マリグナント/狂暴な悪夢
イマジナリーフレンド。
基本的には児童期にみられる「実在しない空想上の仲間」を指すそうです。
そこに誰もいないのに、「空想上の仲間」が見える子供は、遊び相手や話相手として接するんだとか。
「ジョジョ・ラビット」でも、ヒトラーが主人公ジョジョの前にイマジナリーフレンドとして登場したのが記憶に新しいですが、それ自体決して異常な状態ではなく、子供ながらに精神を安定させるための現象ともいわれており、ある程度の年齢になれば消失するそうです。
自分にもイマジナリーフレンドがいたのかどうか記憶にありませんが、今会ったらどんな気持ちになるんでしょうね。
今回鑑賞する映画は、かつてのイマジナリーフレンドが襲い掛かってくるというホラー映画。
「ソウ」や「死霊館」で、ホラーアイコンを世に送り出してきた天才監督が、今まで誰も見たことのないホラー映画と豪語する、全く新しい作品なんだとか。
ホラー苦手なモンキーですが、目ん玉閉じないように見届けたいと思います。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「ソウ」や「死霊館」ユニバース、といったホラースリラー作品から、「ワイルドスピード/SKY MISSION」や「アクアマン」などの大作を手掛けるジェームズ・ワン監督が、完全オリジナルストーリーで、新次元の恐怖へと誘う。
殺人鬼が人を殺す悪夢に悩まされてきた主人公だったが、夢で見た通りの殺人事件が起きたことから、自身の過去と向き合い、やがて殺人鬼の正体を突き止めていく。
誰もが子供の頃に体験する潜在的かつ日常的な恐怖を描いてきた監督が、本作でも「子供の頃の体験」を軸に、これまでのホラー映画に対する既視感や先入観を排除し、恐怖に満ちた空気はやがて熱狂へと変化する、斬新で予測不可能な作品を作りだした。
彼女の悪夢に登場する「G=ガブリエル」とはいったい何者なのか。
空想なのか、はたまた実在するのか。
あなたの目で確かめろ!
あらすじ
マディソン(アナベル・ウォーリス)は、あるときから目の前で殺人を目撃するという悪夢を見るようになる。
超人的な能力で次々と犠牲者を殺めていく漆黒の殺人鬼による夢の中の殺人事件が、ついに現実世界でも起きてしまう。
人が殺されるたびに、殺人現場を疑似体験するようになったマディソンに魔の手が忍び寄る。(シネマトゥデイより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、ジェームズ・ワン。
「死霊館」シリーズは見てないのですが、「ソウ」や「アクアマン」、「ワイルド・スピード/SKY MISSION」など、好きな作品ばかり。
監督作を見ていると、カメラワークや演出面で彼ならではの「クセ」があるので、本作も「これぞ監督!」な演出に期待です。
予告編でも「絶対に今までと同じようなホラー映画にしたくなかった」と語る監督。
これまで幾度もホラー映画史に残る作品を製作してきた彼の真骨頂が拝めるのかもしれません。
キャスト
主人公マディソンを演じるのは、アナベル・ウォーリス。
ジェームズ・ワン製作の映画「アナベル 死霊館の人形」で主演に抜擢された彼女。
近年では「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」でトム・クルーズの相手を演じたり、フランク・グリロ主演の「コンティニュー」にも出演していました。
ワンが直接キャスティングしたかはわかりませんが、自分が制作した作品に主演してる経験があるわけですから、きっとお互いやりやすかったのでしょう。
他のキャストはこんな感じ。
幼少期のマディソン役に、「ギフテッド」、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」のマッケナ・グレイス。
他、「パーシー・ジャクソン」シリーズ、「ラブ&マーシー/終わらないメロディー」のジェイク・アベルなどが出演します。
R18作品見るの、いつぶりだろうか。
怖いの苦手なんですけど、怯えながら楽しみます!!
