モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

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映画「ホムンクルス」感想ネタバレあり解説 第六感に目覚めた男の「自分探し」の旅。

ホムンクルス

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 かつて小説家の村上春樹は自身の著書「神の子どもたちはみな踊る」でこう言いました。

「目に見えるものがほんとうのものとは限らない」と。

 

また、フランスの作家サン=テグジュベリは「星の王子さま」の一説で、

「心で見なくちゃ、ものごとはよくみえないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」と語ってます。

 

目の前にある物事がすべて正しいわけではないし、自分の前に立っている人は果たして見ている通りの人物なのかはわからない。

 

じゃあ全部見えてしまった方がいいのか?

知らなくていいことも全部明るみに出た方が正しいのか。

 

もちろん時と場合によるよね~。

なんでもかんでも見えてほしい部分もあれば、観なくていい知らなくていいことが世の中にはたくさんあると思うんです。

 

今回鑑賞する映画は、見えなかったものが見えてしまった男の物語。

見えなかったものが見える=可視化された世界で、主人公の精神はどう変化し、周囲の人たちを変化させるのでしょうか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

作品情報

累計発行部数400万部を誇る山本英夫の同名コミックを、ホラー映画で世界を股に駆ける監督の大胆なタッチと繊細な心理描写によって実写映画化。

 

記憶も社会的立場も失った男が、禁断の実験によりこれまで見えてこなかった世界と対峙しながら、自身の記憶を取り戻していく心理スリラー。

 

ヤクザと家族」で凄みを見せた中堅俳優と、ブルーリボン賞助演男優賞を受賞した若手俳優を中心に、真実か虚無かもわからない中で、誰しもが抱える心の慟哭を狂おしいまでに魅せていく。

 

目に見える世界が、すべてとは限らない。

特殊な能力を身につけた男がみる、人間の正体とは一体。

 

小説 ホムンクルス (小学館文庫 え)

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  • 作者:江波 光則
  • 発売日: 2021/04/01
  • メディア: 文庫
 

 

 

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あらすじ

 

 一流ホテルとホームレスが溢れる公園の狭間で車上生活を送る名越進(綾野剛)。

過去の記憶も感情も失い、社会から孤立していた。

 

そこに突然、奇抜なファッションに身を包んだ研修医・伊藤学(成田凌)が目の前に現れる。

 

「頭蓋骨に穴を空けさせて欲しい」

「あなたじゃなきゃ、ダメなんです」

 

突然の要求に戸惑う名越だったが、 “生きる理由”を与えるという伊藤の言葉に動かされ第六感が芽生えると言われるその手術<トレパネーション>を受けることに。

 

術後、名越が右目を手で覆い、左目だけで見たのは、人間が異様な姿に変貌した世界だった。

 

その現象を「他人の深層心理が、視覚化されて見えている」と説く伊藤。

 

彼はその異形をホムンクルスと名付けた―。

 

 

ホムンクルスと化した人々の心の闇と対峙していく中で、名越の過去が徐々に紐解かれ、自らの失った記憶と向き合うことに。

 

果たして名越が見てしまったものは、真実なのか、脳が作り出した虚像の世界なのか?

取り戻した記憶に隠された衝撃の結末とは?!(HPより抜粋)

 

youtu.be

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、清水崇

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ようやく名作ホラー程度は積極的に見られるようになった僕ですが、未だ監督の過去作はほぼ見ておりません…。

 

唯一鑑賞しているのは「呪怨」のオリジナルビデオ版のみ。

イヤイヤ見せられた割には、怖かった!といった感情よりも、よく出来てるなぁと感心の方が強かったです。

 

とはいえ、それ以来全然見ようともしていないのは、やっぱり怖いって思ってるからなんだろうなぁ…。

Jホラーも克服しよ…。

 

そんな監督の代表作をサクっとご紹介。

 死んでも何度も蘇る女性に人生を狂わされていく人々を描いた「富江re-birth」で劇場映画デビュー。

オリジナルビデオの劇場版で、死者の強い怨念が住み着いた一軒家を舞台に、関わった者たちが次々と恐怖に見舞われる姿を描いた「呪怨」が大ヒット。

続編やハリウッドでも「THE JUON/呪怨」としてセルフリメイクし、世界でも活躍する一人となっていきます。

 

呪怨 劇場版

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  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: Prime Video
 

 

