マッシブ・タレント
いつからだろうか、彼の作品を見なくなったのは…。
90年代が思春期だった人間にとって、ニコラス・ケイジという男の存在は大きい。
下手したらシュワちゃんスタローンブルース・ウィリスと肩を並べてもいいほどに。
「ザ・ロック」、「コン・エアー」、「フェイス/オフ」、「60セカンズ」、「スネーク・アイズ」、「アダプテーション」、「マッチスティック・メン」、そして「ナショナル・トレジャー」など、とにかく彼が主演のアクション映画や大作が大好きだった俺たち。
しかし、いつからだろうか、彼の作品を見なくなってしまったのは…。
今回観賞する作品は、往年のハリウッドスター、ニコラス・ケイジが本人を演じるといいう変わったシチュエーションで描くアクションコメディ。
本作をきっかけに、離れてしまった彼への気持ちを再び燃え上がらせることができるのだろうか。
そして今の位置から這い上がり、再びスターダムへの階段を上っていくことができるのか!?
早速観賞してまいりました!!
作品情報
巨匠フランシス・フォード・コッポラを叔父にもち、「リ-ビング・ラスベガス」でアカデミー賞主演男優賞受賞を皮切りに、90年代の大作映画で活躍。
しかしのちの作品での興行的失敗、結婚と離婚の繰り返し、度重なる浪費など、公私に渡り問題を起こしてきたニコラス・ケイジが、すべての借金を完済し、満を持してカムバックした作品は、なんと架空の自分を演じることだった!
金銭面に苦しむかつてのハリウッドスターが、疑惑にまみれた大富豪にスパイ活動をする羽目になってしまう珍騒動を、かつて演じた作品をセルフオマージュしながらユーモラスかつアクション盛りだくさんな「ニコラス・ケイジによるニコラス・ケイジ」の映画。
監督には「恋人まで1%」で商業監督デビューしたトム・ゴーミカン。
共演には、「キングスマン・ゴールデン・サークル」のペドロ・パスカル、「マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり」のシャロン・ホーガン、「スーサイド・スクワッド」のアイク・バリンホルツ、そして「マトリックス:レザレクションズ」のニール・パトリック・スミスなどが出演。
シットコムやコメディ作品に多く出演する俳優陣が、面白さを加速させていく。
全世界67か国でベスト10入りを果たした本作。
日本もその仲間入りを果たすほどのヒットとなるか。
彼は決してどん底俳優ではないことを本作が証明するであろう。
あらすじ
ハリウッドスター、ニック・ケイジ(ニコラス・ケイジ)は悩んでいた。
多額の借金を抱え、心から望んでいた役は得られず、妻とは別れ、娘からは愛想をつかされていた。
「かつて栄華を極めた俺の人生はもう取り戻せないのか――」
悲観する彼の下に、スペインの大富豪の誕生日パーティーに参加するだけで100万ドルが得られる高額のオファーが舞い込む。
借金返済のため渋々受け入れ、スペインへ飛んだニックを、彼の熱狂的なファンだという大富豪ハビ(ペドロ・パスカル)が待ち受けていた。
最初は乗り気ではなかったニックだが、映画の趣味が合うハビと意気投合し、友情を深めていく。
ところがある日、CIAのエージェントがニックに接近する。
ハビの正体は国際的な犯罪組織の首領で、彼の動向をスパイしてほしいというのだ。
ハビとの友情をとるか、それとも国家のために働くのか。
ニック・ケイジの俳優人生を懸けた一世一代の大仕事(ミッション)の幕が上がる。(HPより抜粋)
キャスト
主人公ニック・ケイジを演じるのはもちろんこの人ニコラス・ケイジ。
いったいなぜ彼はスターからどん底へと落ちてしまったのでしょうか。
彼は多数の趣味を持っているために浪費が激しく、さらには2009年、元マネージャーからのアドバイスによって始めた不動産投資の失敗によって多額の借金を抱えてしまったそう。
そこから彼は借金完済のため、46本ものB級映画に出演(2010年以降)していくことになります。
あまりの狂演ゆえにカルト映画的扱いされた作品もありますが、基本的には興行的にうまくいかない作品ばかり。
しかし、森の奥でひっそり暮らすトリュフハンターが、奪われてしまった豚を取り戻す姿を描いた「PIG/ピッグ」での演技が高評価を受けたことで、彼の風向きが変わっていきます。
いくつかの批評家賞を受賞したことから、その年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートするかもとささやかれるほどに。
借金を完済した彼が、演技派俳優としての道を再び歩んでいくことは、にわかながらファンといしてもうれしい限り。(とりあえずゴーストライダー3お願いします!)
