モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

【スポンサード リンク】

映画「ひとよ」感想ネタバレあり解説 何があったとしても親子は親子なんです。

11月8日

ひとよ

f:id:monkey1119:20191019183358j:plain

いきなりこんなこと言うのもなんですが、いわゆる「あることが原因で不仲になってしまった人たちがどう再生していくか」という場合、結果的には「誤解を解く」か「赦しを乞う」になっていくと思うんです。

 こうやって書いちゃうと凄くつまらないように聞こえるかもしれないですけど、大体の映画がそうだと思うんです。

 

でもその手の作品がいまだに溢れているということは、僕らの中にも、すれ違いが原因で不仲になったりとか、冷え切った関係にある人がいるとか、コミュニケーション不足による誤解だったりとか、様々なことが積み重なってそうなってしまってる人がいるからで、心の底ではわかりあいたいとか理解したいとか、許して許されて仲のいい関係になりたいとか、そういう願望みたいなものがあるのかなと。

 

だからこういう映画がたくさんあるのかなと。

 

社会とか世界とかで規模を大きく考えても、今ってそういう隔たりとか分断とか足の引っ張り合いとか、そんなのばっかりじゃないですか。

 

映画にはそれを解消する力がある気がするんですよね。

心を育てるというか、後押しするというか。

 

・・・だいぶ今回の映画の話からそれてしまいましたあが、今回観賞する映画は、子を思うがゆえに起こした母の事件を機に、壊れてしまったの家族の話。

いま日本の映画業界で一番映画を製作しているであろう監督。

働きすぎだ!

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

様々な作品でその手腕を発揮している監督の最新作は「家族」を題材にした物語。

劇作家である桑原裕子が手掛けた同名タイトルの舞台作品を今回映画化した。

 

15年前の事件によって家族の岐路に立たされた、ひとりの母親と三人の兄妹のその後を描く。

母を憎む者、母を避ける者、母を信じる者。

母によって人生を変えられてしまった子供たちが、一つの夜を経て、どうつながっていくのか。

 

豪華俳優陣の巧みなアンサンブルと、監督の熱量が、ヒューマンドラマの傑作を生みだす。

 

ひとよ (集英社文庫)

ひとよ (集英社文庫)

 

 

 

 

 

あらすじ

 

「あなたたちが生まれた夜、わたしがどんなに嬉しかったか。」


どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。


それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。


そして、こはるは、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去った—

 

時は流れ、現在。
次男・雄二(佐藤健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日から抱えたこころの傷を隠したまま、大人になった。


抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。
そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。

 

「これは母さんが、親父を殺してまで
つくってくれた自由なんだよ。」


15年前、母の切なる決断とのこされた子どもたち。


皆が願った将来とはちがってしまった今、再会を果たした彼らがたどりつく先は—(HPより抜粋)

 

 

 

 

監督

今作を手掛けるのは、白石和彌

f:id:monkey1119:20191107130902j:plain

2019年は「麻雀放浪記2020」、「凪待ち」に続いて3作目。

1年で3作ってなかなかのペースですよ?(2018年も3作!2年で6作!)

やはり賞レースなどでも必ず名前が上がる監督ですから、お仕事いっぱい入ってくるんでしょうね~。

もしかしてギャラ安いのか?

なら、誰か上げてやってよぉ。

 

基本的にはシリアス、バイオレンス、おふざけの3パターンですよね、監督の映画って。

でも根っこにあるのは「真面目」なんだよなぁ。

笑わせるのも、エロいのも、そう。

もうちょっと肩の力抜いてみてもいいと思うんだけどなあ。

 

今年は「おふざけ」「シリアス」ときたから、「バイオレンス」な映画かと思ったけど、「シリアス」なんですね。

 

監督作品はこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

www.monkey1119.com

 

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

登場人物紹介

 

