うクマの習性だったり能力ってのを、登場人物に動物学者を投入することで解説とかできるわけじゃないですか。
どうも本作はクマを巧く使えてない気がしてなりませんでした。
人間たちのエピソードがつまらん。
さて、本作で餌食となる人間たちはさまざまです。
自然公園を管理するレンジャーや動物保護者、母と息子、麻薬王一味、そして警察と、空から捨てたコカイン目当てに集まるモノと、森の自然目当てに集まる者らが見事に餌食にされてしまうわけです。
いくつかのエピソードを用意し交錯させることで、一つの物語へと変化していく構造ですが、交錯しなくても全く効果的になってない気がしてなりませんでした。
そもそもコカインベアが誕生した原因は、空輸の途中に森にコカインを捨てたから。
だから一番の悪玉はレイ・リオッタ演じる麻薬王です。
もちろん彼は最後に爽快な制裁を与えられデッドします。
だからこそ何とか最後まで見れたわけですが、コカイン絡みで登場するキャラ以外は無関係なんですよ。
要は後半で見せた刑事と麻薬王一味の対峙をメインにした物語の方がスマートで、レンジャーや少年ギャングたち、母と娘のエピソードはもっと端に寄せて描くべきだと。
見終わった後思ったんですけど、どうも母親と娘とのエピソードが全面に出すぎていて、なんか違うなぁと感じてたんですよね。
そこをメインにするのであれば、麻薬王一味の子分らとの合流をもっと早めて、熊に脅えながらも互いがコカイン回収と娘の救出を同時に見せた方がエピソードが分散しなくて済んだ気がするんですよね。
レンジャーはレンジャーで勝手に戻って別の物語になってしまってるし(一応ストレッチャーに縛られた状態で救急車から飛び出て死ぬとこは笑ったけどw)、ここそんなに尺要らなくね?と。
寄り道しないでさっさとメインを進めろよと。
それか、この暴走したクマを倒すにはどうしたらいいのかというトレマーズのような仕組みで人間とクマが対峙するとかの方が、よりB級味が出て面白いと思ったんですよね~。
まぁああいう形で幕を閉じるのもいいんですし、生き残った登場人物たちがああいう形で集約されていくのも下手ではないんですけど、どうもアイディア任せの物語になってて残念感の方が強かったですね…。
それもそのはず監督はエリザベス・バンクスですから、そこまで監督力のある方ではありません。
一応面白いプロットだったり、チャーリーズエンジェルのリメイクのようにキャラの尊さを見せる所はさすがだと思いますが、全体的な映画の出来は正直まだまだだよなぁと。
とはいえアメリカではウケてるみたいですし、ティーンズが喰いつきそうな内容ではありましたかね。
最後に
褒める所があまりないんですけど、最後のシーンでヤギだか羊だかを乗せたトラックをヒッチハイクした少年ギャングの生き残りが、動物が乗った荷台に引っかかったコカイン入りのバッグを見つけましたけど、続編を示唆したシーンだったらウケますね。
次はコカインシープ?
いやいや無理があるだろうw
羊がコカイン吸ったって人襲わねえだろww
コカイン吸った羊の群れが市街地を暴れまくって首都機能低下させるとかって話ですか?
ファストファッションを展開する店を襲っての逆襲ですか?w
さすがに無理だなw
せめて肉食動物でないと面白みがないw
まぁ今回思ったのは、バンクスよ、もう一回ファーゴ見て勉強してください。
今回は短めで。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10