花束みたいな恋をした
坂元裕二という人。
脚本家として非常に評価が高いことで有名ですが、それはTVドラマの話。
映画の脚本となると、果たして彼の魅力が存分に発揮されるのか、ちょっと疑問に思ったり。
僕はそもそもここ数年は映画にどっぷりで、TVドラマを全く見ない習慣が続いていて、恋ダンスやら倍返しといったトレンドについていけてなかったわけでw
とはいえ、彼が手掛けたドラマは「東京ラブストーリー」はもちろんのこと、「ラストクリスマス」からのフジテレビ系列ドラマは、結構欠かさず見ていて。
近年でいえば「問題のあるレストラン」と「カルテット」は毎週楽しみにするほど楽しかったですね。
あまり映画で脚本を手掛けていない坂元さん。
およそ2時間の物語を、TVサイズではなくスクリーンサイズで、どのような言葉で綴っていくのか。
一応、彼の初の恋愛映画だそうです。
しばらく恋愛から遠ざかっている私ですがw、果たしてキュンキュンするのかな?
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
普通の男女の物語もあれば、ユーモアに特化したドラマ、マイノリティや善悪の二元論では片づけることのできない社会派ドラマなど、時代と共に移り変わる人間同士の関係性をテーマにしたドラマを数多く手がける脚本家・坂元裕二が、今を生きるすべての人に捧げる素敵な恋愛映画を書き下ろした。
終電から始まった二人の男女の、一生忘れることのできない5年間を描く。
趣味も価値観も同じ人に出会ったことから芽生える恋する気持ち。
常に一緒にいたい。
こんな時間がずっと続けば。
しかし年齢を重ねるごとに押し寄せる現実の影。
すでに家庭を持った人や歳を重ねてもなお独身の人、そして今青春まっしぐらの若い人。
きっと誰もが経験したであろう「若き日のまっすぐで純粋な思い」を蘇らせ、胸を締め付ける恋愛模様に、共感度100%であること必至の作品。
「わたしたち」の物語が、今、花開く。
あらすじ
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。
好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。
近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。
まばゆいほどの煌めきと、胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。
最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!
──これはきっと、私たちの物語。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、土井裕泰。
2020年に「罪の声」を手掛けた監督さんですね。
映画「ビリギャル」では有村架純を起用した過去があり、また脚本家の坂元裕二とは「カルテット」以来のタッグだそう。
TBSの方ということもあって、これまで「ビューティフルライフ」や「GOOD LUCK!!」、「オレンジデイズ」など数々の青春恋愛ドラマを手掛けてきてますから、きっと素晴らしい作品に仕上げてくれたことでしょう。
2020年1月にクランクインした本作。
完成報告会では「思いがけない1年になってしまったものの、無事公開できたことに喜びをあげた」とともに、「二人がどこかの町でちゃんと生きている」ように意識して挑んだとのこと。
監督に関してはこちらをどうぞ。
キャスト
本作の主人公、麦と絹を演じるのは、菅田将暉と有村架純。
当ブログでは彼らの作品を何度も書いてるので、今更言及することなどありませんww
とりあえずこちらもどうぞ。
一応「何者」以来の共演とのこと。
しかしまぁ予告編を見る限り、すごく自然な演技をされてるので、まるで本当のカップルのようですね。
実際に関西出身の同い年だそうで、今回一番いいタイミングで共演できたと完成報告会で仰っていました。
彼らが演じたカップルを通じて、自分たちの過去の記憶を色々ほじくられましょうw
他のキャストはこんな感じ。
加持航平役に、「アカルイミライ」、「船を編む」のオダギリジョー。
八谷早智子役に、「ラジオの時間」、「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」の戸田恵子。
八谷芳明役に、「ヤクザと家族」、「シン・ウルトラマン」の岩松了。
山音広太郎役に、「深夜食堂」、「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン」の小林薫。
羽田凛役に、「ちはやふる結び」「宇宙でいちばん明るい屋根」の清原果耶。
水埜亘役に、「町田くんの世界」、「子供はわかってあげない」の細田圭央太。
他にもアニメーション映画監督の押井守や、主題歌を担当するAwesome City Clubが本人役で登場します。
本作を見終わった誰もが、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」のでしょうか。
それともただただ気まずくて気恥ずかしくて、少し上がった心拍数を抑えながら口角を上げてしまうのか。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
あなたたちの「恋」はどんな花束ですか?
