search #サーチ2
行方不明となった娘を探すべく、あらゆるSNSを駆使して奔走する父親の姿を、全編PC映像で展開した「search/サーチ」。
主観でしか娘を見ていなかった父が、初めて彼女の中身=SNSを知りつつ単独で捜索する姿を、PC操作したり画面を見つめながら様々な表情をみせることで、ドラマチックでありながらサスペンスフルに仕上げた、画期的な作品でした。
ただ一つ懸念したいのは、デジタルと社会が密接にかかわる時代となった今、こうした当時の最先端テクノロジーを題材にしてしまうと、数年後ものすごく古臭く見えてしまうこと。
この映画が作られたのは5年前ですが、5年という月日は、人間の感覚ではつい最近のことに思えても、技術の進化を観点とした場合、あまりの変化を遂げています。
SNSでも5年前にTikTokって存在はしたかもですけど、トレンドではないはず。
だから、この「サーチ」という映画自体も、シリーズとして定期的に続編製作することで、中身もデバイス自体もアップデートしてほしいなと思うんです。
きっとSNSの歴史資料として希少価値のある作品になるのではと。
今回観賞する映画は、その続編。
といっても物語自体の続編ではなく、全編PC画面という設定をそのまま受け継いだもの。
今回は娘が行方不明のお母さんを探すというお話。
きっと一筋縄ではいかないはず。
早速観賞してまいりました!!
作品情報
物語すべてが「PC画面」のみで展開するスリラー映画「search/サーチ」は、確かなアイディアと巧みなストーリーテリング、「検索スリラー」なるBUZZワードが生まれるなどして大ヒットに導いた革新的な映画。
そのシリーズ第2弾となる作品を、前作で監督デビューし、束縛する毒親からの逃亡を目指す娘を描いた「RUN」でも、その才能を発揮したアニーシュ・チャガンティの編集を携わっていたニック・ジョンソンとウィル・メリック二人が共同製作した。
コロンビア旅行から帰国するはずの母が行方不明となったことから、デジタルネイティブ世代の娘が、あらゆるSNSやウェブサービスなどを駆使して探す姿を、前作同様全編PC画面のみで構成された映像でスリリングに描く。
電子メールが当たり前だった90年代から加速を強めていくネット技術。
現在ではAIが適切な回答をしてくれるChatGPTなるものまで登場し、日々進化する技術に必死に追いつこうとする現代人。
中でもデジタルネイティブ世代と呼ばれるZ世代たちは、いとも簡単に吸収し慣れた手つきで使いこなしていく。
そんな10代の女性を主人公に描く本作は、前作以上にネットを駆使。
あらゆるウェブカメラ映像から現地で働くサービス業の人間まで雇うなど、私たちが使ったことのないサービスまで簡単に高速で使いこなしていく姿は、驚きを隠せないだろう。
また前作同様物語のからくりも健在で、それまで知らなかった母の姿や、前作から5年の間にSNSはどういう闇を作ってきたのかなど、ドラマや社会派の一面も担った作品となっている。
主演の高校生ジューンを演じるのは新星ストーム・リード。
「透明人間」や「ザ・スーサイド・スクワッド」、そしてサバイバルゲームをTVシリーズ化した「ラスト・オブ・アス」に出演し話題となった彼女が、母親の行方を真剣な眼差しをしながら演じていく。
あまりの情報量のため全画面が伏線となっている「サーチ」。
すべての人間が記録される今、母親探しは簡単にできるだろうか。
あらすじ
ロサンゼルスから遠く離れた場所で行方不明になった母を探す<デジタルネイティブ世代>の高校生の娘ジューン(ストーム・リード)。
検索サイト、代行サービス、SNS…使い慣れたサイトやアプリを駆使し、捜索を試みる。
スマホの位置情報、監視カメラ、銀行の出入金記録──
人々の行動・生活がデジタルで記録される時代、母は簡単にみつかるはずだった──
事故なのか事件なのか? 不可解な出来事はSNSで拡散され、国境を越えて大きなトレンドになっていく──
BUZZに翻弄される中、真相に迫ろうともがくジューン──
そこは“秘密”と“嘘”にまみれた深い深い闇への入り口だった──。(HPより抜粋)
感想
#サーチ2 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2023年4月14日
SNSを駆使すること以上に、こんな簡単に個人情報を網羅できるネット社会に驚き。そしてすぐ順応できるZ世代!