  • 稲村雄二(佐藤健)・・・稲村家の次男。家族と距離を置き、東京でうだつがあがらないフリーライターとして働く。15年ぶりに会う母を受け入れられない。

 

  • 稲村大樹(鈴木亮平)・・・稲村家の長男。三兄妹で唯一自身の家族を持つ。幼少期より吃音のため、人とのコミュニケーションが苦手。

 

  • 稲村園子(松岡茉優)・・・稲村家の長女。事件によって夢を諦め、スナックで働きながら生計を立てる。母との再会を素直に喜び、受け入れる。

 

  • 堂下道生(佐々木蔵之介)・・・稲丸タクシーの新人ドライバー。別れた妻との間に17歳の息子を持つ。

 

  • 稲村こはる(田中裕子)・・・稲村家の母。愛する我が子を守るために、暴力をふるう夫を殺めてしまう。「15年経ったら必ず戻る」という約束を果たす。

 

  • 丸井進(音尾琢真)・・・稲丸タクシーの社長。稲村こはるの甥。
  • 柴田弓(筒井真理子)・・・稲丸タクシーの事務員。
  • 歌川要一(浅利陽介)・・・稲丸タクシーのドライバー。
  • 牛久真貴(韓英恵)・・・稲丸タクシーのドライバー。通称モー。
  • 稲村二三子(MEGUMI)・・・大樹の妻。別居中の大樹に、離婚を申し出る。
  • 友國淳也(大悟(千鳥))・・・堂下の過去を知るチンピラ。稲丸タクシーに乗りあわせる。(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとよ」は、「一夜」であり、「人よ」でもあるんでしょう。

3人と母親が夜という山を越え、家族という名の朝日を浴びることはあるのか。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

子を思う親の気持ち、親を思う子の気持ち。

一筋縄ではないかない家族の物語は、血で繋がっている以上、家族でしかないんだなぁ。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親子の心の距離を埋めていく物語

DVパパに耐える子の将来を案じ自らの手で夫を殺した母と、その後の生活によって人生を一変させられた子供たちの15年ぶりの再会によって巻き起こる、家族間の複雑な感情を描いたヒューマンドラマは、とっつきにくいであろう重たく難しいテーマを孕みながらも、細かに回想を挟むことで、観衆に登場人物らの心情を理解させる演出に長けており、タクシー会社で働く稲村家ゆかりの者たちが生むユーモアなやりとりでほっこりさせることで、ギスギスしがちな家族の物語に柔らかな毛布でくるんだような温もりと暖かさを感じさせたハートフルな作品でございました。

 

 

親になったことないのでこはるの気持ちは到底わかることは無いんですが、親のせいでこんな人生になってしまった、って一瞬思うこと、正直あります。

子供の頃、小遣いをたくさんもらってる友達のことを例えに、小遣いアップを要求したら「よそはよそ、うちはうち!」なんて母ちゃんに怒られることがよくありまして、あ~俺んちは金持ちじゃないから!って親を恨んだこと、ぶっちゃけよくありました。

 

親が金持ちならゲームいっぱい買ってもらえるし、好きな服も買えるし、うまいもんも食えるし、どこにだって遊びにも行けるし、なんて今考えたらクソガキレベルの我儘なんですけど、今こうやって我慢しながら過ごさなければいけないのは親のせいだ!なんて。

そんなクソみたいな過去バナを持ち上げてこの映画の感想を語るのは、的外れにもほどがありますが、稲村家の三人は、せっかく親父の暴力から解放されたのに、自由に生きる権利を母親からもらえたのに、その後のバッシングや嫌がらせなどの精神的苦痛によって将来の夢もままならぬ状態で大人へと成長していったわけです。

 

 

美容師になる夢も、美容師学校でいじめに遭い断念し、スナックで働く長女。

小説家になる夢を抱き一人上京したものの、現実は風俗ライターとして働く次男。

出会った女性と結婚するも、過去の苦しみによって心を閉ざしてしまい離婚寸前の長男。

こんな大人になってしまったのは、全て親のせいだ。

そんな気持ちをずっと抱いていたのでしょう。

 

