THE GUILTY/ギルティ
映画館で映画を見たい人が挙げる理由の一つに「映画館でしか体感できない感覚を味わいたい」からってのがあるかと思います。
今回鑑賞する映画は、「電話から聞こえる音声から誘拐事件を解決する」という、正に劇場案件。
映画は目だけで楽しむものではありません。
耳でも楽しむもの。
本作は見事に聴覚で楽しませてくれる作品なのです。
まるでもう見たかのように語ってますが、実は本作はリメイク作品。
サンダンス映画祭で観客賞を受賞し、ロッテントマトでも100%を獲得した経緯から日本でも上映し、多くの映画ファンを唸らせたデンマーク映画がオリジナルなんですね。
日本で公開した時点でジェイク・ギレンホール主演でのリメイクが決まっており、首を長くして待っておりました。
リメイクと聞くと時に危険なにおいを漂わせますが、ジェイクなら大丈夫だろうと期待しております。
今回Netflixが、我々の気持ちを察してくれたのか劇場で公開してれると言うことで、早速鑑賞してまいりました!
作品情報
第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞した同名デンマーク映画を、スリリングな犯罪映画や熱き男たちの物語などに定評のある監督の手によって映画化。
緊急通報センターで働く男がとった1本の電話から、予想だにしない事件へと発展。音声だけを頼りに事件の真相を突き止めていく姿を、圧倒的な緊張感を演出し進行していく。
監督と6年ぶりのタッグとなったジェイク・ギレンホールを主演に、監督と縁の有る俳優陣をキャスティング。
実力派俳優たち集結した。
誰一人として同じイメージを浮かべることができないとされる音声によって、百人百様の犯人像を浮かべることができるのが本作の魅力の一つ。
また、聴力から得た情報を最大限に高めてくれる映像演出にも注目だ。
誘拐事件を解決するシンプルな設定ながらも、緊迫感のある予測不能な展開に息を飲むことだろう。
耳に神経を集中させ、想像力を働かせろ。
あらすじ
911緊急通報センターに勤務するコールオペレーターのジョー・ベイラー(ジェイク・ギレンホール)は、1本の謎の電話から、通報者の女性が何者かに拉致されたことを予測する。
電話から聞こえてくる声と音だけを頼りに彼女を助けようとするジョー。
しかし、次第に何もかもが自分の思っていることとは違っていることに気づき……。(映画.comより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、アントワン・フークア。
イコライザーシリーズや、トレーニング・デイ、マグニフィセントセブンなど、男の映画を熱く激しく、時に悲哀を含めながら描くフークア監督。
どれも大好きな作品ばかりなんですが、モンキー的には今回ばかりは監督にちょっとばかり不向きな気がしてなりません。
やはりアクションに定評のある監督だと僕は思っているので、動きが制限される室内でのワンシチュエーションものでは、果たして実力を発揮できるのかと。
意外と外に飛び出したりするのかな?w
それはないかw
とはいえ、タッグ経験のある俳優たちと息の合った仕事をしていることだと思いますので、楽しみにしたいところ。
キャスト
主人公ジョーを演じるのはジェイク・ギレンホール。
「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」から「ゴールデン・リバー」と、大小問わず精力的に活動しているジェイク。
毎年彼の新作が公開されてる気がするんですが、2021年では本作が初。
今年はこれだけになりそうですね。
オリジナル作品では、主人公がなぜコールセンターで働いているのかという理由が本筋に絡んでくるのと、それによる彼の性格が浮き彫りになってくる設定なんですが、この役をジェイクがやるとどう変化するのかが楽しみです。
役名は明かされてませんが、他のキャストはこんな感じ。
「マグニフィセント・セブン」、「魂のゆくえ」のイーサン・ホーク。
「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」、「アンダー・ザ・シルバー・レイク」のライリー・キーオ。
「プリズナーズ」、「スイス・アーミーマン」のポール・ダノなどが出演します。
イーサンホークは上司、ポール・ダノは疑惑の男とかでしょうかね…。
