沈黙の艦隊
昨今の配信プラットフォームは、日本のコンテンツにも力を入れてますよね。
一昔前なら役者や監督が海外に行かなければ成しえなかった「世界進出」は、こうした配信サービスの進化によって、海外に足を運ばなくても実現可能となったのです。
そんな配信プラットフォームの中でも、特に最近力を入れてるなぁと感じているのが「Amazon Studio」。
今回観賞する映画は、アマゾンスタジオが製作、東宝が配給するという形。
配信ドラマとしてのコンテンツは多々製作されてますが、映画は初のようです。
ハリウッド映画でも「AIR/エア」やスコセッシ監督の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」、リドリー・スコット監督の「ナポレオン」などは、実は配信プラットフォームが製作し、ハリウッドメジャースタジオが配給するという形なのです。
どうやらハリウッドメジャーの資金不足が原因という背景がありますが、予算に余裕のある配信プラットフォームが製作費を出し、世界に供給できるノウハウがあるメジャースタジオが配給をするという形は、今後トレンドになっていくのかもしれません。
ただ今回の場合、「格の国際秩序」を扱うといった内容だけに、企画自体が通らなかったのかもしれませんが、それでもタブーに切り込む内容の物語を率先して採用するアマゾンスタジオの姿勢は素晴らしいと思います。
そんな日本人としてかなりデリケートな「核」を扱う物語。
原作コミックを全く読んだことはありませんが、楽しみたいと思います。
早速観賞してまいりました!!
作品情報
漫画家のかわぐちかいじが1988年から1996年まで連載した「沈黙の艦隊」。
ベースは潜水艦戦を描いた戦記物だが、核戦争や国際政治など、当時の世界情勢を絡めた内容として各方面から話題を集めた人気コミックだ。
それから30年。俳優の大沢たかおが製作総指揮、製作を日本の劇場版映画では初となるAmazon Studioが担当、防衛省や海上自衛隊などの協力を受け、実写化となった。
日米共謀により極秘裏に製造された日本初の原子力潜水艦の艦長が、その圧倒的な力を手に独立戦闘国家を宣言、日米間はおろか世界中に緊張が走る中、彼の行動は果たして「大義か反逆か」を見極めていくポリティカルアクション。
監督には「ハケンアニメ」で賞レースを席巻した吉野耕平。
暗い海の中での緊張と熱のこもったドラマを見事に描き出した。
本作でプロデューサーを務めた大沢たかおは、主演も兼任。
企画から携わるほど思い入れのある本作とメッセージを、海江田艦長という役を通じて世界に投げかけていく。
他にも、「キングダム/運命の炎」の玉木宏、「シャイロックの子供たち」の上戸彩、「ハケンアニメ」の中村倫也、「るろうに剣心」の江口洋介、「ミッドナイトスワン」の水川あさみ、「アキラとあきら」のユースケ・サンタマリアなど豪華キャストが名を連ねた。
ロシア・ウクライナ情勢をはじめ、国内国外問わず様々な問題が勃発するこの令和の時代に、本作はどんなメッセージを突き付けるのか。
あらすじ
日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。
艦長の海江田四郎(大沢たかお)を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。
だが実は、乗員は無事生存していた。
事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜〈シーバット〉に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。
米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の操艦を誇る海江田であった。
ところが、海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。
海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した――。