彼ら子供たちが抱える不満は、母との15年ぶりの再会によってより強く出てしまうのであります。

 

急な訪問にとっさに戸を閉めてしまう様子や、何の躊躇もなく食卓を囲むことができない朝の風景、タクシー会社のスタッフたちとすぐ打ち解けてしまう母に難しい表情をしてしまう子供たち。

最初こそ戸惑いと不安を見せるも、少しづつ親子のカタチを作っていくが、それは表面だけ。

それだけ15年の月日は親子の絆を遠ざけてしまっていました。

 

帰ってきた母に対し、子供の時のような接し方で笑顔を見せる長女がいれば、妻との問題がある上にさらに問題が積み重なり徐々に塞ぎ込んでしまう長男、これまでの憎しみを一心に向ける次男と、それぞれが何かしらの思いを持っていることが、序盤では窺えます。

 

 

母はそんな子供たちに決して謝ることをしません。

夫を殺害した時も豪雨の寒さと罪を犯したことからの震えがあったものの、清々しさと誇らしさを持った佇まいで、子供たちとの別れを告げるんですよね。

親としての務めを果たしたかのような。

私がこうすればきっと子供たちの未来は輝かしいものになる、そう思ったのでしょう。

 

だから15年ぶりに帰ってきた母はきっと、子供たちから暖かく迎えられる、そんな気持ちがあったのではないでしょうか。

 

ですが、久々の再会はどこかよそよそしく、気まずく、他人行儀なふるまいをされてしうのであります。

母はきっと、自分が刑務所にいる間、子供たちがどんな目に遭ったのか知らなかったのかと、親子の間にある溝を見ている間考えてました。

 

母には子供たちの前で決して見せてはいけない思いがありました。

それは次男との会話。

誰もが避けていた問題に、記者のようにふるまう次男に対し、「今私が謝ったら、子供たちが迷子になるでしょう」と。

 

きっと母は自分が犯した罪に対し、後ろめたさを見せてはいけないと思ったのでしょう。

タクシー会社で働く弓から同情されたり褒めたたえたりされるも「度胸とかそんなんじゃない」と一喝します。

仕方のない犯罪だったから、やるしかなかったから、だから殺害の罪を肯定してもいけないし、殺したことを後悔してはいけない、そんな思いがあったのではないでしょうか。

かつて次男がやってしまったエロ本の万引きを、母がやるというシーンがありましたが、あれは「私はこういう母親だから」という潔さと、「言葉では語れない難しさ」を体現したシーンだったように思えます。

父の暴力に怯えながら過ごす辛さよりも、ならばいっそのこと加害者を葬って罪を被る辛さの方が楽じゃないのか、消すことのできない過去なんだから、もう巻き込まれてしまったのだから、家族なのだから。

 

 

この物語は、長い月日によって離れてしまった互いの固くなってしまった心を少しづつほどいていく作品だったように思えます。

 

 

非現実的でもある

今回「凪待ち」ほどの圧倒はなかったんですが、顔ドアップでの泣きの芝居とそれを促すイヤらしい劇伴が売りの、感動必至のヒューマンドラマ!みたいなものではなく、シリアスとユーモアの緩急が程よく施された物語だったように思えます。

 

とはいえ、父を殺した母の15年ぶりの再会による親子間のわだかまりは、僕から言わせればこんなもんじゃ済まないだろう…と、どうしても勘ぐってしまう映画でもありました。

 

多分ですよ?この家族もっと崩壊してると思うんですよ。本当なら。

事件後公にさらされたことで、学校でも職場でもかなりの非難を浴びたと思うんです。

その嫌がらせが現在でも続いているんですから、当時はよっぽどだったことでしょう。

しかも子供の時に受けた精神的苦痛は、大人になった彼らの心をかなり蝕んでいると思うんです。

本当の悪は父親ですが、逃げ場を失った子供たちの憎しみの矛先はやっぱり母親になるんじゃないのかなと。

そうなった時に、あれだけのことで打ち解けられるのだろうかと。

 

