モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「リボルバーリリー」感想ネタバレあり解説 カッコイイ綾瀬はるかなのに話は冗長。

リボルバー・リリー

東映が誇る女主人公映画。

緋牡丹博徒女囚さそり極道の妻たちなんてのもそうですね。

そんなバイオレンスなかっこいい女性映画の仲間入りを果たしそうな作品が登場です。

 

元殺し屋の女性が、少年を守りながら無数の男たちを相手に銃を撃ちまくるという、「グロリア」かよ!?と思わせる最高にワクワクする内容。

 

しかも舞台は大正時代。

はいからさんが通りそうな和洋折衷な街並みの中で、茶褐色の軍服が主人公を追いかけてくわけでしょう?

それこそ2023年は東宝が「わたしの幸せな結婚」を製作し大ヒットしましたが、あれも明治や大正を思わせる架空の世界が舞台で、本作にも通じる匂いがありましたよね。

 

わたしの~や帝都大戦みたいなSFじみた内容ではないんでしょうけど、レトロブームも加わって、こういう「東映らしい」感じのアクション映画になってたらいいですね。

 

ただ、監督が行定勲ってのがね、ちょっとね…

あの人アクションの人じゃないから。

綾瀬はるかも、個人的にはこういう役ってハマりそうにないので…。

それでも東映を味わいたいがために、早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ONE PIECE FILM RED」や「THE FIRST SLAM DUNK」など大ヒットアニメ映画で2022年の日本映画界を盛り上げてきた東映が、「東映らしい」バイオレンスアクションを製作。

 

関東大震災後の大正末期を舞台に、裏社会に生きた元殺し屋の女性が、消えた陸軍の秘密資金を巡っての国家的陰謀に立ち向かう姿を描いたガンアクション・サスペンスだ。

 

長浦京の同名小説(講談社文庫)を原作にした本作を、「GO」や「世界の中心で、愛を叫ぶ」など、数々の話題作を世に送り出してきた行定勲が、初のアクション映画として監督を務める。

彼らしい映像美と丁寧に組み立てたカットの連続が物語に臨場感を生み出し、壮絶なガンアクションが待ち構えるクライマックスでは、誰もが息をのむ壮絶なシーンとなっている。

 

そんな手に汗握るアクションを見せる主人公を、「ICHI」や「奥様は、取り扱い注意」、そして「レジェンド&バタフライ」など、コメディエンヌ以外の顔も持つ綾瀬はるかが熱演。

天然な雰囲気を封印して臨んだ本作は、、無口な表情での芝居や見事な身体能力を駆使したアクションなど、普段の彼女から想像できない姿で魅了。

男たちが作った不完全な世界を終わらせるために、史上最強のダークヒロインとして立ち向かう役柄を作りあげた。

 

他にも主人公の相棒的存在となる岩見役を「はい、泳げません」の長谷川博己、キーパーソンとなる少年の父役を、「そして僕は途方に暮れる」の豊川悦司、陸軍大佐役に板尾創路、その部下をジェシー(Sixtones)と「東京リベンジャーズ」の清水尋也、山本五十六役を「死刑にいたる病」の阿部サダヲ、そしてヤクザの組長役を「さがす」の佐藤二朗が演じるなど、個性派の名優たちが不完全な男たちの世界を彩る。

 

これまで数々のバイオレンス映画を製作してきた東映が贈る、ノンストップエンタメアクションエンタテインメントに、乞うご期待。

 

 

 

あらすじ

 

1924年、第一次世界大戦と関東大震災の爪痕が癒えぬ帝都・東京。

謎の男たちに屋敷を襲われ女中らを惨殺された細見慎太(羽村仁成)は、辛くも現場を脱出するが、追っ手に取り囲まれてしまう。

 

窮地に陥る慎太の前に現れたのは小曾根百合(綾瀬はるか)。

その手には、S&W M1917リボルバーが握られていた。

 

そんな出会いの裏に隠された驚愕の真実を知る由もないまま、ふたりは行動を共にし、巨大な陰謀の渦に呑み込まれてゆく……。(Movie Walkerより抜粋)

