オールド/OLD
夏はやっぱり海ですよね~。
海辺をガンガン泳いでもいいし、浮き輪でぷかぷか浮かんでもいい。
きらきら光る砂浜を裸足で走ったり、サンオイル塗って日光浴したり砂風呂して遊んだり、ビーチバレーやスイカ割りなんてのもいいですね。
もちろんビールやらBBQもいい。
とにかく夏を満喫できる最高のバカンスじゃないでしょうか。
とはいえいまだ収束しないパンデミック。
そう簡単に海へ遊びに行くなんて決断できないですよね。
でも、誰もいない「隠れ家」的ビーチがあったら、誰にも迷惑かけずに遊べると思うんですよ。
イモ洗いみたいにごった返した人気の海岸で遊ぶよりかは、遥かにセーフティというか。
場所取りもラクチン、視線を気にすることもない。
自分たちだけのビーチ、みたいな。
ただね、気を付けてほしいのは、なぜ誰もそのビーチを訪れないのか。
こんなにも青く透き通った海なのに、真っ白な砂浜なのに、辺り一面絶景なのに。
厳密にいえば私有地なのかもしれませんが、いくら何でも人気がなさすぎるってのには、理由があるはず…。
今回鑑賞する映画は、美しいビーチでバカンスを楽しむはずが、その場所は1日で一生が終わってしまう場所だった…というお話。
一体なぜそんなことが起きてしまうのか。
訪れた人たちの運命は。
せっかくの夏だってのに、なんて怖そうなんだ!と思いながらも面白そうじゃんてことで早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「シックス・センス」、「ミスター・ガラス」のM・ナイト・シャマラン監督が、フレデリック・ペータースのグラフィックノベル「サンド・キャッスル」を原案に、「時間」と「老い」をテーマにしたスリラー映画を手掛けた。
人里離れた美しビーチにやってきた家族たちだったが、そこは「一生が一日で終わるビーチ」だった。
急速に老け、脱出も不可能なこのビーチで、パニックを起こす家族たちの姿を描く。
本作も監督自身が製作資金を出資。
コロナ禍でオーディションを実施し撮影するほど気合いの入った作品となっている。
また、これまで様々な「驚愕の結末」を見せてきた監督が、本作では「時間の謎」をテーマに仕掛けていく。
なぜ一日で一生分の時間が経過してしまうのか。
そこに込められたメッセージとは。
家族の運命を見つめ、隠された謎を追求しながら、時間とは何かを考えるきっかけを与えてくれるかもしれない。
あらすじ
休暇で人里離れた美しいビーチを訪れた複数の家族。
楽しいひと時を過ごしていた矢先、ひとりの母親が突然姿を消した息子を探している——
「私の息子を見かけませんでしたか?」
「ママ、僕はここにいるよ!」
母親が息子の姿に気付かないのも無理はなかった。
なんと6歳だった息子は、
少し目を離した隙に少年から青年へと急成長を遂げていたのだ。一体このビーチで何が起こっているのか?
海岸に打ち上げられた女性の死体、次々に意識を失う人々、砂浜に残された謎のメッセージ…
不可思議な出来事に直面する彼らは、やがて自らが急速に年老いていく事に気付く…。
果たして、極限状態に追い込まれた彼らの運命は?(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、M・ナイト・シャマラン。
皆さんご存じの監督。
一時期低迷していましたが「ヴィジット」で再評価。
「スプリット」では、まさかの「アンブレイカブル」とつながるシャマランユニバース爆誕、そして「ミスター・ガラス」と、決してオチありきの監督ではいんだぞ!というエンタメ要素の濃ゆい作品を多数製作されております。
そもそも「驚愕の結末」を見せるには、結末迄の過程をしっかり構築しなくては発揮できないわけで、監督の「オチ」がすごいのは、そこまでしっかりミステリーになってる要素があるからだと思うんです。
確かに「なぁんだ」ってのもありますが、まずは結末迄の過程を監督はどう見せているか、そこまでワクワクすような物語の構成になっているかも重視するべきではないかと思います
・・・でも「アフターアース」はおもんなかった…。
こちらのインタビューで、本作を手掛けるうえで影響を受けた出来事などを語ってます。
本作の謎を解くヒントになるのではないでしょうか。
キャスト
カッパ家の長、ガイを演じるのは、ガエル・ガルシア・ベルナル。
メキシコの俳優と言ったら彼という認識です。