本作はこうした道のりも自虐込みで描かれていたりするんでしょうか。
いったいどんなハチャメチャな内容になってるんでしょうか。
過去作見返して気持ち作ってから観賞したいと思いますw
ここから観賞後の感想です!!
感想
#マッシブ・タレント 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2023年3月24日
ペドロパスカル演じるハビがニックに送る眼差し。これが全て。
ニコラスケイジは今でも落ちぶれてないしいつだってヒーローなんだ。
それを証明した映画だった。
隠し球女優のいきなりの登場に笑ったw
あとパディントン2で感動してくれてありがとうニック。 pic.twitter.com/joiFNDrCF3
ニック・ファッキン・ケイジは健在!!
誰が落ちぶれた俳優だって?まだまだやれるって!!
ハビがニックへ送る眼差しを見て、ちょっとばかし涙…。
以下、ネタバレします。
良きパパでありアメリカン・ヒーロー。
出演映画に恵まれず借金生活を送るハリウッド俳優ニック・ケイジに突如舞い降りた仕事が、あれよあれよとCIAのスパイをさせられる羽目になっていく物語は、ハイテンションで自分自身を演じ続けるニコラス・ケイジの姿に、当時興奮した映画の役を重ねてみてしまうほどほれぼれしてしまう懐かしさ、そしてそんな過去作へのオマージュや小ネタを余すことなく挟みながら、おっさん2人のイチャイチャぶりに萌えてしまう可笑しみなど、「復活」という言葉より「健在」を知らしめたニック・ケイジの新たなる伝説映画でございました。
冒頭でも書いた通り、一体いつから彼の映画を見なくなってしまったのか、なぜ心が離れていってしまったのか、自分でも不思議でしょうがなかったわけですが、本作を鑑賞するにあたって何作かおさらいしたり未見の過去作に手を出してみたりと、それなりに気持ちを作って臨んだのであります。
それが僕にとって彼へのせめてもの償いであり、かつて娯楽大作を楽しませてもらった富としては当然の行いだろうと。
おさらいしていくうちに本作への期待が高まり、結果非常に楽しめた作品だったのはもちろん、憑依型俳優の代表としてまだまだいけるじゃねえか!全然年老いてねえじゃねえか!むしろ若くなってねえかニコちゃん!!と笑い泣きしながら鑑賞できました。
劇中での役柄は本当にニコラス・ケイジが歩んだ人生と変わらない設定で、借金あるし元妻との間には子供がいたり、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督の映画に出たいとか自身で交渉したり、しかも目の前で演じ、さすが顔芸の男と思わせる圧巻の芝居にも拘らず、監督ドン引きっていう一連の流れに、笑いと悲しみがこみ上げるじゃないですか…。
しかも映画オタクが災いして娘に自分の好きな映画を押し付けて娘ゲンナリしてるっていう設定もおかしくて、あくまでフィクションだとは理解しつつも、彼の実生活ってこんなことしてるのかなぁなんて思いこんでしまうほど。
本作の肝は、かつてのハリウッドスターだったニコラス・ケイジは落ちぶれてなんかいない、寧ろまだ輝かしい姿を放てる男だという証明と、そんなスターが娘の前でもヒーローとして輝くために必要なことに気付かされるという二つの部分を描いた作品だと思うんです。
彼を誕生日パーティーに呼んで顔を合わせるや否や興奮を隠せないでいるハビは、きっと本作を手掛けた監督の立ち位置だろうし、何なら世界中で彼の事を未だ好きでいるファン、そして僕のように一時離れてしまったけどやっぱりニコちゃん最高!と興奮する人たち全てを物語った表情だったと思うんですよ。
そんなファン代表の前で、俺が作った映画の主演を演じてくわけですから、何よりもカッコいいニコちゃんになってるのは当たり前で、しかもお父さんの勇姿を家族にも見てもらおうとする配慮ですよw
ハビよ、どれだけニコちゃん大好きなんだ!
