レジェンド&バタフライ/LEGEND&BUTTERFLY
これまでドラマや映画、小説にゲームと幾度となく描かれてきた戦国武将・織田信長。
その戦いぶりや「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」などの俳句から、傲慢で尊大、冷酷無比などと恐れらていた様子。
ですが、実は慈悲の心やユーモア性のある性格も持ち合わせていたようで、戦いの場以外ではまるで違ったみたいですね。
やはり歴史上の人物の中で1,2を争うカッコよさがある信長。
今回鑑賞する映画はそんな信長をキムタクこと木村拓哉が25年ぶりに演じるということで、非常に楽しみです。
当時の彼が演じた信長は、若さゆえの生意気な感じやんちゃなイメージが、若き信長にピタリとはまった記憶がありますが、あれから円熟味増した彼がどんな信長像を我々に見せてくれるのでしょうか。
ぶっちゃけ監督があまり好みではないんですが、キムタクの信長がかっこよけりゃOKですw
いざ、感想です。
作品情報
これまで様々な作品で描かれてきた戦国武将・織田信長を、今までとは全く違う視点で描き、20億円という日本映画において破格の予算を費やしたビッグプロジェクト。それが「レジェンド&バタフライ」だ。
尾張の大うつけ者としながらも数々の修羅場を潜り抜け、天下統一あと一歩まで上り詰めた戦国武将・織田信長と、彼を影で鼓舞し続けた妻・濃姫との30年に及ぶ絆と激動の歴史を、圧倒的スケールで描く。
「るろうに剣心」や「龍馬伝」など、歴史時代劇をシリアスな描写で早大に描くことに定評のある大友啓史監督と、「コンフィデンスマンJP」シリーズや現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」の脚本に抜擢された古沢良太という異色のタッグによって、これまでにない新たなエンタメ時代劇を作り上げた。
またかつて若かりし織田信長を演じた経験のある木村拓哉が再び信長を熱演。
俳優として円熟味を増した彼だからこそ演じられた「信長像」に期待だ。
そして彼の妻・濃姫役には綾瀬はるかを抜擢。木村と何度も演技経験のあることから、絶妙なやり取りで映画を盛り上げるに違いない。
彼らのほかにも伊藤英明や斎藤工、中谷美紀、宮沢氷魚、市川染五郎、北大路欣也など大御所から若手まで幅広い世代による豪華キャスティングとなった。
魔王と呼ばれた男と、蝶のように自由を求めた女。
時代を変えようとした二人が見た夢とは。
あらすじ
政略結婚で結ばれた、格好ばかりの織田信長(木村拓哉)と密かに信長暗殺を目論む濃姫(綾瀬はるか)は、全く気が合わない水と油の関係。
ある日濃姫の祖国で内乱が起こり父が命を落とす。
自身の存在意義を失い自害しようとする彼女に、再び生きる意味と場所を与えたのは、ほかでもない信長だった。
そんな信長もまた、大軍に攻められ窮地に立たされた時、濃姫だけには弱音を吐く。
自暴自棄になる彼を濃姫は鼓舞し、二人は桶狭間の激戦を奇跡的に勝ち抜く。
これをきっかけに芽生えた絆はさらに強くなり、いつしか天下統一が二人の夢となる。
しかし、戦に次ぐ戦の中で、信長は非情な”魔王”へと変貌していく。
本当の信長を知る濃姫は、引き止めようと心を砕くが、運命は容赦なく「本能寺」へと向かっていく。
〈魔王)と恐れられた信長と、〈蝶〉のように自由を求めた濃姫。
激動の30年をともに駆け抜けた二人が見ていた、”本当の夢”とは—。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、大友啓史。
これまで「龍馬伝」や「るろうに剣心」シリーズなど、歴史ものを扱ってきたとはいえ、幕末ばかりでした。
それが今回は戦国時代の真っただ中である安土桃山時代。
今回東映側から熱くプレゼンされ快諾した脚本家の古沢良太から、第一稿をもらうやいなや「初稿で撮れる作品は初めてだよ!」と返事した監督。
また潤沢な予算を使ってのVFXも監督の腕の見せ所ですし、今回は何より重要文化財をセットとして使えたりと、大型時代劇ならではの再現力にも期待です。
登場人物紹介
- 織田信長(木村拓哉)…戦国時代のカリスマ武将。父に従い、マムシの娘と呼ばれる濃姫を正室に迎えるが、そりが合わず一触即発状態。尾張の”大うつけ者”と呼ばれる。