スピードとスリリング、ハートフルを緩急つけて見せる演出と錯綜していく情報を小出しにすることで集中力を切らさない。
1より断然こっちの方が面白い。 pic.twitter.com/4yez3u4Mgl
続編というアップデートとして完璧。
前作よりも事件性の規模を広げたことで、よりSNS機能を活用した世界観が素晴らしい。
それ以上にミステリーとしても優れた物語性を感じた良作でした!
以下、ネタバレします。
おじさんはあそこまで駆使できませんw
夫との死別を経て新たな婚約者と共に婚前旅行に出かけた母の失踪を、ありとあらゆるSNS機能からサブスク、スマートウォッチといったデバイス、そしてレンタルおっさんを駆使して探す娘の物語。
全ての個人情報がネットで探せてしまう時代性を危惧した面を、敢えて逆手に取ったような情報網によって、FBIなんて要らないのではないかと思える利便性を感じさせながら、両親の隠された過去を紐解くことで生まれる母との絆、ネット時代の目まぐるしい変化の如くスピーディーな大量の情報、あふれるほどの謎の多さと計算されたミステリー性も優れた、前作から相当なパワーアップ、もといアップデートされた続編でございました!!
いや~面白かった!
もうね、画面いっぱいに情報が溢れていて全部把握できませんw
ず~っとPC画面、またはスマホ画面。
目まぐるしく画が変わる手法は明らかに前作よりもバージョンアップされてるし、何よりそのデバイスを使いこなすのが前作ではお父さんでしたが、今回はZ世代。
グーグルアカウントはもちろんのこと、インスタ、フェイスブック、imessageに、ウーバー、マッチングアプリ、さらには使ったことのないサービスや検索、果ては現地にいる「レンタルおっさん」を雇ってこき使うというサービスを、どれも躊躇なく利用して、あっという間に使いこなす順応性。
さらにはセキュリティのために付けた庭先のカメラから、観光地や市街地に設置されたライブカメラ、スマホの位置情報を使ってのルート探し、履歴が特定されないメールサービスなど、多様なサービスで捜索する姿を超高速スピードで見せていくテンポがまた心地よい。
なんですか、今はスクリーンビューワーってやつで誰かのPCを個人が勝手に覗けちゃうんですか?こわっ!!
あと何、パスワードを探してくれるサービスまであるんですか??
こわっ!
そんなのギリギリアウトなんじゃない?ってサービスも駆使しながらお母ちゃんを探す娘の本気のデスクワーク的探偵業務が、とにかく面白いんですね~。
先ほども言ったようにZ世代が主人公ということもあって、当たり前のようにPCをつけっぱなし。
そこから離れない姿は、おじさんとしては考えられませんし、何よりどこへ行ってもSNSで位置情報から何をしているかまで晒し、それをポップ且つエンタメチックにSNSにアップしてしまう神経。
自分もそういうことを全くしないわけではありませんが、「もしこれをアップしたらどうなってしまうのか」という考えってやっぱり働くわけですよ。
一度立ち止まってから行動するという躊躇を常に抱いてSNSをやってるわけですが、彼らはそれすらしない。
決して彼らを咎めてるわけではなく、世代間によってこれだけSNSに対する価値観が違うんだなぁと本作を見て改めて思い知らされましたね。
また面白いのは主人公が特定の人物のアカウントのパスワードを探して侵入して情報を得るんですが、肝心な大人のパスワードの設定がゆるいw
映画的都合でもあるとは思うんですが、この映画が見せる世代の価値観の違いの肝って、こういうリテラシーの高低感なのかもしれないですね。
探しにくいワードとか二段階認証は必須だよ!!