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感想

かなりの予算を掛けただけあって大正時代を描いてたり、大掛かりなアクションを見せたことは評価。

しかし、あまりの凡長さでもっと尺詰めるか緩急つけるかしろや。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

リリーって一言も言ってないんですけど。

かつてスパイ組織に所属し恐れられた女性が、ある少年の登場により国家的陰謀に巻き込まれていく姿を、美術やセット、衣装など当時を再現したことで心地よいタイムスリップを味わえる映画ではあったものの、行定勲特有の行間や演出、圧倒的なタメが結果的に物語を間延びさせるだけの仕上がりでしかなく、139分もの尺がありながら「もっとできることあるだろ」と半ば退屈なアクション映画になってしまった凡作でございました。

 

 

ザックリあらすじを説明。

一家殺害事件の犯人がかつての仲間であったことから、その事実を確かめるべく現場へ赴いた百合の前で、とある少年・慎太が陸軍に追われていることに気付く。

とっさの判断で彼を助けると、どうやら彼は投資家である父から「小曾根百合を訪ねろ」と言われたまま逃亡をしていたことを知る。

 

道中何度も陸軍に追われたり、かつて自身が所属していたスパイ組織の残党に追われたりと、何やら面倒なことに巻き込まれた百合。

しかし慎太が預かった封筒から察するに、慎太の父は陸軍からかなりの金を横領したことを知り、国家機密を慎太が握っていることを把握する。

 

百合は太客でもある弁護士の岩見や銘酒屋で共に働く那珂などと共に、慎太が握る鍵を追う陸軍から命をなげうって守る。

 

岩見の調べによれば、投資家である慎太の父は、金のない陸軍が武器を売りさばいて得た利益を横領し、上海の銀行に国家予算の10分の1にも及ぶ1億6000万を預け入れたことが判明。

しかもその銀行とは「バニシング契約」という1年ごとに更新手続きしないと預けた金が銀行の物になってしまう、さらにその期限が残り10日ということで陸軍は相当焦っているということが判明する。

 

そして岩見は封筒の中身が取引明細しかなかったことから「慎太はまだすべてを明かしていない」と推理。

見事にそれが的中。

封筒を入れていた手ぬぐいから暗号を導き出した答えはある場所を示した住所であり、陸軍との死闘で傷を負った百合と慎太、岩見は翌朝そこで落ち合うことを約束する。

 

岩見はかつて海軍学校の先輩であり、現在海軍大佐である山本五十六との面会を試みたが、途中内務省の役人に拉致されてしまう。

そこで知らされたのは、慎太の父が百合の夫であり彼女をスパイに育て上げた水野であること。

 

なぜ彼が息子に百合を訪ねろと告げたのか、これで点と線が繋がった。

そして水野は、幾ら諜報戦や戦争を繰り返しても、資金のない軍隊が国を守れないことに気付き、経済で支えることを画策していたのだった。

 

岩見の手回しによって海軍が慎太を保護することを約束した山本。

しかしそこへ送るまでの道中には慎太を求め、多数の陸軍が待ち構えていた。

果たして百合は、彼らから慎太を守り、海軍がいる日比谷までたどり着けるのか。

 

・・・というのが大方のあらすじでございます。

 

 

結局本作は、金欲しさに暴走の一途をたどる陸軍と、その金をひっそりと狙う海軍による慎太の奪い合いであり、それに巻き込まれながらもかつて愛した夫の命を受けて立ち向かう百合という三つ巴の戦いだったのであります。

 

結果的に海軍に金を預けたところで、戦争を遅らせるだけの結果になってしまったわけですが、それでも山本五十六は送らせることができたというだけでも大きな功績だったのかなと。

そういう意味では歴史と重ねてみると、国家のために満州を攻める暴走をした陸軍に金を奪われない方がよかったなぁってオチですよね。

 

しかしながらこうした時代考証をしながら本作を見ると面白みが増すって意味では、映画的な面白さは置いといて「アリ」ではありますかね。

やっぱり当時の日本は「国のために」がヘンな方に向いて、足を止めることができずにいたんでしょうね。

 