富士急ハイランドの人気アトラクションを映画にした「戦慄迷宮3D」、宮崎駿監督のアニメでも知られる、13歳の少女が魔女になるための修行の旅に出る冒険譚「魔女の宅急便」など、別の一面も見せたり、一風変わった作品も手掛けております。

 

魔女の宅急便

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  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: Prime Video
 

 

近年では、九州にまつわる都市伝説を下地に、地図から消えた村の謎に迫るヒロインに待ち受ける戦慄の恐怖を描いた「犬鳴村」、そのヒットを受けて製作された「恐怖の村」シリーズ第2弾で、青木ヶ原樹海の都市伝説と怪談コトリバコを融合した物語「樹海村」などを手掛けており、今も尚我々観衆を恐怖の虜にさせています。

 

犬鳴村

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  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 

 

キャスト

主人公・名越進を演じるのは綾野剛。

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2021年は「ヤクザと家族/The Family」以来の作品。

 

www.monkey1119.com

 

実写化映画には数々出演している彼ですが、変なコスプレも誇張したキャラクター作りも必要ない作品が故に、彼のリアルな演技に期待できそうですね。

 

実際見えない部分が見えてしまう役柄ですから、それらを見た時にどういうリアクションをすれば観衆が惹き込まれるか、彼なりに研究して演じてるのだと思います。

 

彼に関してはこちらもどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

伊藤学役に、「まともじゃないのは君も一緒」、「窮鼠はチーズの夢を見る」の成田凌。

謎の女役に、「愛がなんだ」、「前田建設ファンタジー営業部」の岸井ゆきの

女子高生1775役に、「心が叫びたがってるんだ」、「砕け散るところを見せてあげる」の石井杏奈

組長役に、「海難1890」、「初恋」の内野聖陽などが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VFXを駆使した「異形だらけの世界」がどう表現されているか、また原作とは違う着地点にも注目ですね。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

心にトラウマを抱えた人ほど、「自分を見てほしい」と思い込む。

相手を見ることが、トラウマからの出口かもしれない。

視覚効果がめっちゃ面白い心理ドラマでした!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視覚効果の妙

記憶を無くしたホームレスが、第六感を覚醒させるための手術「トレパネーション」の実験台になることで開かれた世界によって、様々な「心の歪み」を持つ人物と接触し、自身の記憶を取り戻すと同時に、人間の正体に迫っていく物語は、赤と緑のコントラストを活かしたライティングと人間の深層心理を可視化させた視覚効果、さらには細かな表情で人間味を醸し出す綾野剛と、エキセントリックでありながらナイーブな心を表現した成田凌の演技によって、現実と虚構が入り混じりながらもしっかりとした心理ドラマに完成されている点に唸らされた作品でございました。

 

清水崇監督ってことで、どれだけ怖い描写があるのかと若干脅えながらの観賞になりましたが、思っていたほどの怖さはなく、意外と面白いことしてるなぁ、てかめっちゃ映画的な構図とか撮影技術とか施してるなぁといった感心が目立った映画でした。

 

 

やはり本作一番の見どころは「心の歪み」を可視化させたバラエティ豊かな映像表現。

 

トレパネーション手術を敢行後歌舞伎町の街を歩くと、通行人全てが「心の歪み」を抱えたホムンクルス状態。

下半身がグルグル回る女性もいれば、全身が木になっている女性、体が半分ずつで手をつなぐサラリーマン、頭が豆電球の女性、全身サングラスを纏ったチャラ男に、コンセントだらけのキャッチなど、誰もが普通の人間とは違う異形になっているではありませんか。

 

主人公・名越は感覚を研ぎ澄ませるために、左側だけで感覚を捉えることを研修医の伊東から言われたのを受け、右目を手で覆ってホムンクルの世界を体感するんですが、カメラは名越の背後を左にパーンしていくことで、名越の見ている風景を見せる工夫になっているため、実際の世界と名越のホムンクルスの世界、それをスクリーンで見る我々と二重にも三重にもなった世界を堪能できる仕掛けになっているんですね。

 

 

この不思議な感覚はさらに続き、小指をエンコすることに執着するヤクザの組長や、怪しいお店で働く女子高生に接触を図り、彼らを救う名越を見ていくことになります。

 

組長は名越から見ると全身超合金ロボの異形になっています。

そして右手にはカマを持ち、小指のない状態。

子供の頃に抱えた罪悪感が彼のホムンクルスを生み出しており、名越は彼をトラウマから解放させていきます。

 

さらに女子高生に至っては全身砂で覆われた姿をしてるんですが、彼女のスマホを覗くことで、彼女が何に捉われているか、そして砂だと思っていたものが砂ではないことに気付かされていきます。