実は後半、あるサブキャラのサイドストーリーが本筋に絡んでくることで、一番憎んでいた次男の本当の思いが爆発するって流れになるんですが、確かに罪を償ったとしても自分の人生を狂わせた張本人で、憎むべき存在だと自分に言い聞かせていきてきたんだろうけど、やっぱり自分の母親だからと心の奥では思っていたことを、あの場面で描きたかったと思うんです。

でも僕の中ではあの一晩でそんな劇的に変われるのだろうか、と。

というか、母に向ける怒りや憎しみは、結局のところ表面上の感情で、実は帰ってきてくれたことを喜んでいた、って風にしか見えなかったというか。

 

もっと言えば、いくら叔父が引き継いだからってタクシー会社の運営を15年も切り盛りできたことが不思議で仕方ない。

もしかしたら、あの満面の笑みと親しみやすさ、苦労や辛さを決して人に見せない性格、先代との約束を守る律義さなどによる叔父の人柄と草の根運動の甲斐があって、ここまでこぎつけたのかもしれない。

でもだ、田舎ならではの白目とかタチの悪い噂とかの凄まじいいやがらせが15年の間にかなりあったと思うんです。

 

何が言いたいって、あそこでよく会社やってこれたなぁ!と。

土地を移して経営してもよかったろうに。

子どもたちも嫌な思い出が詰まったあの場所で大人になっても住む必要なかったろうに。

名前を変えてもよかったし。

 

なんかね、ずっと違和感を持ったまま見てしまったんですよね~…。

 

とはいえ、そんな苦しい状況があっても,あそこに留まったということは、母との約束を守るという意志なんでしょう。

だから母もあの場所を残してくれたこと、まだ子供たちが住んでいたことがうれしかったのかなと。

言葉にしなくても伝わる親子の気持ちが、実はそこにはあったのかもしれません。

 

 

 

最後に

今回良いアンサンブルをしてましたよね、稲村家の3人。

佐藤健の闇と尖りっぷりがやけくそな態度から溢れてたし、それに対抗して感情を露わにする松岡茉優のべらんめえな口調は先日鑑賞した「蜜蜂と遠雷」の時の無垢な少女の役柄とは180度違う演技。

そこにどもりながらも仲裁する控えめな態度を見せるも、感情が爆発した時の怖さはだれも止められない長男を演じた鈴木亮平。

この3人が母のことで相談したり喧嘩したりする芝居は、映画に活力を与えてましたね。

僕は3人が外でタバコを吸うシーンが凄く好きですw

みんなサマになってるよね~。

まぁこれによって松岡茉優は喫煙者であることがより現実のものとなりましたがw

いや全然オッケーよ、吸ってても!

 

他にも脇を固めた役者陣が良かったですね。

特に音尾拓真!

白石作品ではガラの悪い役ばかりだったから、今回も何かしらやらかすんじゃねえかと思ったら、顔に似合わずコミカルでユーモアがあって真面目な社長!

15年間会社を守ったってのがにじみ出ていた人柄が出てましたよね。

筒井真理子もずるかったし、韓英恵の女らしからぬ雑な態度もよく映えてたし。

田中裕子も、これまで彼女の作品をほとんど見ていなかった自分としては新鮮でした。

ラストの表情、良かったなぁ…。

佐々木蔵之介はぁ、後半のアレは合わないなぁ…声質的に。

 

とりあえず「デラべっぴん」は笑っていいところなんでw

あれさぁ、自分が子供だったら中々つらいぜ~w

 

家族だからこそわかりあえないこと、あると思います。

だからこそわかり合おうとする姿を、この映画は描いたのかなと。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10