演者については賛否

というその後の展開は置いといて、本作はとにかくダークヒロインと化した綾瀬はるかがどれだけガンアクションで魅了させるのかが、僕にとって面白いかどうかの評価基準だったわけですが、そこは何とかクリアしていた印象。

 

終始笑顔を見せないクールな表情と、敢えて低い声で芝居をし続けた綾瀬はるかを見て、天然気質なコメディエンヌから脱却したい彼女の本気度が伝わった作品だったと思います。

 

作品全体でアクションをするにも会話の芝居をするにも、中堅からベテランの位置に属する彼女の余裕が感じられたという部分も垣間見えました。

追手の背後に佇んで拳一発で仕留める時の彼女の素早い動きと力の入れ様は、結構リアルだったように思えましたし、見どころであるガンアクションに関しても右腕をスっと伸ばして構える姿は貫禄すら感じましたし、そこまで硬くならなくてもいいのになぁとは思いつつも決してダサいアクションは一切されてなかったように思えます。

 

かつてのスパイ組織の残党との殺陣も、カンフーっぽさがありつつも素早い動きと緩急つけた動きで激しいバトルを見せておりました。

まぁだいぶ型っぽくはありましたが。

 

衣装も込みで煌びやかで美しい姿を拝めるという点においては、本作は正に「綾瀬はるかを愛でる」映画であったと言えるでしょう。

 

個人的には彼女の右腕的存在であり元海軍で現弁護士である岩見演じた長谷川博己が抜群に良かったと思います。

なんていうんでしょうか、彼の語り口は「シン・ゴジラ」以降輝きを増していて、セリフが凄く滑らかなんですよね。

 

またひとつひとつの仕草がいかにも「紳士的」でありながら、突如クローズアップしたら流し目でこっち視るもんだから、そりゃおばさん連中もホレるわなとw

 

キャラとしてもずっと思いを寄せているかのような眼差しで百合をサポートしており(途中着替え覗いてたけどな!!)、最後には「なぜかわからんが守りたいものができたから先輩拳銃貸してください!」と名乗りあげる姿は、よしさすがだ岩見!と膝を打ちました。

 

 

正直山本五十六を阿部サダヲが演じるって辺りは少々キャスティング厳しくね?とは思いましたが、その辺はベテラン俳優ということで特に違和感もなく見てられましたね。

他にもヤクザの組長を演じた佐藤二朗も、コミカルさを狂気に変えて百合の前に立ちはだかる、でも最後は美味しいとこ持っていくといういい意味でも悪い意味でもいやらしい役柄でしたw

そういえば、百合とひそひそ話して口約束するシーンがありましたけど、あれ結局何の約束したんでしょうかね。

どうせいやらしいことだと思いますけどw

 

こうして色んな人が素晴らしい演技をされている中、非常に残念だったのがジェシーでした。

今回陸軍の幹部役ということで、現場の指揮を任されていたこともあり出番が結構あったんですけど、なんていうんだろ、ファンの方には申し訳ないんですけど、演技下手くそでした。

 

これ僕の勝手な予想ですけど、猿之助(名前出すのが色々ややこしいけど)と仲良いこともあって彼の芝居を真似してるように思えて仕方なかったんですよね。

声の出し方も気持ち低くして濁したような、喉で発声してるような、だいぶ誇張した様な声を出して威圧してました。

そこに大袈裟でわざとタメを作って話すような喋り方してて、百合と対峙する時なんか見栄を切るようなこわばった表情を見せてるんですけど、これがまぁハマってないし、キャスト陣の中で一番浮いているんですよね。

隣にいた側近を演じた内田朝陽の方がよっぽどナチュラルで陸軍ぽかったこともあって、余計酷さが目立ちましたね。

 

なんでそんな役作りしたんだろうと不思議で仕方ありませんでした。

 

行定勲に任せない方が良かった

全体的な映画の感想で申し上げると、僕はそこまで行定監督の作品を好んでないことも手伝って、「なんでこんなに映像美に拘ってシーンにタメばかり作るんだろう」と思いながら見ておりました。

 