リメイクになったことでオリジナルの良さが消えなければいいのですが、果たして。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#THEGUILTY 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年9月24日
フークアちゃーん、その演出要らんのよ〜…
多分ネトフリだからだと思うんだけどさぁ。
ジェイクは安定の芝居。 pic.twitter.com/LnDnONPHXf
失意の人が同類を救う。
密室での緊迫感をジェイクが見事に体現。
しかしなぜ劇伴を使うのか全く意味が解らない。
以下、ネタバレします。
この物語にBGMは必要ありません。
ロサンゼルスでの山火事によって多忙を極める緊急オペレーションセンターを舞台に、やたらといら立ちを隠せない主人公がとった一本の電話をきっかけに、刑事としての使命を果たそうと躍起になるも思わぬ事態へシフトしていく本作は、PCに表示された個人情報と音声だけを頼りに事件を想像していく過程と、少しづつ紐解かれていく主人公の背景が、物語の進行によって繋がっていく面白さはオリジナル作品同様力強いものがありました。
基本的に、いやほぼほぼオリジナル作品と展開も構成も同じです。
緊急オペレータにかかってくる電話がどんなものなのかを描きな柄、主人公ジョーの短気な部分や気性の荒さ、彼に起こっているプライベートな部分が垣間見えるオープニング。
そうこうしてるうちに本題へ突入。
女性からの一本の電話から、オペレーターとしての職務よりも刑事としての血が騒ぐ。
拉致されたことを確認したジョーは、交通警察や前の職場の上司、現在単独で仕事している相棒リックなどに協力を経て、事件の全容と背景を把握していく。
拉致された女性を救おうと躍起になり過ぎているせいで、周囲に迷惑をかけてばかりだし、自分の思い通りにならないとすぐ声を荒げ、汚い言葉まで飛び出す始末。
とうとう容疑者と思われる男の家に勝手に踏み込んでほしいという注文まですることで、前の上司から越権行為だと指摘され、苛立ちはさらに募っていく。
事件に没頭するあまり他の電話を御座なりにしたり、モノに八つ当たりするなど、とにかく気性の荒さが目立っていく。
ジョーにはこの仕事の翌日に大事な案件が控えていることや、この案件を機に家庭が上手くいってないこと、宿を転々としていることなど、ジョー自身に相当なストレスがかかっていることや、喘息持ちであること、ロサンゼルスで山火事が発生しているせいで、他の部署もピリピリしていることなど、物語を追っていくと全てにおいて緊張が張り巡らされているのが理解できるかと思う。
物語はやがて奥の個室に場所を移すことで、余計な音をシャットダウン。
ジョーの声と動作、PCの音、耳に入ってくる音声だけで我々に情報を送る。
ブラインドを降ろし、着信ランプの明かりだけにすることで、さらに緊迫した空気を生み出していく。
オリジナル作品は話が進むにつれて、この主人公の化けの皮が剥がれていくのと、事件の真相に対する驚きが、用意された舞台と音声だけの演出によって効果をもたらしてるんですよ。
だから映画館でなくては面白さが半減するような作品だったと僕は感じたんですね。
しかし本作は、話はほとんど同じなのにもかかわらず余計なことをしてしまっているんです。
その余計なこととは「BGM」。
音楽が鳴ってしまっているということ。
時に劇中音楽は、観衆が抱く喜怒哀楽を助長させるかのような、心を煽る効果を持ち合わせてるとおもんですけど、この作品だけは正直不要。
密室空間で出される声や息遣い、電話音や物音だけで構成されるから緊迫感が生まれるし、画面に集中しながら耳も集中することができる=主人公と同じように電話を相手を想像できるわけです。
しかし本作は、肝心な部分では音楽を流さないものの、事件の展開に変化が生じたときや、ジョーの怒りが増幅した時など、要所要所で音楽を鳴らしてしまっている。
僕はどうしても邪魔で仕方なかったです。
オリジナルとの差別化を図りたかったのか、それともネットフリックスは自宅で見るものだからなど、理由はいくつか存在すると思います。
音楽をつけたほうがきっと面白くなるという意味で。
しかしオリジナルでは音楽を鳴らさなかったことが功を奏してるのだから、僕は必要なかったのではないかと、比較して感じたわけであります。
また、主人公がいる部屋の中だけで進行し、電話の向こう側を見せない演出方法は、一体相手がどんな奴でどんな状態かを想像できる楽しさを生み出しているわけですが、本作は途中場面が切り替わります。
何と、白いバンを発見した交通警察の警察官が、職質を掛ける場面が映るのです。