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#マリグナント 狂暴な悪夢 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年11月12日
タネが全部明かされた時は「おぉ!」ってなったけど、そこまでが長ぇわ。
面白かったけどね。 pic.twitter.com/oG6wayxhZL
まぁ想像できねえよこんなオチ。
スリリングなホラーでアクションですけど、テンポがよろしくないと思ってしまった大変惜しい作品でした。
以下、ネタバレします。
いきなり胸くそ悪い
血のつながりを持ちたいと願う主人公が、何者かによって殺された夫の死をきっかけに、数々の凶暴な悪夢に見舞われ、やがて自身の過去と向き合っていく姿を、外連味たっぷりで描きつつも、監督の得意とするスピーディーなアクションやゴア描写、アッと驚く展開などで予想もつかない結末へと導く、意外性たっぷりの作品だった一方で、整合性の無さやテンポや緩急の甘さなど、物語の進め具合にイマイチ乗れなかった作品でございました。
簡潔に感想を述べるとすれば、良くも悪くもジェームズ・ワン監督の作品といったところ。
死霊館も1作目だけ鑑賞してますが、本筋に入るまで非常に長く感じた節があり、本作もなかなか本筋に入っていかない辺りにヤキモキしてしまった感じがしました。
とは言いつつも、対象をこれでもかというほどメッタ刺ししたり鈍器でフルボッコする殺害シーンや、終盤ガブリエル覚醒の瞬間、そこからどうやってんの!?と思いたくなるアクションの数々など、一周回って笑ってしまいそうな意外な展開に非常にい心踊らされました。
冒頭からかなりの胸糞の悪さが漂っていたのが印象的。
2度も流産し、3度目でようやく子供を授かれると思ったのに、夫は「子供が産めないのは俺のせいか?あ?」と言って思い切り腹にワンパン。
その勢いでマディソンは壁に頭をぶつけ流血。
母体もお腹の子も大きなダメージを受けてしまうんですね。
悪気はなかったと言い訳し、謝る夫の態度には心底腹が立ったので、早く死んでしまえ!と祈りましたが、まさかこんなにも早く願いが叶うとは思いませんでした。
その夜、何者かに夫は殺されてしまいます。
部屋に閉じこもって仮眠していたマディソンを気遣い、夫はリビングのソファーで就寝していましたが、電気を消した真っ暗な部屋で急に物音が。
勝手にミキサーは動くし、冷蔵庫は開くし、テレビもついちゃう。
しかもその明かりのおかげで誰かいるように見えるではありませんか。
電気をつければ誰もいない。
はて、一体何なのよ、とキッチンを覗く夫の背後に怪しい影。
夫は常人では出来ないような力で首をへし折られ即死でした。
やがて物音に気付いたマディソンが、1階のリビングにやってくると夫の無残な死体とご対面。
夫を殺害したと思われる物体から必死に逃げるも、隠れた部屋のドアごと吹っ飛ばされて意識不明。
目を覚ました病院で妹から告げられたのは、夫の死と、3度目の流産。
これは凹みます・・・。
DV夫と別れを告げようと決心した矢先に身ごもった子供。
生物学的に自身とつながりを持ちたいと願っていたマディソンにとって、お腹の子は正しく希望だったのでしょう。
一体誰が彼女をここまで追いつめてしまったのか。
本作はこの「血のつながり」を執拗に求める彼女の苦悩が一つのポイントになっていくんですね。
とかいいつつ、速攻で「私は養子縁組でやってきたの。だからあなたと血が繋がってない」と妹にカミングアウトしちゃうんですけど。
てか、子供の頃に両親が教えると思うんですけどね。
何でお姉ちゃんと髪の色が違うの?って妹は絶対疑問に思ったはずなんですけど。
何故大人になって明かし、あそこまで驚くのか疑問に思ってしまいました。
ガブリエルの怖さ。
退院後も自宅に侵入する謎の物体に脅えるマディソン。
安全錠をつけて完璧に防御態勢に入るんですが、それでも破られてしまい、マディソンを恐怖で覆う謎の物体。
夜な夜な洗濯物を片付け、1階に降りると猛ダッシュで走り去る影を発見。
また不審人物が。
恐る恐る降りていくと、洗濯機の扉越しに、見知らぬ女性の叫ぶ姿が。
すると突然自宅の景色が煙のように消え、見知らぬ女性がいる部屋へと早変わり。
マディソンは、見知らぬ女性が謎の物体に殺されてしまう現場を目撃してしまうのでした。