というのも本作、大正時代の美しさを前面に出したいのか、変な所で視界を遮るほどの霧が出たり、CGではあるものの夜の川で波を際立たせるかのような「絵画的」な映像に拘ってる節があり、さらにそこでひとつひとつしっかり会話を見せたいがために、どんどん尺が長くなってしまってるんですよね。

 

またどうでもいいシーンが目白押し。

それこそ陸軍が百合の店を囲んでの銃撃戦で、中盤の見せ場であるにもかかわらず、途中そこに赤ちゃんが歩いてきてしまうわけですよ。

それでも銃撃をやめない陸軍はかなり狂ってるんですけど、そこで戦いに参加してない岩見を前線に持ってきて、それを庇うために百合が傷を負うという流れなんですね。

 

そんなことしなくてもええやん、と。

 

他にも慎太と共に逃げる中、お祭りの屋台がにぎわう場所でスパイの残党の残像を見てしまい、群衆の中で発砲してしまうわけです。

ずっと過去の悲しみを背負ってる百合が「死にたい」想いを残党に見抜かれてるという意味合いの有ったシーンではあるんですが、

 

そんなことしなくてもええやん、と。

 

他にもありますよ。

陸軍に追われてて素性がバレてるのになんで家に帰るかなぁとか、狙われてるのわかってるのになんで慎太は土手に行ってさらわれちゃうかなぁとか、結局それってヤクザの組長の出番増やすための口実でしかないじゃんとか、拳銃の打ち方教えてるのに何が「あなたは撃たなくていい それでいい」だよ撃たせろよとか、クライマックスでもなんで海軍の場所に向かうのに岩見と別行動して山本に電話かけてるの?

 

そんなことしなくてもええやん、と。

 

もう物語の導線がどうもおかしいのですよ。

全てが口実でしかない。

綾瀬はるかが戦うために、かっこいいところ見せるために敢えて余計なシーンを作ってるようにしか見えない。

 

しかも、全てにおいて緩急がない。

詰められるところは詰めてほしい。

でないとスピーディーなアクションが活きないんですよ。

そもそもアクションもスピーディーではなかったんですけど。

 

あと殺しはやめたとか言ってるのに、最後結構殺してるの何なんですか。

あの謎の婆ちゃんは誰なんですか。

 

 

これ僕の勝手な予想ですけど、薬品盗んでスパイの残党に見つかったところから川で逃げるシーンと、岩見と落ち合った場所から急に別行動取ってる百合のシーン、恐らくですけど他にシーンを撮ってると思うんですよね。

で、完成したらだいぶ尺が長かったんでかっとしたのではないかと。

 

どうもその二つのシーンが妙に抜け落ちてる気がしてならなかったんですよね。

結局そこまで長くなってしまったのは、やはり先ほど取り上げた無駄なシーンの多さと、編集できないような作り、ひとつひとつのシーンをたっぷり見せたがる監督のくせによるものだろうなと。

 

 

最後に

これ変な話、その手の監督にやらせたら「ガンアクション」モノとして結構面白くできたと思うんですよ。

妙にドラマ性を豊かに見せようとした結果、静と動の緩急がめちゃくちゃなせいでものすごく凡長になってしまったよなぁと。

 

確かに百合の過去も大事だし、結局何の金なのか、それが国家的にどれだけ重要なモノなのかっていうミステリー性も大事だし、それ以上にアクションも舞台設定も大事なわけですよ。

職人性の強い監督だったら絶妙なバランスで出来上がった気がするんですけどね~。

 

一応最後には鈴木亮平が特別出演するというサプライズがあり、続編の可能性を匂わせるかのような結末になりましたけど、ぶっちゃけ百合ってあんなに被弾しておきながらよく半年で完治してんなぁと。

諜報員すごくね?

 

とりあえず10億円という予算をつぎ込んだだけの世界観は買いますが、もうちょっと物語の中身に費用を投じた方が良かったのではないかと。

たださ、冒頭でも書いたけどこの手の映画を東映が製作したことは素晴らしいのですよ。

僕が見た回はシニア層で溢れてましたから。

やっぱさ、こういうのが見たいんですよ、昔ながらのカッコイイ女の姿を。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10