- 濃姫(帰蝶)(綾瀬はるか)…通称:マムシの娘。父の命令で、信長に正室として嫁ぐ。尊大な態度の信長に対し、臆さぬ物言いで対抗、あわよくば信長暗殺をも心に秘めている。
- 福富平太郎貞家(伊藤英明)…斎藤道三に仕え、濃姫が嫁ぐのを機に、ともに織田家に入る。一歩後ろで濃姫を守り支えるミスター侍魂。
- 各務野(中谷美紀)…濃姫の一番のよき理解者。時に諫め、時にやさしく言葉をかけ背中を押す。濃姫一向を温かく見守る。
- 明智光秀(宮沢氷魚)…魔王・信長のカリスマ性に魅了される、何を考えているのかわからないミステリアスな存在。誰もが知る本能寺の変を起こす。
- 森蘭丸(市川染五郎)…小姓。信長に13歳の頃より仕え、身の回りのお世話をする信長の秘蔵っ子。その上品で堂々とした振る舞いは織田家でも評判。
- 木下藤吉郎(羽柴秀吉)(音尾琢真)…陽気でお調子者な性格で、織田家のムードメーカー。一方、戦では手腕を発揮し、信長からも絶大な信頼を寄せられている。
- 徳川家康(斎藤工)…信長より安土城に招かれ、餐応を受ける。見た目はおっとりしているが、天下人の素質を垣間見せる不気味な存在。
- 斎藤道三(北大路欣也)…通称:美濃のマムシ。美濃の戦国大名で濃姫の父。尾張と和議を結んだ後、娘を織田家へ嫁がせる。下剋上の代表格。
- 織田信秀(本田博太郎)…通称:尾張の虎。尾張の戦国大名で信長の父。信長に濃姫との結婚を命じる。
- 平手正秀(尾身としのり)…信長の教育係。二代にわたり織田家に仕えた家臣。やんちゃな信長に手を焼く。
(以上HPより)
信長と濃姫の「Sキャラ」同士の恋愛模様をユーモアを交えて描いてそうなのが、いかにも古沢脚本な臭いなんですが、そこは大友監督のまじめさで打ち消すシリアスな演出になってるんでしょう。
しかし168分はいくら東映70周年記念作品とはいえ、長いぞ…。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#レジェンドアンドバタフライ 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) January 27, 2023
帰蝶が信長のケツに火をつけたことで大成していく夫婦の物語。
序盤こそ古沢良太風なユーモアがあるものの、後半はがっつり大友な無駄なシーン、無駄な尺が目立ち、168分の意味を全く感じない作品に。
ただ終わり方はカッケー。#レジェバタ pic.twitter.com/rRrnhf64Fm
やっぱり大友さんの作る映画は無駄に誇張し過ぎて嫌なんだよなぁ…
とはいえ信長と帰蝶の対等な関係によって描かれる夫婦の物語としては、解釈というか改変としてアリだとは思う。
以下、ネタバレします。
東映70周年作品、気合入ってた!
美濃のマムシと呼ばれた斎藤道山の娘との「国を守る」ための結婚故に、嫌い合った信長と帰蝶が、ぶつかりながらも惹かれあっていく姿をメインにした新しい解釈の信長伝は、古沢良太ならではのユーモアに富んだ掛け合いと大友監督ならではの壮大なショットの数々から、東映が力を入れた作品であることが伝わる一方、約3時間をかけてまで夫婦に特化した物語にしたことには大いに疑問を感じる作品でございました。
今でも家父長制というか、女は男の一歩後ろを歩くみたいな亭主関白的夫婦ってのは存在するかと思いますが、もうそんな時代じゃねえんだよってのを、敢えて信長でやってみましたというようなお話。
無論帰蝶が信長に対してあそこまで図々しく一丁前にモノを言うようなことはなかったとは思いますが、もはやこすられまくった信長の時代劇ですから、こういう役柄に改変したのは非常に面白かったと思います。
正直歴史に関しては教科書をなぞった程度の知識量であり、実際帰蝶がマムシ譲りの気の強い女かどうかは知りませんし、信長の若い頃がカッコだけつけて威張り散らしてるけど、貧乏ゆすりするほど落ち着きのないビビリだったことも知りません。
しかし本作は、そうした「カッコばかりでビビリの信長」と「知力体力男並みの帰蝶」という設定によって対等な関係を作り上げ、「信長が遺した功績は内助の功がデカ過ぎた!」、信長も帰蝶も「いやよいやよも好きの内」なお似合いカップルだった!という夫婦による愛の物語に仕立て上げたのであります。
