モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「マイホームヒーロー」感想ネタバレあり解説 ビターだけどいい結末でした。

マイホームヒーロー

独身である俺が一人娘をかわいがる父親の気持ちなど全くわからないわけだが、愛する娘の彼氏がヤバい奴で、しかも娘に危害を加えようとしているのならば、許すわけにはいかない、という父親の気持ちは痛く理解できる。

 

父親が介入して別れさせることもできない、警察に相談してもヤバい集団を捜査してくれそうもない、ましてや事件にならないと動いてくれない。

そうした局面で、父親としてどうやって娘を守るべきか。

 

今回観賞する映画は、そんな娘と家族を愛し守ることが生きがいの冴えない父親が、娘の彼氏を殺してしまうことから始まる、ファミリーサスペンス映画。

予告を見る限りコメディ色の強い物語なんだろうと思ったら、どうやらTVドラマの劇場版とのこと。

 

ドラマ版を見ていないと話がついていけなそうな作品ですが、ワーナー・ブラザーズ主催の試写会に招待されたので、気軽な気持ちで観賞してまいりました。

 

 

作品情報

100万の命の上に俺は立っている」の山川直輝、「サイコメトラー」「でぶせん」の朝基まさしの異色コンビが描く「マイホームヒーロー」。

娘の彼氏を殺して〈殺人犯〉となってしまったごく普通のお父さんが、彼氏の仲間である半グレ組織から家族を守るため、「推理小説オタク」の知識を駆使しながら、絶対負けられない戦いに挑む姿を描いたファミリーサスペンス。

 

TVアニメやTVドラマなどのメディアミックスによって展開している本作は、彼氏が所属する半グレ組織との「命がけの騙しあい」を繰り広げたTVドラマから7年後を舞台に、組織と警察、さらには警察官となった娘にまで疑念を持たれてしまう過酷な状況の中、主人公であるお父さんがどう切り抜けていくかを描く。

 

監督は青山貴洋。
「ドラゴン桜」をはじめとしたTBSドラマの人気ドラマを演出。本作が劇場長編映画デビュー作となった。

 

出演者には、「ゴジラ-1.0」の佐々木蔵之介をはじめ、木村多江、「あの頃、君を追いかけた」の齋藤飛鳥、アイドルグループ・なにわ男子のメンバー高橋恭平、「孤狼の血」の音尾琢真らTVドラマからのキャストに加え、アニメの声優としてはもちろん「シン・ウルトラマン」、「ゴールデンカムイ」など実写映画でのナレーションや吹き替え、さらには役者としても活躍する津田健次郎、お笑いコンビ・インパルス板倉立川談春などバラエティに富んだ顔ぶれが並ぶ。

 

これまで数多くの修羅場を潜り抜けてきたお父さんの前に立ちはだかる敵は、まさかの最愛の娘。

この最大のピンチを、お父さんはどう切り抜けるのか。

何よりも「家族の幸せ」が最優先であるお父さんの、最後の戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

あらすじ

 

愛する家族を守るために娘・零花(齋藤飛鳥)の彼氏を殺した父・鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)は、命がけで罪を隠し通した。


それから7年後―山中に埋めた死体が発見された!

 

捜査に乗り出す警察と、死体とともに消えた10億円を探す半グレ犯罪組織。

 

再び標的&容疑者になった父。

そして、父の罪を知らずに刑事になった娘は、事件の真相に迫っていく…。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

そもそもが「劇場版」なのでTVドラマサイズから抜け出せてない作品。

とはいえ一見さんでもウェルカムなおさらい付きに加え、どんどん追い込まれるお父さんと、飽きさせない工夫はありました。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

親父の罪を娘は受け入れるのか。

初めて本作の予告を劇場で見たとき、どこか拍子抜けしたテンポで死体を処理する佐々木蔵之介と木村多江の姿から、ちょっとだけ興味がわいたのをよく覚えている。

そこで「娘の彼氏を殺した父親」が家族を守るためにあの手この手で難を逃れるというあらすじを知り、劇場で見るのを楽しみにしていたわけ。

 

