モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ゴールドボーイ」感想ネタバレあり解説 夜神月が2人いるような頭脳戦で結末が読めない。

ゴールドボーイ

もし殺人現場を目撃した場合、次に何をするべきか。

善良ある市民なら、犯人に悟られないように警察に連絡するのが一般的。

そもそも相手は人殺しですから、絶対関わりたくありませんし、もしかしたら証拠隠滅のために自分自身が消される可能性だってある。

 

しかし、相手をゆすれば金が手に入ると考えたら、どうだろうか。

 

今回観賞する映画は、殺人犯に脅迫を実行する少年たちと、欲望に駆られた殺人犯との危険な駆け引きを描いたノワール作品。

おそらく殺人犯も言いなりにはならない展開になると思いますので、かなりの頭脳戦を描く作品と思われます。

でも相手は子供だしなぁ…どう対峙するするんだろ…。

早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

中国のベストセラー作家・紫金陳(ズー・ジンチェン)の 「坏小孩」 (悪童たち)を、平成「ガメラ」シリーズや、「デス・ノート」シリーズを手掛けた監督の手によって、沖縄に舞台を変えて描くクライムサスペンス。

 

一筋縄ではいかない家族関係で悩む中学生たちが、富と名声と自由を手に入れるべく殺害を実行した大人の男性の姿を目撃、それをゆすりの種にして犯人に脅迫し、金を巻き上げようと画策する姿を、双方の「欲」を炙り出しながら、スリリングなドラマへと加速していくジャパニーズ・ノワール。

 

『デスノート』や、「平成ガメラ」シリーズなど、アジア圏でも人気と知名度の高い金子修介監督に企画を持ち込んだという本作は、アジアの映像コンテンツを配給するチームジョイが制作。

そのネットワークを活用し、中国をはじめ、アジアでの公開を前提とした作品。

 

また文庫本でも2冊もある長編小説を映画に落とし込むために、脚本を港岳彦が担当。

複雑に絡み合う群像劇「正欲」をまとめ上げた実力が、本作でも再び輝いた作品となった。

 

主なキャストは、悲劇の跡取り婿を演じる冷血な青年役を、「一秒先の彼」や「ドライブ・マイ・カー」の岡田将生が担当。

何食わぬ顔で日常を送る悪魔を、その端正な顔立ちを巧みに操って熱演。

そんな彼を手玉に取ろうと画策する少年らのリーダーを、「リボルバー・リリー」の羽村仁成が担当。

感情を内に秘めた演技で、表面はよくできた秀才、その裏に冷血な顔をもつ複雑なキャラクターを見事に演じた。

 

他にも、「キリエのうた」、「ヴィレッジ」の黒木華、「ニコラ」の専属モデル・星乃あんな、「ラーゲリより愛をこめて」の前出燿志、「よだかの片思い」の松井玲奈、「ヘルッドッグス」、「沈黙のパレード」の北村一輝、Netflixドラマ「忍びの家」、「沈黙の艦隊」の江口洋介などが出演する。

 

将来有望である少年たちの価値を連想させるタイトルが、終演後どんな重みを乗せてくるのか。

大人と少年たちの熾烈な頭脳戦が幕を開ける。

 

 

 

あらすじ

 

それは完全犯罪のはずだった。

まさか少年たちに目撃されていたとは…。

 

義父母を崖から突き落とす男の姿を偶然にもカメラでとらえた少年たち。

事業家の婿養子である男(岡田将生)は、ある目的のために犯行に及んだのだ。

 

一方、少年たちも複雑な家庭環境による貧困や、家族関係の問題を抱えていた。

 

「僕達の問題さ、みんなお金さえあれば解決しない?」

朝陽(13)(羽村仁成)は男を脅迫して大金を得ようと画策する。

 

「何をしたとしても14歳までは捕まらないよ。少年法で決まってるから」

 

殺人犯と少年たちの二転三転する駆け引きの末に待ち受ける結末とは……。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

登場人物紹介

  • 東昇(岡田将生)…凶悪な殺人犯。富と地位を手にしたいと、欲望に駆られ崖の上から義理の両親を突き落として殺害する。予期せぬ障害に対し嫌悪感を募らせ、その邪魔を排除すべく機を伺っている。
  • 安室香(黒木華)…物語の鍵を握る少年・安室朝陽の母親。一平と離婚して以来、1人で朝陽を育てている。仕事のため長時間外出することが多いが、朝陽を愛し、彼の幸せを願いながら必死に家計を支えている。

 

