ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
自己中心的な行動により豊かだった人生を失うことになった敏腕記者と、謎の墜落事故から人間に寄生し地球へとやってきたシンビオート。
幸か不幸か共生することになり、互いの弱点を補い合いながら一つの完全体へとなっていく姿を描いた「ヴェノム」。
前作ではヴェノムの特性を生かしたカーチェイスや、ごっつい見た目のトムハーディに寄生したことで、キュートに見えてしまうコメディチックな面も覗かせた、異色バディなアメコミ映画が確立された作品でございました。
前作の最後に、本作のヴィランであるカーネイジが登場したことから、続編を待ちわびたファンは多かったと思います。
ヘタレ同士のダークヒーローは、大虐殺をもくろむ赤き悪魔を倒すことはできるのでしょうか。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
映画「スパイダーマン」でピーター・パーカーに寄生し混乱に陥れた「ヴェノム」。
宿敵として描かれた彼を主人公にした前作は、世界で大ヒットを記録。
見た目のグロさとは打って変わって、ひとつの体に二つの意志という異色バディの掛け合いがユーモアを呼び、ファンを楽しませた。
今回「最凶」ヴィランであるカーネイジが登場。
コミックではスパイダーマンとヴェノムが共闘して挑まなければ倒せないほどの強さを誇っており、本作でどんな戦いになるかが注目される。
また監督は、前作を手掛けたルーベン・フライジャーからアンディ・サーキスへと交代。
予測不可能な動きや変化を遂げるヴェノムらを、俳優としても監督としても熟知しているモーションキャプチャーの先駆者が、作品に新たな息吹を吹き込む。
また主演のトム・ハーディが脚本にも参加。
エディとヴェノムの関係が好評だった前作を、どうセルフプロデュースするのかにも注目だ。
あらすじ
取材中のエディ(トム・ハーディ)に噛みつき、その血液を体内に取り込んだクレタス(ウディ・ハレルソン)。
エディの血液の中に生息していた地球外生命体シンビオートが、クレタスの体内で、その狂気に触れ、結合。
おびただしい数の赤い触手が身体中を蝕み、増殖し、カーネイジが誕生する。
その高い戦闘能力と残虐性で、収監されていた刑務所の受刑者や警官を無差別に虐殺してくカーネイジ。
〈大殺戮〉が始まった。
世に放たれたクレタスの目的は愛するシュリーク(ナオミ・ハリス)の奪還。
シュリークは音波であらゆるものを破壊する「叫び声」を持っており、その狂暴性から彼女も収監されていた。
カーネイジとシュリーク、二つの狂気がいま一つになろうとしている—(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、アンディ・サーキス。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラムや、「キング・コング」、「ゴジラ」に「猿の惑星」のアーサーなど、モーションキャプチャーを使って演技をする俳優として有名です。
もちろん「ブラックパンサー」のユリシーズ・クロウ役を筆頭に、生身の体で演技することもありますし、「ブレス しあわせの呼吸」やNetflix映画「モーグリ:ジャングルの伝説」では監督も務めているほど多彩な方です。
今回「バンブルビー」のトラヴィス・ナイト監督や、「猿の惑星:創世記」のルパート・ワイアット監督などが候補に挙がったそうですが、監督としても俳優としてもモーションキャプチャーを熟知しているサーキスが最も適していることから採用された様子。
ヴェノムはもちろん、シリアルキラーと共生したシンビオートの残虐性を表現するためには、CGよりもモーションキャプチャーの方が優れているということなんでしょうか。
どんな作品になっているのか楽しみですね。
キャラクター紹介
- エディ・ブロック(トム・ハーディ)・・・強すぎる正義感から、無謀な取材もかえりみないジャーナリスト。取材の過程で地球外生命体シンビオートに寄生され、ヴェノムの宿主になる。未解決事件の真相を追い、刑務所に収監されているクレタスの元を訪れる。
- ヴェノム・・・地球外生命体シンビオートが、エディと融合して誕生。強靭なパワーと圧倒的なスピードを誇り好戦的な性格だが、「悪人以外を食べない」ことを条件にエディの身体に寄生している。チョコレート好き。
- クレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)・・・計り知れない数の犠牲者を出しているシリアルキラー。その異常性から幼少期には母と祖母を殺害したため孤児院で育てられ、そこで出会ったシュリークと恋に落ちる。現在は、刑務所に投獄されており、死刑執行の刻が迫る。
- カーネイジ・・・クレタスの死刑が執行されようとしたとき、体内でシンビオートが覚醒。宿主であるクレタスの異常性を増幅させ、ヴェノムをも凌ぐ残虐性と戦闘能力を持ち合わせたカーネイジへと変貌した。
- シュリーク(ナオミ・ハリス)・・・音波を操り、「叫び声」で全てを破壊する能力を持つ。狂暴性から犯罪者を収容する施設レイブンクロフトに25年間にわたり収容されている。幼少期はクレタスと同じ孤児院で育った。
- アン・ウェイング(ミシェル・ウィリアムズ)・・・エディの元婚約者。医師のダンと付き合っているが、ヴェノムに寄生されたエディを気にかけている。エディを助けるために、一時的にシンビオートと融合してシー・ヴェノムとなった過去も。
(以上HPより)
本作はアメコミ映画では珍しい「90分」という上映時間。
あっという間に終わってしまって物足りない!なんてならないことを願いますw
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#ヴェノム レットゼアビーカーネイジ観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年12月3日
益々ヴェノムを好きになる1作。
テンポ良し編集良し進行良し。
80年代ブロックバスターみたい。 pic.twitter.com/Y2oDYklU9B
エディとヴェノムのイチャLOVEが最高!