数作しか鑑賞できてませんが、アルフォンソ・キュアロン監督が手掛けたロードムービー「天国の口、終わりの楽園」や、ペドロ・アルモドバル監督の半自伝的作品「バッド・エデュケーション」、若き日のチェ・ゲバラを描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」なんかは彼の代表作として見ていただきたい作品ですね。
近年だとキャラクターボイスではありますが、ピクサーアニメ「リメンバー・ミー」のヘクター役は記憶に残る役柄だったのではないでしょうか。
他のキャストはこんな感じ。
ガイの妻プリスカ役に、「ファントム・スレッド」、Netflixオリジナル映画「ベケット」のヴィッキー・クリープス。
ガイの娘マドックス役に、「ジョジョ・ラビット」、「ラストナイト・イン・ソーホー」のトーマシン・マッケンジー。
チャールズ役に、「ダークシティ」、「レジェンド・オブ・ゾロ」のルーファス・シーウェルなどが出演します。
シャマラン監督は今回何役で出演するのかw
瞬く間に加齢してしまう不思議さと恐怖。
多分全滅するんじゃねえかなw
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#オールド 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年8月27日
ある意味で本作のオチはずるいなぁと思ったけど、なぜ家族がビーチに来たかとか謎が解けるのは気持ちよかった。
人と会うことが難しい今、時間を罪深く思ってしまう映画かと。 pic.twitter.com/Ml5krojvQs
急激に成長してしまう恐ろしさを独特のカメラワークで映す巧さ。
オチはちょっと卑怯だなぁと思うけど、色々納得できる着地で見ごたえありました!
以下、ネタバレします。
コロナ禍の今にピッタリの怖さかも。
数組の家族が「1日で一生分の時間を過ごしてしまうビーチ」で恐怖に喘ぎながらも脱出を図ろうとする姿を、ヒッチコック味のあるカメラワークとスピーディーな展開、説明調のセリフに少々クドさとご都合的な面を感じさせつつも簡潔にまとめる手腕、そして何より「時間の経過」に対する残酷さと大切さの両面を念頭に置いたプロット、さらには丸く収める上で重要なオチに意外性を見せてくれた、シャマラン節全開の楽しい映画でございました。
本作では、ホテルの支配人に誘われるままに家族ら一行が謎のビーチで恐ろしい出来事に遭遇してしまうスリラー映画。
ガイとプリスカの家族はビーチに向かう直前、これが最後の家族旅行であることから、家族とともにいる時間が残りわずかであることに気付かされる。
移動中のバスではプリスカは本を読んだり仕事に没頭したりすることで、子供たちの相手を蔑ろにしている面が窺える。
ガイ自身も妻の病気によって時間が残り少ないことを感じながらも、離婚を留める術はないかに集中して旅行どころの表情ではない。
やがて家族は、謎のビーチで急成長を遂げてしまう子どもたちのみを案じながらも、これまでなぜ喧嘩をしてしまうのか、なぜ離れることを考えようとしたのかなど、過去で抱いた思いをバカバカしく思い、今この瞬間が何より愛おしいと思えるようになる。
時間は誰にでも平等に刻まれる。
一人一人が時間をどう使うかは自由で、時間を持て余す者もいれば、時間に追われる者もいる。
濃密な時間を過ごす時もあれば、1分1秒がものすごく長くも感じる。
コロナ禍によって、人と会うことに対して考えなくてはいけない時代になってしまった。
僕は未だに実家に帰ることができないでいる。
これ以上の成長はない大人なので急激な変わり様はないが、両親はどうだろうか。
次に会った時にどんな姿になっているだろうか。
きっと前回あった時より劇的な変化はないだろうが、老いを感じる事だろう。
髪が薄くなっているかもしれない。
シワが増えているかもしれない。
思った以上に背中が曲がっているかもしれない。
前に会った時はそんなことはなかったのに、と。
本作は、人が成長及び老化していく姿を猛スピードで描くことで、時間というモノが如何に残酷なのかを思い知らされると同時に、家族との時間がいかに大切なのかを知らせてくれる作品だったように思えます。
だからこんな時代だからこそ、大切な人との時間を愛おしく思い、その姿を目に焼き付けることが大事なんだよなあぁと。