  • 安室朝陽(羽村仁成)…幼馴染と再会したある日、東昇が崖から義理の両親を突き落とす瞬間を偶然録画してしまう。警察に通報しようとするが、夏月が親を刺して逃亡中のため、東昇を脅迫することに。東昇との闘いの中、思わぬ秀でた才能が露見する。
  • 上間夏月(星乃あんな)…殺人の瞬間を偶然録画していた子ども。父親を刺してしまい、警察の追跡をかわすため義理の兄・洸と共に逃亡生活を送る。徐々に朝陽に対して特別な感情を抱くようになり、心の中で変化が生まれていく。
  • 上間浩(前出燿志)…朝陽の小学時代の同級生で親友。義理の妹の夏月を庇い、共に朝陽の住む街まで逃亡する。荒っぽい一面もありつつ、単純で人当たりが良く面倒見のいい性格。

 

  • 東静(松井玲奈)…主人公・東昇の妻。昇への愛情は冷え、離婚の話が進行中。その最中に両親が事故死し、自身も殺人の対象となるのではと恐れ、従兄弟の刑事・厳に相談する。
  • 打越一平(北村一輝)…安室朝陽の父親。前妻の香と離婚し、ハルカと再婚した。朝陽の身を案じつつ、新たな家庭と遥とその連れ子の晶と関係を築いていた。しかし、突然愛娘の晶が自殺する。
  • 東巌(江口洋介)…静の従兄弟の刑事。東昇を疑っており、彼の周りで発生する殺人事件を追跡し、真実に迫っていく中、心の葛藤に苦しむ。

(FasionPressより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

どうやら後を引くラストらしいので、ハラハラドキドキしながらも胸糞の悪さが際立つ映画なのかも…。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

何も知らずに観てほしいから、この先読んでほしくないww

資産欲しさに殺しまくる岡田将生VS子供だと思ってなめんなよ羽村仁成の頭脳戦が最高!

格差が加速する現代社会の背景をうっすら感じさせながら、サイコパス同士の絶妙な駆け引きと淡い青春も相まって、なんとも言えない充実感でした!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

岡田VS羽村がシビれにシビれた。

はっきり言ってこの物語の主役は岡田将生ではなく、羽村仁成君演じる朝陽くん。

もうその辺りで若干のミスリードがあったかもしれない。

 

だって、これ子供が大人を脅すっていう普通なら成立しないような対立構造なわけ。

序盤でもどうみても岡田将生が、子供相手に付き合ってあげてるくらいの下に見た感じで、子供たちはその通り「下に見られてるけど何とか対等な関係をもっておきたい」という背伸びしたような感覚が映像ややり取りから感じられるわけ。

 

だけど、物語が進むにつれて羽村君の表情に変化が生まれていくわけですよ。

しかも段々頭のキレる掛け合いだったり、知らぬ間に岡田将生をリードしてるように見えてくる。

 

いやいや岡田将生だってなかなかよ。

用意周到な計画殺人を企てて、周囲を見事に欺いてる。

妻から離婚を切り出されててもなんとかいい夫でいたい、そして会社の人間としても役に立ちたい、みたいな外面もよく聞き分けのある良心ある大人、そんな風に見える姿を表面的に見せて解きながら、子どもたちから脅迫されてる時の狡猾じみた悪魔のような微笑み、これら両面を瞬時に使い分ける芝居は、ドライブ・マイ・カーはじめ、ここ数年でのベストアクトだったと思うわけです。

 

それをいとも簡単に上回ってしまうのが羽村君だったわけです。

リボルバー・リリーでは拳銃の持ち方すら不慣れなボンボンの子供の役をこなしていたのがつい最近。

あれから1年も経ってないのに、一体どうやってあんな表情を出せるほど上達したのか、俺には想像もつきません。

 

まだ完全に声変りなどしていないような幼い声で、自分が認めた日記を読み返す羽村君。

そんな彼が、夏月と浩と共に立てた脅迫は、正直誰も真似できない「夏休みの計画」じみた遊びにすぎなかった、ように見えるんですわ。

正直直接交渉しても返り血浴びてジエンド!なんてリスクを想定できてない時点で、やっぱガキだな…なんて思ってたのもつかの間、しっかり岡田将生演じる東昇と渡り合っていくじゃねえか。

 

というか、この時点で岡田将生よ、お前何子どもをまともに相手してんだよ!なんてツッコミも一瞬浮かんだけど、そこは思春期真っただ中で、「子供に思われたくない年頃」ですから、ちゃんと目線を下げて理屈を並べて説明する辺りが偉い。