潔い編集で進行がスムーズになってるので前作のモヤモヤ解消!
以下、ネタバレします。
2人で一つ、だよね。
シンビオートと共生するエディの前に立ちはだかる新たなる脅威との壮絶な戦いは、ドン・キホーテとサンチョ・パンサのように幾度もぶつかってばかりだけど、好きな所も嫌いな所も受け入れてこそが「愛」だと理解し合った2人のロマンスストーリーであり、その愛こそが相手の弱点であることを知らしめた、ある種究極のバディムービーでございました。
前作では負け犬同士だったエディとヴェノムが、互いの利益のためにひとつになって強敵を倒す物語でしたが、本作はその関係性をさらに一歩前に進んだ関係性を濃く描きつつ、自分の細胞によってさらなる悪を生み出してしまった敵との戦いの中で、エディとヴェノムがより強固な関係となった作品だったと思います。
…とか固いこと言うのはやめましょう。
も~超かわいいんですけど!
エディとヴェノムの掛け合いがww
まるでど根性ガエルであり、トムとジェリーであり、寄生獣の主人公とミギーのように、一つになるべくしてなった関係であり、決して離れてはいけない関係であり、仲良くケンカして絆を深めて愛を育んでいくエディとヴェノムなんですよ。
ヴェノムはヴェノムでとにかく腹が減ってて、四六時中「人間食いたい!!」と荒れ狂ってるのを、「一緒にいるならルールを守れ」と掟を立てるエディ。
チョコとニワトリで何とか我慢して情緒を保ってるけど、やっぱりエディのヘタレっぷりには目を瞑ることはできない。
アンが婚約者のダンと結婚することを報告されるシーンでは、頭の中で「泣き落とせ!」とか「悲しめ!」とかあれこれ命令するけど、エディはそこで強がる。
哀しい姿をアンに見せないために一目散で店を出たエディは、やり場のない感情を雨の中のバイクを暴走し、もうどうにでもなれと危険な走行を試みるんですけど、それを制止するのがヴェノム。
「痛みってのはぁ、消し去ることはできないんだよ…」
大人だな…ヴェノム。
お前ただの捕食者じゃないんだな。
他にも、クレタスのメッセージにばかり気を取られていたエディに対し、ちゃんと壁に刻まれた画を記憶して、埋められた死体の場所を見つけるシーン。
そもそもシンビオートって人間に寄生する能力がメインですけど、実際問題寄生することで、人間にとってどんなメリットがあるのだろう?という些細な疑問は本作で解決したかと。
超越した体力とか筋力とか治癒能力とかよりも、こういうのいいよねっていう。
一体どんなのかというと、絵がめちゃんこ上手いw
エディにペンを持たせ、机に紙を置かせいざ一筆。
どう見てもペンの持ち方ではない、ただ握っただけの持ち方。
しかも両手。
ぐちゃぐちゃ書きなぐってるように見えるけど、完成した絵はしっかり壁に書かれた絵と同じ。
しかもPCもお手の物。
ブラインドタッチで画像検索し、死体が隠された場所をドンピシャで見つけてしまう捜索力。
もちろんエディだけでは、クレタスが何を意図して語ってるかもわからないだろうし、死体の在り処までたどり着くことはなかったでしょう。
ヴェノムのおかげでエディは手柄を立て、見事花形記者の座に帰りつくのであります。
あとは、クレタスが死刑執行される日に面会することになるシーン。
クレタスがエディにあれこれ挑発するんですが、彼よりも先に怒りに震えるのがヴェノム。
てめぇもういっぺん言ってみろコラァ!とクレタスの胸ぐらをつかんでしまう感情的な姿を見せるんですよね。
このように、時には「人間食いたい!」と駄々をこねたり、身勝手に暴れまわるヴェノムですが、いつだってエディの事を想って助言したり寄り添ったりしてくれる、めっちゃいい存在なんですよ。
なのに、お前とはもうこりごりだ!と中盤で喧嘩してしまうんですね~。
俺は平穏な生活を送りたい、俺は自分の成果でようやく花形記者に戻れた、お前が邪魔しなければこんなことにはならなかったなど、どう考えても墜ちた生活から這い上がれたのはヴェノムのおかげ。
ヴェノムと離れたことで、脱走したクレタスが一体何を考えてるのか瞬時に予想できないエディ。
しかもマリガン刑事に捕まり、身動きも取れない。