 

 

どちらも私たちが見る現実の世界と、名越が見るホムンルクスの世界を行ったり来たりして見せていくんですが、話が進むにつれて右目を隠す仕草を減らしているにもかかわらず、スムーズな切り替えを見せているのが非常に巧いと感じました。

 

組長に至ってはリアルなロボの質感をしっかり見せていながら、中には幼少時の組長が乗り込んだいで立ち。

どんどん組長の心のメッキをはがしていくことで、組長と幼少時の組長の2人が存在しだしていく構成は面白い表現だったと思います。

 

また女子高生に至っては、砂だと思っていモノが彼女の内面や周囲の「声」が積み重なったモノであることが明かされ、全身砂で覆われた姿に埋もれたり体を重ねたり名越の身体に侵食していったりと、現実と虚構が幾度も往復したシーンでした。

 

 

このような視覚効果が序盤ではかなりの頻度で登場しますが、全体的には赤と緑の照明によって心情を表現したり、強めの太陽光によってボカシが加わることで非現実的な世界に見せたり、時に怖さを助長させるような映像にもなってました。

 

怖さで言えば、トレパネーションを施す際に流れるドリルの音やドリルの先端、開いた頭蓋骨の穴から覗く成田凌の目という一連のシーンは不気味でしたし、その穴が金環日食にも繋がっていくものだったり、小指をエンコする組長に、女子高生のアキレス健から流れる血をすすって口づけすることで口の周りが血だらけになるあたり、さらには名越自らトレパネーション手術をするシーンは気味悪かったですね・・・。

 

変に隠すことなく見せているので、これが現実だ!と思って直視していただきたいものですw

 

自分の見ている世界は本物か否か。

本作の核たる部分は、「今自分が見ている世界は現実かそうでないか」について迫っていくお話になっております。

 

研修医の伊東は、記憶を失ったことで感情を表に出せなくなった名越に、10%しか使えてない人間の脳を活性化させるトレパネーション手術をし、7日間観察実験することで、オカルトや超常現象の類が全て自身が見たいものを見ただけの虚構に過ぎないことを立証するつもりでした。

 

実際モノを見るまでの情報の流れとして、目で捉えたものを脳で補正し情報を入手するのが人間の働きだと思うんですが、伊藤曰く結局のところ脳の歪みが見ている世界を屈折させているだけのことだと。

だから幽霊は存在するとか、非現実的なモノや物体は、虚構でしかないと。

 

トレパネーションしてホムンクルスが見えてしまう名越も、伊藤にしてみれば自身が作り出した虚像に過ぎないと語っています。

 

後半、名越の前に現れる謎の女の出現により、伊東は名越のみているホムンクルスはやはり虚構であることに強い確信を秘めていくんですね。

 

しかし名越は、ホムンクルスになった状態の人たちを「見る」ことで、彼らの心の奥底に潜む罪悪感や後ろめたさ、引け目に感じることなどをさらけ出し、介抱し、救っていくのです。

例え謎の女が自分の信じていた人でなかったとしても。

 

やがては自分の記憶を取り戻し、自分までも救う。

 

 

どうせこの世は嘘だらけと息巻き、自分の存在意義を見失っている伊東は、これまで社会と断絶していた名越が周囲の人たちと距離を縮めていき「人間」の存在証明を果たしていく姿をそばでみていたわけです。

なぜ彼はそこまで立ち直ったのか。

どうせ見ているモノは全て虚構なはずなのに。

 

名越は「見てほしいと思うのではなく、相手を見ることが大事」だと語ります。

 

空っぽだった自分を染めてくれた他者の存在が現実をより現実へと導いてくれる。

弱さを持つことは恥ずかしい事ではないし、弱さを認めてあげれば誰でも救われる。

 

他者や現実を否定してばかりならば、どんどん塞ぎ込んでしまう。

「見たいものしか見ない」思考は、現実を歪ませてしまっているだけではないのか。

情報を受け止める脳を歪めずに捉えていけば、全てを受け止めれば救われるのではないだろうか。

 

実際自分がどんなホムンクルスなのかを知りたがっていた伊東でしたが、弱みを人に知られたくない姿がにじみ出ていたように思えます。

 

伊東は名越によって諭され、自身もトレパネーションをした姿で幕を閉じます。

彼もきっと現実を信じたいと思ったラストだったのではないでしょうか。

 