 

そうこうしてるうちに、徐々に表情が険しくなっていくじゃないですか羽村君。

単独で東昇に会いに行くシーンなんか、叔父さんちょっと怖かったですよ。

「ねえ、どうやって殺したの!?」と駄々をこねるかのように質問攻めして東昇を困らせるけど、それに追い打ちをかけるように準備してるわけですよ。

幼い声を出しながら相手の懐に飛び込み、しかも計画にない出来事に遭遇しても冷静に「等身大の13歳」を演じる羽村君の、反射神経といいますかポテンシャルと言いますか、物語が進むにつれて、彼がこの後どんな表情で大人を困らせていくかワクワクしていくじゃありませんか。

 

終いには朝陽くん、とんでもねえ壮大な計画を立てていることがわかり、クライマックスを迎えます。

うわ、まじか、と、語彙力のない感情が芽生えたわけです。

その最たる理由は、やはり朝陽演じた羽村君の演技力があってこそだと強く言いたい。

彼でなければ、ここまで痺れる物語になってなかったろうと。

 

これみてさ、ちょっと中学生に関わるの、嫌だな…ってくらい拒否反応が出てますw

子どもをナメてるつもりはないけど、どうしたって「子供」って先入観が働いて下に見てしまうことってあるわけよ。

だけど、これくらい賢い子だと、例え相手がサイコパスでもいとも簡単に転がせちゃうんだよ、って考えたら、もうおじさんは子どもと向き合うのが怖くて仕方ありませんw

 

この対決の行方を是非映画館で堪能してほしいですね。

 

二転三転する物語にハマっていく。

舞台は沖縄のコザ。

美しい海や山といった自然に目を見張る一方で、住宅地や学校の上を戦闘機が飛ぶ異物感が漂い、登場人物の背景にはどことなく「重々しさ」が見え隠れする。

そう印象付けるための画質や色味になっているのには、様々な理由が考えられるが、結果的にそれが「日本映画」のように感じられない特別なモノへと変わっていたのは良かったように思えます。

 

本作の登場人物の背景には、一大企業によって街が成り立っている背景や、家庭環境による不和、その結果裕福ではない貧しさが描かれてるんですよね。

 

朝陽は母子家庭ではあるものの、父親は健在で関係も良好。

しかし父親の再婚相手の娘が朝陽と同級生だったが、1学期の最後に首吊り自殺をしてしまっており、その原因を作ったのが朝陽だと、向こうの母親から難癖付けられているという描写が、冒頭で描かれている。

 

そんなある日に、隣町に引っ越した浩が、父の再婚相手の娘である夏月を連れてくることから、男女3人のジュブナイルな日々が強まっていくんです。

 

この浩と夏月は、父親からイタズラされそうになったことで包丁で刺して逃げてきたことを朝陽に告げます。

人殺しになってしまったかもしれないという不安を抱きながらも、朝陽と日々を過ごしていくことで少しずつ固かった表情が和らいでいき、ひと夏の青春模様を垣間見せるシーンとなっていきます。

 

一方、東昇は冒頭で両親を事故に見せかけて崖から突き落とし、「悲劇の入り婿」を必死に演じていきます。

妻とはとうに関係が覚めており、父親が何の薬を服用してるのかといった細かい管理は全部東昇がしていました。

妻は妻で昇に離婚を切り出していましたが、その後人が変わったように優しくなっていったことが不気味に思えていた節があり、今回の事故は絶対に夫が企てた犯行であることに確信を持っていました。

資産目当ての犯行なら、次は自分が殺されるといとこで県警の刑事である巌に打ち明けているほど。

 

巌に至っては、東家の一員であることから捜査に加わることができないことや、あらゆる企業や警察が東家とズブズブであることに嫌気がさしてたことから、あまり関わりたくないような空気を出していました。

しかし妻が事故で亡くなったことをきっかけに、事件に首を突っ込むことになっていくのです。

 

こうした登場人物の背景をウチナータイムの如く見せていく序盤は、正直退屈でした。

冒頭で殺害をする東昇を見せた後、漢字で「黄金少年」と出てくるタイトルに「よ!待ってました!」と思いましたが、そこから朝陽パートを丁寧に描いていく構成だったんですが、東昇の殺害現場の証拠を押さえるまでの時間が長く感じてしまったんですよね。

 

例えばですけど、東昇が殺害を働く瞬間までと、朝陽が浩らと合流し、海辺まで向かうまでのシーンをクロスカッティング(同時進行で交互に見せていく手法)してテンポよく見せていくと、冒頭から序盤までがリズミカルに進行できるのではと思ったんですよね。