男女の5年間を坂元マジックで綴った、あったかくて、ふわっとして、ちょっぴり泣けちゃう、日記のような恋物語でした!
以下、ネタバレします。
さすが坂元裕二。
2015年から2020年までの5年間に及ぶごく普通の男女の「はじまりという名の終わりの始まり」を、2人の趣味である様々なポップカルチャーや、馴れ初めから別離に至るまでの心の声を劇中に埋めることで、脚本家・坂元裕二の技巧的なセリフがこれでもかと炸裂した情報量モリモリの内容にもかかわらず、どこか自分の恋愛を見比べてしまい共感を得てしまう、温もりと安らぎと、瘡蓋だったのが実はまだピンク色のケロイド状態だったことに気付かされる、不思議な恋愛映画でした!
「問題のあるレストラン」や「カルテット」のように、とにかく台詞が多く、どこかしこに人間や世間を俯瞰で捉え皮肉るセリフが印象的な坂元さん脚本の作品ということで、きっと1度観ただけじゃ2人の趣味の多さを把握できないわけですが、やっぱり情報量多かったなぁww
思い出すだけ挙げてみると、SMAPに天竺鼠に押井守にストレンジャーシングスにゼルダの冒険に今村夏子に下高井戸シネマに早稲田松竹に牯嶺街少年殺人事件にゴールデンカムイにきのこ帝国に崎山蒼志にミイラ展に渋谷パルコと、固有名詞が山ほど出てきて、二人は一体サブカルやらポップカルチャーにどこまで精通してるんだ!と怒りにも似た感情がw
他にも「コミュニケ―ションは頻繁にしたい方です」とか「電車に乗るではなく電車に揺られ」って言い方、カラオケっぽくないけどただのカラオケ屋、ネコにバロンという名前を付けちゃう辺り、「じゃあ」って何!?、社会に出るということはお風呂に入るということだ、ジャンケンのルール、2014年サッカーW杯準決勝でのブラジルの大敗を味わうならマシ、などなど坂元裕二1000%なセリフがこれでもかと出てくるので、もうほんと1度見ただけでは把握するのが大変でしたw
これだけ自分を形成するような趣味趣向が同じ異性なんて、そうそう巡り合えることが無く、しかも共通するものが多いせいか、仕草や語り草にまでキュンキュンしてしまうのが正に若いというかアンテナ感度が高いというか。
確かにファミレスでどうでもいいことダラダラ喋っても時間を忘れるくらい楽しく過ごせる異性って、きっと行ける!って思うし、付き合ったら絶対楽しいよね。
僕にはそこまでの恋愛遍歴が無いのと、なかなか癖のあるタイプなのでこういう普通の恋愛はしてきてない人生なんですが、麦くんと絹ちゃんの恋愛模様を見ていると不思議と二人と街ですれ違ってそうだし、渋谷にいそうだし、何なら今日劇場の隣で座ってたカップルがそうなんじゃないかといった、親しみの持てるカップルを描いてたなぁと。
また話は戻りますが、僕の中でサブカル全開恋愛青春ストーリーといえば「モテキ」で、幸世とみゆきちゃんが愛するサブカルよりももっと濃密で幅の広いエリアを抑えてる二人がホントどっぷりだったなぁと。
男女の価値観の差
この物語は、大学生の時に出会い、就職活動をサボり、フリーターとなって2人の時間を最優先して「楽しい日々」を過ごすも、「社会性と協調性は才能の敵」だと頭で理解しながらも、やっぱりお金は大事だと割り切った結果、すれ違いの一途を辿ってしまう若い男女のよくある話。