もちろん個人的にも信長は大好きですし、できることなら夫婦メインの物語にしないで、ちゃんとターニングポイントであった「桶狭間の戦い」や「長篠の戦い」、「鉄砲を使った戦」といった部分を、潤沢な予算でやってほしかった、いわゆる「大型戦国時代劇」を見たかったんですよね。
ですけど、そちらをメインにしてしまうと帰蝶の存在が霞んでしまうわけで、2人の物語にするにはこうした「夫婦の形」を見せることして、合戦描写はなるべく少なくする構成にしたんだろうなと。
とはいうものの、戦の前の出陣の風景や、多くの血を流しケガをしながら重い体を引きずって帰還する描写、それこそラストの本能寺の変はかなり気合が入っており、るろうに剣心や龍馬伝などで時代劇を扱ってきた大友さんならではのバイオレンス且つダイナミックなシーンが素晴らしかったと思います。
そう、今回は「東映70周年記念作品」という看板を背負っており、製作費20億円を投じて作られた映画なんですよね。
実際の建造物を使っての撮影は「燃えよ剣」同様圧巻であり、クレーンカメラを使ってのオープニングや、突如血が流れたことで繰り広げる貧困民との殺陣は凄まじいものがあり、生臭坊主が群がる延暦寺での戦いは魔王である信長の本領発揮とも言える残虐性が垣間見えた映像でしたし、やはり日本映画の大作は「人の多さ」で決まる、衣装もメイクも当時を意識した装いでした。
また後半では、帰蝶の言葉通りに道を切り拓くことに執着した信長が、悪魔に魂を売ったかのような残虐ぶりとそれに苦悩する姿と、そんな彼の身を案じながらも全く聞く耳を持ってくれないことに悩む帰蝶の姿を、時におどろおどろしい悪夢や遠くを見つめる2人の姿を、行間たっぷり尺たっぷりに時間をかけて見せる演出をしており、これもまた潤沢な予算だからこそできた芸当だと言えると思います。
大友監督はここに重低音を効かせたストリングスを流しながら決め画で「大作感」を出す人で、本作でもそうした大友色が強く出ており、全然戦のシーンなんかない時代劇なのになぜか「ものすごい大作」のように見せてしまう巧さがあります。
やっぱり大友映画はまじめすぎる。
一応自分なりに本作の特徴を解説してみましたが、ここからはほぼ愚痴ですw
本作は序盤は「夫婦漫才」かのような掛け合いを見せるくだりがいくつかあり、そこに古沢良太脚本の妙を感じたんですね。
特に結婚初夜のシーンは彼の脚本の見せ場。
カッコばかり付けて男風を吹かす信長に端を発する帰蝶、やがて「謀反!」という理由にして刀を切りつけては門前祓いをされてしまう信長のだっさ~い姿、その外でただことが終わるのを待つ家臣たちがあらぬ妄想をして茶化すシーンを入れる事で本作一番のユーモラスなシーンとなるんです。
ですが大友監督、真面目な映画ばかり撮るもんだから、このシーンを可笑しく見せることができない。
寧ろ普段撮ってるような固い画ばかり見せ、さらにはトーンすらも変えない、要はユーモアな演出をできないがために、面白く感じないんですよ。
確かにやり取りだけを見れば「クスッと」する部分もあるんですが、「ははは」とはならない。それはもう演出のせいですよと。
この後の信長の熾烈な歴史を解ってるが故、シリアスな描写が続くのは想定内。
だから緩んだシーンはもうここしかないわけです。
なのに緊張と緩和の山と谷が緩すぎて一辺倒な作品になってしまってる。
168分もの長尺なんですから、そこんとこしっかり楽しませてくれよと。
後はもう、後半ほとんど眠気を襲うシーンの連続です。
恐らく信長と帰蝶が抱える悩みや葛藤、心情を行間たっぷり付けて見せたかったんだと思います。
あれだけぶつかって言いたい放題やり合っていた二人が、突如として会話の数が減ってしまうことで起きるすれ違い。
帰蝶に尻に火をつけられ邁進した天下統一の道でしたが、心を鬼にして非道なことをしなければ先へは進めないと、帰蝶への思いよりも戦にばかり目を向ける信長。
でも彼はもともとカッコばかりでビビリな男。
そこまでメンタルは強くない。
だからこそ起きる葛藤と苦悩なんですよね。
これを長ったらしくやるわけですよ。
ぶっちゃけ一回でいいのに何度も見せる。
それこそ飲めない酒をカッコつけて飲んで吐いてぶっ倒れ、子供を抱えたまま川の中に入っていく女性を止めようとしても、足元には無残に殺された者たちの骨がずらりと並ぶ悪夢。
これだけで十分伝わるんですよ、信長の苦しみってのは。