また新しいサービスもいちいち評価やレビュー、危険かどうかなど調べずに、サクッと新規登録してログインしてすぐに使い方をマスターしてしまう、ある種クレバーな決断力。
もちろん今回は「行方不明の母の捜索」がメインの話ですから、いちいち躊躇してられないという設定なのかもしれませんが、それにしてもどんどんアプリをダウンロードして活用するんですね。
ホント自分では考えられませんw
ミステリーとしても面白く見せてくれる
そういった世代間の価値観の違いに驚かされながらも、本作は「母親探し」の題材をとにかく面白く見せてくれることが一番素晴らしいところ。
前作の冒頭では、まるでネットの歴史を見てるかのようなPCの進化を、家族の思い出ともに見せていくという素晴らしい演出でしたが、今回もまた家族の映像を通じて、主人公と母親の過去に焦点を絞って見せてたんですよね。
父親とはしゃぐ小さい娘の映像を、母が編集作業、いや、アカウントの削除をしていくというPC画面で始まります。
これは父親が病気で亡くなったことでPCのデータを整理し、新しい婚約者と共に新しい家庭を築いていくという母親の決心の表れのように見せてるんですよね。
もうこれが既にミスリードだったんですが!!!
こうして始まる物語は、本作の肝である「全編デバイス画面」をベースに、目まぐるしいスピードでブラウザが閉じたり開いたりを繰り返していくんですね。
前作で僕は不満に思ったことがひとつだけあって、それがニュース映像を見せたってこと。
あくまでPC画面なんですが、ニュースをリポートしているリポーターの視点で見せちゃってたので、それってもうPC画面を見てる人の視点じゃないでしょと。
ルール違反じゃね?と思ってしまったんですよね。
で、今回もそういうのがあったんですよ。
あ~あ、またルール違反じゃね?これ・・・と思ったらそれが「アンフィクション」という実際にあった事件をリアルに描いたドラマシリーズを主人公が視聴していたってことが判明するんですよね。
あ、これは一本取られましたとw
しかもこの「アンフィクション」というのが、しっかり最後に回収されるってのも面白かったですね!
劇中では、婚前旅行に出かけた母親と新しい婚約者のケヴィンが、帰りの飛行機の便で帰ってこなかったことから事件は始まります。
これをきっかけに、色んな新事実がネットの情報で明らかになっていくんですが、この緩急の具合が非常に素晴らしかったんです。
新しい謎が浮かび上がる⇒そういうことだったのか!⇒え、違うの!?⇒ウソ・・・疑ってゴメン⇒そして新たな謎!
という具合に、ものすごいスピードで検索していく(タイプする音も含め)姿をリズミカルに見せながら、こちらに「?」を突き付け、それがひと段落すると、なぜかハートウォーミングな展開になって物語のスピードを一時的に落とすんですよね。
そこからまた新たな情報が判明して展開が変わっていくという手法になっていて、これが見る側の集中力を持続させてるんですよね~。
そもそも目まぐるしく閉じたり開いたりを繰り返すブラウザって時点で、こちらは結構な集中力で見せるんですけど、出ている情報が余りにも多すぎる、しかも英語!ってことで結構疲れてしまう人がいるのではないかと。
でも!この緩急をつけた物語のテンポが疲労を感じさせない、寧ろ情報よりも主人公が今どういう思いでPC画面を見つめているのかをくみ取りながらドラマを、そしてミステリーを堪能できるよう、計算された構成になっていたと思うんです。
これを最後まで保ちながら、事件は前作以上に規模のデカいことになっていくことで「は!?マジでとんでもないことになってね!?」といちいち驚かされながら物語が進行していくのであります。
もうこうなったら、完全にハマってますよねw
はい、がっつりのめり込みながら見てしまいましたw
二転三転していく展開にツボ
前作は登場人物が限られていたこともあり、オチとしては「まぁそうだよな」と感じてしまったんですが、本作は登場人物が複数のため、真犯人は誰なのかマジでわからない展開だったのが最高でした。
まず標的にされたのは新しい婚約者のケヴィン。
病死したお父さんへの思いが強い主人公は、母親の恋人を受け入れられない気持ちがあり、彼から送られてきた旅行先のメッセージも既読スルーしてしまうほど。
しかし帰ってこない母親とケヴィンの行方を捜すために滞在先のホテルを訪ねると「荷物は置いたまま」だということを聞き、不安は募っていく。