結局のところ、学生時代から「一緒にいて楽しい」だけで付き合い続けていると、社会人の入り口でつまづいて、仕事とアタシとどっちが大事?とか、仕事による思考の低下、思いやりの低下、2人の共有時間が少なさ、会話の少なさ、将来を見据える視点の違い、今か未来か、などなど色々見たくないところまで見えてしまって、結局喧嘩して停滞して倦怠期入ってってのがオチ。
なのに本作はとあるカップルが2人の出会った頃のような初々しさを見せつけられることで、「ただただ楽しかったあの頃」を思い出し感情がスパークして終幕に向かうのが普通乗れない映画とは違う新鮮味があって良かったんですよね。
麦くんは就職してから一変しますよね。
営業課に配属されたことで帰宅時間が遅くなり、これまで大好きだったイラストも描かなくなり、2人のデートの回数も仕事を理由になくなり、愛読する本もビジネス書になったり、ゴールデンカムイも7巻で止まってしまったり、会話も同僚とか取引先とか仕事の内容ばかりになり、それもこれも二人の将来のためと言い訳してしまったり。
個人的には麦くんの考えには一理あるよなぁと思ってしまいがちなんですが、何はともあれ全て「言い訳」なんだよなぁと。
男ってなんであんなに「仕事」を理由にしがちなんですかね。
仕事とは責任だ、なんて教科書みたいなセリフ吐いてましたけど、実際のところは輸送トラックを東京湾に沈めて仕事投げ出して逮捕されちゃう運転手の気持ちだったりするんでしょうけど、積み上げたモノを崩す勇気が無いのかな。
やり直すことがどれだけ面倒かって感じるには、麦くんの年齢じゃまだ早い気もするんですけど、それもこれも全て仕事に費やす時間の量によってパズドラしかできないくらい思考が止まってるってのが何よりの証拠だよなぁと。
逆に絹ちゃんは、今を楽しく生きたいと言ってる割りにはしっかり地に足付けて、自分のやりたいことを体現してるのが素晴らしいなぁと。
嫌なものは嫌だと割り切って就職活動を辞めているのに、しっかり簿記2級取って就職成功してるし、それでもやっぱりやりたいことをやりたいと言って、お給料下がるけど好きな仕事を続ける姿勢が見ていて羨ましかったりする。
ダメならダメでまた始めればいいというのが、いかにも女性らしかったりするのかな。
こういう思考の男性もいるんだろうけど、僕の中にはまるでないw
この差が恋人であり続ける中で徐々に広がりを見せてしまうのが印象的な物語でしたね。
ツッコミたいことは一応ある
本作はあくまでフィクションでドラマでステレオタイプな男女の物語ではないのを承知で、現代の若者カップルなのに変だなぁと思ってしまったことをダラダラ書いていこうかなと。
- twitterやらないんだ・・・
イラストを描いて、ラーメンブログを書いて、本に映画に美術に写真に漫画に音楽にお笑いにゲームと、あらゆるポップカルチャーを網羅している2人。
2015年に大学生で、東京に住んでいる以上、一体どうやってこれだけのポップカルチャーを網羅するための情報を得ているのでしょう。
仮に僕ならですよ?