特に子供たちは本作で描かれてる通り、ほんのちょっとで成長してしまうわけで。
僕にも姪っ子がいますが、前回会った時と比べ物にならないくらい成長していることでしょう。
もっと一緒に時を過ごせたら彼女の成長する姿を目に焼き付けられたんだろうけど、そうもいかない。
実際会ったら、ガイやプリシカのようにおそろしく感じてしまうのでしょうか(んなわきゃないw)。
もっと言えば孫を持つおじいちゃんおばあちゃんは、ビックリすることでしょうし。
何はともあれ、時間て大切なんだなぁと思わせてくれた映画でした、はい。
設定が面白いよね
話を映画に戻すとして、本作はシャマランならではの面白いプロットになってたなぁというのが象徴された映画だったなと。
もうね、冒頭からこれ怪しい臭いがプンプンするわけですよ。
だってガイの家族は勝手にあのビーチへ行くのではなく、ネットで予約したホテルの支配人に誘われてビーチへ行くわけです。
もうこの時点で、仕組まれてる予感するじゃないですか。
だから一体誰の仕業かってのは結末に用意されてるわけなんですけど、ビーチへ入った途端そんなこと忘れさせるくらい、急激な時間の経過による成長の過程が恐ろしいわけですよ。
一応ガイの家族以外に、心臓外科医の家族と、既にビーチに座って海岸を眺めている黒人の男性、後から看護師とその彼女が登場します。
ガイの子供トレントが海で泳いでいると、全裸の女性の死体が流れてきたことで、不吉な予感を与えてくれます。
時を同じくしてトレントの身体に異変が。
パンツがきつくなってきちゃったと。
女性の死体は先客していた黒人男性でラッパーのミッドサイズ・セダンという男が連れてきた女性があることが明かされます。
しゃしゃり出て来るや否や、「俺は何も話したくない」とか言うからもう怪しいw
先客だからってのも手伝って、こいつこれから何をしでかすのかドキドキでした。
気が付くとガイの長女マドックスにも体の異変が。
水着がきつくなり、驚くほど成長しています。
2人の子供は11歳と6歳という幼い年齢ですが、見るからに高校生と中学生くらいの身体の大きさになってるんですね。
どうやらこのビーチでは1時間で2年ほどの歳をとる場所で、成長しきった大人たちに大きな変化は見られないものの、子供たちにとっては外見がみるみる変わっていく仕組みになってるんですね。
恐らく見ていくと、「は?時間がどんどん経過してるのに髪は伸びねえし髭も伸びねえじゃねえか」と疑問に思うと思うんですが、看護師曰く「毛髪は死んだ細胞だから伸びない」んだそうです。
う~ん、まぁ一応理解。
みんな早くここから脱出したいとあらゆる行動に出るんですが、心臓外科医のチャールズのお母さんは心臓麻痺で亡くなるし、連れてきた犬も早々と死んでしまう。
チャールズの子供カーラちゃんもみるみる成長するし、今度はプリシカが患っていた腫瘍がどんどん大きくなって体調に異変が生じ、急いで摘出手術を行わないといけない状態に。
意を決して体にメスを入れるんですが、すぐさま傷口がふさがってしまう。
他の人の協力を経て何とか傷口を開いたままにしたものの、ゴルフボール級の腫瘍が、取り出した時にはメロン並みの大きさになるという、とてつもなくハイスピードで刻まれる時間。
来た道から帰れば出られると思って歩いていくけど、急にめまいがして気絶してしまう。
沖へ出て別の海岸に向かうけど、やっぱり気絶してしまう。
もう踏んだり蹴ったりで、らちがあきません。
こんな具合で、登場人物たちがどんどん様変わりしていく姿を一人一人スポットを当てて見せていくことで、恐怖の連鎖を引き起こす構成になってるんでんすね。
実際問題、皆が平等に変化を遂げないとおかしいとは思うんですが、そこは映画の嘘ってことで突っ込まずに観る方がいいのかと。
また物語を追っていくと、登場人物、特に大人たちにはある共通点が浮かび上がります。
プリシカは体内に腫瘍があります。
彼女は病を患ったことで夫との間に亀裂ができてしまうのが冒頭で描かれています。
また医者のチャールズは記憶障害の面が。
劇中ひたすら「ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドが共演した映画って何だっけ?」としきりに聞いてきます。(調べたらミズーリ・ブレイクという映画でした)
チャールズの妻は、ホテルでカルシウムがたっぷり入ったジュースを飲んでたり、やたらと姿勢の事を気にしてたことから、カルシウムが不足している病かと。