笑いのオンパレード
もう少し具体的な感想を語っていきたいと思います。
何といっても本作はニコラス・ケイジがセルフパロディをしているという点。
冒頭から「コン・エアー」を見て「ニコラス・ケイジ最高」なんて彼氏と素敵な映画ライフを送っている女性が映りますが、彼女は大統領選挙に立候補する政治家の娘で、なんと誘拐されてしまうわけであります。
そんな彼女が人質から解放してくれたのがニコラス・ケイジ本人であり、「ニコラス・ケイジ最高」という言葉が伏線回収されるという流れ。
この映画の世界ではみんなニコラス・ケイジを愛しており、まさか自分を救ってくれたのがニック・ケイジだなんて最高のシチュエーションじゃないですかw
こんな感じでガンガンニコラス・ケイジ出演作が放り込まれていくんですが、一番の爆笑ポイントは、彼を招待したハビのコレクション部屋。
CIAから頼まれた潜入捜査の過程で、政治家の娘を匿ってるかもしれない部屋を見つけたニックでしたが、その姿をハビに見つかってしまうわけです。
娘をさらった黒幕と言われているハビにバレてしまったかもしれないという緊張感漂うシーンでしたが、いざ扉を開けるとそこには「フェイス/オフ」で使っていた黄金の二丁拳銃(ニコちゃんのマネキン付き)に、「コン・エアー」で娘に渡す誕生日プレゼントだったウサギのぬいぐるみ、「マンディ/地獄のロード・ウォーリアー」で使ったチェーンソー、「ナショナル・トレジャー」のポスターに、「ザ・ロック」でキーアイテムとなった毒ガス爆弾(緑色の玉が連なったアレね)などなど、一体どうやって収集したのかわからん位コレクションがずらりと並んでいるのであります。
見てるこっちは爆笑モノでしたが、当の本人はあまりの数の多さと希少価値のあるモノばかりで、寧ろ感心していたご様子。
特にフェイス/オフの拳銃は特注したものだそうで、ニック本人も欲しがるほど。
実際フェイス/オフは、ハビ自身が挙げる「好きな映画ベスト3」のひとつであり、クライマックスでもニック本人がこの銃を使ってハビと対峙するというシーンまで用意されており、本作のオマージュ作品の中でも1番重要な位置づけだった出のはないでしょうか。
だってフェイス/オフはおもしれえもんな!!
また、本作ではニコラス・ケイジ出演作品以外にも言及したセリフが多々ありました。
なかでも「フェイク」が出てきたのは意外。
CIAに頼まれて潜入捜査する羽目になったニックは、ハビに本性を悟られないように彼の要求を仕方なく飲んでいくことに。
まずはLSDでキメようぜ兄弟、と言わんばかりにクスリをやる羽目になったニックは、ハビとドライブしながらラリった表情で笑わせてくれるんですが、CIAのヴィヴィアンからは「何やってるの」と責められるんですよね。
でもそこでニックは、彼の友人でもあるジョニー・デップが出演した「フェイク」を引用して、潜入捜査を辛さを吐露するのであります。
実際ジョニデも劇中でマフィアのボスであるアル・パチーノに強要されて薬物に手を出し、本職を忘れて彼に寛恕移入していく物語でしたから、その気持ちが今なら痛いほどわかるということだったんでしょうね。
他にもハビが好きな映画ベスト3に挙げたのが「パディントン2」。
カリガリ博士を挙げた直後、もったいぶって発表しなかったハビですが、満を持して発表したのがこのパディントン2で、さすがのニックも「おいおいなんでだよ!」とツッコむ始末。
あんなのどこがいいんだ、なんて僕も当時は思っていて前作はスルーしちゃった経緯があり、この時のニックの気持ちが痛いほどわかります。
でも、ハビは悪いことから足を洗っていい人でありたいという願望があり、恐らくそんなハビを変えたのがこの映画だったんでしょう。
後に二人でビデオ鑑賞して号泣するシーンは爆笑モノでしたw
そう、パディントン2はラストの善意の大集合が泣けるんだよ!!