やまとを核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。
アメリカより先にやまとを捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦〈たつなみ〉。
その艦長である深町(玉木宏)は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた……。(HPより抜粋)
登場人物紹介
- 海江田四郎(大沢たかお)…日米政府が極秘に開発した、最新鋭の原子力潜水艦〈シーバット〉の艦長。海自一の操艦を誇る。〈シーバット〉に核ミサイルを積んで反乱逃亡する。
- 深町洋(玉木宏)…〈シーバット〉を追いかける、海自のディーゼル潜水艦〈たつなみ〉の艦長。過去の海難事故により、海江田に並々ならぬ感情を抱く。
- 市谷裕美(上戸彩)…政府の陰謀を訝る報道ニュースキャスター。
- 南波栄一(ユースケ・サンタマリア)…〈たつなみ〉のソナーマン。海自一の聴力をもつ。
- 入江蒼士(中村倫也)…かつて海江田と深町と同じ潜水艦に乗務していた海自の潜水隊員。
- 山中栄治(中村蒼)…〈シーバット〉の副長。海江田の右腕。
- 入江覚士(松岡広大)…〈シーバット〉のIC員。入江蒼士の弟。
- 溝口拓男(前原滉)…〈シーバット〉のソナーマン。
- 速水貴子(水川あさみ)…〈たつなみ〉の副長。深町の右腕。
- 船尾亮子(岡本多緒)…海原渉の秘書。
- 赤垣浩次(手塚とおる)…統合幕僚長。
- 影山誠司(酒向芳)…外務大臣。
- 竹上登志雄(笹野高史)…内閣総理大臣。
- ローガン・スタイガー(アレクス・ポーノヴィッチ)…米太平洋艦隊司令官。〈シーバット〉撃沈を図る。
- ニコラス・ベネット(リック・アムスバリー)…アメリカ合衆国大統領。
- 海原大悟(橋爪功)…内閣官房参与。「影の総理」といわれる政府の黒幕。官房長官・渉の父。
- 曽根崎仁美(夏川結衣)…防衛大臣。
- 海原渉(江口洋介)…内閣官房長官。政府の黒幕である内閣官房参与・大悟を父にもつ。
(以上HPより)
原作連載時も議論を呼んだそうですが、今回もSNSなどで色々賛否が飛ぶんでしょうか。正直映画見て政治語るのってオレ大嫌いなんですよね。それ映画の感想じゃないから。
あくまで映画よ、映画。うん、ここ大事。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#沈黙の艦隊 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) September 29, 2023
原潜を乗っ取った艦長は何を企んでいるのか
終始不敵な表情を見せる大沢たかお、眉間にしわを寄せながら先輩を制止しようと奔走する玉木宏の構図にゾクゾク。
ただ、予想していた通りのエピソードであの大作を一本で収めるのは無理だよね。
ホンモノの潜水艦は大迫力! pic.twitter.com/fKgCx0julo
独立国家「やまと」は、一体何を企んでいるのか、という序章で収めた1作目。
原潜、日本の国会、アメリカの3つの視点を混ぜたサスペンスな演出と、クライマックスに戦闘シーンを持ってくる構成は見事だけど、どうも画の構図が好みではない・・・。
以下、ネタバレします。
OVA1作目でまとめたか。
日米で秘密裏に進められた原潜プロジェクト「シーバット」を使って、独立国家「やまと」を宣言した海江田の目的は一体何なのかという物語を、日本、アメリカ、そしてかつて海江田の下で働いてた後輩・深町の視点で見せた本作。
それぞれの思惑が交錯する中で大和をひた走らせる海江田の不気味な表情と、モーツァルトの交響曲や重厚的な劇伴によってサスペンスを掻き立てる演出が、海洋アクションとして見事に功を奏していた作品だったわけですが。
一応原作コミックを読破して臨むには時間が足らず、OVA3作を観賞して臨んだんですね。
予習していた段階で感じたのは、「これ1つの映画でまとめることができるかな?」という疑問。
もしかしたら途中まで描いて3部作構想とかにするかもしれない、と。
要はそれくらい原作はボリュームのある大作だってことだったんですよ。