結婚の報告の際、アンから言われた「あなたは何もわかってない」って、要するにエディは相手の事を思いやってないってことですよね。
ヴェノムはヴェノムでいろんな人間に寄生して放浪。
仮装パーティーではステージに上がり、自分らしく生きよう!とマイクパフォーマンス。
黒人やアジア系が集まってるから、余計に刺さるメッセージ。
物語の半分以上は、エディとヴェノムが如何に互いが必要であるかを改めて知る作品でもありましたね。
しかし喧嘩のシーンやエディを励ますための朝食シーンは、めちゃめちゃでしたねw
エディは傷心状態だからかオレンジジュースだけ飲んでほげぇ~っとしてる最中に、体から触手出して、冷蔵庫から牛乳やら卵やらだして、ヴェノム特製朝飯を作るんですけど、前作でもあったようにまぁめちゃくちゃ。
片手でナッツ刻んで、片手でミキサーに牛乳入れて、片手で卵わって目玉焼きを作る。
その間エディはほげぇ~っとしてる。
ヴェノムはヴェノムで相変わらずキレイに飯を作ることを知らない。
色んな所にぶつけたり卵の殻も一緒に焼いたり、牛乳こぼしたり。
絵はあんなに上手に描けるのに料理はほんとひどいw
終いにはエディの顔にまでケチャップを飛ばす始末。
エディも掃除するの大変ですねw
喧嘩のシーンも部屋中めちゃくちゃにするほどの大乱闘。
まずエディがヴェノムの顔に一発お見舞いしたところから喧嘩に発展。
どう考えてもエディに勝ち目はないんですけど、今回ばかりは頭にきたんでしょう。
どれだけやられてもやり返します。
天井は半壊、本棚は倒壊、冷蔵庫も倒し、ニワトリのソニーは逃げるのに必死w
部屋から2000ドルもしたテレビを放り投げられたエディは、バイクのヘルメットで必殺ワンパンをかまします。
身体から離れたヴェノムはエディのバイクも粉々に壊してしまうのでした。
エディが誰かといるときはヴェノムとヒソヒソ話さなくてはいけないせいで、端から見ると「こいつ大丈夫か?」となるほど。
ヴェノムとのやり取りでついカッとなって言葉を発する時には、なかなかのFワードを人間に言っちゃったり、アンにもまだ体内にヴェノムがいることを知られてはいけないこともあって、第3者がいる時のエディは、ヴェノムにも返答しなきゃいけないし第3者にも返答しなきゃいけないとあって、とにかく汗をいっぱいかいてやり取りしなきゃいけないのが非常にユーモラスに描かれています。
もちろんヴェノムとのやり取りも楽しい。
喧嘩のシーンもバトルシーンも、前作以上に掛け合いが楽しく描かれてたのが印象的な映画でした。
カーネイジはもっと魅力的でよかった
今回のヴィランとなるカーネイジ。
クレタス・キャシディというシリアルキラーが、エディの指を噛んで血液を体内に入れたことで、彼の狂気と結合し誕生してしまうモンスターなんですね。
子供の頃にお婆ちゃんを階段から突き落とし殺害し、お母さんが入浴中にドライヤーを中に入れて感電死させるなど、身内の人間を殺した罪で聖エスタス更生施設に収容されるのであります。
そこで出会ったのが、フランシス・バリゾンという女性。
彼女は奇声を発することで耳をつんざくほどの音波を放ち、相手を攻撃する能力を持っており、その力が大人になるにつれて強さを増していったことから、サンフランシスコ警察は施設から別の場所へ移すことを決意。
クレタスとの仲を引き裂くのでありました。
そこに同乗していたのがマリガン刑事。
後にエディにクレタスの記事を書くよう依頼する関係となっていくことで、本作はクレタスとフランシスの敵がエディとマリガン刑事になっていくという流れになってます。
何故クレタスは執拗にエディに自分の記事を書くよう依頼するのか。
それはエディが書いた記事があまりにも偏向記事だったから。
シリアルキラーと大々的に報じられたクレタスでしたが、彼も人間。
父親に暴行された復讐を果たすために家族を殺し、施設で自分を痛めつけた奴らへの復讐心が、クレタスを凶暴にさせていったのです。
自分とエディは同じだと豪語する理由も、エディ自身も父親から冷遇された過去があり、父親への憎しみという共通部分があるからと主張。
同じシンビオートに寄生してることもあり、俺とお前は家族のようなものだと劇中では語っています。