金色に光るトロフィーを凶器に、女性にまたがりフルボッコする謎の物体。
キッチンから飛び散る血が、ヤツの恐ろしさを物語っています。
腹の底から叫んで意識を取り戻したマディソンは、朝を迎えた洗濯機置き場で目を覚まします。
あれは夢だったのか現実だったのか。
なぜこんな夢を見なくてはいけないのか。
まだ夫が死んだ時のトラウマが消えていないのか。
様々な謎が頭を駆け巡り困惑していくマディソンをよそに、再び凶暴な悪夢が訪れるのです。
2度目の悪夢は、太った老人が殺害される夢。
降りしきる雨の夜、1度目の悪夢に出てきた女性と関係がある模様。
彼女を訃報を知った彼でしたが、途中で電波が切れてしまった電話を置くと、締めていたはずの窓が開き、雨が入っていたことに気付きます。
奥の部屋からタオルを取り出し床を適当に拭き、床に就く老人。
すると場面はマディソンの部屋に切り替わり、寝返りを打つマディソンは前の場面で寝た老人が隣で寝ていることに気付きます。
これはまたあの悪夢だ、そう感じ取ったマディソンは自分の背後からあの謎の舞台が近づいてくることを察知。
彼は老人の上にまたがり、1度目の悪夢で凶器として使っていたトロフィーを改造した刃物で老人をメッタ刺しします。
何とか謎の物体の顔だけも見てやろうと、恐怖におびえながら目を見開くマディソン。
そこで見えたのは、ぐしゃぐしゃの皮膚で覆われた顔と、憎悪で満たされた鋭い視線でした。
警察に駆けつけ、妹と共に事の全てを語るマディソン。
気持ち悪いバケモノが老人を殺した夢を見た、1度目に見た悪夢も現実に起きた事件と同じだった。
何か事件が起きたに違いない。
そんな話を聞いても信じようとしない刑事たち。
夢で見た景色を事前に調べていたマディソンのおかげもあって現場に急行した一行は、マディソンの言った通り、無残な死体となった老人とご対面。
一体何が起きているのか訳が分からない一行。
マディソンは「ガブリエル」という名前に心当たりを感じ、実家へ。
警察は1度目の悪夢で殺害された女性博士の部屋にあった資料から、マディソンと何らかのつながりがあるという手がかりを見つけ、それぞれが犯人を捜す流れになっていきます。
ガブリエルは、マディソンが養子としてやってきた頃、何とか心を落ち着かせようと彼女なりに努力した結果生み出された「空想上の友達=イマジナリーフレンド」の名前でした。
僕自身養子として育ったわけではないので、この時の彼女の気持ちを理解できる立場にありませんが、いきなり「今日から私たちがあなたの両親よ」と言われても、物心つかない子供が簡単に受け入れられるのは容易ではないことは理解してます。
しかももうすぐ妹ができるとなると、血の繋がっていない自分は捨てられる出の花以下と不安に駆られたりもするでしょう。
このようにマディソンの幼少期は、表向きは家族として仲睦まじく過ごしていても、心の中では折り合いがついていない、不安定な時期だったのであります。
そりゃイマジナリーフレンドであるガブリエルに頼るのも無理はない。
ですが、なぜ今になってガブリエルが現れたのか。
物語は徐々に彼の正体について言及し始めていくのであります。
しかしこのガブリエル、なかなかの俊敏性と運動神経です。
3度目の悪夢を見始めたマディソン。
夢を見ている最中は、ただただその場で身動きが取れない状態で惨劇をみせられるだけなんですが、このタイミングと同時に男性刑事が次の殺害がどこで行われるかを推理し、現場へ急行していたのでした。
殺害現場にやってきた刑事はガブリエルと対峙。
刃物で襲ってくるガブリエルに対し、拳銃で応戦する刑事。
あまりの運動神経に防戦一方だった刑事でしたが、拳銃で反撃するや否やガブリエルは逃亡。
手すりにつかまり手だけで降りていくガブリエルに唖然とする刑事。
暗がりの地下道や廃墟のような空間を、パルクールのようにスルスル走っていくガブリエルに何とか食らいつく刑事でしたが、寸での所で逃げられてしまいます。
それ以外にも、終盤での覚醒したガブリエルは、警察署内の収容所にいる女性たちを縦横無尽に駆け回って殺害。
その破壊力はとてつもなく、転がった女性の顔を踏みつけようものならば木っ端みじんに砕け散り、腹に一発パンチをお見舞いしようものならば、背中まで貫いてしまう強さ。