その予想を見事に的中するかのように、本作は「日本と軍事同盟を結ぶ」ことを深町に伝える所で幕を閉じます。
続編を意識したのであればいい所で区切ったなという印象ではあるものの、いやいや面白いのはここからじゃん!!、なんでここで終わらせるかねえ!!という悔しさも混じった思いが沸きました。
そもそも本作は、不自由ながらも安定した人生を望むより、不安定でも自由を目指す人生を選んだ男・海江田が「世界を一つの国家にする」ことを目標に一か八かの賭けに出る物語でありながら、核武装して世界の秩序を保っている今の世界に一石を投じるテーマを掲げたお話なわけです。
原作の時点から荒唐無稽な箇所は多々あるとか言われてますが、個人的にはOVAを見た時点で海江田が掲げる理想がもし実現したら、ものすごく利点の多いことなんじゃないかと感銘を受けたわけで、それを実写映画でどこまで見せることができるのか、実写映画でどこまで踏み込むことができるのかっていう部分を楽しみにしてたわけです。
確かにいつまでも世界のリーダーであり続ける事こそ正義とぬかすアメリカの思惑や、自分の国は自分で守らなくてはいけないという思想から、国民の声を無視して勝手にアメリカと結託して核弾頭を搭載することが可能な原潜を、日本の金で作ることの是非みたいな、結構攻めた内容ではあったんですよね。
実際日本は廃線国であり非核三原則を守る国家のために、いざ敵国から攻撃されたら専守防衛しかできないと。
近くの国が日本の近海に向けてバンバンミサイル演習をしている中、安全保障理事国に加盟してる国が核をチラつかせて領土拡大のために他国を侵攻してる昨今、日本は国をどうやって守らなくちゃいけないのか。
いつ攻められてもおかしくない今、いつまでもアメリカという傘の下にいていいのかと。
そうした悩みを常に抱えながらも、我々は戦後70年以上過ぎたこの日本んで平和ボケしてるわけです。
そうした中でこういう映画が公開され、色々な意見交換が出来たらいいなって思うんですよ。
だからこそ、あんなところで終わらせて次回作で、ってことじゃなくて、もっと尺を詰めるなりして行けることろまで描いてほしかったなぁというのが僕の感想です。
ドラマにするための改変はあり。
今回いくつか改変されてるようで、それがファンから反感を買ってるそうですが、個人的には全然アリでしょと感じました。
一番の改変は、海江田と深町が同僚ではなく、かつての先輩後輩の関係だったこと。
2人が同じ潜水艦に乗船していた時に起きた事件が今回盛り込まれておりました。
それは、潜水艦が浸水しかけた時に海江田が下した判断が、深町としては許せなかったというもの。
機械室(だったかな?)に水が浸入したので水の侵入を防ぐために向かった船員・入江。
無事水の侵入を防げたものの、このままでは潜水艦が沈んでしまうことから室内を封鎖する決断を海江田は下したのですが、深町は「まだ助かる」と詰め寄り、自ら救助に向かおうとしていました。
船乗りである以上こうしたアクシデントには大いなる決断が要するわけですが、その時の海江田の判断は絶対正しくない、そう深町はずっと思っていたわけです。
それから3年が経ち、今回の事件。
海江田が起こした暴走を、ただ上からの命令で止めるのではなく、そんな奴に潜水艦の艦長を務める資格はないという深町の個人的感情が強く描かれていたのであります。
こうした海江田と深町の対立構造を前面に押し出すことにより、深町の行動目的が明確となる上に、実際船の中で対峙するシーンに深みが増すことで、より緊迫感を高めたものになっていたと思います。
ただ今回、ここを軸に置いたことによって海洋アクションとしての尺が非常に足らず、個人的には物足りなさを感じました。
本来潜水艦を描いた海洋アクションものは、音で全ての視界を判断せざるを得ない海の世界の中でどういう戦略で攻防するか、また予想を覆すかのような戦略にどういうリアクションを取るのかという部分が、正直薄く感じたり、何やってるか理解しにくい部分が多く見受けられました。
というのも、中盤音響魚雷を近くに潜んでいたアメリカの潜水艦にお見舞いし、音で錯乱させた状態でどこにいるかわからなくさせるシーンが描かれてました。