チャールズの母は心臓に疾患があったり、看護師の彼女はてんかん持ち。
先客だったミッドサイズ・セダンは、鼻血が止まらない姿から血を止める機能が弱い病にかかっています。
連れてきた彼女もALSの傾向があると語ってましたね。
このように皆何かしら病を抱えた人たちの集まりであることが明かされるんですね。
これが結末にどう直結するのか、オチを見ていただいて「なるほど!」と思えて貰えたらと。
他にはカメラワークが独特でしたね。
基本的にはそこまでは長くないですが、長回しを多用しています。
登場人物の表情をゆっくりとパンしながら映したり、散らばった面々を旋回しながら撮影し、一回転したら子供が劇的に成長してるように見せる工夫もされてました。
また廊下によってガイの視力が衰えることで、ぼやけた映像を見せたり、プリシカは片方の耳が聞こえなくなる現象を、彼女が片方の耳をふさぐ瞬間に音を消す演出で表現。
言葉で説明するのではなく演出で理解させるのはお見事でした。
あとは、シャマラン監督作品と言えば、ヒッチコックばりに監督自らが登場するのも見どころ。
今回はビーチへ案内する運転手の役として登場します。
彼らを送るだけの役かと思いきや、実はちゃんと理由がある役として登場するのでしっかり覚えておくといいのかと。
突っ込みどころになるのかはわかりませんが、子供たちが成長するのはいいとして、子供を作る方法を何故知ってしまっているんだろうと。
トレントとカーラは子供から思春期真っただ中の年齢にまで成長しました。
2人は共に寝そべって恐怖から逃れようと互いを励まし合っていくうちに、何かしらの感情が芽生え始め、気が付くとカーラのお腹がどんどん膨れていくのです。
要は性交をしたわけですが、元々6歳児の男の子がもう子供の作り方を知ってるってのはどういうことよ?と。
海外はそういうことに関しては結構早い段階で教育させているなんてのはよく聞きますが、6歳の段階で知ってるの!?と。
このシーンは驚きでしたね。
あとは不満というわけではないんですが、もっと製作資金があれば子供たちの成長過程をわざわざカメラをずらしたりカットして役者を変えるのではなく、少しずつ変化させることも可能だったろうになぁと。
やはり一瞬一瞬を大切にってのがテーマだと思うんで、その部分をカットして見せちゃうのがもったいないというか。
成長の変化をマジマジと見せたら恐ろしさも倍増したりするのになぁと。
でもそれやったらホラーかw
他にはなぜこのビーチだけ時間が急速に流れるのかって謎の答えが微妙というか。
要は何百万年も蓄積された磁場みたいなものが原因で、あの場所だけ時間が急激に進んでしまう「らしい」です。
あくまで登場人物たちによる推測に過ぎず、明確な答えになってないんですが、もっと現実的な答えでもよかったのかなぁと。
ビーチから出られない現象もそれによるものとみていいと思うんですが、出られない原因をそれこそ閉じ込められたとかにしてもいいですし、波がめっちゃ強くて沖に出ることができないとかでもよかったのかなぁと。
変にめまいがして気絶してしまうとかって設定にしなくてもいいのになぁと。
最後に
プリシカは学芸員という仕事に誇りを持ってるためか、病気によって失った過去に縋る一面を見せたり、ガイはガイで仕事がらリスクを予測してばかりで先のことしか見ていない。
ビーチに訪れ急激に歳をとる体験をしたことによって、二人は今を見つめることが大事だという答えにたどり着きます。
過ぎた時間を惜しんでも、何が起こるかわからない先を見据えても決して悪い事ではないと思いますが、何より「現在」が一番大事なのではということを、シャマラン監督は得意のスリラー映画で表現することで教えてくれたのではないでしょうか。
だって時間は誰にも止めることはできないですし、どうあがいても過ぎていくもの。
家族との時間は特に、今在る相手の姿を目に焼き付けることが重要なのではないでしょうか。
子供の成長はあっという間ですしね。
だからこそ、コロナが憎いよなぁとも思えた作品でした。
結末に関してはあえて伏せます。
登場人物の共通項と、冒頭で醸し出される怪しい臭いを辿れば、おのずと見えてくるのではないかと。
まぁ何も知らない方が面白いかとは思いますけどねw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10