ですが、その時予告で見た映像は「ドラマ版」で、劇場版である本作は、「一度ケリのついた話にはまだ続きがあった」という流れであったことを、後で知ることに。

 

正直半分ダマされた感じだったわけですが、試写に招待してもらうのだからとりあえずは楽しもうと。

 

 

あらすじでも書いた通り、ドラマ版で山に埋めた死体が、土砂災害のせいで発見されちゃったという不運から物語はスタート。

 

お父さんである哲雄は心配になり山に見物へ行くと、父とかかわりのあった刑事と遭遇。

バードウォッチングとうそをついたものの、どう見ても山を歩くにはふさわしくない靴を履いていた哲雄の姿に、刑事は目を光らせてしまう。

 

この対面を機に、警察にマークされていく哲雄。

 

一方娘は警視庁の捜査一課に所属するというエリート街道まっしぐら。

犯人を必死で追いかけ見事に逮捕するが、その気合と見境なく突っ走る性格に、先輩刑事も頭を抱えている様子。

 

そして、土砂災害で出てきた死体は、10億円を隠し持っていた半ぐれ組織の一員ということで、上層部の組織「真野会」のボス・志野が動き出すわけであります。

かつて哲雄は自分が犯したすべての罪を、間島恭一に擦り付け難を逃れたわけですが、バックレた恭一、そして彼とつるんでいた哲雄へと標的を定めていくのであります。

 

組織の人間を殺害した復讐、ではなく、殺した組員が隠し持っていた10億が目的。

低い声色と何をしだすかわからない志野は、哲雄の会社まで出向き脅迫。

 

警察にマークされ、半グレ組織にもマークされた哲雄。

終いには家まで燃やされ、家族にまで命の危険が及んでいく。

さて、哲雄はこのピンチをどう切り抜けるのか。

 

という話。

 

 

ドラマ版ではまだ幼かった娘も7年経てば立派な社会人てわけですが、まさか警察に就職してるなんて、お父さんもきっとドキドキしたことでしょう。

そう、本作最大の盛り上がりは、この設定によって、「自分のかつての恋人を殺したのがお父さん!?」という真実、そして「警察官として正義を全うしなくてはならない身分」という、娘と警察官の両方として父親をどう受け止めるかに焦点があてられる。

 

そこに哲雄がいかにして娘を家族を守るために苦労したのかが、見てるこちら側に乗るので、見る人によってはぐっとくる部分もあるかもしれない。

 

ただ何も知らずに見た自分としては、ドラマとして機能している点や倫理的な是非、親子関係としての一定の理解は得られるものの、そこに至るまでの過程が心底面白みに欠けるので、十分に楽しめることはできなかった。

 

まず一番に挙げるとすれば、「ドラマも原作も知らなかった」ことに尽きる。

どうも哲雄には「推理小説マニア」という設定があり、ドラマ版でもマニアだからこそ潜り抜けることができる「回避策」や「打開策」を駆使して難を逃れた様子。

本作の劇中でも一人部屋にこもってサイト向けに新作を執筆している姿があったり、それを通じてある少年と連絡を取ることにつながっていくわけですが、どうもこの設定に関して面白く利用しているように思えなかった。

 

確かにクライマックスでの志野との対峙や、殺し屋である窪との対決でアイディアを駆使して打破できたものの、それを推理小説マニアたらしめるアイディアと結び付けるには弱すぎるのではと感じた。

 

例えば、そのイディアを何かの本で読んだとか、会話の節々で「こうやるとトリックが暴ける」とか「アリバイが崩せる」みたいなやりとりがあれば伏線としてのちに使えるわけだが、劇中で使ったアイディアは全て「手前のシーンで触れたもの」どまりのものばかり。