そこでモーツァルトの交響曲をかけながら劇的に描いてたわけですが、イマイチパッとしませんでした。
どう言語化したらいいか難しいのですが、要は「海江田が何を仕掛けてくるのかわからないアメリカ勢」って視点を重点的に描いた方が、モビーディックと化した海江田の不気味さが強まると思うんです。
これをほとんど海江田の視点で描いてしまうので、サスペンスな描写になってない。
また、その様子がスペクタクルに描かれてないのが勿体ない。
なんでもかんでもこういうアクション物はハリウッドに限るという幻想を未だにもている自分ですが、やはりこういう点でのハリウッド映画はしっかり描いていて、それと比較してしまうとどうもショボい。
一応視点を海中に切り替えて潜水艦が今どういう状況なのかをしっかり映像として見せてはいるモノの、結局は互いの潜水艦内の人間がどういうリアクションを取るかで留めているので、非常に勿体ないなと。
終盤では原子力空母ロナルドレーガンによる攻撃のシーンが描かれていて、「俺が見たいのはこれだよ!」という気分になったんですが、その攻撃をあざ笑うかのように得体の知れない動きを見せる大和に対しての周囲のリアクションが薄くて、これももったいないなと。
それこそいつの間にやまとがたつなみの上にいるんだ!?って気持ちを立浪の誰もが口に出さないのは変だなと思ったし、こういう海戦の状況を例えばアメリカ大統領や日本の閣僚たちが大袈裟なリアクションを見せるシーンを挿入したら、見てるこっちも呼応したりするんじゃないかなぁと。
もちろん楽しめはしたんですよ、ええ。
あと一番気になったのは、撮影です。
本作は基本シンメトリーを意識した構図で撮影をしてるんですよね。
それこそメインとなるソナー室と発令所の部屋の内部の中央で佇む海江田を真ん中に配置してみせるのは、モロにシンメトリーで、尚且つ口角カメラで一見狭そうな艦内を広く見せることに成功してたと思います。
ただ、この構図を大統領のいる部屋の中も、また日本が閣僚会議してる時もつかってるんですよね。
もっと言えば官房長官がやってくるシーンもシンメトリーにしちゃってる。
できればですよ、艦内には艦内向きの構図、外の世界は外の世界の構図と分けて見せた方が、差別化出来てよかったんじゃないかなぁと。
要は全部構図を統一しちゃってるせいで、見てくれが飽きてくるんですよね。
もちろん戦闘シーンまでそうなってるわけではないので良いんですけど、大体対話のシーンはこれなんですよ。
しかもシーンの始まりと終わりがこの構図。
僕としてはこの辺をもっと工夫してほしいな、そうでないと大統領がいる部屋も司令官がいる部屋も閣僚の部屋も全部同じに見えちゃうぞと。
最後に
凄く浅い感想ですが、まとめるのであれば早く続きが見たい、というかもっと話を詰め込めよという感想ですw
一応劇中では「力がなくては話し合いができない」、「力あっての国家」みたいなセリフが飛び交ったり、核を保有してるかもしれない状態での攻撃は、結局威嚇しかできない、アメリカをもってしても大和を鎮めることはできない、それが世界の縮図となっているという海江田の痛烈な皮肉を見せつけてくれるわけです。
こんな状態でいつになったら世界は平和になるのかという問題提起をほのめかした後に、大和は日本と軍事同盟を結ぶ予定だというところで幕を閉じるのであります。
OVAを見たのでこの後どういう展開になるかは理解してるんですが、マジでここからが面白いんだよなぁ…。
核を持たない持てない国に武力を提供する代わりに物資を調達要請ができるという内容の同盟だったと思うんですけど、これが「やまと」って名前で、しかも艦長は日本人てことで、外の国からしたら、そんな同盟結んだら、お前ら戦前に戻るのか!と、やまとも日本も非難されるという。
そこで総理がどんな決断を下すかっていう山場なんですよ。
いやぁ~早く見たい。
今や国連が大した仕事ができてない状況の中、やまとが掲げる「世界を一つの国家にしたい」という具体的な中身は一体何なのか。
早くこれを実写映画で堪能したいです。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10