そんなクレタスを演じたウディ・ハレルソンは以前「ナチュラル・キラー・ボーン」で殺人鬼を演じており、本作で再び狂気を孕んだ役に挑戦。
見事に演じたように思えます。
1つ疑問なのは、子供のころから施設に収容されてたのに、一体いつどこで殺人を犯し海岸に死体を埋めたのか。
施設はあくまで少年期までで、更生したと見せかけてシャバに出て犯行を繰り返していたって流れだったんでしょうか。
作品を見ていてその辺がちょっとよくわかりませんでした。
またカーネイジは原作ではスパイダーマンと共闘しないと勝てないほどの力の差がある強敵。
今回は人質を取られるハンディキャップを背負ってのタイマン勝負という、なかなか戦いにくい状況の中、ダンの協力もあってギリギリの勝利を掴みます。
確かにヴェノムも勝機が見えないとか、あいつはヤバイとか弱音を吐くほど消極的な面が見えたり、実際には何度も触手で体を突き抜かれるほどのダメージを負ってましたので、ホントに強いんでしょう。
勝機に関しても、本作のテーマの一つである「二人で一つ」の差によって勝利を掴みましたが、もっとボロボロになるほどの戦い(むしろ一戦交えて一度負ける)でもよかった気がします。
あとは、大殺戮を意味するカーネイジならではの殺戮ぶりが見られなかったのが残念です。
PG指定ということもあって、血みどろなシーンはおろか人間を食べたり殺したりするシーンは見事にスルー。
興行を考えての判断なのは承知ですが、だったらもっと街の人たちを混乱に陥れるかのような大虐殺をやってもよかったかなぁと。
どうしてもクレタスの目的がフランシスの救出と復讐を果たすにとどまってるので構成としては正しいんですけどね。
最後に
本作は90分という短い尺の中での物語。
そんなに短くて大丈夫か?と思いましたが、これが見事に成功してます。
ひとつひとつのシーンに余韻や深みを持たすことなく、どんどん進行していく編集。
目まぐるしく舞台が変わるスピード感は、終盤のエスカレートしたバトルのテンポに活かされてました。
どこか80年代のブロックバスターを見てるかのような潔いカットに見え、何も考えなくても楽しめる作品になってたように感じます。
最近の大作はとにかく長いので、たまにはこういうサクッと観られるアメコミがあってもいいかと思います。
短くなったとしても、効果的な演出が随所にあったのも思わぬ収穫。
それこそ警察署から抜け出せないエディを助けるために、再びシー・ヴェノムとなったアンを描く必要性が生まれたし、ヴェノムに謝罪するためにアンを通して謝ることで、アンにも謝罪をしている構図を作り出すダブルミーニングを作ってましたね。
最後の決闘も大聖堂で行うという舞台設定も見事。
音に弱いヴェノムとカーネイジが、ウェディングベルが鳴ることで人間に戻り、人間同士の戦いをせざるを得ない状況を作ってるし、音が鳴り止めばすぐに戦闘モードになってシンビオート同士で戦うスタイルになってたのも、バトルを盛り上げるための要素として機能してました。
またクレタスの恋人が音波を操る女性ってのも、カーネイジとクレタスが中々共生できない理由として発揮してたのも、物語として上手にまとまってたと思います。
総じて、これだけ短いのに2人のイチャLOVEをしっかり見せてるから関係性が深まっていくのもしっかり描かれてるし、クレタスパートも十分に描かれてる。
不要な部分は見当たりませんでした。
最後の最後にポストクレジットシーンですが、まさかピーター・パーカーが登場するとは。
恐らくエディは、ドクターストレンジによってマルチバース化した世界にやってきたってことになるんでしょう。
僕自身最後はモービウスが登場して、ソニーマーベルの次回作へとつながると予想してたのですが、MCUと繋がるとは。
そうなってくると、「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」で消されてるのでは?と疑問視されてるシーンは、過去のスパイダーマンたちではなくヴェノムなのか?って可能性も出て来やしないか?
とにかく妄想は膨らむばかり。
もちろんソニーマーベルの方も期待したいですね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10