要はそこから本筋に入るわけで、ここまでの時間を短縮することと、いよいよ互いが対面する動機がお目見えするまでのスムーズさを強調することで、独特な緊張感が出せるような気がするんですよね。

 

また、途中でも触れましたけど、やはり子供らのパートが、演技上未熟感のある掛け合いのため、時間を使って関係性を見せていることもあって、ちょっと見てられないなと思ってしまったんですよね。

まぁ、その未熟感がある種伏線にもなってることになっていくわけですけどw

 

とにかく、こうした不満は互いが初対面し、脅迫という名の交渉に入っていくと忘れていきます。

 

最初の交渉で、子供たちは3人合わせて6000万円を要求しますが、東昇はそんな大金は用意できないとごねていきます。

もちろんそれには理由があり、結局は入り婿で、資産は自分ではなく東家にあり、勝手に持ち出すことはおろか自由に使えるわけもない。

まずは時間をくれということで、その場を逃れます。

その際、東昇の脳内映像が瞬時に描かれていくわけですけど、正にあっという間の殺害シーンでした。

 

浩がつきつけていたバタフライナイフを奪ってサクッと3人を仕留めていく描写は、急な挿入もあって驚きましたが、昇の中でそういう選択肢もあるぞという狂気めいた側面が見れた瞬間でしたね。

それをしなかったこと言うことは、今ここでそれを行ってもリスクしかないという冷静な判断だったんでしょう。

結末がどうなることかも知らずに…。

 

途中でも書きましたが、あくまで子供が大人相手に頭使って金を奪うってなかなか難しいことで、脅迫された東昇も毛頭自分には敵うわけないと思ってるはず。

しかし、この後の交渉から、朝陽の用意周到な計画にまんまとハマっていくんですよね。

そこからが面白くなっていくわけです。

 

 

最後に

ちょっとこれはね、全部ネタバレしたくないw

大体言っちゃってますけどw

要は二人とも根っこはサイコパスな部分を持った存在なんだけど、その感覚ってのは生まれ持ってのモノなのか、環境がそうさせたのかはわからないわけです。

確かに二人とも今の現状から抜け出して裕福になりたい願望はあった。

そのための手段として、最短距離で掴めるルートが「人殺し」だった、だけなのかもしれない。

 

何にでも理由はあるにせよ、二人がしたことに対する反応は思った以上に冷静で、そこへの罪悪感もなければ、反省もない。

何よりそれが怖い。

東昇の計画がチューボーに邪魔されることで徐々に苛立っていく姿に、普通子供ならビビるけど、朝陽は微動だにしない。

そうしたちょっとした反応を見るだけでも、2人の芝居は素晴らしくて、説得力がついてくる。

それだけでも大変素晴らしい映画だったのではと思います。

 

事件がひと段落付き、物語は終息へ向かうかと思いきや、まだまだ終わらない。

共犯関係からくる心理的な思いみたいなものが、あとからやってくることで部外者だった人物に「真実」がつきつけられ、さらにサスペンスフルになっていく。

そうしたエンタメ的な畳みかけもあって、終始目が離せない物語でしたね。

 

また一部のシーンで、高校生レベルの問題を朝陽がいとも簡単に解くのがありました。

映画で説明不足に感じましたが、あれ要は二人とも「数学が得意」で、二人ともその大会で賞を取った経験があるってことで、近しい存在だったってことを示したかったんでしょうね。

これらの犯罪計画は、数学的な計算で計ったもの、だったのかなという解釈です。

原作ではもっと本筋に関係のある部分だったのでしょうか。気になります。

 

タイトルである「ゴールドボーイ」、ゴールデンボーイって意味だと「若くして成功した男性」という訳になるみたいですが、ゴールド(輝かしい魅力)を持っている少年と考えると、その魅力って「こういうことかよ・・・」と思えてしまう映画だったのではないでしょうか。

 

いとも簡単に人を殺せる役柄を演じた岡田将生の、さらに上を行った羽村君。

監督の過去作「デス・ノート」にあやかって言えば、本作は「夜神月VS夜神月」ですよ。

お互いがジョーカーを持っていることを見せずに、どの局面でカードを切るか、そうした頭脳戦が炸裂したクライムサスペンスでした。

 

てかさ、最初に朝陽が読んだ日記を、見終わってから思い返してみると、マジで怖いのよ…。

 

あと、東昇と朝陽って名前、凄く意味が深いネーミングですよね。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10