他にも「ワイルド・アット・ハート」の時のニコラス・ケイジがニックの前に現れて、彼を鼓舞する件も最高。
お前はハリウッドスターなんだ、大作で7番手に位置する作品に出て何になる、それを娘に見せてナンボじゃろうが!とまくし立て、挙句の果てには自分とキスをするという何とも破天荒なもう一人の自分w
ワイルドアットハートで演じたニコちゃんもだいぶハイテンションでしたからね~w
しかもこれ「アダプテーション」で一人二役を演じたことへのオマージュとも取れるシーンのようで、いろいろ手の込んだことをしてるんだなと改めて感じました。
それで言えば、酒を持ってプールに飛び込むシーンも「リービング・ラスベガス」へのオマージュだそうで、飛び込んで助けるハビは娼婦サラってことでしょうか。
他にも飛行機内で「ザ・ロック」を見ているニックや、ハビとハビのお父さんが和解した作品が「不機嫌な赤いバラ」だとか、「コレ大尉のマンドリン」は過小評価されてるとか、セリフの中でもたくさん過去作が登場しており、正にニコラス・ケイジワールドでしたね。
こちらの記事を参考にさせていただきました。
物語に関しては物足りなさが。
このように、全編通してニコラス・ケイジへの賛辞とコメディ色満載の映画だったんですが、お話関しては少々消化不良といいますか、もっと捻っても良かったかなぁという感想。
ザックリ要約すると、落ち目のニコちゃんが金目当てでオファーを受けた案件は、自分の大ファンではあるものの実は犯罪組織のボスだった、しかも彼は政治家の娘を誘拐しているかもしれないというCIAの情報を聞いたニックは、スパイとして動く羽目に。
あの手この手で娘の居場所を嗅ぎまわってるうちに、ハビの仲間ルカスに勘付かれてしまう。
しかもハビは組織の表向きのボスで本当のボスはルカスだった、てことでニックを殺すよう命じられたハビは、ニックと対峙、しかもにっくの娘もさらわれてしまったので、ここはハリウッド映画で経験したスキルを使い救出作戦を実行、最後ルカスをとっちめてハッピーエンド…と思いきや、実はこれハビが作ってニックが主演した映画でした、というオチ。
もしかしたら最後は実際起きた出来事を映画化したというオチとも取れるんですが、そもそもハビが映画の脚本を読んでほしいとニックに言った時点でオチが読めてしまいましたね・・・。
多分映画になるんだろう、そしてニコラス・ケイジは再びスター街道をひた走るんだろう、そんな映画になるんだろうと。
それはそれでいいとして、ハビは組織の人間なんだからそう簡単に映画製作に携わって雑誌のインタビューとか受けれるのかどうか。
普通組織の人間だからルカスと一緒に捕まってるんじゃないの?という邪念を抱いてしまいましたw
細かいツッコミは置いとくとして、全体的によくある潜入捜査モノになってしまっていて、もっとハチャメチャな展開にしてほしかったという贅沢な不満もあります。
例えば、ニックを全員がダマしていたようなオチでもよかったというか。
家族もハビもCIAも実はグルで、ニックに父親としての自覚を持ってもらうために一芝居打った、しかも久々に人質救出系のアクションを映画をニックに演じさせることで、俳優なんて辞めるな!と背中を押すみたいな流れというか。
こっちの方が潜入捜査に大どんでん返しも加わってさらに楽しめたんじゃないかなぁと。
あくまで理想ですけどねw
最後に
ニコラス・ケイジの出演作を久々に見るために、過去作を見返して臨んだ本作。
それを含めて非常にニコラス・ケイジを堪能できたし、何よりあの時のようにもっと大きな映画で活躍してほしい、なんなら借金返して新しい家族作ってっていう再スタートを切ったわけだから、変なB級映画ばかりでなく、A級、S級映画にも呼ばれるような活躍をして、アカデミー賞もう一回獲っちゃいなよ!と。
また本作の素晴らしい部分は、ペドロ・パスカルの存在ですよ。
今じゃドラマシリーズで大活躍の彼ですけど、映画に関してはちょっとご無沙汰だったんですよね。
彼も久々に見たわけですけど、まぁなんて微笑ましい表情をする人なんだと。
大好きな人とひとときの時間を過ごすおじさんの顔ってこんなにも可愛らしい表情をするのかとw
そんなブロマンス要素もたっぷり含んだ映画でもあるんですよね。
ホント彼の眼差しはファンが彼を見つめる眼差しそのもでしたよね。
それがすべてを物語っていた映画でしたよ。
これからも彼を応援するべく、過去作にも手を出していきたいですね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10