実際登場するからには利用するのは見え見えだし、いかにも出すのが手前すぎる点から、これみよがしに「実はあの時」というナレーションで説明されても、見る人によっては丁寧な解説だが、映画として考えるとこうした構成は個人的には面白みに欠ける。

 

また、哲雄の前に幾多の困難が襲い掛かるが、結局は一本の線に集中していく構成も、もっと練ってほしいと感じた。

基本的にはヴィランとなる志野との対決へと方向が定まっていく。

目をつけていた刑事も、半グレ組織に殺され、しかも殺したのは彼らとつながっている同僚の刑事。

この刑事がやがて哲雄の家族を人質にし、哲雄を脅迫する役目を果たす。

 

そうこうしてるうちに警察からのマークは、内通者によって組織が先を行く展開となり、警察としての機能は薄くなっていく。

一応娘が在籍してるが、彼女は今回の事件の関係者扱いで捜査から外れる事になり、単独で事件を追っていくことに。

この単独捜査によって、娘は間野を見つけることになり、哲雄がしてきた全てを聞き、それを受け止めたうえで哲雄を助けに向かうという流れ。

 

こうすると、警察の役割は消え、それが娘にとって代わり、その娘も父を捕まえるための役割ではなくなってくので、結局「哲雄VS組織VS警察VS娘」という構図にはならない。

 

個人的には八方塞がりな哲雄が、どうやってマニアの特性を活かしてすべてから逃れるのかを楽しみたかったが、結果そうしたシーンは一つもなく、ただ流れに身を任せて観てるだけにとどまった。

 

 

色々調べてみると、原作では、この娘が刑事になる前に一つ大きなエピソードが描かれていた。

それが「妻の実家」のエピソード。

半グレ組織が娘を狙っていた理由が「5億の遺産相続人」だったため、男が近づき、DVをし、やがて哲雄が殺害、という流れ。

一時解決したものの、警察は哲雄を「事件の犯人」と断定、妻を追って実家へ向かう哲雄と娘は、カルト宗教の陰謀によってふたたび面倒な出来事に巻き込まれるというもの。

 

ここで、哲雄は追いかけてきた半グレと宗教をつぶし合わせるアイディアを考え行動するそうで、明らかに「警察VS半グレVS娘」みたいな構図より、「カルト宗教VS半グレ」の方が楽しそうではないかと。

哲雄にとっても、妻の実家の面倒加減はわかっていたわけですし、何よりこの作品は「マイホームヒーロー」なわけですから、あくまで「家族を守るための度を越えた行動」を軸に、こうした地上波では扱えなさそうなエピソードを劇場版出かけた方がウケたのではないかと。

 

ぶっちゃけリアリティに欠けるエピソードだし、ドラマでやってきた内容を劇場でもう一度みたいな内容にもなってるので、イメージを守るための改変と受け止められるが、個人としてはこっちをみたかったですね。

何より木村多江が「カルト宗教」に捕まってる絵が浮かぶ…。

 

 

最後に

あくまでTVの劇場版という作品のため、普段見てる映画よりもクオリティは低く、内容や展開、ルック全てにおいて甘い印象があります。

しかし、本作の哲雄の落とし前は、良いラストだったように思います。

いくら家族のためとはいえ、人を殺してハッピーエンドというのも後味が悪いし、やってきたことに対しての禊はしなくてはならない。

家族を守り通し、娘の立場も立てる。

 

全体的にシリアスすぎた面もあるけれど、このラストへ向かうための空気感だとすればアリかなと。

 

常套句だけど、それぞれの正義が混在するわけで、哲雄にとっての正義はこれだったわけで。

そこには警察の正義があり、半グレにも正義が存在したわけで。

そうしたものがシリアスな空気を生んだのか、と考えると、案外ド直球のサスペンスになってた、のかもしれない。

 

 

あとはもう、津田健次郎です。

声優さんとして認知してましたが、お芝居もこなせるとは聞いてません。

半グレ組織のボスとして、良い声と狂気じみた目、できることなら途中ブチぎれて暴れてほしかったですねw

というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10