ことあるごとに黄昏る信長の画とか要らんのですよ。
帰蝶もあれだけ信長をうつけ者と煽っておきながら、既に心は信長でいっぱいなのは見てるこっちも分かってるはず。
なのに定家や各務野の前で気持ちを説明するシーンを入れる丁寧ぶり。
そんなの信長と同じで黄昏る表情一発で伝わるだろっていう。
こういうクドさに加えて、長い尺使って別々のシーンを入れるんですからそりゃ「長いな」ってなるよなぁと。
キムタクそのものに見える信長
何をやってもキムタクってのがもはや定型文と化した今。
今回もやはり何をやってもキムタクだなと感じた映画でした。
・・・このように言うとダメなように聞こえますが、彼に関しての「何をやっても同じ」芝居はもはや芸術であると僕は感じてます。
それこそこの「カッコばかり付けてビビリな信長像」がもはや彼そのものにしか見えないからこそ説得力があると思ったんです。
キムタクをやめることは一秒たりともないと自ら豪語する本人ですから、やはりこの信長もキムタクなんですよ。
眉毛をもっと細く!髪ももっと上に上げろ、帯じゃなくて紐の方がいい、肩半分出した方がカッコイイか、そんな「見た目だけのカッコよさ」にばかり気に掛ける冒頭の信長は、何というか若かりし頃のキムタクに見えて仕方なかったです。
そんな彼に面と向かって忠告し、指摘し、蔑み、罵り、終いには手まで上げてしまう帰蝶という存在が、信長を、キムタクを「本当のカッコイイ男」へと変えていくんですよこの映画は。
しかもSMAP解散してもジャニーズに留まり、妻の内助の功によって今も尚エンタメのど真ん中で活躍できることを考えれば、正にキムタク。
SNSで散々罵倒されて戦犯扱いまでされてきた彼もまた、魔王として前に突き進みながらも苦悩や葛藤をしてきたことでしょう。
しかし決して後ろは振り返らない、前へと進むだけというある種不器用な性格が、彼のカッコよさでもあるわけで。
信長が自害した年齢と同じ年齢になったキムタクが、こうして信長を演じるという縁を引きつけたのも、そんな彼だからこそたどり着いた境地とも言えるわけです。
このように強引な妄想をするのであれば、帰蝶を静香と捉えると色々当てはまるよなぁとも思える本作。
彼が50歳を迎えてもかっこいい男であるのは、もしかしたら静香のおかげかもしれない。
だから本作はキムタクから静香へのラブレターなんですよ。
・・・さっきから何言ってんだろw
つうか俺キムタク大好きだからね。
最後に
色々御託並べた感想になりましたけど、古沢×大友の相性の悪さが露呈した映画だった、しかも恐らくそうだろうなと予想していたことが的中した作品だったなぁと。
でもね、ラストの展開は良かったなぁと。
それこそ「ララランド」だとか「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」とかで感じた「IF」を見せてくれるわけですよ。
海の向こうに行って誰も知らない南蛮の地に行ってみたいという帰蝶の願いを叶えるために命からがら帰還した信長が、正に二人で渡航するというシーン。
残念ながらそれは夢のまた夢であり、そんな空想を抱きながら「ずっと好きでした!」と叫んで自害する信長の潔さと美しさ。
しかもそこで幕を閉じるというこれまた潔さと意外性、そして心に灯る儚さ。
いい意味で裏切られて終わるっていう。
史実通りとはいえ、一度は違う展開を予感させておきながら現実に引き戻す手法で、エンドロールを眺めながらちょっとした放心状態にさせる巧さ。
これは余韻が残る終わり方だなぁと。
ここだけは良かった、ここだけはw
とにかく映画に関しては戦のシーンを入れずにどんどん時代が進んでいき、ターニングポイントの裏で2人の間に何があったかをメインに描いてるもんだから、アリだけど俺が監督なら選択しない物語だったなと。
また二人の関係性が序盤こそわかりやすくなっているモノの、後半は互いの掛け合いが少なくなってしまってるせいで、気持ちが離れてるのか違うのか、明確に描けていないんですよね。
それを別々に見せて思いを馳せてますって描いても、二人の心が通じ合ってるかどうかなんて見えづらいですよ、薄いですよ。
まぁ東映記念作品なんでね、金かかった映画でしたけど、すいませんつまらなかったですw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10