SNSを活用すると思うんです。
トレンド然りデートスポット然り映画スケジュール然り、今のご時世絶対必要不可欠なツールだと思うんです。
本作はこのSNSツール、LINEくらいしか出てこないんですよね。
現代の若者ならtwitterかインスタグラムくらいは使うと思うんです。
しかも世間一般で言うなら麦と絹のような2人ならtwitter一択じゃない?と。
そこを描写してないのがどうも不自然というか。
もちろん映画製作の事情でtwitterを使えないとかってのがあるとは思うんですけど、オリジナルのツールで何かと2人の「今」をつぶやいてしまう衝動が1シーンでもあってもおかしくないだろうと。
早稲田松竹であの映画やってるよ?ってのは調布に住んでる二人が知るためには、どこか名画座でチラシをゲットするか、SNSしかないと思うんですよ。
もしかしたら自宅のPCでネットサーフィンして知るとか、2人の掛け合いの中でスマホ観てる箇所があるから見てるのかもしれないけど、あそこまで心の声を言葉にして描いてるのだから、どちらかがつい呟いてしまって内容を見てしまったことでいざこざが生じるくらいのエピソードがあってもいいよなぁと。
- 調布駅から徒歩30分
絹ちゃんの実家は京王線飛田給駅なんですけど、調布駅まで2駅なんですよね。
で、二人が同棲する部屋はこの調布駅から徒歩30分なんですよ。
多摩川が目の前に広がる景色のいい、見晴らしのいい部屋で。
きっとこれから上京しようと考えてる若い男女にとっては、ちょっと夢のありそうな景色だったりするんですけども。
ただ東京23区または23区に属する近隣の市に住んでる人間からしたら、駅から歩いて30分の距離ってどうもおかしいんですよ。
徒歩30分圏内なら、恐らくもっと交通の便あるはずなんです。
で、調べてみました。
調布駅から多摩川方面に向かて歩くと、調布駅以外にも駅あるんですよね。
京王多摩川駅という駅がありました。
おい不動産屋!
なぜ物件紹介の時にそれを言わねえ!!
ある意味詐欺だぞそれ!
- 明大前駅から歩くって!?
あと二人の出会った時ね。
明大前駅で終電逃して、偶々出会った男女4人がとりあえず朝まで時間潰せる場所でお酒飲んだりコーヒー飲んだりするんです。
恐らくこの時1時過ぎ。
きっと小一時間お話したと思うんです。
その後押井守がいたことや、ハンドクリーム塗ってるのにおしぼりで手を吹いたの、あれ何!?といった会話で盛り上がって、二人で飲み直すわけです。
きっと趣味がめちゃくちゃ会うことから2時間くらいは話したでしょう。
周りには誰もいないくらい時間が経過してましたし。
そうなると、恐らく3時は回ってるでしょう。
で、この後カラオケに行くんですよ。
何歌ってたかは忘れたんですけど、2人で1時間だけ歌うってことはないでしょう。
多分2時間かな。
で、この明大前駅から調布駅まで歩くんですよ。
グーグルマップで調べたら2時間17分ありました。
男女で歩幅の違いがあるし、きっと麦くんのことだから絹ちゃんの歩幅に合わせたでしょう。
だからきっと3時間はかかったでしょう。
すると、時計の針は6時を回ってると思うんです。
始発出てるだろ!!
電車乗れるだろ!
とまぁ、こんな疑問が付きまとった1作でもありましたww
最後に
趣味が合って、些細な優しさや仕草や言葉のニュアンスがキュンとなる程度の付き合いじゃ、将来一緒になるのは難しいよなぁ。
というか表面上でしか恋愛できてなかったのかな。
そんなこと言ったら多感な時期に恋愛なんてできねえよw、ってツッコミはあるんですけど、あれだけ人間や世間や社会を俯瞰で捉える視野があるくらい、頭がキレるのだから、もっと感覚で恋に落ちるより、頭で考えてできるような気もするんだけどなぁ。
とにかく映画なのだから、もう少し心の声を抑えて「カルテット」のように映像でピンと来させるような視覚でドキッとさせる演出が欲しかったですね~。
でもこんなこと言ったら坂元裕二じゃねえ!ってのも理解できるw
きっと麦くんと絹ちゃんのような長い年月をかけて、しかも結婚を視野に入れるほどの同棲期間を過ごした恋人たちなら、共感、共感、共感の嵐だったでしょうね・・・。
残念ながら僕には「花束みたいな恋」と名乗れるほどの恋愛をしてないので、どうも乗るに乗れない部分もあり。
とかいいつつ、最後のファミレスのシーンは自然と涙が頬を伝いましたよ…。
旬の俳優が共演してるから、これから社会に出る人も社会にどっぷり浸かった人も、夫婦の人も見てほしいなぁ、思い出に浸ってほしいなぁと思えた作品でした。
あ、Awesome city clubのPorinちゃん、可愛かったw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10