綾野剛と成田凌

たいした物語の解釈になってませんが、本作がさらに面白くさせているのは、何といっても元カノが共通の人なのによく共演できた(大きなお世話w)綾野剛と成田凌の2人。

 

「ヤクザと世界」でも極道の世界にひた走って生きながらも浦島太郎状態になってしまう主人公を熱演していましたが、本作でも綾野剛は輝いていたなぁと。

 

記憶を亡くしたことで感情が表に出ない歪さを序盤では見せていましたが、トレパネーションによって他者と関わりを持っていくと感情が豊かになっていく過程はお見事です。

 

また左目だけでお芝居をするシーンも多いことから、顔半分で観衆に見せなければいけない難しい役どころ。

これを微妙な瞼の動きや、嘘をつくときの口角が上がる仕草などを嘘くさくなく、リアルに演じていたのが素晴らしいと思います。

 

特にこれすげえな!と思ったのが、女子高生1775と伊東が接触するカフェのシーン。

ナンパと称して伊東は女子高生のテーブルに座るところを遠くの席から左目で見つめるんです。

すると全身水のような体になっている伊東の身体に、女子高生のホムンクルス=砂が侵食していくのをまじまじと見つめるんですね。

 

この時名越は驚くわけなんですが、大袈裟に驚くのではなく、左の口角をほんの少しピクピクさせるだけでこちらに伝えるんですね。

 

喜怒哀楽ってわかりやすい方が伝わりやすいですし、観てる側も受け取りやすい。

だから役者ってオーバーアクションしがちだと思うんですけど、今回の綾野剛はきっと観たことない世界に驚いてばかりだろうからと、色んなパターンを用意したと思うんです。

 

その中の一つがこのシーンで、よくあんな微妙な表情できるなぁと感心しましたし、微妙な表情でも名越が今どんな状態かが理解できるってのがすごいよなぁと。

 

他にも自分でトレパネーションするシーンは、麻酔なしでやってるだろうから相当の痛みを伴うのにアドレナリン出まくりの顔を血だらけの格好で見せてるのは様になってました。

 

とにかく顔半分でもどんなことを思っているか考えているかをしっかり見せるのはさすがでした。

 

 

対して研修医・伊藤を演じた成田凌。

「まともじゃないのは君も一緒」でのイケメンなのに拗らせてる予備校教師もヤバかったですが、こっちもやべえ奴。

 

フェミ男っぽいファッションも研修医姿も様になる容姿でのカメレオンぶりもさすがでしたが、そこに「スマホを落としただけなのに」で見せたサイコパス、「劇場版コードブルー」のナヨナヨ感を足した感じが危なさと脆さを掻き立ててたように思います。

 

やっぱり彼が持ち味を発揮するときって、長いセリフを間髪入れずに喋るときに見せる表情だなぁと思ってまして。

今回も何かに憑りつかれたように博識を披露したり、名越を説得させる喋り方だったり、彼を否定したいんだけど心の中身を全て見透かされて手の打ちようが無くて崩れ落ちるといった所作がもう最高というか。

 

それらを容姿でコーティングしてるもんだから余計に怖いし近寄りがたいと思わせる。

 

綾野剛が顔半分で色んな表情を見せるのとは違い、彼の場合「今伊東がどんな精神状態なのか」に特化した演技だったように思えます。

最初こそ名越より伊東の方が空気を制圧していたように見せたので、精神レベルは正常だったと思うんですが、名越野の能力が開花した時、一人で左腕に金魚の鱗をかいていた時、自分が上だと思ってたのにビジョンが壊されて打ちひしがれた時、そしてラストと、今どういう精神状態かを把握したうえでの表情が印象的でしたね。

 

 

最後に

世界中が混沌と化し、メンタルがさらに疲弊しがちな状態が続いていますが、そんな時こそ「弱さ」を隠して視界を歪ませて見るでのはなく、目で見たモノをしっかり把握し受け止めていくことが大切なのではと訴えていた作品だったように思えます。

 

中々人と直接会う機会が減っていることで、どんどん内面世界にこもりがちだとは思うんですけど、そんな時こそ名越が言うように「見てほしいだけで済ませず相手を通じて自分を知る」ことが大切なのではと。

 

そんなメッセージ性を持った作品と解釈したわけで。

 

名越がいたら俺も救われたりするのかな。

実際問題自分はどんなホムンクルスなんでしょw

映画泥棒みたいな恰好だったりしてw

いや泥棒してねえから!

そんな妄想をしながら見ても楽しいのかもしれません。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10