女性たちの顔も握力だけで引き裂いてしまうわけで、とんでもねえバケモノが出てきたもんだなと、興奮と拍子抜けが同時に押し寄せます。
もちろんこれだけ強いわけですから、屈強な体を持つ警察官らも一網打尽。
電波を操れる力を持っているので、一斉に明かりを消し自分のフィールドを作り、一斉にやってくる警察官たちをしなやかな動きで銃弾を交わしながら刃物でサクサク射していくではありませんか。
正直こんな展開になるなんて誰が予想したでしょうか。
とんでもないホラーアイコンの誕生だって宣伝されてましたけど、その通りです。
きっとガブリエルは再び姿を現すでしょう。
その時まで待ち遠しいです。
言いたいこともいくつか
とまぁ、終盤での覚醒したガブリエルや彼の正体など、散りばめられた伏線が回収されていく展開は非常に面白い内容だなぁと思いましたが、やはり本筋に行くまでの流れが遅く感じ、ヤキモキしたのであります。
基本的な物語の視点はマディソンですが、悪夢を見始めるまでの流れがテンポが悪いと感じます。
結局のことろDV夫がマディソンに危害を加えたことが原因でガブリエルが目覚めてしまったわけですが、この辺りをもうちょっと端折ることができなかったかなぁと。
確かに胸くそ悪いしマディソンに感情移入できることもあって端折っちゃいけない部分だったかもしれないんですが、体感時間を短くできる工夫はできたんじゃないかと。
退院してからも再び侵入者が出てくる件とか正直カットしてよかったし、退院してすぐ悪夢を見る流れの方がテンポが良かったのかなぁと。
あとは男性刑事が見たガブリエルは実存したってことでいいんですよね?
ならばなぜ終盤で後頭部から出てきたのかよくわからず。
マディソンがガブリエルの悪行を見ている時は寝てるんですよね?
実体があるのかないのか、その辺の線引きがよくわかりませんでした。
また、何故ガブリエルはあんな超人的な運動神経を持っているのか説明はなく、ちゃんとした目的があるにもかかわらず無関係の人も殺害していくのはよくわかりません。
というか、序盤で拉致した人物を最後まで生かしておくのかもよくわかりません。
メインディッシュってことだったんでしょうか。
これまでのホラーあるあるをやらないで作ったとか言ってますけど、結局電気付ければいいのにつけないまま部屋に入ったりとか、様々な箇所で死亡フラグ立ってるのに死なないってのは1度ならいいですけど、2度も3度もやってたら読めちゃいますよ。
この辺はホラー映画ファンなら「なるほど!」ってなるんでしょうけど、恐怖には感じませんでしたね。
あとはホラーからアクションへとジャンルをスライドさせていく流れは「透明人間」と大差なく、僕はあっちの方が怖くてアクションも面白いなぁと。
ジャンプスケアの凄さも加味して。
またこれはある意味褒めポイントでもあるんですけど、僕は音で煽る演出が非常に苦手でして。
いわゆるジャンプスケアってやつなんですけど、本作でもガンガン使われてましたね。
先ほどの死亡フラグ立ってるのに死なない件とかでも、音でガンガン煽って結局死なないってパターンで嫌な気持ちになりましたけど、他にも全編通してこのジャンプスケアが多用されてました。
なんだろ、もちろん怖いんだけど、大きな音が出れば何かあるってのはすぐわかるんですよ。
ホラーあるあるという先入観を削除したかったら逆のことをやればいいのになぁと思ってしまいました。
背後にガブリエルの姿が出るときとか、デデーン!て大きな音が出ますけど、逆に無音の方が怖くないですかね。
色々な効果を足していくのが監督っぽいといえばそうなんですが、もっと引き算をしてもいいのではないかと。
最後に
一応核心に触れず感想を書いてみましたが、確かに本作は事前の告知通り「ネタバレ」を踏まないで見たほうが絶対面白いです。
冒頭のタイトルクレジットで流れる映像から、シアトルの地下ツアーガイドの正体、マディソンが執拗にこだわる「血のつながり」、彼女の幼少期に抱いてた負の感情、何が病院で行われていたかなどを最後に種明かしする終盤はむちゃくちゃ面白いです。
きっと続編が製作されるんでしょう。
監督はプロデュースに回って別の監督にやらせるってパターンで。
それはそれでみますけど、今回の鑑賞前の期待値ほどではないかなぁ。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10