しかも監視カメラが日々更新されていくことで、行方が閉ざされてしまうことを危惧した主人公は、母の友人で弁護士のヘザーに掛け合って大使館に連絡するも、スムーズに動いてくれない。
事件の場合、当事者のアカウントにある情報は無効となってしまうこともあり、ホテルのカメラが更新される前に情報を知りたい主人公は、現地の何でもサービスを利用。
一番自給の安いおじさんをレンタルしてホテルまで向かってもらい、カメラを見てもらうことを計画。
すると、ホテルのスタッフが彼の息子の友人ということもあり、母親を見かけたという情報をゲット。
どうやら金物店に向かったという情報を手に入れた主人公は、レンタルおっさんを残り僅かな所持金を使ってレンタルを続行し、最寄りの金物店を当たってもらうことに。
そうこうしてるうちに主人公は、母親の恋人ケヴィンのグーグルアカウントパスワードをゲット、彼の個人情報を閲覧できることに成功。
実際にロケーション履歴を辿って時間ごとに行方を追うが、その間に彼に浮気癖があることを見つける。
現地で落ち合う女性の身元をPCで調べていくと、今度は彼が浮気癖のある男ではなく、詐欺師であったことが発覚。
金物店で錠前を購入したことが分かると、主人公の脳裏は母親監禁の情景が浮かび、更なる不安が募っていく。
ケヴィンのここ2週間の行動履歴を検索していたことろ、どこかの教会に立ち寄ったことが判明。
そこで彼が過去の犯罪をしっかり猛省し更生したかったことが判明。
徐々にケヴィンが犯人のように思えなくなっていく。
今度はライブカメラで観光地を検索。
すると錠前を橋に括りつけて恋愛成就を祈願するようなスポットを発見。
金物店の近くのライブカメラで二人を見つけた主人公は、ケヴィンがプロポーズしてる姿を見て、彼の疑いが晴れていく。
母親のマッチングアプリを見つけた主人公は、ケヴィンとの馴れ初めを覗き、ケヴィンが如何に母親に対して真剣な思いを抱いていたかを汲み取っていくと同時に、実は母親にも誰にも話せない過去があることを知る。
そして事件はさらなる展開に。
なんと現地でケヴィンが落ち合おうとしていた女性は、母親になりすましていた雇われ女優で、尚且つこの女性とケヴィンは橋でのプロポーズの後、何者かに拉致されていたことが判明。
事件はアメリカ全土を揺るがすどでかい「行方不明事件」として報道。
拉致されたケヴィンと母親両方で事件を捜査することになり、主人公は渦中の人となってしまうのであります。
果たして、母親は一体どこへ行ってしまったのか。
またケヴィンは本当に容疑者ではないのか。
・・・というのが大体半分くらいのあらすじです。
何が凄いってね、ここからさらに怒涛の展開になっていくっていうサスペンス性。
マジで結末や真犯人の予想がつかない面白さです。
最後に
本作で凄くドラマチックなのは、現地にいるレンタルおっさんが、奥さんを亡くして男手一つで息子を育てたものの、大喧嘩して疎遠になってるって設定なんですよね。
だから主人公をどこか息子と同じ目線で見ていて、彼女の協力を仕事上としても父親代わりとしても協力するメンターの役割を担ってるんですよね。
最初はぶっちゃけ疑ってみてたんですけど、さすがに伏線を拾ってもその線は感じられず、自分の予想は外れましたが、彼の存在あってこそ本作は良作なドラマだったと言えるでしょう。
正直この2人の関係性をもっと膨らませれば、ラストに素敵な締め方をできたのになぁとは思ったんですよね。
実際残り61㌦の残高で彼を雇って、思いっきり足として使ってきた中で絆を深めていくって流れ。
残高が減っていくリミットと絆の深さが反比例していくことで「ビジネスの関係」を越えてでも関係を持ちたいって思いが膨らむはずなんですよね。
そこをもっとほじくったら最後に良いラストになるのになぁと。
とはいえ本筋は母親探しであり、母親との絆を描くわけですから、そこメインにするわけにはいかないわけで。
ま、蛇足でしたねw
冒頭でも語った通り、前作から数年経ってSNSはさらに進化したわけで、本作もシリーズ化する予定であるのならば、また数年後のSNSがどのように進化したのかを題材に、優れたミステリー作品を製作してほしい、それがある種のネット近代史的教材にもなればいいなと思ってます。
いやぁ今回はホント面白かった。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10