正直これしきの事くらい別に気にならないのではと思いますが、先ほども言ったようにこの映画の一番面白い部分は想像なんですよ。
主人公が見えない部分を我々も想像しながら楽しむのが醍醐味。
それをちょっとでも見せてしまうのは、オリジナルを侮辱してるように思えてしまうんです。
このやり方は僕としては非常にマイナスな部分として働いてしまいました。
きっとジェイクはこの映画が大好きなんだろうな。
時にデニーロアプローチもこなすジェイクですが、今回の作品はとにかく室内で怒り喚き苛立ち焦り、やがて意気消沈するという「表情」だけでお芝居をする役柄。
冒頭から喘息持ちであることに加え、人生の局面を迎えるかもしれない翌日の案件を控えていることもあって、既にピリピリしていることが窺える。
隣席の同僚にも軽く当たったり、上司からの忠告も軽くあしらって怒りのバロメーターを1メモリ上げるなど、とにかく序盤からイラついている。
そして本題突入。
きっと彼は刑事の職に就いていた時は、正義を盾に悪を成敗するような熱血漢だったんだろう。
職務を逸脱して暴走してしまう姿から、そんなことが想像できる。
このジョーを演じたジェイク・ギレンホールは、製作にまで加わるほどほれ込んだ映画だったんだろう。
とにかく演技はイキイキしている。
脂汗を浮かべながら一線を越えるような選択を取ったり、交通警察の女性オペレーターに執拗に電話を掛けては自分の意見を通そうとする強引な姿勢、ただでさえお目目ぱっちりな顔立ちも手伝って、焦燥感に駆られた時の瞳孔の開き具合は半端ではない。
監督もジェイクの表情を際立たせたいショットにしているのは見ていて一目瞭然。
オリジナルもそうだったけど、本作の方がより多い気がする。
彼の切迫した表情のおかげで、気になってしまった音楽も外の場面を見せてしまう演出も、一瞬の苛立ちは抱いたものの、すぐに消え失せてしまうほどの圧力だったように思う。
終盤で見せる消沈したかのような表情も、着信ランプのON/OFFによって心情を変化させる演出も手伝って、さっきまでの脂汗が冷や汗のように見せる。
またこの熱を失った顔が、自分がしでかしてしまったことの罪の大きさを現していたし、だからこそくらいいマックスでの説得は、刑事としてでなく一人の人間として、同じ罪を背負った者であることを見せた顔に見える。
しかし、しかしだ。
どうもジェイクはやり過ぎな気がする。
またもやオリジナルとの比較になってしまうが、オリジナル版での主人公アスガーは、まだどこか冷静さがあった。
淡々とセリフをしゃべるオペレーターらしさの中に、ただならぬ怒りがうっすら見えてくるから妙に怖かった。
そもそもオリジナルを見た時は、彼の情報は「緊急オペレーター」しかないため、実際は別の職業である事実が伏せられていたから、この冷静な対応も良かった。
では本作はどうかというと、既に序盤からピリピリしている。
明らかに態度がオペレーターではない、もっと言えば冷静さがない。
喘息餅だからなのか山火事が起きていて多忙を極めているのか、もしくは妙に浮いている胸筋と筋張った両腕のせいなのか、理由があるとしたらその部分だと思うが、どう見てもオペレーターっぽく見えないんです。
もちろんジェイクの芝居は大好きで、本作では頑張っていた。
でも彼が適任だったかどうかと言われると、素直にうなづけない自分がいます。
要はもっと抑えた芝居にすればよかったのかなぁ。
と言っても、アメリカが舞台でアメリカ人がやってるので、この場合感情的になりがちな役柄って意味では合ってたりもするのかなと。
最後に
耳からの情報は百人百様で、誰一人同じイメージを持つことは容易ではないそう。
実際、僕は白いバンを運転する男性の声は、ポール・だのだとばかり思ってました。
あの弱々しい声。警察に脅えていることや女性が犯したことに対する怒り。
どう聞いても彼だろうと。
そしたらピーター・サースガードでした。
彼の声ってこんなだったっけ?と。
ちなみにポール・ダノは置き去りにされた少女を保護した警察官でした。
イーサン・ホークはすぐわかりましたね。
あのしゃがれた声は、結構わかりやすい。
と、こんな風に、耳からの情報だけを鵜呑みにすると、真相にたどり着くのは難しいと。
また、耳に頼った結果によって出来てしまった罪の重さってのも本作が伝えたいところなのかな。
残念ながら僕はオリジナル版の方が面白かったです。
案外自宅で見たらまた変わるかもしれませんが。
劇場でやってくれるっていうから楽しみにしてたんですけどね~。
しょうがない。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10